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「かぁぁぁっ・・・ヒイロの奴、無茶苦茶やりやがって」
通称、魚の骨ことフィッシュボーン級輸送艇の中でデュオは毒づいた
「な〜にが『責任持って無事に合流させてやる』だ・・・」
「五飛の奴も本当に無事に向こうに着いたのか? 全く・・・ん?」
木星圏の偵察任務に出発した・・・そうヒイロから説明されていた五飛の事を呟いた彼の目に
フィッシュボーンの下で壊れているダンボールが見えた・・・
「ありゃぁ・・・もしかしてコレって五飛の乗っていった・・・おっ?」
彼の目には呆然としている五飛の姿と接触事故を話を聞いて駆け付けてきた面々が写った。
「あっちゃぁぁぁ・・・どう説明したもんかなぁ・・・まぁ、取りあえず外に出ますかぁ!」
ハッチを開けて勢い良く外に飛び出すデュオ・・・どうやら腹を括ったようである
「わぁりぃなぁ・・・ナビ担当の奴がとんでもねぇ奴でよぉ」
聞き覚えの有る声に、ビクッと肩を震わせた五飛がデュオに飛びかかった。
「貴様ぁ・・・俺のナタクをぉぉぉっ!」
「はぁ・・・お前のナタクがどうかしたって?」
まさかダンボールにナタクの愛称を付けているとは思いもしなかったデュオが真顔で聞き返した
「貴様が壊したんだろうがぁぁぁっ!」
壊れたダンボールを指さす五飛の様子に全てを察したデュオは意地悪く答えた
「お前・・・これ、ちゃんとチェックとか整備とかしたか?」
「そんな事は関係ない!俺のナタクをどうしてくれる!!」
怒り狂う五飛を無視してキンケドゥに声をかけるデュオ
「よう!海賊の兄ちゃん! 頼まれてた物・・・持ってきたぜ」
キンケドゥが呆れ顔で答える
「もう少し・・・まともな合流は出来ないのか?」
「ナビ担当はヒイロの奴だったんだ・・・文句ならアイツに言ってくれや」
悪びれた様子も無くデュオは続ける
「それから・・・デスサイズ共々、俺も合流だ!宜しく頼むぜ!」
無視された五飛がデュオの胸ぐらに掴みかかってきた
「貴様・・・よくも俺のナタクを・・・」
笑いながらデュオが答えた
「お前・・・アレの後ろに付いてたコンテナの中身・・・見てないのか?」
キョトンとした表情で五飛が答えた
「コンテナ・・・あぁ、そう言えば付いていたが・・・戦闘の邪魔になるので切り離した。」
「で・・・そのコンテナは何処だ?」
まさかと思いながらデュオが聞き返した
「しらん!」
事も無げに答える五飛。デュオの顔色が一気に青ざめた。
「しらん・・・ってあの中にお前のガンダムが入っていたんだぞ!」
「な・・・なんだとぉぉぉっ!」
五飛は・・・愕然とした・・・そして、そのまま動けなかった
<続く>
所変わってここはサイド1のシャングリラコロニー
「最近変わったもんも流れ着いてこないなあ…」
とボヤいているのは未だΖザクでジャンク屋を続けているモンド=アガケ。ちなみにビーチャはエルと結婚した後ちゃんとした会社で働いているし、イーノは今ではコロニー公社の事務をしている。
「おお、コンテナだ。」
大きな戦争や紛争もないおおむね平和になったこの世界、ジャンク屋がそんなに儲かるとも思えないがモンドは断固この仕事をやりつづけていた。それは亡きサラサのためにも。
「こ、これ…モビルスーツ、しかもガンダムタイプじゃないか!?それに、オッサン、大丈夫か?」
なんと五飛の切り離したコンテナはまさか切り離されるとはこれっぽっちも思っていなかった木星サイドの特殊工作員とともにサイド1まで流れ着いていたのだった。
<続く>
その頃、グワンバンは当初の作戦通り木星圏を離脱し、一路アクシズへと向かっていた。
しかし、艦内は重苦しい空気に包まれていた。
援護に出たジョニーの機体が、木星圏のオリュンポス上空で消息を絶ったのだった。
「ミネバ様の御身を守る為、名誉の戦死を遂げたジョニー・ライデン少尉は
三階級特進で少佐に・・・」
読み上げたシャアも感極まって声を詰まらせた。
「大佐・・・」
そんなシャアの傍らに、ララァが寄り添った。
「すまん、ララァ・・・私は掛け替えのない友を・・・失ってしまった」
「シャア大佐・・・」
憔悴したシャアに、シン・マツナガ大尉が声をかけた。
「マツナガ大尉、大儀であった。実は貴殿に頼みたい事があるのだ」
悲しみを振り払うが如く、シャアは毅然とした態度で話を切り出した。
「はい、なんでしょうか」
「アクシズにて、ミネバ様の事を頼みたいのだ」
「ミネバ様の事でありますか?」
「そうだ。我々はこれからデラーズを討ちに向かう。背後で糸を引いているのは
恐らくハマーンだろう。この因縁の決着は着けねばならん。」
黙ってシャアの話を聞き続けるシン・マツナガは、この作戦以後の進退について
シャアの決意を垣間見たようだった。
「当面は、ジュピトリスも相手しなければならんだろう。激戦に次ぐ激戦だ。
そのような場所にミネバ様を置く事は断じて避けねばならんのだ。
