このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください


大三島フェリー
垂水〜井口

 航行時間わずか15分という短い航路だが、生口島(広島県)と大三島(愛媛県)の間を結ぶこの航路は、中国地方と四国地方にまたがる航路である。また同時に、この両島は尾道〜今治ルート上にあるが、この間を結ぶ多々羅大橋はまだ完成していない(平成11年完成予定)ため、尾道〜今治ルートに残る、「関所」となっている航路でもある。
完成間近の多々羅大橋
 垂水港からは、多々羅大橋が見える。一見するともう完成しているようにも見えるが、主塔の上にはクレーンが据え付けられており、未だ工事中であることを示している。しかし、路面は完全につながっており、完成間近であることもまた、事実でもあった。
 対岸に見える大三島へ向かって、ゆっくりとフェリーが向かっていくのが見える。どうやらわずかの差で乗り遅れてしまったようだ。次のフェリーまでは1時間程待たなくてはならない。空が真っ黒になり、今にも雨が降り出して来そうだというのに……。待合所のわずかなひさしの下にバイクを入れ、合羽をいつでも着込めるように準備して船を待つ。
 そうこうしているうちに、次々と車が入ってきた。いつの間にか駐車場が車で一杯になる。橋がない区間だけに、他の並行航路とは比べものにならない盛況ぶりだ。バイクは混雑に関係なく乗船出来るので慌てなかったが、もし車で来ていたなら、積み残しの恐れがあったことは間違いない。
 空がますます暗くなり、時折雨粒が落ちてき始めたころ、ようやくフェリーが到着した。いつものことだが真っ先に乗船し、船の中央の隅、客室で雨から保護された所にバイクを乗り入れる。幸いにもまだ、合羽を着る必要はなさそうだ。
 ふたを閉めきれない状態までびっしりと車を積み込み、それでもなお積み残しを出して出航。甲板を見下ろすと、びっしりと詰まった車から降りることが出来ず、車内に留まったままの人が何人も見える。景色も見ることが出来ず、じっと接岸まで待つのはきっと退屈だろう。揺れれば船酔いもしやすいだろうに。先だって乗船出来るバイクのありがたさというものを、改めて感じさせてくれる光景だった。それはさておき。
 進行方向左には、多々羅大橋が見える。あいにくの天候で、きれいな、とまでは行かなかったが、それでも十分に満足させてくれるだけのものではある、と思った。この橋も海面からずいぶんと高いところを走っており、橋からの景色はさぞかし眺めのいいことだろう。本州四国連絡ルートは3本あるが、二本の巨大橋で渡ってしまう神戸〜鳴門ルートや、6つの橋がほとんど切れ目なく続く児島〜坂出ルートと違って、島と海が交互に訪れる尾道〜今治ルートは、途中の島を訪れる楽しみを持ったおもしろいルートになるのではないか、と思われた。全ての橋に自転車・歩行者用の通路が出来るとも聞く。しかしそれでも、フェリー派の私としては、この橋によってフェリーが廃止されるのは納得がいかないが。それはさておき。
折り返し出航するフェリー
 大三島の井口港には15分で到着。満載の車が吐き出されるとすぐに乗船が始まり、慌ただしく出航していった。積み残しが出たために、臨時で折り返し運航をしているらしい。これだけ多くの利用があるのに、なぜ1隻で往復運航しているのだろうか?2隻で運航すれば、こんなに慌てなくてもすむのに。それはさておき。
 雨は一時上がった様だが、いつまた降り出してくるか分からない。とりあえずどこに行こうか迷ったが、地図を見ると、幸いにも港から少し走った所に温泉があり、その近くにはキャンプ場もあるという。雨の止み間を待ちながら温泉にゆったりと浸かり、それからキャンプ場のあずまやの下にでもテントを張るとしよう……。

人と物の流れを妨げる関所を破る
橋という通行手形
いつでも行き来出来る自由がそこにある
それでもなお 不自由な関所の旅に
素通りしては感じられない味を求め 集う
そんな存在として生き抜いて欲しい それが
大三島フェリー 垂水・井口航路



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