振り返る間もないぐらいに、スノーピーズを取り続け、みんなで語り、笑った、チルダーズでの生活も、もう終わる。汚い服、日に焼けた顔、赤土色に汚れた手足、流行さえ分からず、着飾るという事からは、かけ離れた場所で、 ただ生きるためだけに働き、寝起き、食事をする。 情報溢れる都会や日本では、味わえない日々。 情報や流行に振り回され、踊らされているかのような、都会には無い空気。
完全に意味を解する事のできるテレビも、時間を潰せる店も、 雑誌も、CDも、映画も、漫画も、何もない、このチルダーズで、 日本語でしゃべる事が唯一の娯楽であろう事や、辛い農作業の苦しみを分かち合う事で深まった、仲間との繋がり。 仕事が辛いにも関わらず、”今”という時が、こんなに楽しいと思えた事は、今までになかった。お酒がなくても、楽しかった。 それは、果てなく続く”今”ではなく、皆それぞれが、 いつかは離れて歩いていく事が分かっていたからなのかもしれない。 同じ目的で、同じ場所へ、同じ時に、ここに集った6人。 他の誰でもない、みんなとここで出会い、同じ時間を共に過ごせた、偶然。
シドニーでの日常生活より外人と出会う機会が多い旅の中で、 「日本人だけで集まるのは嫌や!旅をするからには外人と、たくさん関わるようにしよう。」と意気込んで旅をはじめ、 日本人軍団を見るだけで、「うわ、嫌な感じ」と反射的に思ってしまうようになっていたが、 日本人との出会いも大切にしていこうと思えるようになったのは、みんなと出会えたからだ。 私の無いに等しい英語力では、言葉の面で、外人とは深く関われないけど、 同じようにワーホリで来ている日本人とは色々話せる。 「ワーホリ」とひとくくりにまとめてみても、色々な人がいて、 色々な考えがあって、色々な人と関わり、知り合い、笑い、考える時間は、楽しい。 そういう当たり前の、忘れかけていた事に気付かされた。 肩ひじ張らず、これから始まるラウンドで、色々な人との出会いを自分から遠ざけないように、大切にしていこうと思うようになった。 チルダーズでの様々な出来事により、外人嫌いが益々激しくなり、「カナダ人嫌い!イギリス人嫌い!」と偏見的発言を吐くように なってしまった私であるが、 「外人こわい」という未だに持っていた恐怖心は、なくなった。向こうからすれば、 私も外人だ。
「てりやきバーガーが食べたい」「牛丼が食べたい」「マイセン吸いたい」 「コンビニで買い物する時に”サンキュー”と自然に言ってしまいそう」 「空港に降り立ったら、一番に日本のタバコと缶コーヒーを買いたい」 「日本のおいしいケーキが食べたい」「お風呂に浸かりたい」「居酒屋へ行って”とりあえず生”と言いたい」
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Childers会 |
オーストラリアの片田舎で、故郷日本を恋しく、懐かしく思い、くだらないようで、 私たちにとっては大きな憧れである願望を語り合った日々の中で、こんな話が持ち上がった。 「今は、こんな汚い格好だけど、綺麗な格好をして、大阪の心斎橋(ひっかけ橋) で、みんなで会おう。みんなで引っ掛け合おう。」と。「Childers会という名にしよう」 と。北から、茨城、愛知、滋賀、兵庫、広島、宮崎県という離れた場所に住む面々。 なぜ、大阪なのか?という疑問を残しつつも、 冗談半分で出たような、この話が実現すれば、素晴らしい。その頃には、私の髪も伸びているだろう。