このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

両替屋

  日本円を中国の元に替えようと思って銀行に行くと、いつも丸顔の男が待ち構えていて、私と交換しないと話しかけてくる。勿論個人でのお金の交換は違法である。しかしその顔付きは丸顔であるせいか、普通の商人風で、悪そうには見えない。銀行員の女性とも顔なじみのようである。窓口の女性に、今日のレートは幾ら? と尋ねて、ほら!これくらい得だよと言って交換率の金額を提示する。金の交換も極めてスマートである。例えば3,570元の中国のお金に替えることが決まると、貯金通帳を取り出して、そこから必要な金額だけを引き出す。その金は私が受け取ることになる。だから、正確に3,570元があるかどうか数える必要もない。銀行の職員はそれを見ていても何とも言わない。

  もし他の場所で交換屋と交換しようとすると、10元札で3、000元も渡されるかもしれない。そうするとそれを数えるのも大変だし、金額が足らないかもしれない。貰っても多すぎて札入れに入らない。又ボロボロなお札を渡されるかもしれない。高額の紙幣となるとかえって安心出来きない点もある。偽札の可能性がある。中国には偽札がとても多いのである。その点、銀行の窓口を介しての交換は安心システムである。
それと銀行での交換と違って、端数が出ないのもいい。0.01元のおもちゃのようなお札や、コインを貰っても困るのである。これは殆ど使える所が無い。かと言って捨ててしまうのは抵抗がある。

  この交換屋が不法なのを知りつつも、銀行の職員とも仲良く共存しているのであるから、信用も出来るし、問題は無いだろうと思って利用した。次も利用してくれるように電話番号も教えてくれたりして顔なじみになった。人が良さそうな人物で、つい何か話し掛けてみくなる顔つきをしていが、さすがに違法商売人と親しくしてはいけないのかなと考えて、おまえには隙を見せないぞといった、威厳のある顔付きをして金を交換した。本当はこう言った人と親しくなれば、中国の庶民の話などが聞けて面白い体験が出来たかもしれない。

  中国のこの商売は同じ密売でも、日本の麻薬の密売人とは全く違うのである。もっと普通のビジネスと言った感じで商売をしていた。

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