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落書き帳
12年2月7日
12000トンの彼女
昔、大阪(南港)と、北九州(苅田港)を結ぶ、カー・フェリーがあった。私がまだ、幼稚園・小学校低学年の頃だ。夏休み、冬休みの楽しみといえば、これに乗って、九州の祖父母の家に行くことだった。
このフェリーは、大阪を夜7時に出港、北九州には、明朝8時に入港する。航海時間は13時間。その、ほとんどは、就寝時間であるが、私にとって夢のような時間であった。船内には、浴場・プール・レストラン・ゲームセンターがあり、動くホテルみたいだった。我が家の船室は、いつも、エコノミー(2等船室)いわゆる、大部屋のザゴネだったが、楽しかった。一夜限りの友達ができたり、子供だけの船内探検隊が結成されたり・・
蛇口をひねると、水が出る。陸上では、そんなのは常識、「当たり前」だ、しかし、幼い頃の私は、海上にある船で、なんで、水道が出るのだろうか?思った。また、照明や電気についても同様に感じたのである。
「きっと、船の中にも、水道局や電力会社があるんだ!」
私は思った。しかし、解明までは、いたらなかった。
確か、小学4年の時だった。この船は、船主(船会社)が、変わって、大阪・神戸〜別府航路になってしまった。残念ながら、それ以来、乗船する事はなかった。「おはよう朝日」という、朝の番組で、時々、一瞬だけ映るのを、ただ、ブラウン管の前で、静かに見守っていた。
私は、高校卒業後、この謎解きを行う機会に恵まれた。
さすがに、大阪水道局や、関西電力はないが、船内に、そのような施設があるのは、間違いではなかった。船底には、飲料水タンクがあり、ポンプと圧力タンクを使い、船内に水を供給している。また、エンジンルーム内には、「発電機室」があり、ディーゼル発電機で、発電しているのだ。
一昨年。思い出のフェリーが、引退する事を知り、乗船することにした。
「あれ? こんなに、天井が低かったっけ?」
船内は、おおむね、自分の記憶通りの光景であったが、全体的に、船が、小さくなっていた。いいや、船が、縮小されたのではない、大きくなったのは、私の体のほうだ。記憶は、あくまでも、私が小3の頃のもの。身長・視線の位置、歩幅は、違っているのだ。
私よりも1歳年上の12000トンの彼女は、いまでも、海外で、現役で走っている・・・・君のお陰で、わたしは、船員になった。また、19000トンの船で働くことも出来た。「さんふらわあ」・「さんふらわあ2」。ありがとう、感謝している。
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