マップツアーと言えば、オーストラリアに 来るための航空券を買ったのもマップツアーだった。あの頃「本当にオーストラリアに行くの？」と 思っていたのと同じように、今は「本当にシドニーを出るの？」と実感の無い私。それに反して、 周りの人達は「とうとう出発だねー」という雰囲気だ。

１６日、日本食レストランでのバイトの最終日。賄いは、クリームシチューを作ってもらって いつもの如く大盛りでお腹いっぱい。餃子も出してもらって、満腹。 最後なので好きなものをお持ち帰りさせてもらえると言うので、「中華丼」を注文すると大量に 作ってくれた。

「大盛り」「大量」というのが当たり前だった、私の賄い。私の食いっぷりに店長ともども 驚いており、すっかり大食いデブキャラが定着した私は、この週末にこの店で行われる 日本語情報紙が主催する「大食い大会」のメンバーにエントリーされている。 この大食い大会は、月１回、シドニーにある日本食レストランで開催されている。 大量の賄いを食べる私を見て、店長に「おまえ、大食い大会出るだろー？出るよな。」と 言われ、くそーなんやねん大食いで悪いかよーそんなに大食いでもないわ！くそー。と 思いながらも、「え、はい」と返事をしてしまい、本当に出場メンバーに加えられたのだった。

しかし、数日前から私は大きな問題を抱えていた。親知らずが生えてきて、異常に痛いのだ。 １月ぐらいから生えてきた親知らず。「なんか生えてきてる・・・。ついに親知らずが生えて きたのか私も大人やな」と思いながら暖かく見守っていた。 それが、こんな出発前になって親知らずが成長したのか、異常なぐらい痛み出した。親知らずが生えている方のほっぺたがふくれている気がする。 しかし、各方面から「両方生えてきてるの？両方ふくれてるよ！」と言う失礼極まり ない発言もたくさん見られた。

いろんな人から「親知らず」についての恐ろしい話を聞いていた。 歯は保険がきかない。「治療費が１０００ドルかかる」という話を聞いた。 「４本とも抜いて２０００ドルかかったよー」という話も聞いた。 貯金残高１０００ドルちょっとでシドニーを出発しようとしていた私。 治療費に１０００ドルもかかったら、シドニーを出発できない。 このまま痛い事を知らんふりしてシドニーを出発しようかとも思ったが、そんなことが 許されるほど痛みは軽いものではない。日本語通訳のスタッフなどいないオーストラリアの片田舎で 痛みが頂点に達したりした場合、どうしたらいいのか？そんな時に辞書片手に痛みの説明をできるほどの 余裕があるとは思えない。やはりシドニーで歯医者に行くしかない。 日本語の通訳のスタッフがいる歯医者へ。

もし１０００ドルぐらい治療費がかかったとしたら、またこの日本食レストランで 働き続けてお金を稼がなければいけない事になるので今日が最後という気がしなかった。 でも、やはり最後は最後であり、毎日のように歩いてきたバイトの帰り道、店からSt.Leonards駅までの道のりは少し 寂しい気がした。また、週末に大食い大会で来るのだけど。