頼まれてくれるか。大尉・・いや、少佐!」
ずっとシャアを見やっていた歴戦の勇士は、即答した。
「元よりその覚悟。私でよろしければ喜んで、その大任お引き受け致しましょう」
「頼まれてくれるか少佐・・・我々もミネバ様の為に全力を尽くす!」
決然とそう宣言したシャアは、眼前のアステロイドを見据えていた。
<続く>
「さて、デュオが届けてくれたブースターの調整と取り付けが完了次第、俺は出発だ。」
デュオが運んできた物・・・MS用惑星間航行用超長距離ブースターを前にキンケドゥが言った。
「オイオイ・・・忙しい奴だなぁ」
呆れ顔でデュオが言った。
「この船をコッチに回す事になったからなぁ・・・木星圏の監視は必要だろう?」
デラーズフリートの武装蜂起が予想よりかなり早い段階で起こったためマザーバンガードが
木星圏を離れたために木星帝国、並びに木星圏に潜んでいると情報の有ったジオン残党軍と
思われる軍勢の監視にキンケドゥは単身向かおうと言うのだった。
「まぁ・・・マザーバンガード零番艦も追って木星圏に向かう手筈だが・・・気を付けてな」
ここでトレーズが言った零番艦と言うのは以前の木星帝国との戦いを生き延びた生粋の海賊達
が乗艦する戦艦の事である。性能的には現在のマザーバンガードに比べると劣るのだが木星圏の
監視程度の任務ならば問題なくこなせる筈である。
「ああ・・・無茶はやらないよ」
笑いながら答えるキンケドゥにデュオがチャチャを入れる
「お前の言う無茶ってのはどんなレベルなんだか」
「お前やヒイロにゃ言われたく無いぜ」
「違げぇねえ」
どうやらこの二人・・・馬があうようである。
<続く>
デュオ達が持ってきた物資の詰め込みも終わり…
「では、カムランさんありがとうございました。」
「はい、では健闘を祈ります。」
「よし、マザーバンガード出航だ。」
マザーバンガードは無事サイド8から発進した。
「おい、ヒイロ、俺たちはどうする?」
「次の任務が来るまではこの艦で待機だ。」
「へいへい、そういうわけでみなさんよろしくな。俺の名はデュオ=マックスウェル、そんでもってコイツはヒイロ=ユイってんだ。」
火星までは後数分。のんきな艦内である。というのもやはり歴戦をくぐりぬけたパイロットたちだからできることだ。
「五飛君、君にMSが届いたよ。」
「何?トレーズ、本当か!?ナタクよ…」
「いや、カムランさんがコロニー警備用のネモを1機回してくれたんだ。」
「そ、そうか…まあいい。あの木偶よりはましだろう。ありがたく受け取っておく。」
そう言い終わるや否や五飛はMS格納庫に消えていった。おそらく火星での作戦の前に新しく入ってきたネモに一磨きかけるのだろう。
もう火星は目の前である。
<続く>
シャアが決意を決めたころ この動乱の糸をひいていると目されている女
ハマーン・カーンが自らの旗艦であるサダラーン級戦艦「アルテミス」の窓から
宇宙を眺めていた。
「ああ、こちらにおいででしたか」
とそこへ、ハスキーな声の士官 キャラ・スーンが上官の姿を認め近づいてくる。
「なんだ」
表情をぴくりとも変えず自分の副官に応える。
「はっ、幹部全員ミーティングルームに揃いハマーン様をお待ち致しております。」
頷き静かに歩き出す 上官を同じく黙って後に従うキャラ
「ハマーン様ご入来!」
扉にいた下士官がハマーンの入室を高らかに告げる。
「ご苦労」
部屋に並み居る士官に労いの言葉をかけ自らのシートに腰をかけるハマーン
「では、諜報部より報告します。」
と軍服の士官が多い中スーツを着たキャリアウーマン風な女性が立ち上がり
報告書を読み上げる
「シロッコの元に居たミネバ様はシャアの手の者により誘拐されました
ただ、帰還の際シロッコの兵と戦い ジョニー・ライデンが戦死した模様であります」
その女 アリス・ミラーはそこで一旦区切り他の幹部の反応を冷ややかな目で見渡す。
「あの真紅の稲妻 ジョニー・ライデンほどの者がなぁ」
感慨ぶかげな声をだし嘆息したのは同じく元ジオンの英雄として蒼い巨星とまで
呼ばれたランバ・ラルだった。
「敵とはいえおしい男を亡くしましたな」
そのラルに同調するように呟くのは同じくソロモンの悪夢と呼ばれたアナベル・ガトー
その人であった。
「で、ミネバ様はどうなったんだい」
扇子を弄びながらシーマが問う
「はっ、ミネバ様の御身には傷一つないと潜入させた部下から報告が届いております。」
そこで音を立てながら報告書を一枚めくる。
「で、もう一つの件はどうなった」
それまで何かを思案していたような表情をしていたハマーンが先を促す。
「はっ、地球に居る部下より報告があり ・・・・・様は我が軍と合流なされる
旨 了承されたということです。」
そこで報告書をテーブルに置きアリスが席につくと士官の間から驚愕の声が漏れる。
「まさか、 姫さまが、、、」
その中でも一番驚きを隠せない声と表情を露にしてランバ・ラルが立ち上がる。
「奴等がザビ家の正統なる後継者であるミネバ様を担ぎ出すのだ、
