このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

漫歩通信
第4号 1998年6月1日発行

[漫遊空間いばらき]
JRと県市町村の観光協会などがタイアップ、駅にイベントガイドなどの小冊子がおかれ、大がかりな観光キャンペーンが行われる。今年(98年)の1月から3月にかけて〈漫遊空間いばらき〉のキャッチフレーズで茨城県下を対象に行われていた。

98年1月から始まったNHK大河ドラマ『徳川慶喜』との関係もあるのかもしれない 。ちょうど水戸偕楽園のそば、千波湖畔に徳川慶喜展示館という施設が約1年余の期間限定で設けられ、大河ドラマの紹介はもとよりドラマの舞台となった幕末の紹介などをやっている。仮設の施設とはいえ外観は水戸城大手門、外周塀、御殿などが部分的に再現されており、たまにドラマの野外ロケが行われることもあるという。

この時期、水戸市内は観梅のシーズンで訪れる観光客も多い。水戸商工会議所では商店街駐車対策モデル事業ということで土・日・祝日に「無料買い物バス」を運行、駅前から偕楽園、「慶喜」展示館、徳川博物館などを巡回するコースに約20分間隔で運行する力の入れよう。

駅前に黄門さまの像が立つ水戸市内、偕楽園をはじめ徳川斉昭ゆかりの「弘道館」や城跡など『徳川慶喜』がらみの史跡だけでなく、市内には近代建築がいくつか残されている。

水道塔、茨城県庁舎、東京三菱銀行水戸支店(旧三菱銀行)、県立歴史館の敷地内に移設された旧水海道小学校本館などの建物がある。新しい建物としては、90年に開館した水戸芸術館(設計磯崎新)。三角形を組み上げた塔が目立っている。

さて、そんな茨城県、今回は同県西部に位置する下館の街を歩いてみました。
東北本線の小山と常磐線の友部を結ぶ水戸線が市内を東西に走り、下館から北に真岡鐵道(旧真岡線)、南に関東鉄道常総線が延びる交通の要衝。
下館は城下町だが、その雰囲気はあまり感じられない。駅前に「サティ」がある。北に延びる商店街は「サティ」に養分を吸い取られたかのように煤け、寂れた感じ。駅前再開発事業が進行中なのか、だだっ広い空き地があったりもする。

駅から1㎞ほど行くと国道50号線が東西に走っているのだが、この道路沿いを中心に古い商家や民家がいくつか見られる。どっしりとした、いかにも重そうな土蔵造りの建物だ。

洋風意匠を施した商店も残っていて、荒七酒店は土蔵造りの建物に洋風の塔屋をくっつけた建物。

また、店の名を横文字で書いて、ハイカラさを出している古谷野時計屋と中澤時計店などもあった。

これらの時計屋、歩いた時刻が早朝だったためシャッターが閉まっていたが、今も営業しているかどうか、そこまで確認はしてない。

(取材98.3〜98.4)




[たてものを訪ねて(3)]
今回は、群馬県館林市に残されている工場の事務所だった建物を取り上げる。
[旧上毛モスリン事務所]この建物は館林城跡に新設された上毛モスリン工場の本館事務所だったもので、明治41年から43年にかけて建てられた木造二階建て、下見板貼りの建物(県指定重要文化財)。

現在館林市役所が建つのが工場跡地で、この建物はそこからほど近い「歴史の森」に移築され、館林市立資料館の第二資料館として公開されている(無料)。

隣接して館林出身の作家田山花袋旧居も移築されている。この森には館林城の土塁 などの遺構をはじめ縄文時代のムラが再現されたり、田山花袋記念館、子ども科学館などが設けられ、城沼湖畔のツツジヶ丘公園に隣接した市民公園になっている。(東武鉄道伊勢崎線館林駅より徒歩20分)

[日清製粉製粉記念館]館林駅の西側に日清製粉館林工場がある。この構内ある木 造二階建ての記念館は明治33年に建てられた館林製粉本館事務所だった建物。

平日なら内部の見学もできるらしい。訪れたのが、工場休業日にため、門番に了解を得て建物の写真だけ撮らせてもらった。(館林駅より徒歩5分)



[くう・みる・おがむ]
これは栃木県佐野市のキーワードなのだそうだ。

〈くう〉はラーメン。『下野国らーめんの郷』と題した観光地図が駅に置いてあっ て、佐野ラーメン会という団体に所属するラーメン・中華料理店がみな出ている。餃子もうまいらしい。

〈みる〉足尾鉱毒事件を告発した田中正造旧宅や資料を展示する佐野市郷土資料館 など。

〈おがむ〉は佐野厄除け大師。関東の三大師のひとつ。このあたりでは有名な厄除 け寺で参詣する人も多い。徳川家康ゆかりの佐野東照宮もある。

近代建築の立派な物件としては、影澤医院がある。明治44年に建てられた木造二階建ての医院で、「ふるさと佐野 100選」に選出された建物でもある。



今回は、茨城県下館市・群馬県館林市・栃木県佐野市の北関東3県の3市を取り上げました。たいてい鉄道の駅を起点に漫歩を始めるわけですが、最近の多くの街がそうであるように、駅前再開発の名のもとに古い町並みが取り払われ、陳腐な町並みに変わろうとしています。

関東では古い町並みとして川越市、栃木市が有名ですが、少し大きな町には土蔵造りの町屋など、町並みとまではならないものの、けっこう残っていることがわかりました。





このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください