このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください


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落書き帳

12年3月8日

カブトエビ


 生きた化石「カブトガニ」

これは、学校で学習したはずですから、みなさんご存じだと思います。
では、「カブトエビ」は、ご存じでしょうか?
私はこう呼んでいたのですが、正式名称であるかは不明です。
見た目は、「カブトガニ」を、そのまま小さくしたようなエビ?です。
大きさは、1CMぐらいだったと思います。



 私は熱心な、「カブトエビ」マニアだった。
と、いっても、補助輪付きの自転車に乗っていた、幼稚園の時・・
透明な、ビンに入れて、飼っていた。
 母親は「きもちわるいから。捨てなさい。」と、嫌っていたが・・・
捕獲場所は、近所の水田である。田んぼの水を、虫取り網で掬うと、
沢山取れる。もちろん、稲をたおさないように気は使っていた(と思う)。
農家の、おじさんが近くにいても、怒られなかった。「カブトエビ」だと、
私に名前を、教えてくれたのが、このおじさんだった。

 飼い方は、ただ、田んぼの水を入れるだけで、エサを与える必要もない。
死んで、少なくなったら、また、田んぼに行って、捕まえればいいのだ。
めんどくさがりには、最適なペットだ。お金は、一銭も掛からない。
難点は、水田のシーズンしか、飼えないということだ。
泳ぎ方が、とにかく、可愛いかった(でも、今、見たら、気持ち悪いかも)。
死骸を天日に置いておくと、ほんのり、赤くなる。私は、エビだと確信した。
「たべられるのでは?」と、何度も、口にしたくなったが、勇気はなかった。
では、私が、何故、ここまで熱中して、飼っていたのか・・?

それは、田んぼにいた、おじさんが、真顔で、私にウソをついたからだ。

「秘密やで。これは、大きくなると、天然記念物のカブトガニになる」
「カブトガニは、こんなに、大きいんやで!」
おじさんは、両手を広げた。その時は、カブトガニの存在は知らなかった。
しかし、天然記念物という、単語に、なぜか、ときめいてしまったのである。
私は、信じて、飼っていた。幼児とはいえ、多少、疑っていたのは事実だ。
父も「ウソに、決まってるだろう・・」と、呆れていた。
 でも、フワフワと、泳ぎまわる姿を見ていると、もしかしたら・・・
と、思えてくるのだった。
 当然、1匹も、カブトガニになることはなく、シーズンが終わり、全滅。

 小学校に登校し始めて、資料室か何かに入った時。
わたしは、大きな、実物のカブトガニの標本を、目の当たりにする。
「カブトガニだあ!」っと、叫んだ。標本だったが、嬉しかった。
 姿は、一時期、飼っていた、カブトエビに似ていた。
おじさんの言っていたように、大きくなった、カブトエビだった。

 ウソはいけない。ウソは泥棒の始まりだ。
最近、ニュースで取り上げられるウソにくらべたら、
おじさんのウソは「夢のある、いいウソだな」と、今になって思う。

 カブトエビのいた田んぼは、現在、住宅が、建っている。



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