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読了日 | 書名 | 著者 | コメント |
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17.09.14 | 冷戦とクラシック (NHK出版新書521) (芸術762) ★★★★★ | 中川右介 | 東西冷戦の歴史が動く中で音楽家が世界中を駆け回る。国を出る人、残る人。ナチスとユダヤ、ドイツとイスラエルの確執。音楽家には様々な壁があったが、自由を求め音楽を希求する人々は世界中同じだ。ほんとにたくさんの音楽家とコンサートの記録が登場する。執筆、お疲れ様でした。ショパン・コンクールやチャイコフスキー・コンクールの成り立ちと変遷も面白い。 ☆ |
17.03.14 | りゅうおうのおしごと!5 (GA文庫) (文学913) ★★★★★ | 白鳥士郎 | ラノベなのだが将棋というゲームの神髄を突いていて面白い。 神にも例えられる名人を相手に、可愛い弟子や一門の温かい励ましに囲まれて竜王戦の防衛を目指す第5巻。 名旅館「雛鶴」の廊下が最後に出てきて、なるほど、このシーンが大団円の行き着く先と思われる。 |
16.02.20 | ロンドン狂瀾 (光文社) (文学913) ★★★★★ | 中路啓太 | ロンドン軍縮会議とその後の条約批准まで。外交官、軍部、政府の間の熾烈な戦いを熱く、濃く描く。 政党政治の限界も見え隠れして、そして大正デモクラシーが死んでいくのか。 タフな交渉、駆け引き、理想と現実。大日本帝国憲法の下での天皇との関係。細部まで緻密、かつ、エネルギッシュ。 登場人物は虚構だけれども、当時の時代の空気がまざまざと眼前に現れる。568ページの大著、一気に読みました。 ☆ |
12.08.03 | 雲の都 第五部 鎮魂の海 (新潮社) (文学913) ★★★★★ | 加賀乙彦 | 小暮悠太、又は作家・能登良太とその一族を描く大河小説。明治の男、祖父時田利平の物語から始まり、最後は20世紀末に日本を襲った阪神大震災と地下鉄サリン事件に長男、長女が遭遇して奔走。その間に夏江叔母を看取り、最愛の妻千束を見送る。 波乱万丈の一族の物語はある世代の終焉と共に静かに静かに収束を迎えた。そして子供、孫が育って新しい物語がすでに始まっているのだ。人間の社会の流れ・歴史と、その中に無数に含まれる普通の生活の絶え間ない悠久の流れを感じる。 |
11.10.28 | 陽の鳥 (講談社) (文学913) ★★★★★ | 樹林伸 | 不妊治療とクローン技術という現代的なテーマ。第一線の研究者を囲む家庭的な雰囲気から始まって一人息子の突然の死から一気にスリリングな展開に。主人公達が直面する究極のシチュエーションと心の葛藤。巧みな伏線。一気に読めました。 ☆ |
09.10.22 | ハプスブルグ家 12の物語 (光文社新書366) (歴史288) ★★★★★ | 中野京子 | ハプスブルク家の興隆を一気に読みました。12人の選択もその語り口も絶妙。必死に生きる王家の人々。結果としての壮絶な運命。ハプスブルクの血統に対する執念。そして絵画の魅力であり威力。「山川世界史」を見ると合わせて2ページにも満たない記述の中に濃密な人間ドラマがあるのでした。フェリペ2世に代表されるスペイン王家もハプスブルク家とはあまり意識していませんでした。こういう本を歴史の副読本にすればいいのに。 |
09.07.31 | シリコンバレーから将棋を観る (中央公論新社) (芸術796) ★★★★★ | 梅田望夫 | 観て楽しむ将棋、それです! そしてトップ棋士が探求する将棋の深遠の世界へ。知の領域では、勝負なのか芸術なのか、あいまいになっていく。将棋はその辺の所謂ゲームとは違うのだ。 これからA級順位戦最終局中継のMCは梅田氏がいいと思う。それからせめて午後9時から始めて欲しいな。来年3月2日の解説陣はもちろん、B級1組で突っ走る渡辺竜王と深浦王位で決まり。 |
08.08.07 | 大和三山の古代 (講談社現代新書1952) (歴史210) ★★★★★ | 上野誠 | 藤原の宮、飛鳥。それらを囲むように大和三山はあります。 普通なら、古文と書き下し文があって、万葉人の感情を味わいなさい、で終わり。 一方、本書は筆者も言うように、古代の人の感覚を追体験できる破天荒でエキサイティングな探索の旅でした。想像する楽しさを存分に堪能できました。 かなり個人的な事情もあり星五つです。 「空から見た耳成山」には我が実家が写っていますし、掲載されている写真はどれも、とても身近に感じられます。 |