我々がジオンの正統な後継者であるあの方を盟主と仰ぐのになんの不都合があろう」
ハマーンが毅然と言い放つと座がしーんと静まり帰る。
「すでにこちらへおいでいただく準備は完了しております 後はお迎えにあがるのみです」
そんな中でアリスが冷静に自らの上官であるハマーンに上申する。
「では、ランバ・ラル貴官とあのお方とは繋がりが深かろう 無事お連れせよ」
ハマーンが傍らにいるラルに命令を出す。
「ハマーン様その間 敵に対して陽動をかけてみてはいかがでしょうか」
この軍の実戦部隊そして表の指揮官である デラーズが案を出す。
「よかろう、シーマ 貴官にナナイ クロノクルの艦隊を預ける 見事大任果たしてみせい!」
ハマーンの命が下ると各々がその人となりにあった表情と返事で応じる。
「作戦は明日0時を以って発令することとする それまで卿らの部隊の準備を怠るな」
きりっとした表情でその場にいる士官に向けて大きく宣言する
「はっ」
その声に応えて皆が立ち上がりそれぞれ自分の持ち場に戻る。
マザーバンガードが、サイド7.5へ向かっていた丁度その頃、
地球連邦政府は、デラーズフリートの武装蜂起を受けて、
火星圏へ先遣部隊の派遣を決めた。
第13独立部隊「ロンド・ベル」である。
ブライト・ノアを艦長に、エースパイロットをアムロ・レイが勤める
連邦軍きっての精鋭部隊である。
別名「ニュータイプ部隊」。かつての「ホワイトベース」を彷彿とさせる陣容が
そう云う通り名に説得力を与えていた。
彼らは半舷休息を兼ねた船体整備のために「シャングリラ」に寄港していた。
「しかし、ブライト」
機体整備を終え、ブリッジに上がってきたアムロは、怪訝そうな顔で
キャプテン・シートに座るブライトに話し掛けた。
「あぁ、アムロか」
「火星の動きは以前から気になっていたとはいえ、まるで便利屋だな、俺たち」
「それを云うな。これで大っぴらに火星に出向ける訳だ」
「しかし、ガンダム狩りとはな」
「これまで、煮え湯を飲まされ続けたジオンらしいか・・・」
「とにかくサイド7.5のカミーユ達と合流しよう」
「その方が情報が早いな」
「このやり方、治外法権に近い俺たちならではかもな」
「違いない」
「艦長」
アムロに同行してラーカイラムに乗艦しているベルトーチカ・イルマが
ブリッジへと上がってきた。
「どうしたんだ、ベル」
「ブライト艦長に面会です。何でも昔世話になったもんだって云ってます」
「私に面会?!」
3人がラーカイラムと宇宙港を繋ぐ桟橋まで降りていくと、
そこに待っていたのは、イーノとモンドであった。 <続く>
その頃の木星圏の状況である・・・
真紅の稲妻の通り名を持つジョニーライデンであったが機体が完全に行動不能、さらに
酸素の残量が残り少なくなった状況で木星コロニーオリュンポスから遠からず近からず
の宙域を漂いっていた。彼にとってはかなり好ましくない状況であった。
「どうにかコックピット付近は残ったが・・・もはや残骸としか呼べぬザクは動けない。」
「酸素の残量も・・・持って後数時間と言った所か」
「友軍はおろか敵機も近づいてくる気配は・・・無し」
「せめてジャンク屋の作業用MSでも近づいて来ないかと思ったが・・・」
「木星圏や居ないのかねぇ・・・ジャンク屋どもも・・・まいったね」
ミネバ・ザビ救出作戦時に現れた木星軍の物と思われる機体との戦闘で彼は撃墜された。
幸か不幸か怪我こそしなかったものの・・・このままでは彼の命は風前の灯火である。
「しかし・・・あの機体・・・なんだったんだ?」
彼を撃墜した機体は謎のMSで有った。全身を蒼く染め上げたその機体の両肩は燃える
ように赤く塗られていた。両手に大型ビームサーベルを装備したその機体は人間業とは
思えないほどの機動性を発揮した。その機体から友軍機を守るために彼は撃墜されたのである。
「敢えて言うなら・・・ギャンの系統の機体に見えたが・・・」
その機体はEXAMシステムを搭載したR・ジャジャ改で有った。
パイロットは記憶を失いシロッコに拾われた男・・・名前をニムバス・シュターゼン
禁断のシステム・・・EXAMに取り付かれてしまった元ジオンの騎士である。
「まぁ・・・どうでも良い話だな・・・んっ?」
諦めかけた彼の目に接近してくる超長距離ブースター装備の機体が見えた。
「助かった・・・かな?俺の悪運も尽きちゃ居なかったってところかな。」
ジョニーは発光信号で救助を求めた。
「気付いて・・・くれよ」
「ん・・・発光信号?遭難者が居るのか?」
クロスボーンガンダム1号機改のコクピットでキンケドゥが呟いた・・・
<続く>
「おい、大丈夫か?応答しろ!!」
木星付近の空域にキンケドゥの声が響く。戦闘が終了してからかなりの時間がたっているためミノフスキー粒子濃度もそんなに高くないのが幸いしてすぐに体中から火花が散ってはいるもののまだ生きている赤いザクを見つけることができた。
「助かったぜ、アンタ何者だい?」
