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第4章 国民の権利義務
日本国憲法第3章 に該当する部分である。
従来の規定では、「国民の権利」と「公共の福祉」の関係があいまいで、内在的制約説、外在的制約説等の争いがあったが、この改正案では、「何人も」「全ての国民」「国民」を明確に使い分け、更に外在・内在を問わず「公共の福祉」による制約を伴うものについては全て明文でこれを規定しているので、公共の福祉や外国人に保障される権利についても明確化されている。第15条(国民)
全ての国民は、その個性を尊重され、この国家憲章に定める権利を等しく享有するとともに、各自の能力に応じた義務を負担する責務を負う。
2 国民たるの要件は、法律で定める。
3 公務員その他公権力を行使する者は、国民でなければならない。公務員の国籍条項を明文化した(一部の文言は現行憲法第13条のものを使った)。
第16条(基本的人権、正当防衛)
何人も、基本的人権を、侵すことのできない永久の権利として有する。
2 何人も、自己の生命、身体、自由がこの国家憲章秩序と合致しない威力によって危険にさらされたときは、当然に正当防衛の権利を有する。現行憲法 では「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。」となっているが、これを「何人も」に改め、外国人の人権保障を明確化した。但し、ここにいう「基本的人権」には、当然のことながら参政権や出入国の権利等は含まれない。
また、正当防衛権に関する条文を新設した。第17条(権利の擁護と制限)
国民は、この国家憲章が保障する自由および権利を、不断の努力によって擁護しなければならない。
2 何人も、この憲法が保障する自由および権利を、公共の福祉に反しない範囲において行使するのであって、卑しくもこれを濫用してはならない。権利擁護と濫用制限の条文を分離した。また、基本的人権が「何人も」と規定するようになったので、濫用禁止についても「何人も」に改めた。
第18条(法の下の平等)
全ての国民は、この国家憲章並びにこの国家憲章の下で成立した法律の前に平等であり、いかなる社会的、人種的、信条的、宗教的、身体的、性別的又は身分的差別も許されてはならない。
2 公職の任用、もしくは称号、位階、勲章その他の栄典は、この国家憲章に定める場合を除くほか、世襲のものであってはならない。「世襲禁止」に公職を追加。また、「この国家憲章に定める場合を除くほか」との文言を追加して、皇室は例外であることを明記した。
第19条(幸福追求権)
何人も、公共の福祉に反しない範囲において、生命、自由及び幸福追求の権利を有する。
2 政府各部は、国政を営むにあたり、前項に定める権利を最大限に尊重しなければならない。現行憲法第13条 に相当する。主体を「全て国民」から「何人も」に改めた。
第20条(参政権)
国民は、公務員の選定又は罷免その他の政治に参画する権利を有し、かつ義務を負う。
2 国民は、その資格に応じた公職に就任する権利を有する。
3 全ての公務員は、この国家憲章並びにこの国家憲章の下で成立した法律の定めるところにより、国民全体の奉仕者として、公務を遂行しなければならない。国民に、政治参加の義務を新設した(「全ての」としていないのは、未成年者が除かれるためである)。これにより、参政権の譲渡が明確に禁止される。公務就任権の規定を新設した(国民に限定。大日本帝国憲法には規定があった)。選挙権に関する規定は総則に移した。
第21条(内心の自由)
何人も、思想及び良心の自由を有する。
2 国は、如何なる場合においても、個人の内心の自由を侵してはならない。「内心の自由」は特に重要な規定であるから、独立させた。
第22条(信教の自由及び政教分離原則)
何人も、信教の自由を有する。
2 国は、如何なる場合においても、個人の信教の自由を侵してはならない。
3 何人も、公序良俗に反しない範囲において、宗教団体を自由に結成し、祭祀、布教その他の活動を行う権利を有する。
4 国は、特定の宗教若しくは宗教団体を擁護若しくは弾圧してはならない。
5 国の主催する儀式は、皇室の伝統に則り天皇が行う儀式を除いて、宗教上の意義を有するものであってはならない。信教の自由、及びその制度的保障である政教分離原則の条項・国教禁止規定を新設。「目的効果基準」のような曖昧な判断基準を設けなくともよいようにした。また、皇室の伝統行事が適用除外であることを明確にした。
宗教団体の設立については、「公序良俗に反しない範囲において」との限定を付した。第23条(積極的軍事行動忌避)
