このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

>>現地見学メモ(中京・近畿地区)<<

 以下の文章は、私(当ページ管理人)が2005年7月〜8月にかけて現地を見て気がついたこと・感じたことなどをまとめたものです。
 (感じたことは、「→」の後に述べていきます。)

JR東海の場合
あおなみ線の場合
JR西日本の場合



>>JR東海の場合

 JR東海では、在来線にはATS-P(いわゆる「新型ATS」)が一切設置されておらず、ATS-S(いわゆる「旧型ATS」)のみが設置されています。

→ 「ATS-Pを設置しないのはけしからん」という意見も多く聞かれますが、私は「ATS-Sでも、地上子をうまく設置すれば構わないのでは?」と考えています。
 (もっとも、ATS-Sの場合には効率性の面で問題があることも否定できませんが…)

☆ポイント部分の信号(絶対信号)や急カーブの手前など
 速度照査地上子(列車の速度をチェックし、速度超過の場合には非常ブレーキをかける機能を持つ)が多数設置されています。
 また絶対信号には、即時停止地上子(速度に関係なく、直ちに非常ブレーキをかける機能を持つ)も併せて設置されています。

→ 急カーブ部分に関しては、現状の方式でおおむね十分でしょう。(今後もより多くのカーブに対して設置されていくとのことなので、期待しています。)
 絶対信号部分に関しては、現状では低速域に対する防護に特化されているきらいがあるので、高速域からの防護も追加する必要があるのでは?…と考えます。
 (2005年3月に土佐くろしお鉄道宿毛駅で起きた車止め激突事故も、高速域からの防護を行っていれば防げた事故と言われています。)

☆ポイントのない区間の信号(閉塞信号)
 ロング地上子(停止現示(赤信号)の数百m手前で警報を発し、警報を5秒以上無視すると非常ブレーキをかける機能を持つ)のみが設置されています。
→ 運転密度が特に高い区間については、現状の設備では不十分なのでは…?と考えます。
 (JR各社の標準仕様に則った結果と言われていますが、不十分な対策であることは否めないでしょう…)
 ロング地上子のみが設置されている区間では、運転士が警報を聞いてから5秒以内に確認扱いをすると、その後はATSによる防護が働かず、列車がそのまま走り続けて先行列車に追突する恐れもあります。
 (1988年12月に中央線東中野駅で起きた追突事故も、このような事例です。)

 対策としては、閉塞信号についても速度照査地上子を設置することが考えられます。(例えば、信号200m手前に45km/h、20m手前に15km/hという具合に…)
 また、全ての閉塞信号に上記の対策を施すのが無理ならば、運転密度の高い複線区間などから優先的に設置してもよいでしょう。

☆ポイントのない駅
 一部の駅では、場内相当(駅入り口に当たる部分)の閉塞信号に対して、ロング地上子の他に即時停止地上子を設置し、追突事故を防止しています。
 また、東海道本線のごく一部の駅では、場内相当と出発相当(駅ホームに当たる部分)の閉塞信号に対して、ロング地上子の他に速度照査地上子が設置されています。
 場内相当は追突防止を、出発相当はオーバーラン防止を、それぞれ目的にしているものと思われます。(詳細は不明ですが…)

→ 他のJR各社では現在のところまだ見られない設置方法ですが、今後、同様の取り組みがなされることを期待しています。(中央線東中野駅の事故の教訓を生かす意味でも…)

☆会社境界部の駅
 JR東海とJR東日本の境界に当たる駅はいずれも、JR東日本の管轄となっています。
 このうち、今回見てきた熱海・国府津についてはいずれも、JR東海区間からの折り返し列車が頻繁に入線するホームに、ATS-Sの速度照査地上子が設置されていません。(JR東日本の標準的な設置方式に従い、ATS-Sについてはロング地上子と即時停止地上子のみ設置)

→どのような理由で上記のような状況になっているのか、詳しいことは分かりませんが、両社の複雑な関係が影を落としているのだろうな…という気はしました。

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>>あおなみ線について

 あおなみ線(名古屋臨海高速鉄道)では、ATS-Sを使用しています。
 あおなみ線は貨物線の線路を一部活用しており、貨物列車(大多数の機関車はATS-Sのみ設置)も多く走るため、旅客列車のみに新型保安装置(ATS-PやATC等)を設置しても効果が薄いためと思われます。

→首都圏・近畿圏のATS-S・P併設区間でも、(特に閉塞信号(ポイントのない区間)において)上記と似たような問題が少なからず存在しているはずですが、今のところ、JR各社は見て見ぬふりをしているようですね(本当は、以下に述べるような対策を施してほしいところですが…)。

 地上子設置方法については基本的に、JR東海とほぼ同じです。
 また、ポイントのない駅であっても、場内相当の閉塞信号に対して、ロング地上子の他に即時停止地上子を必ず設置し、追突事故を防止しています。

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>>JR西日本の場合

 JR西日本では、近畿圏の多くの路線にATS-Pが設置されていますが、その多くは完全な形ではありません。
 多くの路線(東海道線・山陽線を含む)では「拠点P」という形で導入されていて、絶対信号にはATS-SとPが必ず設置されていますが、閉塞信号の一部にはATS-Sのロング地上子しか設置されていません。(そのため、追突事故のリスクを抱えています。)
 また、ATS-Pの地上設備を設置している路線であっても、ATS-Sのみ設置の車両が相当数走っているため、ATS-Sの地上設備も残しておく必要があります。
 (ちなみに拠点Pの区間では、ATS-Pを設置している車両はSとPを同時に作動させています。)
 ちなみに、ATS-Sの地上子の設置方法については、基本的にはJR東海と似通っています。
 ただし、絶対信号における速度照査地上子については、JR西日本では出発信号(ホーム部分)にはあまり設置せず、場内信号(駅入口)に重点設置しています。(JR東海は逆)

 また、ローカル線では、絶対信号には速度照査地上子を設置せず、ロング地上子と即時停止地上子(速度に関係なく、直ちに非常ブレーキをかける機能を持つ)のみを設置している箇所が殆どです。(JR北海道・東日本と同様)

→ 拠点P区間については、できるだけ早めに全ての信号にPを設置し、SとPの同時作動をやめた方がよいでしょう。
 Pの速度照査は、各列車のブレーキ性能に応じて柔軟に行っています(しかも速度超過時は常用ブレーキで制限速度まで減速)が、Sの速度照査は、一番性能の悪い列車のブレーキ性能に合わせて行っています(しかも速度超過時は非常ブレーキで完全に停止)。
 SとPを同時に作動させていると、Sの方に引きずられる形となり、Pの効率性が損なわれてしまいます。

 拠点P区間の究極的な改良方法としては、全ての信号にPの地上子と、Sの速度照査地上子・即時停止地上子を設置し、効率性と安全性の双方を確保することでしょうが、財政事情等により、現実的には厳しいでしょう。
 ただ、東海道・山陽線では運転密度が高く、しかも130km/hでの高速運転も行われているため、いつまでも現状維持というわけにも行かないでしょう。
 とりあえずは、Pの地上子は全ての信号に設置し、閉塞信号へのSの速度照査地上子・即時停止地上子は、主な箇所(駅の手前等)にのみ設置…というのが精一杯でしょうかね…

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