「俺はキンケドゥというが、そこから出られるか?」
「いや、爆発の衝撃でハッチが開かない。何とかこじ開けてくれないか?」
「解った。」
そう言うとキンケドゥはガンダムの手でハッチを引っぺがした。
「クッ、『ガンダム』か…俺は木星のハマーン派ではないがジオンの者だ煮るなり焼くなりしろ。」
この状況で落ち着いていられるところはさすがは軍人といったところか。
「いや、そんなことはしない。俺は宇宙海賊、宇宙で困っている人がいればそれを助けるのもまた俺の役目。それより…」
「ああ、そうだったな。俺の名はジョニー・ライデン、赤い稲妻と呼ばれている。一度くらい聞いたことはあるだろう?」
「赤い…彗星ではないのか?」
「稲妻だ。そう呼ばれている方も上司にはおられるが。」
「ところでさっき言ってた『木星のハマーン派ではない』というのはどういうことだ?」
キンケドゥはとりあえずジョニーを一旦降ろすためサイド8に向かった。
「同じジオンでも木星派に属さない者もいるってことさ。」
「そうなのか…さあ、着いた。どこへでも好きな所に行けばいい。」
「世話になったな、キンケドゥとやら。だが次にあった時は敵かもな。」
「ああ、お互い生き延びよう。」
ジョニーを見送ると、
「トレーズ艦長、木星のキンケドゥより緊急入電です。」
「読み上げろ。」
「はい、新生デラーズには木星のハマーン派のほかにも別勢力がある、そしてその中には赤い稲妻ジョニー・ライデンもいるとのことです。」
「そうか、全員集めろ、ミーティングを行う」
<続く>
トレーズの招集により、クルーはブリーフィングルームに集まった。
大型スクリーンに木星圏〜地球圏までを表記した宇宙図が映し出された。
その前方にトレーズが立ち、説明が始まった。
「現在の状況を説明する。我々マザーバンガードが現在向かっているのは此処」
と言うと火星軌道上の衛星が即座にクローズアップされた。
「サイド7.5である。ここでエウーゴの面々と合流する。
この合流の意味する処は、武器弾薬の補充、人員の更なる確保そして
火星、木星サイドの情報収集である。」
次に画面が切り替わって、先程の宇宙図に戻る。
「そして、今現在の敵の状況だが、キンケドゥくんが持ち帰ってくれた情報によると、
旧ジオンサイドは2派に分裂しているようだ。1つはデラーズ・フリート。もう一つは
現在の所、真紅の稲妻、ジョニー・ライデンが参画していた事実を除くとまだ確認出来ていない。
さらに木星サイドにもシロッコを中心とした部隊の存在が確認されており、
この部隊とジオンサイドは敵対関係にあるようだ」
「そんでもって、そこに連邦が絡んでくる訳だ」
ジュドーが口を挟む。そして彼の言葉に続くように
「そういう事だな。大まかに分ければ、現在判明しているだけで5つの勢力が台頭している
と云う訳だ。」
と要約した。
「これから接触する「エウーゴ」は連邦の中の「反デラーズ派」に属する」
とトレーズは続けてこう云った。
「因みに連邦系デラーズ派は「ヌーベルエウーゴ」という別組織になる」
「連邦軍1つ取ってもややこしい事で」
デュオがすかさず茶々を入れる。
「それだけ連邦内部が腐敗しきっているという事だな」
とゼクスが続けた。
「とまぁこう云う状況下な訳だが、我々の当面の敵は「デラーズ・フリート」という
事になる」
トレーズがそう云い終るや否や
「何故だ!木星や別動部隊を何故叩かん!野放しにするのか?!」
と食ってかかるウーフェイ。
「考えてもみろ、木星圏の連中が行動を起こそうにも、この距離は如何ともし難い。
ジオンの別部隊も然りだ。連邦の分裂組は「デラーズ派」な訳だから分けて考える事もあるまい」
とゼクスが嗜めながら説明すると、今迄押し黙っていたヒイロが口を開いた。
「決まりだな」
彼らの進むべき道が、示された瞬間だった。
<続く>
時を同じくして地球連邦議会で演説が行われていた。
「・・・で、有るから我々、地球連邦軍の精鋭、新生ティターンズは今こそ決起し
地球圏に混乱をもたらすジオン残党・・・ネオジオン並びに木星圏の不穏分子共に
正義の鉄槌を下さねば成らぬのである!!」
失脚したかと思われたジャミトフ・ハイマンで有ったが今、再び宇宙の混乱を機に
連邦軍内での地位を固めつつあった。腹心の部下であるバスク・オムは今、彼の主張
する新生ティターンズ結成案を通すべく演説を続けていた。
「宇宙にはロンドベル隊やエウーゴの部隊を有るではないか。」
事前工作が成されているとは言えやはり一部の議員から反対意見は出る物である
「今、エウーゴと言われたか? 貴方はエウーゴが何であるか分かって発言されたのか?
エウーゴとは反地球連邦組織の略称!・・・つまり我々の敵で有る!
現にヌーベル・エウーゴを名乗る者共が無差別テロを繰り返しているでは無いか!
ロンドベル隊にしても、エウーゴと連絡を取り合っていると言う・・・
何時、我々に敵対する意志を見せるやも知れぬ!
しかも、今、宇宙には海賊軍が出没すると言うでは無いか!