何人も、その良心に反して積極的な戦闘その他の軍事行動に参加することを強制されない権利を有する。また、そのことによって如何なる差別も受けない。「国防の義務」を規定するにあたって、別に良心的兵役忌避制度を新設した。ただし、良心的兵役忌避を行った者は、平等原則の観点から、民間防衛組織への参加や社会福祉活動への参加等の代替処置が義務づけらえる。「積極的な軍事行動」とは国軍による軍事行動のことであり、「消極的な軍事行動」とは組織された民間防衛や戦略物資生産、あるいは軍務の代替として与えられる職務のことである。
第24条(結社の自由)
国民は、公共の福祉に反しない範囲において、団体を自由に結成する権利を有する。
2 政治上の主張を行う団体は、国民主権、民主政体並びに政教分離の原理を常に尊重しなければならない。政党に関する規定を新設(独立)した(主体は「全ての国民」に限定した)。また、政党が民主主義・政教分離原則を尊重しなければならない義務を新設した。更に、破壊活動防止のため一部の結社が禁止されることを明文化した。なお、初期の改正案では「憲章秩序、民主政体、天皇制、国の主権・領土と独立及び国民生活の安全、びに民族の利益」としていたが、憲法の規定としては冗長過ぎるので削除し、単に「公共の福祉に反しない範囲において」との限定句をつけた。
第25条(表現の自由、通信の秘密、学問の自由)
何人も、国家の安全保障、社会の安全、他の国民の権利との調整その他の公共の福祉のため特に法律の定める場合を除くほか、自由な表現を行い、並びに通信の秘密を保障される権利を有する。
2 国は、法律の定めるところにより、義務教育の課程に使用する教科用図書の内容を検定する場合を除くほか、出版物の検閲その他の表現の事前抑制にあたる行為を行ってはならない。
3 何人も、公共の福祉に反しない範囲において、学問の自由を有する。条文を集会・結社の自由と独立させ、学問の自由もこれに統合した(これらはいずれも内心的自由に密接に関連するという意味で厚く保障されるべきであり、他方、「内心・信教の自由」と異なり公共の福祉の観点からいくらか制約しうるという点で共通しているので)。また、「表現の自由」と「通信の秘密」について、権利を制限しうる場合を限定した。検閲の禁止及び教科書検定制度の例外の明文化。
第26条(集会の自由)
国民は、公共の福祉に反しない範囲において、集会を開催する権利を有する。屋外集会、デモに関する規定を新設した(主体は「国民」に限定した)。
初期の改正案では但書として「ただし、他の国民の権利との調整の場合、または戒厳令が布告されている間に実施し得ると規定されている法律の特に定める場合は、例外とする。」という規定があったが、「公共の福祉に反しない範囲」を挿入したので削除した。第27条(身体的拘束からの自由)
何人も、この国家憲章の定める国民の義務若しくは法律の適正な手続きによる処罰の場合を除くほか、その意に反する苦役や奴隷的な身体の拘束から自由となる権利を有する。
2 何人も、人身売買を行ってはならない。人身売買に関する規定を新設した(主体は「何人も」とした)。初期の改正案では「労役徴用」に関する規定があったが、第1項と重複するので削除した。
(初期の改正案の規定)
③労役徴用は、行うことができない。ただし、法律による処罰の場合、公共災害防止上特に法律に定める場合、または戒厳令が布告されている間に実施し得ると規定されている法律の特に定める場合は、例外とする。
③前項但書の措置は、国民の基本的人権に重大な影響を及ぼすものであるから、その措置は真にやむを得ない場合に限り、必要最小限度のものでなくてはならないのであって、いやしくもこれを濫用してはならない。
④第2項但書の措置による労力徴用を行う時は、政府は、基本的な労働条件を厳守しなくてはならない。また、未成年者はこれを労役徴用してはならない。第28条(裁判)
何人も、自己の権利を擁護し、若しくは正当な利益を保護するため、資格を有する裁判官による迅速かつ公平な裁判を受ける権利を有する。
2 国は、裁判所の発行する令状を提示した場合を除くほか、逮捕、監禁、差し押さえ、捜索、押収その他個人の権利を制限し又は義務を賦課する処分を行ってはならない。ただし、重大な犯罪を行ったことを疑うに足りる充分な理由があり、かつ、急速を要し、裁判所の発行する逮捕状の発行を求めることができないときは、その理由を告げて、その者を逮捕することができる。
3 前項但し書きの措置による逮捕が行われたときは、国は、ただちに裁判所に対して、逮捕状の発行を請求しなくてはならない。
4 何人も、現に犯罪を行っている者を発見したときは、その者を逮捕することができる。
5 何人も、国によって逮捕されたときは、資格を有する弁護士に接見する権利を有する。
6 何人も、刑事事件に関し、自己に不利益となる供述を強要されない。
7 裁判所は、刑事事件の裁判を行うにあたり、被告人の自白を唯一の証拠として判決してはならない。
8 刑事事件の被告人は、判決によって刑罰が確定するまでの間、無罪であると推定されるものとする。現行規定と同じ(一部については記述を詳細にした)。なお、第1項の規定(「資格を有する裁判官による裁判」)により、陪審制度は、禁止される。
第29条(刑罰)
国は、刑罰を、拷問、火刑、水刑その他の残虐な方法で執行してはならない。
2 前項の規定は、死刑若しくは終身刑を禁止したものと解釈してはならない。刑罰に関する規定の新設。及び、「死刑」を残虐な刑罰としないことの規定。
初期の規定では、第2項に「刑罰は、刑事被告人本人にのみ適用されるのであって、別個の裁判による判決があった場合を除いて、如何なる場合であれ被告人の親類又は関係者にこれを適用してはならない。」と定めていたが、個人主義の観点からは当然なので削除した。第30条(罪刑法定主義、一事不再理)
国は、事前に適正な内容の法律の定めるところによる場合を除くほか、個人の生命又は自由を奪い、若しくは個人に対して刑罰を課してはならない。
2 国は、個人に対して、同一の事実について、重ねて刑罰を課してはならない。
3 国民を処罰する法律又は裁判所の判例の効果は、遡及しない。時効停止の禁止、刑罰不遡及の原則、絶対的不定期刑の禁止を明記した。
初期の改正案にあった「特例裁判所の設置禁止」条項は、削除した。第31条(旅行、居住の自由及び住居の不可侵)
国民は、公共の福祉に反しない範囲において、日本国の領土を自由に旅行し又は居住する権利を有する。
2 住居は個人の安息の場所であり、国は、この国家憲章及び法律の定めるところによる場合を除くほか、住居を侵してはならない。住居に関する規定を新設した。
初期の改正案では「住居は、国民の安息の場所」となっていたが、これを外国人に適用しない理由は無いので、「個人の」と改めた。第32条(国籍離脱自由、国外追放禁止)
国民は、日本国籍を自由に離脱する権利を有する。
2 国は、国民を、その意に反して国外へ追放してはならない。国外追放に関する規定の新設。
初期の改正案では、第3項で「日本国領土において発生した外国人の犯罪は、日本国の司法権が第一義的に行使される。」と定めていたが、これは国家主権の対外的最高性から、国家がその領土において属地的管轄権を有するのは当然であり、わざわざ憲法典で規定する必要は無いので、削除した。第33条(財産権)
国民は、公共の福祉に反しない範囲において、私有財産を所有し、それを相続し若しくは相続させる権利を有する。
2 国は、正当な補償を行うことを条件として、法律の定めるところにより、国の安全保障、災害の防止、環境の保全、公共施設の建設、都市計画その他公共の利益のために、私有財産を収用することができる。「相続権」「国防上の必要」による土地収用の規定を新設した。相互主義の立場から、財産権の保障については「全ての国民」に限定し、「何人も」とはしなかった。
第34条(職業選択・営業の自由)
国民は、公共の利益に反しない範囲において、その職業を自由に選択し、自由に営利活動を行う権利を有する。職業選択、営業の自由に関する規定を一部改正した。
初期の改正案では第1項と第2項を分割し、第2項に「企業、財団その他の営業の為の団体」という文言があったが、そこまで明記する必要は無いので削除した。第35条(個人情報権)
国民は、公共の福祉に反しない範囲において、自己の個人的な情報の保護及び国の管理する自己の個人情報を閲覧する権利を有する。
2 何人も、国民の私事を暴露し、平穏な生活を害してはならない。ただし、公人については、公共の福祉に反しない範囲において、必要なる最小限度で制限することができる。情報化社会及び過去の判例を見据えて、私事秘匿権(プライバシーの権利)・個人情報閲覧権の新設。
第36条(請願権、国家賠償請求権)
国民は、その要望に関して、平穏の内に国に請願する権利を有する。
2 国民は、国の責任によって生じた損害の賠償を請求する権利を有する。国家賠償請求権については、「相互主義」の観点から「国民」に限定した。
第37条(刑事補償請求権)
何人も、刑事裁判によって発生した不利益に対する補償を請求する権利を有する。初期の改正案では「全ての国民は」となっていたが、これを「何人も」に改めた。
第38条(生活権、社会福祉)
国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、社会福祉、社会保障、公衆衛生その他の社会政策を実施しなくてはならない。第39条(家族)
