このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

銀魚は2,800円

  大理の近くにはアール海と言われる綺麗な湖がある。本当はこの湖の後に聳える山が見えると、とても綺麗であるらしいのだが、今日は雨が時折降っていて山は見えなかった。アール海の観光船の船着場に行ってみたが、シーズンオフであるせいか、観光船は動いていない様である。そこでぶらぶらしていると、個人が経営している船に乗らないかと言う人が現れた。結構大きな船を、私一人の為に貸切りにするので300元であると言う。100元でならいいが、それ以上なら乗らないと答えた。相手も引き下がらなかったが、そのうち別の客が現れて、一緒に乗ることになり100元で行くことになり船に乗った。


  この値段は自分でこれくらいならと想定していた値段であったので、しめしめと思った。湖の中の半島の先にある観音閣を見て、船に乗ろうとしたら、湖で採れた魚を売っていた。その中に白魚のような半透明な魚が採れていた。白魚のようであるが、大きさはワカサギ位でかなり大きい、しかも半透明な綺麗な魚である。聞いてみると銀魚といい、卵を使って油で揚げて食べるととても美味しいという。その話ではどうやらかき揚のような料理法であるらしく、そのような方法で料理したらきっとおいしいに違いないと思えてきた。しかし旅の途中では、料理して食べさせてくれる所はなさそうなので、その魚を買うことはしなかった。

  次ぎの観光地である小さな島に寄り、そこで食事をすることになった。店先には採れたばかりの、半透明の綺麗な魚が並んで居た。店の人から他の魚を進められたが、この際はこの魚を食べねばと思い注文した。料理法は卵を混ぜてどうするという、前に聞いたのと同じ説明があったので、ますます期待は高まり、それで料理してもらう事にした。量は少しでいいと言っても、何時もの中国料理の様に、結構な量になってしまった。何種類もの料理を勧められたが、当然食べきれないので、この湖で採れる海藻のスープだけを頼んだ。ここはアール海と言うが海ではないので、海藻とは言わないが、ひじきを大きくした海藻の様なものだった。

  銀魚の料理に期待はあったが不安もあった。油を使うということなので、油だらけのぐちゃぐちゃな料理になるのではないか、という不安である。日本に居る中国人が言っていたが、テンプラを見て、これはとても油を使った料理とは思えないと言っていた。中国料理でも特に北の方の料理は、油だらけの料理が多い。炒め料理などは、油の量といい匂いといい、油が自己主張しているのがよく分かる。匂いは精製していない大豆油が好まれるらしい。であるからこの料理も油だらではないかと心配したが、そうではなかった。卵入りの小麦粉で魚をまぶして揚げた、まさに唐揚げ風の銀魚であった。味もサッパリとした味で期待通りで美味しかった。日本風であってくどくはなかった。

  店の主人がどこから来たのかと聞くので、日本からと言うと、この魚は銀魚と書き、日本に輸出していると言う。それでかなり高価なものだと言う。日本人はこの魚が好きだとも言っていた。海藻のスープも体に良いと言うことであった。ところが食べ終わって値段を聞いたとたんシマッタと思った。

  私は自慢ではないが、中国ではあちこち行ったが金をぼられたり、騙されたことはあんまり無いのである。でもこのときばかりは美味そうな魚に目が眩んでしまって失敗した。中国では事前に値段を確認するという鉄則を忘れてしまったのである。食べ終わってその値段を聞いたとき、既に鉄則を忘れたことを後悔いしていた。鉄則があったことは知っていただけに、ここでの値切り交渉を止めてしまって、いいなりに支払った。

  あの銀魚は実際に唐揚げのようでもあり、本当に美味しかったのだが、後味は悪かった。200元と言えば、日本円で2800円であって給料から比較するととてつもなく高い値段なのである。幾ら貴重な魚とはいえ、普通の小さい船で採れる魚である。中国人向けにも売っている魚であるからして、山奥で採れる薬草とは違うはずである。だからそんなに高いはずはない。

  あの主人はこの魚が日本人が好むと知っていて、この値段にしたふしがあるので、他にぼられた日本人は何人かいるのかもしれない。親切にもこの魚について説明をしてくれて、この魚は高価なものだと言った頃から不安は感じたのである。しかし高いとは知りつつも、その金額を払ってしまったのは、私も普通の日本人と同じ様に、金離れの良い日本人であったのかもしれない。美味しそうな魚に目が眩んで日ごろの注意を怠ってしまった。

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