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1. 事件です
Childers AUGUST

8月になった。

イギリス娘、ジェニファーの後釜として私達の部屋に入って来たのは、カナダ人男性ブラッド。 今までは、基本的に男女別に部屋が別れていたが、「この所、人々の出入りが激しく、 男女混合の部屋になってしまうのは仕方ないのよー。」と、キャラバンパークのキッチン清掃係りの 通称ビックスーは言う。

コウイチの部屋には、コウイチの他に、ズッキーニ畑でずっと前から働いている、きっと若いんだろうけど おっさんにも見えるような、ちょっと所ではない怪しさを醸し出しているイギリス人長髪男性と、 最近そのイギリス人長髪男性にやっとできたらしい、レゲエをやってる人みたいな編み込みの髪型の彼女、という強烈な2人のメンバーがいる。

怪しい長髪イギリス人男性は、彼女の影響を受けたのか、しばらくするとレゲエをやってる人みたいな編み込みの 髪型になっていた。そして、そのうちコウイチも編み込みに・・・なっていません。そのカップルは、2段ベットの下と、シングルベットを 使っているが、シングルベットを移動させて、2段ベットに寄りそわせているようだ。 そして、夜になると部屋の電気を消し、ローソクを灯しているらしい・・・。完全に2人の世界。 2段ベットの上を使っているコウイチの居場所はない。毎日仕事で疲れているのに、そんな部屋では 落ちついて寝る事もできないと嘆くコウイチ。しばらくして、キャラバンパークのレセプションにいる スモールスーに事情を説明して、部屋を変えてもらったようだ。 今は声の高いブラジル人と同じ部屋になり、友情を育んでいるようだ。

そして、私とマリアンの平和な部屋に入ってきた、カナディアンガイのブラッドであるが、 部屋をシェアして使う私達の間で、暗黙の了解でできた「毎朝早くから仕事があるため、夜9時頃にはテレビを消し、消灯。」というルールをぶち壊してくれる 人物であった。 回りの事を考えずに、ブラッドは、夜遅くまでテレビを見て笑い、電気もつけっぱなし。 「おい!坊主!秩序を乱してたら、いてまうぞ!」などと言えるはずもない私とマリアンは、顔を見合わせて、「困ったわね」という表情をするばかりであった。

いつものように、ブラッドが光々と電気をつけ、テレビを見ている中、私は仕事の疲れから心地良い眠りに着いた。 悪い夢を見ているのか、何やらお尻を叩かれているような感触がした。ん?夢ではないようだ。痛いではないか! 目を開けると、暗闇の中、何かホウキのようなものが宙を浮いているのが見える。空飛ぶホウキ?お化け!?!?!ぎゃー!! と、慌てふためく心を沈め、よく目を凝らして見ると、ブラッドが2段ベットの上から、シングルベットで寝る私のお尻を ホウキで叩いているではないか!!しかも掃く方で!!汚い方で!!!

そして、何やら言っているではないか!!「’&%;=”!!」と。ただでさえ英語は理解できないが、こんな真夜中にホウキの汚い方で お尻を叩かれて、叩き起こされた状態で理解できるはずもなく、「え???」と素で日本語で返すと、「&$%”=・・teeth!!STOP!」 と言うではないか!「teeth?ああ、歯?STOP?止めろ?ああ、歯ぎしりヤメロ!ってことか」と、瞬時に判断し、「ソーリー!」 と言うと、むかつくカナダ人ブラッドは、ホウキを元の場所に戻し、眠りに入ったようだ。

私の歯ぎしりのひどさは、あらゆる方面からの指摘を受け、自覚してはいたものの、まさかこのような形で指摘されるとは思いもよらず、 「ソーリー」とは言ったものの、歯ぎしりを止める方法も無く、傷つきやすく、崩れやすい、繊細な、プレパラートぐらい壊れやすいハートの持ち主である 私は、ひどく傷つき、悔しくて、タオルを噛みながら涙を流した。

次の日にも、もちろん傷は癒えることなく、仕事中もそればかり考えていた。「奴は意識的に、夜遅くまでテレビをつけて笑ったりして 私達に迷惑をかけている。私の歯ぎしりは無意識的なもので、仕方ないではないか!!」と思い、絶対むかつく!絶対文句言ってやる! と思っていたのに、結局、仕事を終えて部屋で堂々とテレビを見るブラッドに私が言った言葉は「Last night,Sorry」だけである。文句言ってないし・・・。 謝ってるし・・・。そして、むかつくカナダ人ブラッドに「No Problem」と面倒くさそうに流され、よけい情けない思いをするのであった。

同じ部屋のマリアンにも「聞いてよー!」とチクったら、「まあ、ひどい!」と言って、ブラッドのベット側に置いてあった ホウキを私のベット側に移動させ、「奴の寝言はいつもうるさい!奴が寝言を言ったら、あなたが突つきなさい!」と言ってくれて、笑った。 そして、長い間私の歯ぎしりに耐えてきたであろうマリアンに、「うるさくて、ソーリー」と謝ると、「たまに、あなたも寝言を言っているけど、 多分日本語だから理解できないし、そんなに気にならないから大丈夫よ。」と笑って言ってくれた。 むかつくカナダ人ブラッドは、今度の日曜日にここを出ていくらしく、「ケーキでお祝いや!」とマリアンは言った。(しかし、その後ブラッドはパブで飲んでいる時に 腕を怪我したらしく、私がチルダーズを去る日まで奴とは同じ部屋であった・・・)

マリアンは、チズが色々言ってたけど、私にとっては凄くいい人だ。噂より、自分が接してどう思うかを大切にしようと実感した。

しばらくモヤモヤした気持ちは取れず、シドニーにいた頃の友達に電話をして話したら、 「前は、雨で濡れた服を部屋に乾してたら「臭いから外に出せ」と言われ、今回はホウキで突かれて、 カナブン(オナラの匂いを出す臭い虫)扱いやなー!」と笑って言われ、笑って傷も少し癒えるのであった。

しかし、それ以降、私のカナダ人嫌いに拍車が掛かり、バックパックにカナダ国旗を縫い付けるカナダ人を見るたびに 悪態をつくのであった。(最低である)

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その後も、歯ぎしりに悩まされ、回りに迷惑をかけまくりながら旅は続くのであるが、 同じ部屋になって歯ぎしりの被害に合うであろう人達に、この話を憎しみと悔しさを滲ませながら話していたが、いつしかネタとなり、笑いが取れるごとに、心の深い傷も癒えていくのであった。

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