乱れきった治安の回復の為にも今こそ我々ティターンズの力が必要なのである!」
記者席で議会の様子を見ていた男が舌打ちした。カイ・シデンで有った。
「ジャミトフめ・・・きっちり裏工作してやがるな・・・賛成多数で通るなこりゃ・・・」
カイが言うとおりティターンズ再結成案は過半数の議員の賛成を持って可決される事となった。
地球圏に新たな混乱の元が・・・新たな火種の元が生まれた瞬間であった。
<続く>
デラーズフリート陽動艦隊旗艦 エンドラ級巡洋艦「リリーマルレーン2」の艦橋で
シーマがシートに肘を立て座り 部下たちが忙しなく動く様を眺めていた。
「シーマ様 ムサカのナナイ大尉より入電」
ラフにジオンの軍服の袖を折った屈強な兵がシーマに向けて報告すると
シーマは無言で扇子を振り出せと促がす。
「シーマ中佐 後数時間でサイド5ルウムの空域に入ります。
情報によると当空域にはコジマ艦隊が駐留しているそうです。」
敬礼をしてからそのまま流れる様にシーマに報告するナナイ
とその報告を聞いたシーマが残忍な笑みを浮かべ立ち上がる
「なるほど、で敵の兵力はどのくらいだい」
笑みを浮かべながらスクリーンに映るナナイに問い掛ける
「マゼラン級が5隻 ラータイプ1隻 計6隻と思われます」
一方 至って平静な顔で上官の問いに答えるナナイがスクリーンに映っている。
「よし、そいつらには景気づけの生贄になってもらおうかねぇ」
口の端をわずかにゆがめ今まで浮かべていた笑みが一層深まる。
「では、左翼のクロノクル艦隊に一級の戦闘態勢を指示いたします。」
スクリーンのシーマが頷くのを待ってそう結んで通信を切るナナイ。
「野郎ども まずはサイド5にいる連中を血祭りにあげてあたしらの力を連邦の奴等に見せ付けるよ
コッセル あたしのビギラ・ゼラを用意させなっ」
血祭りと聞いて海賊あがりのシーマの部下たちの士気が上がる
それから数時間後サイド5を警備しているコジマ艦隊旗艦「ラーシャトー」の艦橋で
艦隊司令 コジマ少佐がオペレーターのもたらした敵襲の報に驚きの声をあげる
「何、敵襲だと おのれデラーズフリートめ」
すでに手遅れになりそうな程接近するまでに気が付かなかった味方に対する怒りを
シーマ達になすりつけて憎々しげにはき捨てる
「なんだ、鈍すぎる よくもまぁこれで艦隊を率いていられるものだな」
射程距離に入る直前でやっと自分たちに対して迎撃体制を取った敵に対して
クロノクルが侮蔑の声をあげる。
そしてその間にも迎撃に出てきたジェガンを数機一蹴する。
自分の周りにいる敵を一掃し
「なんとたあいもない」
と呟き近くにいたマゼランにライフルを向けると 一撃で葬りさる。
「ば、ばかなこれだけの兵力を短時間で」
貴下の部隊の大半を沈められ青ざめた顔でコジマが呟く
「あれが旗艦か どうやらこっちには気づいてないようだねぇ」
蒼く塗装されたギラドーガ改のコクピットでレズンが舌なめずりしながらラーシャトーを
視界に収める
「いーち にぃ さぁん はんっ 落ちなっ」
ゆっくりカウントしながらトリガーを弾き艦橋目掛けてマシンガンをぶっ放す。
弾がラーシャトーに吸い込まれるように向かうと間もなく跡形も無くふきとぶ。
「ん、 敵の旗艦を なるほどレズンか よし後は雑魚ばかりさね
さっさと片付けちまいな」
レズンが敵の旗艦を沈めたのを見たシーマが残敵を掃討すべく部下をたきつける
キンケドゥと分かれて、サイド8を彷徨うジョニー。
何処に当てがある訳でも無かった。今は只無性に離れ離れになった
シャア達とコンタクトを取りたいと、一心に願っていた。
そんな時、
「ジョニー・ライデン少佐ではありませんか?」
神は彼を見捨てていなかった。一人の男に呼び止められたのだ。
「ん・・誰だ?」
宇宙空間で遭難しそうになっていた処を救助されて今、である。
記憶がはっきりと戻っていないようだった。
「お忘れですか? 同じ大佐直属で諜報部所属のキグナンですよ」
「キグナン軍曹か?!」
漸く相手の顔と名前が一致したようだ。
「はい、ご無沙汰しております。ところで少佐は何故今時火星圏におられるのですか?
確か大佐と同行されて、木星圏で戦死されたと・・・。」
「戦死?!俺が?ハハハッこの通りピンピンしてるぜぇ。待てよ、さっきから
少佐、少佐って・・・何時の間にか3階級も昇進しちまってるってのか?!」
「アクシズからの報告では戦死扱いでしたので、惜しい方を亡くしたものだと
思い込んでおりましたが・・・。」
「死んでないって云ってるだろうが!」
「これは失礼しました!しかし少佐、どの様な経緯で火星圏へ?」
「話せば長い話になるが、木星圏で宇宙の晒し者になる処だったのだ」
「あなた程の方が・・・俄かには信じられませんが・・・で、どうされたのです?」
聞き返すキグナンに、ジョニーは多少答え難そうにして
「宇宙海賊に助けられた」
と答えた。
「宇宙海賊・・・と言いますと、今世間を騒がせている「マザーバンガード」では?」
驚いた素振りも見せず、多少事務的に聞き返してくるキグナンに、
「そんなに有名なのか?」
と、聞き返すジョニー。
「有名なんてもんじゃありません。「義賊」という宇宙移民者(スペースノイド)も
いる位ですから」
「ふむ、そうか」
彼と、その評判の宇宙海賊との再会は、まだ随分先の話である。
