鼻歌を唄いながらキャラバンパークへと帰って来ると、 新しくキャラバンパークに来た日本人青年を囲んで、みんなが芝生に座っていた。 それはゴールドコーストから一人で車で来たという、コウイチという人だった。 私は、挨拶代わりに、「ここで貧乏の底から這い上がって、今じゃ残高3000ドル!」 と、お決まりの自慢話をした。 コウイチは、オーストラリアへは大学を休学して、5月に来たばかりなので、私たちの知らない 日本の情報を知っていた。「日本語の歌詞も入っているのに、全部英語に聞こえる ラブサイケデリコ」というグループの曲が流行っているという噂を聞いてはいたが、 実際に聴いた事がなかった。コウイチが「ラブサイケデリコ」の 曲の入ったMDを持っていると言うので、みんなでMDプレーヤーを取り合いながら聴いて、 「おぉぉぉー!!これが、ラブサイケデリコかー!!」と、必要以上に感動した。 他に、今流行っているという「三木道山」の曲も聴いた。 |
キャラバンパークのテーブルに座って。チズと私。(逆光) |
夜になり、チズと一緒にモニカのキャビンへ行った。チズとモニカと3人で写真を撮ったり、 少し話をしたりして、チズはモニカと別れを惜しみながらキャビンを去った。 明日、チズはチルダーズを去るのだ。そして、その2日後、モニカもチルダーズを去る。
キャビンから帰る途中、チズに「私はEnglish peopleが嫌いだ。でも他の国の人と 話をするのは楽しい。あなたもtryしろ!!」と言われ、ひどく納得した。 この所、日本人の仲間たちが居るので、益々外人と話していない。というか、居なくても話してなかったけど。
チズとは、同じ日にここへ来て、同じファームで7週間働いた。
日本に居る、ある友達に似た感じの、ふてぶてしさが好きだった。
怒らせる事を冗談で言うと、「Give me 5dollers!!」と、よく言う。
私がタバコを吸うと、「ゴホゴホ」と咳をする真似をする。
チズのおかげで、楽しい時間を過ごせた。
特に、日本人が他に誰もいない時は、チズの存在が心強かった。
英語が上手く、恐れずに誰とでも話をする姿を、いつも尊敬していた。
チズは明日の朝5時のバスでチルダーズを去る。出会い帳を書いてもらい、 サヨナラを言った。寂しさが募った。 外人を恐れず、英語を恐れず、アジア人として誇りを持って、チズを見習って旅をしていこう。 シドニーに居るときにも韓国人の友達は居たけど、これだけ色々しゃべれる友達ができたのは 初めてだ。サヨナラだ、チズ。また会おう。(そして、チルダーズを去ったチズから メールが来たが、英語の文章を考えるのが面倒くさくて、返信をしなかった。 1年後、ソウルに旅行へ行く直前に、「チズはソウル在住のはずや、メールしてみよう」と送信してみたら、 既にそのアドレスは使われておらず、音信不通となってしまった・・・。ガーン!)
チズは、マリアンに手紙を渡していた。マリアンは、それを険しい顔をして部屋のベットで読んでいた。 「あなたはアジア人の悪口ばかり言っていて、失望した」とでも書いてあるのだろうか?と私は妄想した。 チズは、マリアンの事を嫌な奴だと言い続けていたので、私は疑いの目で見ることをやめる事はできなかった。 しかし、数日後の朝、今日もいつものように仕事があり、バスは6時45分に出発するというのに、 起きたら6時半・・・。マリアンと私は、しばし顔を見合わせ、「えぇぇー!!」「Oh!No!」と飛び起き、 急いで身支度を整える。マリアンが私の分まで朝食のサンドイッチを作ってくれて、 サンドイッチ片手にバスへと走り、間に合って、一安心。 という出来事があり、疑いの目で見るのは間違いだと思った。マリアン、いい人や。
モニカがチルダーズを去った日 、いつものように仕事をしていると雲行きが怪しくなり、 雨が降りだした。風も吹き荒れ、大雨だ。「やったー。今日は仕事これで終わりやな」とニヤけた私であったが、 農業を舐めたらいかんぜよ。Lynさんの手から黄色のレインコートが労働者たちに手渡され、 雨風の中、寒さに震えながらスノーピーズをとり続けた。いつもより、45分だけ早くは 終わったけど・・・。