このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

恋人とのデートに付合わされる

  タクシーをチャターして 麦積山 と言う、古代の仏像が穿たれている洞窟のある古跡に行くことにした。翌日になってタクシーに乗り込もうとしたら、運転手が言うには、貴方のことを手助けす女性を連れてきたと言うのである。
こんなことがあるのではないかと何か予感がしていた。以前にも同じ事があり、翌日のタクシーの予約をすると、その間に運転手はいろいろと考えるらしく、翌日になって同乗者が現れた事があった。前の場合も迷惑でもなかったので、まあいいかと思ってそのままでかけることにした。以前と同じく、同乗者が現れた理由の説明もなければ、迷惑をお掛けしますとかの断りもない。

  二人の様子から、奥さんか恋人かと思って聞いてみたら、予想通り許婚とのことであった。どうやら私の観光地へのドライブに同乗して、無料でデートするつもりらしいことが解ってきた。
女性に聞いてみると紡績工場に勤めていて、三交代制の職場で給料も安く、何故か休憩時間も無いと言っていた。労働条件も良いとは言えないような所らしい。そこで久しぶりの休日を楽しもうとことらしかった。織物の検査を担当していると言う、 素朴そうな女性 であった。

  途中で昼飯を買っていこうということになり、女性の案内で、屋台の店でトコロ天のような物を買い込んだ。きしめんより幅広の透明うどん状のものであるが、トコロ天のように半透明である。これをビニールの袋に入れてくれて、その上には真っ赤で辛そうな、油の多い調味料がかかっていた。私は果物を買い込んで出発した。トコロ天状の食べ物は、小麦粉から作ったものだとのことである。

  麦積山の観光の入場料も、成り行きから女性の分を私が持つことになってしまった。お客を案内する運転手やガイドは、入場料不要であるらしい。そこを見物して、昼食を食べようということになり、公園の芝生の上で、例のトコロ天状うどんの様な物を食べた。あまり辛くもなく思いのほか美味かった。この地方の主食だと言っていた。天気も良く、風も無くまさにピクニック日よりであった。この日の観光が、ピクニック風になるとは思いもよらなかった。

  次の観光地の池では、ボートを借りて三人で乗り、私がオールで漕いでやった。多くの中国人はオールでボートを漕ぐ事は、経験が無いので出来ないらしかった。
帰りには時間が余ったので、運転手は温泉に行こうと言い出した。中国には温泉があるのかと、その時は思ったが、少しは中国にも温泉があるのである。但し中国の温泉は少ないせいか、温泉で通じるのである。他の場所でも同じように温泉と言うだけの名前が付いていた。私の少ない経験では、日本の様に○○温泉と言う名前は無かった。

  この温泉の費用も私持ちかと思ったが、それより心配なのは、私の全財産のことであった。温泉の様子が全くわからず、私は全財産を体に身につけているので、それをはずして裸になる事が心配になったのである。そんな訳で行きたくは無かったのであるが、運転手は熱心に勧め、恋人との一日を有効に使う為にも、最後に温泉に行きたいらしかった。
温泉は私には珍しくもなかったが、運転手達には是非行ってみたい所であるらしかった。

  結局そこに行ったのであるが、土曜日であったので込んでいて入れなかった。そこのフロントのツンとした女性に、この日本のクレジットカードは使えるかと聞いたところ、『貴方の言っていることは解らないわ』と邪険に言われて、少し傷ついた。ここは殆ど外国人が来ないようなところなので、外国人がまさか地方の運転手と一緒にいるとは思わなかったのかもしれない。

  そんなこともあったが、その日はいろいろなことが体験できて、愉快な一日であった。

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