07.06.29 | 生物と無生物のあいだ (講談社現代新書1891) (自然科学460) ★★★★★ | 福岡伸一 | 久々に中身の濃いどっしりとした、そして読んでいてわくわくする良書でした。 ワトソンとクリックが発見したDNAの二重らせん構造は知っていました。が、本書はその発見の前夜から現在に至る生命科学の道程をドラマチックに、丹念にたどっていく。 形質転換作用がたった4つの要素しか持たないDNAにあることを示し、批判され続けたエイブリー。 X線解析でDNAの構造を透かし見ていた、そして早世したフランクリン。「あの」(量子力学の)シュレディンガーの生命に対する問いかけ。生命の証を「ダイナミックな平衡」と捉えたシェーンハイマー。 それは、すなわち先に読んだ「朽ちていった命」(06.10.13読了)で驚いた現実だ。 精密機械との違いである「時間」の一方通行の作用。遺伝子を操作した実験に対する生命のしやなかさ、など奇跡的な命の営みには、やはり畏敬の念が芽生えてくる。 冒頭の野口英世の再評価の話はちょっと驚きでした。 |
06.09.29 | 国家の品格 (新潮選書141) (社会科学304) ★★★★★ | 藤原正彦 | 痛快な本である。世界を覆っている閉塞感を打破するキッカケになるかもしれない。 ただ、時間がかかることなので、すぐ結果を求める今の時勢には合わないけれど。 「自由」「平等」「民主主義」。完全無欠と信じていたものは砂上の楼閣だった。 「たかが経済」という言葉がいい。 |
06.05.12 | モモ (岩波少年文庫) (文学943) ★★★★★ | ミヒャエル・エンデ | フィラデルフィアからの帰りの飛行機で読もうと「時間どろぼうをやっつける少女」の話を持参。 それだけしか知らずに読み始めたが、30年も前に見事に現代社会の本質を捉えて、かつメルヘンに仕上った物語に感動。 灰色の男に取り入られた人間たちの一挙手一投足が今のせわしない世相を面白いほど反映していて、自分の生活が恥ずかしくなってしまう。もともとはもう少し良い生活がしたい、とか、生活にもう少しゆとりを、と欲していたはずが、いつの間にか、大切な心を無くしつつあるという自己矛盾の状態を痛切に描く。 |
05.02.04 | 中国語はおもしろい (講談社現代新書1753) (言語820) ★★★★★ | 新井一二三 | タイトルからは想像も出来ないほど広い世界へ導いてくれる。中国人のバイタリティやアイデンティティの多重性、中国語の普遍性、そしてアジア人としての認識の発見、など。日本人という井の中の蛙の姿をまざまざと見せつけられた思い。 仕事上で中国とのつながりが出来つつあるが、ここは一つ中国語を始めようと思う。 |
04.10.30 | ユリウス・カエサル ルビコン以後(上・中・下) ローマ人の物語Ⅴ (新潮文庫) (歴史232) ★★★★★ | 塩野七生 | たった一人で、55年間で、いや実質は中年以降のたったの15年間で、どれだけ大きなことを成し遂げたのか。ほとんど休み無く、国家 ローマの行く末を考え ていたに違いない。それにしても一人の頭の中にそれはどのようにして芽生えたのだろうか?そしてその行動範囲たるや、古代の高速道路、ローマ街道を使うと は言え、現在のパワーエリートといえども及びも着かないのでは。2000年前の弥生時代の話なんだから。 「寛容」というキーワード、カエサルの下で「パクス・ロマーナ」が実現していれば、世界の今はまた変わっていたかもしれない。多神教と寛容という組み合わ せは日本人には馴染み深いのではないだろうか。 |
04.09.19 | ユリウス・カエサル ルビコン以前(上・中・下) ローマ人の物語Ⅳ (新潮文庫) (歴史232) ★★★★★ | 塩野七生 | 文庫版刊行再開。 カエサルの政治、軍事の才覚! ガリアの地を縦横無尽に駆け抜け、ラインを渡りゲルマンの地へ、ドーバーを渡りブリタニアへ。不穏な動きを見せる諸部族を破壊したり懐柔したり。 紀元前50年頃のこと、現フランスは人格神を信じ、私有財産制があるのでローマ化出来ても、ライン以東の現ドイツのゲルマンは太陽や月を崇める土着の信仰 をしている未開人だった。 8年の戦役を終えたとき、首都ローマではカエサルに反対する元老院派が最終勧告を突きつけて国賊扱いにしていた。ルビコンを超え次巻でクライマックス。そ れにしてもカエサルが女たらしで借金王とは知らなかった。 |
