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「やはり広い」北海道2004年夏(1)



話は1年前にさかのぼる。昨年夏に梅雨が明けたばかりの夏の
風景を撮りに長崎行きを予定していたが、いつまでたっても梅雨は
明けず、朝の羽田空港出発ロビーでの行き先の長崎の天候は
雨マーク。仕方なくあきらめていたが、ロビーにあるテレビから
中継の場面をやっていた。「北海道はさわやかに晴れています。
そして、ここ富良野のラベンダーは今日が見ごろです!!」実は
長崎行きを計画したおりに北海道のラベンダーも候補にあがって
いたのだった。「ガーン・・・」 このときすでに今回の旅は決定し
ていたといえる。そして1年後のこのときがやってきた。7月号の
時刻表を買いに行ったら表紙はまさに今回撮りたいと思っている
そのままの風景。お膳立てはすべてととのった。
羽田発6:40の便。車で、予約しておいた空港近くの駐車場へ向
かう。ANAの便だったが、AIR DO との共同運航便ということで、
AIR DO の767−300が使われていた。機は定刻少し遅れて
離陸。今回は遅れてきた乗客がいた様子。朝早い便のためか空
席も目立つ。機は順調に飛行を続け遅れを取り戻し、定刻8:15
に着陸。荷物を受け取りいつも通りのレンタカーの手続き。
走行メーターは1600キロという新車状態。北海道の場合、かなり
走るので、まだ1人か2人しか使っていない車だろう。途中コンビニ
に立ち寄り車のバックドアをあけようとしたとき、「4WD」の文字が
目に入る。「これ4駆なのかぁ」。なんかかなり得した気分。以前、
冬に4WD車を借りた際、一日1500円ほど追加料金を払った記憶
がある。「でもまあ雪道じゃないからあまり関係ないけど」とこのとき
は思っていた。


さて、当初の予定ではまずは本命の富良野、ファーム富田へ向かう
はずだったが、予報では天候は曇りで一時雨というあいにくのもの
だったため、急遽変更。まだほとんどできていない道東自動車道に
て夕張手前の滝ノ下信号場を目指す。追分インターで降り、道道、
国道をしばらく走り、地図に従いわき道へ入る。踏切を渡り、砂利道
を進めばポイントだが、砂利道の先がどうなっているかわからない
ので、熊よけの鈴を2つ付け、まずは徒歩でポイントへ向かう。
数百メートル歩いてポイントへ到着。車を置くスペースとターンする
スペースを確認後、列車が通るまでまだ時間があるので、また車
まで引き返す。あたりに当然人はおらず、風で木々の葉や熊笹が
すれる音以外は熊よけの2つの鈴だけが響き渡る。何本かの列車
を撮影した後、天候に左右されない、「国鉄士幌線」の廃線跡歩き
をと考え国道を通るが、時折表示される帯広までの距離を見るたび
迷いが生じる。士幌線の中での絶対にはずせないと考えていたの
が、旧線の「タウシュベツ橋梁」。すでに廃止になった士幌線だが、
今は糠平湖に水没している旧線と湖の対岸を走っていた新線が
ある。タウシュベツ橋梁は水位の低い時期には全貌を見せる。もは
や遺跡に近い橋。しかし、そこまでの距離を考えるといくら飛ばして
も日のあるうちに行くのは困難か。

狩勝峠へ向かう道と帯広へ向かう短絡ルートの分岐点に近いコン
ビニに立ち寄り、昼食を購入するとしばらく考えた。そして、ロケハン
を兼ねて狩勝峠方面へ向かうことにした。といっても狩勝峠までも
かなりの距離がある。思えば、高校生の頃、初めて列車で北海道
にやってきたときからその広さに予定を狂わされていた。その後も
何回も来てわかってはいるが毎度同じミスを繰り返す。狩勝峠付近
の占冠〜トマム〜新得にはよい撮影ポイントが多く存在するが、
先を急ぐあまり見逃した。メインは峠の向こうの新得においていたの
で戻ることはしなかった。早くしないと夕方になってしまう。スキー
リゾートで有名なトマム駅を通過しようとしたときホームで人が数人
待っているのが見えた。「列車が来る」 そう思い駅に車をとめしば
らく待機。予想通り特急「スーパーおおぞら」がやってきた。貨物
列車も交換のために停車していた。
トマムを出るといよいよ狩勝峠の道にかかる。峠頂上に到着すると
「ちょっと風景の写真でも」と思い車外に出る。風が強い。帽子を飛
ばされないようにつばを後ろ向きにしてカメラを構える。と次の瞬間
無情にも後ろからの風は帽子をさらい、山の中へと飛ばしていった。
「!」 数メートル下の熊笹が生い茂る斜面に帽子は消えていった。
気に入っていたものだけにかなりショックだった。しかし、もうどうする
こともできない。とりあえず、写真を撮り気落ちしたまま峠を下る。


