まだ熱も下らず、しんどいため今日出発するのは無理だ、と諦め、「stay！」と言ってマリアに １０ドルを渡した。そして今日から行くと電話していた、チルダーズに再び電話をし、到着を延期する事を 伝えた。果たして仕事はあるのだろうか・・・。

ブリスベンにも日本語医療センターがある事をバッパーに泊まっている人に教えてもらい、 死にそうになりながら、フラフラと歩いて行くことにした。街の中心地まで、結構歩かねば ならないのが１０ドルバッパーの欠点だ。しかもこっちは熱があって、もうフラフラやのに どういう事やねん、と憤慨である。

やっと辿りついた病院の窓口で、「日本語通訳の人はいますか？風邪引いてるんで見てもらいたいん ですけど」とお姉さんに聞くと、何やらペラペラとしゃべり出した。何回か聞き直しながら 解釈したところ、「予約はしてないの？今日はドクターはビジーなのよ！だから今日の診察は 無理だわ！明日になるわ。それに日本語通訳は、ホリデーでいないのよ。」というわけである。

しんどいのに歩いてきたのに！！
通訳だけを頼りにしてきたのに！！
今日診察してもらえへんなんて、もう死ぬー！しんどいよー！
うおー！
というわけで、私はその場で泣いてしまった。
美しい涙が頬をつたったのである。病気になると人間は弱くなるものだ。

小さい頃は、お兄ちゃんが母に怒られるように大袈裟に嘘泣きをする事が得意であったが 、大きくなってから、ましてやもういい大人になった今では人前で泣く事なんて、 飲んで飲んで騒いで２次会に行って日本酒を飲む頃に泣き上戸になるぐらいで、 シラフの時に人前で泣くなんて事はあり得ない事であった。

すると、うろたえたお姉さんは、「それじゃあ、今日の夕方４時半に診察の予約を入れるようにするから。」 と言った。
女の涙は武器になり得るようであった。涙の力はすごい。というか、それなら始めから努力して診察時間空けてくれよ！と思いながらも 「オッケー」と言って私は病院を後にした。泣いた自分がアホらしく、しんどさも忘れ、スーパーで果物を買ってバッパーへ帰った。

そして、なんで通訳ホリデー取ってんねん！ドクター忙しいってほんまかよ！ しんどいねん！！と怒り狂っているうちに、本当にしんどさも消え、むかつくし、泣いたのも恥ずかしいし、４時半の診察には 行かなかった。自分勝手。