03.07.21 | 輝く日の宮 (講談社) (文学913) ★★★★★ | 丸谷才一 | 楽しく読んで、ちょっと賢くなった気分になる。 もちろん国文学を専攻にしていたわけではないが、「奥の細道」の動機の新説、「源氏物語」のなぞと大人の恋の行方が絡まって最後まで飽きない。 80年代から90年代にかけての社会の動きとともに主人公が行動するので現実感があり、学会シンポジウムの議論はどこからが作者のオリジナルなのか、見当も付かない。 「源氏物語」は以前に読んだことがあるので、六条の御息所や紫の上、夕顔、藤壺などの懐かしい名前が出てくるし、最終場面では白金の自然教育園が出てきて、さらに身近に感じられた。 |
03.04.20 | 宣告 (新潮文庫) (文学913) ★★★★★ | 加賀乙彦 | 文庫の新装版が出て、久しぶりに再読しました。宣告とは死刑宣告のこと。 毎日毎日死を覚悟しながら生きている確定囚と拘置所医官の物語。拘置所の生活を通して、死刑囚の感じていることや若い医官の考えを、また手記や書簡など様々な形で、死とは、狂気とは、逆に正気とは、そして生とは、が語られる。まことに重たい作品。精神の拠り所とは何かを考えさせられる。 作品の書かれた1979年頃の刑務所は、最近問題になっている拘置所や刑務所内での人権問題ほどひどくは無さそうだが。 |
02.08.21 | ハンニバル戦記 ローマ人の物語Ⅱ (新潮文庫) (歴史232) ★★★★★ | 塩野七生 | ポエニ戦役、なんと大きな戦争だったことだろう。そしてローマの地中海制覇までを詳述。 たった5行の歴史の教科書がなんと無味乾燥なことか。そして軍事力とはいつの時代もなんと切り札となることか。 途中で言及のあるように、戦争の後の「勝者/敗者」の区別が、いつの頃からか「正義/不正義」の区別の差に変わったと。今日まで残る大きな問題であろう。 |
02.06.22 | 聖の青春 (講談社文庫) (芸術796) ★★★★★ | 大崎善生 | 棋士村山聖、29年の生涯に感動した。 結果がすべての勝負の世界に病身で敢然と立ち向かった村山の執念。そしてその生き方、考え方の純真さや朴訥さ。なんと感動を呼ぶ人生なんだろう。もう少し時間が許されれば名人まで登り詰めたかもしれない。そして名人になった瞬間にすべてが崩壊したかも。 |
02.01.05 | 沈まぬ太陽 (御巣鷹山篇) (会長室篇上・下) (新潮文庫) (文学913) ★★★★★ | 山崎豊子 | 羽田発伊丹行、満員の日航ジャンボ機JL123便が御巣鷹山に墜落して520名の犠牲者を出したのは大学に入ってすぐの夏(1985年8月12日)だった。(その後、縁起の悪い123便は無くなった。) その時はまだ飛行機に乗ったこともなく、遠い世界の出来事のように思っていたが、その後いったい何度乗ったことか。万一のことが起きれば助からないのだが、遠いところに早く着きたい、ということでは飛行機の威力は絶対だ。 大学3回生の時に友人と中国に行った時、片道48時間の船を往復利用したが、同室になったご年配の方が、「船の旅なんて就職したら出来ませんよ」としみじみ言われたことを思い出す。 昨今の航空運賃の割引合戦は嬉しいのやら、恐ろしいのやら。 それにしても何とも言えない所で小説は終わる。希望の芽もあるし、暗黒の闇もまた厳然と存在したまま。 |
01.12.26 | 死生観を問いなおす (ちくま新書317) (哲学114) ★★★★★ | 広井良典 | 「時間」や「永遠」を巡り、宇宙論から宗教まで縦横無尽の思索の旅。 広大な海を眺めながらゆったり読みたかった。。。通勤電車の中ではなくて。 |
01.06.03 | ディープ・エコロジー (昭和堂) (技術519) ★★★★★ | アラン・ドレングソン 井上有一 共編 | 副題として「生き方から考える環境の思想」とある。 コメントは「Green!な生活へ」の こちら へ。 |
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