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漫歩通信
第5号 1998年8月1日発行

栃木県あちこち
[真岡鐵道沿線に沿って]旧国鉄真岡線は明治45年水戸線の下館から真岡まで開業したことに始まり、順次延長されて大正9年茂木まで通じた。

この路線は第二次特定地方交通線に選定され、88年4月1日国鉄が分割民営化、JR東日本に引き継がれてすぐあとの同年4月10日真岡鐵道に転換された。

今年(98年)でちょうど十周年。集客を狙ってSLの運転を始めて四年。最近、真岡駅舎の外観をSL風にした新しい建物に建て替えた。

真岡駅からしばらく行ったところに、土蔵造りの商家が二軒 だけ残っていた。一軒は市の観光案内所のように使われている。

たぶん、道路を拡幅するさいに移動させられ、保存されたのだろう。しかし、真岡にはこれくらいしか土蔵造りの町屋が残っていない。この建物の裏手に岡部記念館という建物があった。真岡の豪商岡部家の別邸だった和風の「金鈴荘」という建物で一般公開されている。

建て替えられた近代建築が多い中で真岡高校記念館(旧講堂 明36)は残されてい た。

 真岡駅まで戻り、そこから再び真岡鐵道のレールバスに乗り込み、そのまま終点の茂木まで乗り通した。途中、少し勾配のある箇所では、SLの写真を撮ろうとしている人たちがカメラを並べている。

茂木から先、未完成の道床が延びている。地形図を見てもかなり先まで延びているのがわかる。酒屋などにすこし古い商家が残っている。

[宇都宮]宇都宮駅東口に大谷石で作られたモニュメントがある。「餃子のビーナス」 像だ。宇都宮の餃子消費量が日本一ということから設けられたものらしい。

宇都宮市内の近代建築の主なものは、宇都宮高校旧本館(明26)、松ヶ峰教会(昭7)や栃木県庁舎(昭13)などがある。

国道筋を2㎞ほど行くと南側に宇都宮大学がある。構内に古い講堂が残っている。大正13年に建てられたもの。サークルが入っている建物も古そうだ。

近くに大谷石積みの建物で窓周りなど洋風意匠を施した住宅があった。

 
[鹿沼]日光線の電 車で鹿沼へ。日光に向かうのか、外国人観光客の一団も見られた。かつては上野から観光急行電車が乗り入れていた日光線も二両編成くらいのローカル電車がのんびり走る。

駅前の通りを西へ、たらたらと緩い坂を下ると川があって、その対岸に日光街道の宿場でもあった街がある。川沿いに帝国繊維の工場がある。大谷石積みの工場が残っている。明治時代に建てられた建物はもうないようだ。

工場の対岸に洋館をデザインした建物がある。「川上澄生美術館」だ。民芸運動にも関わった木版画の詩人。「はつなつの風」という淡い色彩の版画は棟方志功に影響を及ぼしたという。

澄生の作品に南蛮船などの版画作品があり、それらのイメージから洋館風の建物になったとか。「はつなつの風」は初夏の季節に特別公開される。

国道沿いに二三、土蔵造りの商家が見られたが、通りに面した部分は今様に改造されていて、保存状態のよい建物は少ない。

この街は彫り物で有名なところらしく山車の展示館がある。無人の施設ながらガラス越しに山車を見ることができる。裏通りにはいると洋館が残っていた。明治37年頃に建てられた大谷好美館が残っていた。


 
[栃木]小山で両毛線に乗り換える。今年(98年)、両毛線はその前身の両毛鉄道が小山−足利間を開業させて110年周年を迎えた。

栃木駅は東武日光線との接続駅である。駅舎は共用で、昭和3年に建てられたもの。両毛線には昭和初期に建てられたお洒落な駅舎が残っているが、これはそのひとつ。

栃木の町には蔵造りの町屋が多く残っており、川越と並び小江戸といわれる町である。巴波(うずま)川沿いの景観は観光ポスターに使われるところだ。

大通りは市街地再開発で拡幅された通りと思われるが、商 売をやっている町屋が何軒か残っていた。建物によっては、「蔵の街観光館」、「山本有三ふるさと記念館」などに転用されたりしている。また、洋風の建物では、喫茶店になったりしている。

水運で栄えた商家が残る道筋で、川には多くの鯉が泳いでいる。塚田記念館は、材木問屋だった商家で、由緒ある家具調度などの展示のほか、ハイテクロボットによる蔵芝居「うずま川悲話」が人気とか。

その上手にある のが横山郷土館。麻問屋だった商家で、明治33年には共立銀行を創設している。川筋の母屋から裏手にまわると広い庭園があって、小さな木造洋館が残っている。大正7年に建てられたもの。

麻問屋の帳場や銀行当時のの事務室を残し、石蔵に書画、骨董、調度品などが少し展示されている。財団法人私立博物館登録をうたっているが、登録文化財になっている建物に比べて展示は貧弱。

栃木市郷土参考館は回漕問屋、のちに質屋を営んだ商家で、土蔵には遺跡出土品、郷土画家の作品などが展示されている。
横山郷土館から西に向かうと県庁堀、栃木市役所別館がある。大正10年、栃木町役場として建てられた木造二階建ての建物。

そこからすこし北にいったところに栃木高校があって、ここには講堂(明43)、記念図書館(大3)が残されている。

 高校から東に行ったところには、塔屋をもつ木造の栃木病院(大2)がある。これらの4物件の建物は登録文化財になっている。

日光に向かう例幣使街道を行くと、岡田記念館がある。元禄時代に置かれた畠山氏の陣屋があったところで、その門は当時のものという。旧家岡田嘉右衛門邸の米蔵に古美術、民芸品などが展示されており、近くには翁島別邸もある。





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