みんなでコソコソと、誕生日カードを書き、何が必要かを相談し、ＶＢや２ドルチーズケーキを買いに行き、 ３日の夜に向けてささやかな準備をした。

そして当日、仕事が終わり、みんながキッチンに集まり、各々がタカシに「おめでとう！」と言う中、お好み焼きを作り始める。 関西人である私とアヤカちゃんは、お好み焼きの作り方にうるさいと思われがちであるが 、本当に関西人なのかという疑いが生まれるほどに、特にこだわりも無く、普通にお好み焼きを作るのを見守り、 「お好み焼きは、オカズやねん！白いご飯と一緒に食べるのは常識！」などという、関西人に有りがちな常識も私達には無く、普通にお好み焼きだけを食べた。 そのようにして、キッチンで作りつつ、食べつつ、さも「お好み焼きだけで誕生日を祝う」ように見せかけた誕生日会は始まった。

おいしいお好み焼きに舌鼓を打っていると、「これでビールがあったら最高じゃー！」とタカシが 言った。一同、ハッ！と顔を合わせ、慌てて用意してあったＶＢを取り出し、プレゼントすると、タカシはいきなりのプレゼントに 驚きつつも、嬉しそうにＶＢを飲んだ。 少し、出すタイミングが遅れたようであったが、サプライズ第１弾成功である。

お好み焼きも食べ終わり、外のテーブルでコーヒータイムだ。ここで、サプライズ第２弾。タカシにばれないように、２ドルチーズケーキを 部屋の冷蔵庫から取り出し、アキが持っていたロウソクをケーキに立て、火をつけて 「Happy Birthday to you 〜♪」と歌いながらテーブルへと運び、「吹き消す前に、一枚！」と、一同カメラを構える。

フラッシュを浴びる主役

一同の構えたカメラから、パシャパシャパシャ！と、フラッシュが一斉に光り、 今日の主役であるタカシを照らし出す。タカシは、「芸能人の記者会見みたいじゃー！」と驚きながらも上機嫌の様子。

そんな中、みんなで書いた誕生日カードを渡す。タカシは、「いつの間に！？みんなで書いてくれたの！？」と瞳を潤ませ、少女のように涙したため、誕生日カードの文字が涙に滲むほどであった。というのは嘘であるが、 嬉しそうにカードを読んだ。

そして、私たちも予期しなかった、サプライズ第３弾。 コウイチが、部屋から大きな袋を持って走って来た。その中には、トマト工場で働くコウイチが仕入れて来た トマトとマンダリンが袋一杯に入っていて、誕生日のタカシのみならず、私たちにも分け与えてもらった。

タカシを取り囲む、一同

こうして、タカシの２４歳の誕生日会は無事成功した。チルダーズという田舎町で働く中、みんなで祝った誕生日は、 豪華な要素は一つもないが、チルダーズらしさ溢れる楽しさであった。