家族は、社会の基本構成単位であり、国家秩序の特別の保護を受ける。
2 婚姻は、両当事者の合意に従い、法律の定めるところにより届け出ることによって成立する。
3 国は、両親が不明である子女若しくは両親が無能力者である子女を、両親に代って養育する。諸外国の立法を踏まえて、家族に関する規定・国による里親の規定を新設した。但し、当然のことながら、この条文はいわゆる「家制度」を定めたものではない。なお、法律婚について、「届出成立要件説」に立脚した規定を設けた。
第40条(教育権)
国民は、その子弟に能力に応じた教育を受けさせる権利を有し、かつ義務を負う。
2 国は、国民の教育の為に、無償かつ非宗教的な公教育の制度を整備しなくてはならない。
3 国は、能力がありながらも資力の無い国民の為に、奨学金の制度を整備しなくてはならない。「教育内容の平等」ではなく、「教育機会の均等」を規定。また、師弟教育の権利義務を強化。更に、公教育・奨学金に関する規定を新設した。
初期の改正案では第2項に「何人も、学問を為し、その成果を公表し又は教授し、もしくは法律の定めるところにより、私立学校を設置する権利を有する。」とあったが、「学問の自由」と重複するので削除した。第41条(伝統文化の保護)
国は、国民と共にその伝統文化や自然環境を尊重し、歴史的、自然的若しくは学術的な文化財その他の記念物を保護しなくてはならない。文化財保護に関する規定を新設した。
第42条(勤労権)
国民は、正当で人間らしい勤労条件の下で勤労する権利を有する。
2 最低勤労条件は、法律で定める。
3 国は、海外の日本人勤労者の経済的、社会的権利の保護に留意しなくてはならない。勤労は義務でもあり、(プログラム規定ではあるが)権利でもある。また、海外日本人勤労者に関する規定を新設した。
第43条(団結権、団体行動権)
国民は、勤労者として団結し、団体行動をする権利を有する。
2 勤労者団体に関する規定は、法律で定める。ただし、公共企業体の職員その他の公務員については、公共の福祉に反しない範囲において、これを行使することを要する。第44条(情報公開請求権)
国民は、法律の定めるところにより、公共の福祉に反しない範囲において、国の保有する情報の公開を求める権利を有する。情報公開に関する規定を新設した(個人情報としてよりも、一種の参政権として)。
第45条(公の報道の責務)
公の報道は、民主政体と公共の福祉に奉仕し、かつ、中立公正でなくてはならない。報道に関する規定を新設した(一種の参政権として)。
第46条(国家憲章、法律遵守義務)
何人も、この国家憲章に基づく民主政体を擁護し、この国家憲章及びこの国家憲章の下で成立した全ての法律を遵守する義務を負う。初期の改正案では「国民は」となっていたが、義務の対象を「何人も」に拡大した。
第47条(納税義務)
国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じた納税の義務を負う。「経済的能力に応じた」を追加。
第48条(国防義務)
国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じた国防の義務を負う。
2 国は、この条の規定の定めるところにより、法律を定めて国民の権利を制限するときは、国民の基本的人権並びに国民生活への影響に、最大限の配慮を行わなくてはならない。「国防の義務」の新設と、それに対する厳格な注意規定の併設(なお、別に「良心的兵役忌避」の制度も明文化した)。「国防の義務」が規定されたからといって、ただちに兵役の制度が生じるわけではなく、具体的な国際状況を加味した国防義務内容が別法律によって規定される。現在のような平和時には、志願制の軍隊で十分であろう。
なお、初期の改正案第48条には、「国民は、法律の定める所により、その能力に応じた防災及び民間防衛の義務を負う。」という防災義務の規定があったが、憲法典に規定する必要は無いので削除した。第49条(勤労義務)
第42条と対になる条項。
国民は、法律の定める所により、正当で人間らしい勤労条件の下で、その能力に応じた勤労を行う義務を負う。第50条(環境保護義務)
国民は、我らと我らの子孫の繁栄のために、豊かな国土景観を保全し、自然環境の地球的規模の保護に努める義務を負う。環境保護の義務への格上げと明文化を行った(但し努力義務)。
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製作著作:健論会・中島 健 無断転載禁止
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