このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

成昆鉄道

  昆明から成都まで鉄道で行くことにしていた。それで汽車の切符を買う必要があったのだが、大理の菊屋という、レストランに入ると、昆明からの切符が買えると張り紙に書かれていた。普通中国では出発地でないと切符は買えないのである。それなのに昆明から遥か離れた大理で、しかもレストランで切符が買えるとのことである。もっと早く気が付けば良かったと思いつつ、翌々日の昆明から成都までの切符を予約した。切符は翌日の朝に手に入るとのことだった。その日は大理を出発する日であったから、間に合うかと心配はしたが、無事買うことが出来た。その切符は切符らしからぬ、伝票のようなものだった。

  昆明に着いてから、この切符のことが心配に成り、偽物ではないだろうが、もしかしたらリコンファームみたいな手続きが必要かもしれないと心配になった、鉄道の案内所に尋ねていったら、この切符で問題無いと言う。しかし何か未だ不安があるので、その切符をよくよく見てみると、昆明と言う文字が無いのである。別の駅名が書いてあった。しかしそれがどこの駅なのか分からない。ようやくのことでその駅が成都へいく途中の、かなり先の駅名であることが分かった。その駅まで行くのに、バスで先回りできるのだろうかとか、いろいろ調べたがよく分状況が分からない。仕方が無いから切符のキャンセルしかないと考えたが、大理で買った切符を、昆明でキャンセルすることは殆ど不可能ではないかと思えた。それでも思いきって駅の切符売り場に行き、キャンセルの交渉を始めた。しかし何か言っていることがすれ違っている様である。窓口の人は何かの切符があると言う。それで何とか成るかもしれないと思いその切符を買った。その切符は途中の駅まで行く為の切符であった。

  よく事情が飲み込めないままその切符を受け取ったが、その切符を使って、途中駅まで行き、同じ列車に乗ったままで、そこからは元の切符の指定席である、軟座の寝台車に移ることが出来た。この日が今回の旅行の最大のピンチであった。しかし慌てはしたが問題無く成都に辿りつけた。最大のピンチと言っても、それで受ける損害は、切符を無駄にしたり、ホテルの滞在が伸びることくらいで、せいぜい一万円チョット位の損害にしかならないのだか。

  成都、昆明間の鉄道は、成昆線と言われる鉄道で、以前にも同じ方向で乗ったことがある。その時は中国で働いているお母さんに会いに来た、アルゼンチンの女性と相部屋になった。今回の相部屋の客は、禁煙の室内にくわえ煙草で入ってくるので、こちらの顔も無愛想になってしまう。文句を言おうすると、こちらの気配を察してか、通路に出て煙草を吸うので、文句も言えない。そのうち知り合いの女性を連れてきて、同じベットの中でイチャイチャしだす。検札の時には同じベットにいながら、検札員に何かの証明書を見せていたから、二人とも鉄道関係者だったかもしれない。そのうち女性の方は途中の駅で降りていった。

  このときは、同室者との関係はあまり良くはなかったが、他の場合は、同室の人と話しができて楽しいのである。この後の成都から貴陽への夜行列車では、貴陽の人と一緒になった。貴陽の近くの黄果樹という滝を見に行くと言ったら、遥か彼方の日本から、よくぞ貴陽へ来てくれたと言った感じで、貴陽の様子を教えてくれた。ホテルも教えてくれたが、あまりに立派なホテルを教えくれたので、費用が高くなってしまった。

  この成昆線で一昼夜かかって成都に着いた。以前乗った時はもっとかかった。昆明がある雲南省側は、 鉄分を含んだ赤い土 が多く、水田に水はたっぷり有ったが、木はあまり多いとは言えない。日本の山では、木の間から土は見えないが、ここでは 木が疎らで土 が見える。四川省に入ってからは、暫くの間、金沙江の河岸を溯って走る。その後、別の河に沿って走るのだが、このあたりの鉄道は凄いのである。何が凄いかと言うとトンネルの数である。次ぎから次ぎへとトンネルが続き、鉄橋も多い。この線を作るときに多数の犠牲者が出たことでも有名らしい。トンネルが無いところで時々見える光景は、 濁った河、荒れ果てた山 だけであった。その同じような光景が何時間も続く。ここでは畑も少なく人の気配もあまり無い。おりしも中国政府の「西部大開発」という号令がかかったが、その恩恵は、このような光景のところまでは恐らく届かないのではないかと思えた。

  しかし成都に近づくと、豊かな蜀の国の水田が広がっていた。竹の林も見えた。竹の林といっても、日本のものとは大分違う。竹が大きな株になって固まっている、いかにも中国らしい竹である。

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