場所を移した2人はとある居酒屋の中にいた。
一通り食事を済ますと一息入れて、ジョニーが用件を切り出した。
「ところでキグナン、おまえに頼みがあるのだ」
「MSはないか?ですね」
既に勝手知ったるの風情である。
「あるのか?」
「「ガルバルディβ」って機体、ご存知ですよね?」
「ジオン公国軍最後の量産型MSって触れ込みのアレか?」
大佐はサザビー、ララァ少尉はキュベレイ、シン・マツナガ大尉がリゲルグと言うご時世である。
自分の境遇を呪いたくなるジョニーではあったが、無いよりマシなのも確かな訳で・・・。
「背に腹は変えられんか・・・で、何処にある?」
「こちらへ。」
真紅の稲妻が戦列に復帰するのも、もう間近であった。
<続く>
コジマ艦隊がボコボコにやられている頃
トレーズ達は、サイド7.5へと入港した。
「責任者のカミーユです。」
「艦長のトレーズだ。よろしく頼む。」
二人は、握手をした後一行は会議室へと案内された。
「それにしても、人が少ねぇなぁ」
デュオが、感想をもらす。デュオの言うとおりあまりにも人数が少ない。
「カミーユ君。どうしてこんなに人数が少ないのだ。」
トレーズがそう聞くとカミーユが、
「みんな、違う所属の人たちの集まりでしたからねぇ。
ここにいるのは、僕とファしかいませんよ。カツがいたんですけど、
ガンダムマーク2で木星に行ってしまいました。」
「そうか、これだけの人数しかいないのだから、我々といっしょに
来てもらえないか。」
トレーズは補給の確保よりも正直こちらの方が興味があった。
「ファは、巻き込みたくないので僕とZで参加させてもらいます。
ティターンズも復活したと聞きますし。」
「ありがとう。そうだ、ウーフェイに渡すMSが欲しいのだが・・・。」
「ああっ、それなら倉庫に・・・・」
カミーユが言おうとしたその時、兵士の一人が飛び込んできた。
「大変です、閣下。ついにデラーズが動き出しました。
ハマーンの部隊が動いているようで、すでにサイド5がやられました。
こちらにも、蒼い巨星率いる大軍が。」
「なにっ、ランバラルか」
それを聞いたガンダムパイロットたちが一斉に会議室を飛び出した。
やはり、一人取り残されたウーフェイ・・・。
「そうだ、ウーフェイだったね。僕はカミーユっていうんだ。
君のMSはこっちだよ。ネモじゃ戦えないだろ。」
「腐敗した連邦など今も昔も変わらずこんなものか、なあハモンよ。」
「あなたの言う通り、もはやすでにサイド3、5、6の3つのサイドは我が新生デラーズのもの。ここも時間の問題ですわ。」
「俺に、MSだと?」
「ああ、先ほどブライトから届いたのだが…これは君のものだろう?」
「な、ナタクよ…これさえあれば怖いものはない。行くぞナタク!!」
それは紛れもなくサイド1に流れ着いたナタクであった。デラーズの工作員は連邦にに突き出されMSはモンドたちの手によってブライトの手に渡った。
「よし、マザーバンガード第一次戦闘配置につけ、MS隊発進、全砲門開け!!」
ついに戦闘が始まってしまった。コロニーを盾にする戦法だ。
「ほう、むこうもMSを出してきたか。では、ハモン行ってくるぞ。」
「あなた、気をつけて。」
旧式のザンジバル1隻にエンドラ級艦2隻という部隊である。
「ランバラル、Rジャジャ出るぞ。」
ランバラルの青いRジャジャに続き漆黒の宇宙用トーラスが数機出る。
「む、ガンダム。アムロレイか?」
「残念、俺はジュドー=アーシタ。アムロさんじゃなくて悪かったな。」
「またしても子供がパイロットなのか?!」
<続く>
「子供で悪いかぁぁっ!!」
クロスボーンガンダム4号機のコクピットでジュドーとルーが叫ぶ
「だいたい・・・あんたら大人の都合で始めた戦争だろうがぁぁぁっ!!」
「好きで戦争やってんじゃ無いわよ!・・・勝手なこと言わないでよねぇぇぇっ!!」
「だいたい・・・コロニーの独立だの人類の未来だの言いながら・・・
あんたらのやってることは弱い者いじめにしかならないって何で分からない!」
あっと言う間に3機のトーラスが斬り捨てられた。4号機が手にしている武器は
超大型の高出力ビームソード・・・ビームザンバーである。超高出力なこの剣は敵を
ビームシールドの上からでも両断出来る代物である。中には手にしたビームサーベルで
ザンバーを止めようとした機体も有ったが無駄なあがきであった。
「こいつら・・・無人機か?」
「トーラスは・・・基本的にMDシステムで動く無人機の筈だから遠慮はいらないわよ!」
「俺達、海賊は無駄な人殺しはしたくない。敵の命も味方の命も出来る限りは守りたい
確かに甘っちょろい考え方かも知れないが・・・相手も人間だ。いつか分かり合える
日が来るはずだと俺達は考えている。倒すべきは間違った考え方で人々を惑わしている
指導者、独裁者達だけだ・・・現にかっての木星帝国との戦いにおいても海賊軍の
攻撃で命を落とした人間は数えるほどしかいなかった。人の命を奪わずとも戦いを
終わらせることは出来るはずだ・・・」
ジュドー達にキンケドゥが語った言葉である。ジュドーは完全に納得した訳では無かったが
「それに・・・俺達は海賊だからなぁ・・・
綺麗事と言われようとも人々の支持を得られないと即逮捕されちまうだろ?
