陽朔に到着して宿の前でぶらぶらしていたら、小柄なおばさんが英語で話しかけてきた。この陽朔の付近をガイドするから一緒に行かないかと言うのである。この付近に綺麗なところがあるらしいので、どの様に行けばいいのか調べなければと思っていたところなので、案内を頼むことにした。ここ陽朔の町は西洋人の旅行者やバックパッカーが多いところで、その西洋人を案内する為のガイドらしかった。農家のおばさんと言った感じなのであるが、英語を話すのである。その日は翌日のガイドを頼むことを約束して分かれた。
5、6月の頃のこの辺りは、毎日の様に雨が降るらしい。当日も雨模様であった。二週間前は甘肅省の乾いた大地を見ていたのだが、ここではあらゆる物が湿っている。この差を見れば、誰でもこの大量の水を、北に持って行けたらと思うに違いない。考えてもどうしょうも無いのだが、やはりそう思ってしまう。
西洋人の旅行者は雨にもかかわらず、半ズボン姿で自転車に乗って出掛けたて行った。我々も自転車で行こうと勧められたが、この雨ではと思って車で行くことにした。そうしたらおばさんガイドがオート三輪のタクシーを見つけてきた。小さいオート三輪車なので全員四人が座れるのかと思ったが、運転席の横にも座席があり、そこにガイドさんが座り、後ろの客席二つには娘と私が座った。
案内されたところは高田鎮と言う所だった。桂林からの漓江下りで見たのと同じような山が、いたる所にニョキニョキと聳えて見えた。あの山がモンキー、この山がピッグと英語で説明してくれたが、どの山もその形からはあまり区別がつかなかった。そのおばさんの英語も相当訛っているので、私は中国語の説明の方がいいのだけれどと言ったのだけれど、何故か英語での説明でのガイドが続いた。
高田鎮と言う所はとても綺麗な所だった。まさに山水画の世界である。本当は八月下旬から雨が少なくなり、空も水も澄んでその頃が一番綺麗だと教えてもらったが、雨季のこの付近もなかなかのものである。その辺りは水田地帯で水田には水が張られていた。ちょうど田植えの季節であったので、多くの人が水牛を使って働いていて、その水田には見事な山が映っていた。
お昼に近くなって、食事に行こうということになった。食事代はガイド料に含まれていると言っていたから、どこに行くのだろうと思っていると、見事な山がいたる所に聳える水田地帯を、奥へ奥へと進んで行た。辿りついた所は農家の庭先で、ここで食事だと言う。自転車サイクリングの場合はガイドさんの家に行くのだそうだが、今日はオート三輪タクシーなので、そこまで進めないので、おばさんガイドの実家で食事となったらしい。早速、ガイドさんが料理人になって、三種類ばかりの炒め物料理が出てきた。味は美味くもなく、不味くも無かったが、中国の田舎に来て食事をするなんて変わった体験が出来た。娘はこの体験を喜んでいたが、娘の言うには家のお母さんは、このような所は嫌いだろうと言った。つまりここはバックパッカー向きの所なのである。
それにしても食事のサービスを付けたりしていろいろと考えるものである。恐らくおばさんガイドが話していた英語も、独学で学んだのかもしれない。おばさんはこの地方に多い壮族の農家だと言っていた。
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