新得市街まで来ると気をとりなおし、地図に従いポイントを探す。地
図ではすぐ近くに思えるのだが、実際に走ってみるとそれぞれのポ
イントがかなり離れている。線路も大きなS字を描くように地図には
出ていて納得はできるのだが、実際の場面を見ると、目の前にある
線路のどちらがトマム側なのか、新得側なのか、混乱した。おまけに
道は途中から未舗装となり舗装路のように速く走ることはできない。
こんな時4WD車だったことが多少は幸いしたかなと思う。アクセルを
多少強く踏み込んでも車輪が空転することはない。いくつかのポイン
トに到着するが、写真で見るほどの感激がない。さらに奥に歩いて
向かおうとするが、何しろこのあたりは熊が出没する地域としても
有名なところ。いくら鈴を付けているからといってもやはり怖い。この
ポイントではあきらめ、一番熊が出そうな山の上の俯瞰ポイントへ
向かう。増田山である。俯瞰撮影が好きな私にはここはあきらめる
ことができない気持ちだった。未舗装の道を進み左折すると道はま
すます細くなり勾配もきつくなる。この時には4WDのありがたさを
実感した。車が通れる広さは保ってくれよ!祈るような気持ちで運転
する。やがて広場に出た。ここが頂上だ。どうにかたどり着くことがで
きた。近くに車があるといっても鈴は欠かせない。頂上から見るとそ
こには絶景が広がっていた。雄大な峠をさっそうと走る列車を撮影し
山を下りる。

先ほどとは違った道を下りて行くと山の頂上から見えた信号場に行き
着く。地図で確認すると「西新得信号場」とある。ちらっと見ると撮影
できそうな場所だったが、夕方まで列車はない。さらに他のポイントも
ロケハンすると国道沿いにSLが静態保存されていた。「なんでこんな
ところに?」と思ったがポイント確認の帰り道。それが根室本線の狩
勝峠への旧線跡であることに気づく。自転車・歩行者専用道路となっ
ているがかなり先まで通じていそうだ。歩こうかとも思ったが、さすが
に早起きとロングドライブの疲れも重なり、さらに宿泊地帯広まで、ど
れぐらい時間がかかるかもわからず今日の予定を切り上げ、帯広へ
向かう。帯広までは快適に走ることができ、予定よりも早く着くことが
できた。

部屋に荷物を置くと帯広の街へ帽子を買いに出かける。昼間炎天下
にいなければならない写真撮影にとってある種必需品だ。それを早々
となくしてしまったのが悲しい。若者向けの洋服を扱うその店のご主人
としばし話をする。「今日は暑かったですね。夕方になりだいぶ涼しく
なりました。」 すでに私は寒いと感じていたのだが。東京から来たこと
を話すと39度の最高気温を記録したことに同情された。そして、興味
津々聞いてくるのだった。「どんな感じなんですか?」 確かにあの日は
暑かったが、35度を越えてしまえば大した差はないのかもしれない。
私が普段仕事をしている部屋に気温計があるが、7月中はだいたい、
37度を指していたから。ホテルは駅の目の前にあり、夜の乗り鉄にでも
出かけようかとも思ったが、レストランで夕食を食べたら疲れが一気に
襲ってきてしまいあきらめた。明日の予定を立てようと地図を見ていたら
いつのまにか眠っていた。

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