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「やはり広い」北海道2004年夏(2)
セットしたアラームが6時に鳴る。まずは士幌線の廃線跡歩きから今日は 始まる。7時30分には出発する。ナビに従い国道をひた走る。今回は士幌 線が現役だったころの地形図も入手し、完璧に準備をしのぞむ。国道から 近いところは何箇所か車をとめ探したが、すでに跡形もない状態だった。 地形図には確かにここに鉄道があったことが記されているのだが。あき らめてタウシュベツ橋梁へ急ぐ。糠平湖を過ぎてからの新線ははっきりと 廃線跡が残っていた。特に湖のほとりに続くコンクリートのアーチ橋は保存 されているようだ。国道からも並行するところは見ることができる。写真に おさめるとタウシュベツ橋梁へ向かう。地図によると新線とは湖の反対側 にあるようだ。したがって、ここへ行くためには大きく迂回しなければならず その道を探した。糠平湖を過ぎしばらく行くと「タウシュベツ橋梁4km」の小 さな看板を発見。すぐさま砂利道を入るが、すぐに車が一台止まっていて、 その人が話しかけてきた。やはり一人旅の方のようで車は「多摩ナンバー」 東京の人だ。「タウシュベツ橋梁への道は今日だけ工事で通行止めです よ。」「・・・」 「僕も行こうかと思ったんですが、さっき工事の車が入って行き ました。」 そちらを見るとゲートが無情にも閉まっている。 「今日だけ、ですか・・・?」 「そのようです。」ここを見るためにわざわざ車 を飛ばして来たのに何ということだ・・・。言葉もなく立ちすくんでいると、 「夕方には終わるって言っていましたけど、夕方というのが4時なのか、5時 なのか・・・。」 | |
時間は9時。今日の予定はこのタウシュベツ橋梁を見たあと、せっかく天気も よいので、根室本線、音別方面へ海と列車というテーマで行き、さらに夕方、 昨日ロケハンをした新得へ向かうことにしていた。新得まではどれぐらいかか るかわかっていたので可能なはずだった。しかし、このタウシュベツ橋梁は どうしてもはずしたくない。すでに老朽化が進んでおり、いつ崩れてもおかしく ない状況らしい。「いつか」では遅いかもしれないのだ。ナビで「音別」を設定。 予想通りかなりの時間がかかる。そうなるともう夕方ここへは戻って来れない。 かと言って明日は今回のメインである富良野へ早朝向かわなければならない。 つまり、タウシュベツ橋梁は何が何でも今日見なくてはならないのだ。たとえ、 だめであっても努力だけはしたい、そう思い、音別はあきらめ、ここから音別 よりははるかに近い新得へ向かう。その前にせっかくここまで来たのだから、 かつての士幌線の終点、十勝三叉までは行ってみる。そして国道から道道を 通り、然別湖を通るコースにて新得へ。然別湖は自然に囲まれた静かな湖だ。 湖周囲の道路は狭く曲がりくねっており、ここを抜けるのにかなりの時間を要 する。 | |
然別湖を抜けると扇が原展望台というところがあり、ここもちょっとした峠になっ いる。下は自衛隊の演習場のようで、ときおり爆薬が爆発したと見られる黒い 煙とそれよりもだいぶ遅れて爆音がしていた。何人かとライダーと家族連れが 休憩している。自分もそんな風景を眺めているとその家族連れの子どもが 「あ!!キタキツネ!!」 「ん??」と思い後ろを振り返ると一匹のキタキツネ がまるで犬のように歩いているではないか。以前家族で来たおりに「キタキツネ 牧場」なるところで見たことはあるが、野生のものを見るのは初めてだった。こ のキタキツネは適度な距離をおいて逃げようとしない。どうやら食べものを求め ているようだ。家族連れが「ゴマせんべい」をあげると手から食べていた。ゴマ せんべいが全部無くなってしまうと今度は私の車に近づいてきた。といっても キツネが食べるものは何ももっていない。ゴマせんべいを食べるだけでも驚き だが、食べるはずないよな、と思いつつもm&mのピーナッツ入りチョコを2つ 転がすと、なんと食べた。それも「カリカリ」といかにもおいしそうに。野生のキ ツネも雑食の時代か。あまりおいしそうに食べるのでもう2つあげた。 峠をおり、途中コンビニで昼食となるおにぎりを購入し、2時間ほどで新得に 到着。まずは西新得信号場へ向かう。信号場周辺は農作業をする人もあり、 まず熊が出る心配はないだろう。ゆっくりと撮影し、おにぎりを食べ、昨日ロケ ハンしたポイントでも1本ずつ列車を撮影し、新得での撮影は終了。来た道を 引き返し再びタウシュベツへ向かう。 | |
「夕方」が何時なのかわからないので、途中士幌線の廃線跡を歩いてみる。 糠平湖の脇のパーキングスペースに立ち寄ったところ「国鉄士幌線散策路」 というのがあるのを見つけたのだ。全行程4kmほどあるようだったが、その うちの1kmほどを歩いてみた。国道に沿っているとはいってももはや半分 自然にかえっているようなものなので、鈴は欠かせない。さあ、そろそろ行 ってみるか。廃線跡を元来た方向に歩いて戻るとタウシュベツ橋梁へ向かった。 朝来た看板を右折し、砂利道を進む。「開いてる!!」 ゲートは開いており、 そのまま通過。バイクで走ったらとても気持ちの良さそうな林道だ。15分ほど 走ると道は2つに分かれる。そこが広くなっていて車を置くスペースになって いる。「ここより先は車で乗り入れないでください。」という看板と、最近ヒグマ が出没したことが書いてある看板が2枚あった。「ここに違いない。」 しっかりと鈴を付け、またホイッスルもぶら下げて湖の方へ歩きだす。 100m弱で見えてきた、真正面にある水没し、一部が見えているタウシュベツ 橋梁。正面にあるということは、今歩いてきたここは廃線跡ということになる。 興味の無い人が見たらただの崩れかけた橋なのだろうが、「遺跡」というもの は大体そうなのだろう。古代ローマの遺跡だって興味の無い人が見たら、 やはりただの崩れかけている建物ということになってしまうわけだから。 これはもはや廃線跡というよりは「遺跡」なのだ。あたりにはだれもいない。 午後の少し傾きかけた陽射しが橋を照らす。今、聞こえるのは打ち寄せる波 の音だけ。しかし、大昔のことだが、ここにはSLの走る音がかつてはしていた わけだ。そんなことを石に座りながらしばらく考えていた。1時間ほどボーと していただろうか。家族連れとライダーが2人やってきた。その人たちと交代 でタウシュベツ橋梁を後にする。「見ることができてよかった。」再挑戦だけに 妙な満足感があった。 時間はもう夕方。途中士幌線の廃線跡に注意しながら帯広へともどるが、 やはり私が立ち寄った部分では跡形もなかった。さすがの強行スケジュール に夜はやはり列車に乗りに行くことができず、部屋でテレビを見る。天気予報 では明日は少し暑くなるという。天気は良さそうだ。 |
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