このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください




エピソード2
席がない!


 帰国の日を迎えました。ホテルで待っていると、調子の良い日系人の男が迎えにやってきま
した。「大変でしたねえ…、これに懲りずにまた来て下さいね〜。」などと言いながら、空港まで
行き、団体客用チェックイン・カウンターで搭乗手続きをしてくれました。

 渡された搭乗券は、24Aと24Bでした。「団体客なのにずいぶんと前だなあ…?まあ、いい
か…。」などと話しつつ飛行機に乗りこみました。

 前からファーストクラスが1〜5、続いてビジネスが10〜20…、「おーっ、結構前だぞ!」と喜
びながら座席表示を追っていくと、21番の次がなんと27番になっているではありません
か!

 「げっ、なんじゃこりゃあ…!?」最後に乗りこんだのでエコノミーは満席です。慌ててスチュワー
デスを捕まえて、「席がない」と片言の英語で言うと、「忙しいから後で!」と相手にしてくれませ
ん。

 しばらく待っていましたが、らちが空きそうもないので、前方のビジネスクラスのスチュワーデ
スに、もう一度「席がない」と言いながら搭乗券を見せました。「しょうがないわね。席も分からな
いのこの田舎者。」という感じでそのスチュワーデスは24番に向かいました。当然24番なんて
ありません。

 突然スチュワーデスの顔色が変わりました。「Just moment please!」と言うと、地上係員の
ところに走っていってしまいました。

 機内前方ではパーサー、スチュワーデス、地上係員が鳩首協議を行っているのが見えます。
ダブルブッキングというのは聞いたことがありますが、席番がないなんて話は聞いたことがあり
ません。エコノミーは満席、我々はこの便で帰らないと会社を休まなければなりません。「絶対
この飛行機から降りないぞ!」と友人と二人固く心に誓いました。

 10分ほどしてドアが閉まり、プッシュバックが始まりました。まだ協議は続いています。「よ
し!とりあえず帰れるぞ!ファーストにでも座らせてもらおうか!」と友人と話しました。

 ようやくスチュワーデスが戻ってきて、しぶしぶ「ビジネスクラスの空いている席に座りなさ
い。」と言いました。我々は、内心「ラッキー!」と思いながら、顔では「しょうがない航空会社
だなあ、まあ今回は許してやるか。」という表情を必死で作ってビジネスクラスに座りました。

 座ってしまえばこっちのもの。まずはウェルカムシャンパンをもらい、乾杯した後、アメニティ・
グッズを空いている席の分までもらいました。上空に上がると、機内食です。和食を頼むと、再
びビールで乾杯していい気になっていました。

 と、そこへ白髪の女性パーサーが現れて、「エクスキューズ・ミー・サー、あなた方は、エコノミ
ークラスの切符でビジネスクラスに座っていますね。」と丁重に英語で話しかけてきました。

 「やばい!」顔面蒼白になりながら、「イエス」と答えました。するとそのパーサーは、「大変申
し訳ありませんが、和食が足りません。ビジネスクラス運賃を払っていらっしゃるお客様を優先
したいので、大変申し訳ありませんが、洋食に代えていただくことは出来ないでしょうか?」とこ
れまた非常に丁寧な英語で話しかけてきました。

 「ああ、良かった…。」ほっとしながらも、顔では「仕方ないなあ、まったく。」という顔を作って、
「いいですよ。」と答えると、「サンキュー・サー。」と言って去っていきました。


 おかげで生まれて初めてビジネスクラスを体験することが出来ましたが、成田空港で帰り一
緒だった人に聞いてみると、結局我々のツアーは全員席番が無く、みんなビジネスクラス
に座ってきたようです。


 しかし、あれは一体どういうトラブルだったのでしょう?コンフィギュレーションの入力ミスだっ
たのでしょうか?それならもっと大混乱になっていたと思いますが…?


その航空会社は、「ユナイテッド航空」と言います。



エピソード3に続く

エピソード3
エピソード3


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