正規軍の連中に追いかけられない理由・・・考えたこと有るか?」
ここまで説明されてジュドーも敵を極力殺さない戦いをする事に同意したのである。
ジュドーにしても人殺しなどやりたいはずも無いのだ。当然と言えば当然だ。
「間合いが甘いわぁぁぁぁっ!」
ジュドーの隙を突いてラルのRジャジャが接近戦を挑む
咄嗟に分離するクロスボーン4号機
Rジャジャのサーベルはガンダムの胴体を両断したかに見えた。
「甘いのはオッサンの方だぜ!」
上半身だけのガンダムがザンバーをなぎ払う
Rジャジャの右肩から頭部にかけてが吹き飛んだ。
「まだまだ・・・こんなんじゃ済まさないんだから!」
下半身だけのガンダムの脚の裏からダガーが飛び出した接近専用の隠し武器である。
ヒートダガー付きの蹴りがRジャジャの左肩を直撃した。
これでランバ・ラルの乗機は事実上戦闘不能に陥った訳である。
「勝負有ったな・・・オッサン」
再合体させたクロスボーン4号機がザンバーを突きつけた。
「モビルスーツの性能差に助けられたのぅ・・・若いの」
ルーが叫ぶ。
「負け惜しみ言ってんじゃないわよ!悔しかったら新型でも何でも持ってくればいいのよ!」
ジュドーが落ち着いた声で言った。
「俺達はスポーツやってるわけじゃないからなぁ・・・悪く思うなよオッサン」
「ふっ・・・儂の負けだ・・・好きにするが良いわ。」
流石は武人、ランバ・ラル潔く負けを認めた。
<続く>
ジョニーがキグナンと共に辿り着いたのは、街外れのジャンク屋であった。
最近越して来たのか、真新しい外壁に似つかわしくない、ボロい内装が
アンバランスな佇まいの建物である。
「ジャンク屋と云う処は情報収集にうってつけでしてね。間借りさせて
貰ってるんですよ。」とキグナンは内情を話す。
その光景を奥から見つめている男がいた。キグナンがその男に視線をやると、
「彼がこのジャンク屋のオーナー、ケリー。元ジオン軍兵士でギレン総帥サイド
に仕えていた者ですが、そこはまぁ元ジオン同士のよしみでね」
と言って苦笑するキグナン。
「そうか。私はジョニー・ライデン少佐だ。宜しく頼む」
とジョニーが手を差し出すと、彼は踵を返して奥へ去っていった。
「なんだ、あいつ?」
ジョニーが怪訝そうな顔をしていると、
「彼は先の大戦で片腕を無くしていまして・・・。」
とキグナンが声を潜めながら云う。
「そりゃあ・・・悪い事をしちまったな。すまなかった」
同情心を禁じえない様な心持のジョニー。
「いえ、私も一言お伝えするべきでした」
その時、彼らの背後でジョニー自身片時も忘れもしない声が響いた。
「貴様は・・・ジョニーか?!」
ジョニーが振り向き様、声の主を確信して一声を放った。
「大佐?!」
「よくぞ・・よくぞ生きていてくれた・・・ジョニー」
すぐさま駆け寄る両者。そして
「ジョニーライデン少尉、只今帰還致しました」
「うむ、大任ご苦労であった。少尉」
シャアから、改めて少佐への昇進を告げられたジョニーは、此処までの経緯を説明し
シャア自身もアステロイドのアクシズに、マツナガとミネバを残して来た事、
グワンダンを残してザンジバルで火星圏まで来、副長のドレンのみを残して情報収集を目的に
ララァと2人、先日からこのジャンク屋の2階に間借りしている事等を話した。
尚、火星圏でのシャアは「クワトロ・バジーナ」を名乗っていた。
「シャア・アズナブル」という有名すぎる名前では隠密行動の邪魔にしかならない
からであった。
その後キグナンと、コーヒーを淹れる等して甲斐甲斐しく振舞っていたララァを話の輪に
加えた2人は火星圏の現状報告とこれからの行動プランを練っていた。
「デラーズフリートが各部隊の陽動を目的に動き出している事は確かなのだ」
「市民レベルの情報を拾い出していたのですが、連邦サイドはこの事態を前に
ロンドベル隊しか遣さないと不満を募らせています」
「今しがた街を彷徨っている時に耳にしたんだが、ティターンズの再結成が議会の賛成多数で
可決されたらしいぜ」
と、シャア、ララァ、ジョニーがそれぞれの情報をつき合せる。
「そこまでの情報は裏が取れてあります。あと、ジャンク屋ルートの情報では不審なコンテナが
シャングリラ近辺で捕獲され、その中身がガンダムタイプのMSだったというものもあります」
とキグナンが情報の補足をする。
「ロンドベルにガンダムか・・・ブライト達も動き出した訳だな・・・」
又この因縁が自分について回るのかと思うと、少々アンダーな気分に陥るシャア。
「しかし「デラーズフリートを討ちに行く」という大佐のお志は、必ず民衆に伝わると思います」
シャアの心中を読んで、彼を励ますララァ。
その時、出入り口付近で大声が上がった。
「そこまでだ!シャア!!」
そこに立っていたのは、ケリーの通報で駆けつけたアナベル・ガトーであった。
<続く>
「む、君はアナベル=ガトー。」
「そうだ、久しいなシャア=アズナブル。貴様の行動は全て見させてもらった。」
あのソロモンの悪夢と恐れられていたアナベル=ガトーである。
「そうか、ケリィとガトー、なるほどな。」
2人は士官学校時代からの戦友であった。
「シャアよ、何をしに来た。」
「君は何も知らないようだな、デラーズフリートが…」
「それは知っている。だがここには貴様にくれてやるようなものはないぞ。」
そこに割って入るケリィ。
「まあ、いいじゃないか。」
「クッ、だがな、今度戦場であったときは敵同士であることを覚えておけ!」
「こちらもそのつもりだ。」
シャア達は少々居辛くなったためガルバルディβの受け渡しを終えると足はやにケリィの元を離れた。
「ほう、するとジョニー、このコロニーにはあのキグナン軍曹がいるというのか。懐かしいものだな。」
「ええ、彼は元気でやっていましたよ。」
そんな雑談を交わしながら彼らはザンジバルのある港に戻っていった。
<続く>
ランバ・ラルがジュドーに止めをさされようとしているところへエンドラから
一体のモビルスーツが飛び出してくる
「ラル大尉をここでやらせるわけにはいかんな」
ハマーンからラルの艦隊に付けられていたイリアが自らの乗機のコクピットで呟く。
