このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

教科書の中の敵

  甘肅省の敦煌の近く、安西の町で昼食を食べようと思って、市場の中にある食堂に入った。入ってみたら未だ本格的な営業の前であるらしく、 小学生の女の子 が宿題をやっていた。どんな教科書なのかと見せてもらったら、教科書は国語用のもので、女の子は6年生とのことであった。子供の教科書であるから、書いてある内容は結構易しかった。その何番目かのお話の中に羊飼いの少年の話が載っていた。

  羊飼いの少年は何時ものとおり羊を連れて山の中に入って行った。しかしこのときは何故か道に迷ってしまった。帰り道を探して歩いているうちに、偶然にも眼の下の谷を通過して行く敵の部隊を発見したのである。それを見た少年は道を引返し、解放軍の陣地にそれを知らせた。知らせを受けた解放軍は直ちに出動して、敵の隙をついて敵を全滅をさせたのだった。

  解放軍ではなくて紅軍であったかもしれない。道に迷ったはずの少年が、どうして戻れたかなどもハッキリ覚えていない。そして敵とはどのような敵であるかは書いては無かった。しかし挿絵では明らかに日本軍の服装をした兵隊が逃げ惑っている絵であった。
このお話が、少年の勇気と機転を賞賛した内容であることは分かったが、やっぱり敵は日本軍なのかと思った。

  この挿絵で何を教えようとしているのだろう。歴史上の事実を教えようとしているのであろうか。確かに日本が中国を侵略したのは歴史上の事実であって、そんなに昔のことではない。
だから間違いはないのであるが、何故ここに出てくる敵は日本軍なのだろうかと考えてしまった。『日本に侵略された』ことを教えるにしても、『かっての日本は敵であった』ことを教えるにしても、何故、国語の教科書の中で婉曲に絵で示すのであろう? 事実は事実であるから教えておくのは当たり前としても、何故この場面で出てくるのかと不思議に思った。歴史を教えるならば、正面から歴史の話として教えるべきだと思うのだが。

  この絵によって『中国を共産党が敵から解放した』ことや、『人民解放軍が敵をやっつけたから建国出来た』ことなどを間接的に宣伝した絵なのであろうか。そうであれば日本軍をそのPR(教育とも言えるが)に使ったのかもしれない。

  上記のことは推測に過ぎないが、現在でも新聞テレビで、今の中国がこの様になったの、偉大な共産党、指導者、解放軍のお蔭であることを盛んに宣伝している。何故あれほど宣伝する必要があるのかと、不思議に思わないわけにはいかない位である。そんな訳で、単純に歴史を教えているとは思えないのである。

  かっての西部劇が盛んにインデアンをやっつけていたように、そんなに深い意味もなく、教科書の挿絵にしたものかとも考えた。いろいろと考えさせられる教科書であった。

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