「じゃあなオッサン」
ザンバーを振りかざしRジャジャにつきささろうとした時にイリアが間に合い割り込む
「甘いな ボウヤ」
イリアがジュドーに向け嘲笑する。
「お前は」
かつての強敵の出現にジュドー達の間に戦慄が走る。
「久しいなジュドー・アーシタ 更に腕を上げたようだが、我等が事を成すのに
まだラル大尉は必要な方だからな やらせるわけにはいかんな」
ジュドーとラルの間に立ちはだかりライフルをかまえる。
「ラル大尉 ここはお退きください。」
ジュドー達に注意を払いつつラルに撤退を促がす。
「私も戦士だ戦場で敗れた以上 生き延びて恥を晒すわけにはいかん」
しかしその提案をラルが頑として拒む
「あなた、 あなたがここで死んではあのお方を誰が守れましょう
ここはお退きください。」
しかしそこにラルの妻 ハモンの声が通信機から流れる。
「・・・・・ わかった すまんが撤退する。」
しばし思案していたが、ハモンの言葉に心を動かされ撤退を決意する。
「では、私が殿を引き受けます 大尉どうぞ」
「そうはいかないわよ」
そう言ってラルの方にルーが動きだそうとすると イリアが牽制するようにライフルを向ける。
「言ったろ 大尉を落とさせるわけにいかんと」
紅く塗装されたコンティオの肩からクローを分離させガンダムの後部に向け挟み込むように伸ばす。
「ハモン様 ラル大尉のR−ジャジャ帰艦なされました。」
ラルの副官 クランプ中尉がハモンに告げる。
「よし 頃合だな」
ラルがザンジバルに辿り着いたと直感したイリアがそう呟く。
「今だ、コンティオに当てないように敵に向け艦砲射撃3連正射」
ザンジバルからの報を聞き エンドラにいたオウギュストが隷下の艦隊に攻撃を指示する。
「な、 味方がいるのに」
エンドラからのビームを交わしながらも驚愕の声を上げるジュドー
そして その隙を衝きイリアがデラーズの艦隊の中に消える。
「まてぇ」
必死に追おうとするジュドーにイリアから通信が入る。
「また会おう ボウヤ 我が艦隊は貴官の為に席を用意してある。 ハマーン様の希望でな
いつでも訪れるがいい」
そう言い残して通信を一方的に切るイリア
そして その通信に呆気を取られたジュドーは機体を停止させその場から動けないでいた。
サイド8の宇宙港へ戻ったシャア、ララァ、そしてジョニーは、ザンジバルのブリッジ
へ急いだ。
「ザンジバル出航急げ!ドレン、変わりはないか」
「先程、エンドラが入港致しました。どうやらガトー大佐の艦艇のようです」
定時報告を済ませるドレン副長。
「奴とは先刻会った。いずれ決着をつけねばならん相手だ!惜しい奴だが
デラーズに心酔している男だ、結局そうなる運命なのだな」
吐き捨てるようにシャアが云う。
と、そこへ
「通信が入っております。ガトー大佐です」
「繋げ!」
「シャア!私は貴様を捨てては置けんのだ。この場で討たせて戴く!」
スクリーンに大写しになり現れたガトー。
「止むを得んな。サイド8の領空外で待て!」
ガトーに向かって言い放つシャア。
「合い判った!」
と言うと通信は切れた。
MSデッキに向かうシャア、ジョニー、ララァ。
「ドレン、後の事は頼む」
と言い残すと、シャア達はMSデッキの方へ消えていった。
「前方監視怠るな!」
ドレンが、早速クルーに号令をかける。
一筋の閃光を残しながら飛び立つMS部隊。
その頃、出撃したガトー大佐率いるMS部隊は、サイド8の領空外で待ち構えていた。
「MSの機影をキャッチ!ザンジバルからです」
エンドラからの連絡を受けたガトーは
「来たかっ。全機散開!一人も逃がすな!」
号令一声、エンドラの部隊が縦横無尽に散開していく。
「シャア、この時をどれ程待った事か・・・。ケリー!いけるか!」
「ビグロの調整は万全だ。手塩にかけた機体だからな」
「貴様には「稲妻」を殺ってもらう」
「判った」
「私は、長年の因縁に決着をつける!」
対シャア用に緑の「ドーベンウルフ」を駆るガトーは、シャア以外目もくれず
飛び出していく。
「でやぁぁぁぁぁっ」
「ちぃぃぃぃぃぃ」
2機のビームサーベルが、真っ向から向かい合い激しい閃光を放つ。
「貴様の存在は、事態を更に混沌へと導くだけだ!正義など、ないっ!」
ガトーはシャアに決然と言い放つ
「貴様の加担している事が、同じ過ちを繰り返す事だと何故気付かん!」
更に激しい閃光となってMS同士の接近戦が激化している中、
ガトーを叱責するシャア。
「貴様如き裏切り者に、云わせるものかよ!」
「あくまでデラーズと心中するつもりか!」
「ギレン閣下の魂に報いる為には、死をも厭わん!」
「何っ!」
「自身の私怨のみで生きる貴様には判るまい!」
「云ってくれるな!」
サーベルの閃光がモニター一杯に広がる。
「そしてぇーっ!!!」
機体をサザビーから引き離すと、インコムを巧みに操りサザビーを攻め込む。
「そんなもので!」
サザビーのファンネル・コンテナから、数機のファンネルが飛び出したかと
思うと、途端に取り囲んでいたインコムの群れを次々に撃破していく。
「まだまだっ!」
ドーベンウルフのメガ粒子砲が、サザビーを掠める。
「ちぃぃぃっ!」
ビームショット・ライフルの閃光が、ドーベンウルフの頭部擦れ擦れを飛ぶ。
「舐めた真似をっ!」
「一撃で仕留める!」
再び交錯する両者。突きに出た互いのビーム・サーベルが、互いの機体の
肩口と頭部を貫く。
暫くの沈黙の後
「ガトー大佐!護衛のリックドムⅡ隊全滅です。一旦お引き下さい」
という通信がドーベンウルフのコックピット内に響き渡った。
頭部を破壊され視界を遮られたガトーは
「止むを得んか・・・貴様との決着は、何れ着ける!」
と言い残し、エンドラに帰還して行った。
「過去の悪夢を繰り返すというのか・・・ガトー・・・」
シャアは、己の道を遮る大きな障害の存在を前に、何事か考える素振りを見せながら
ガトーが帰還して行った宙域を、ただ凝視していた。
<続く>
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