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第5章 立法府
国会については、完全な三権分立化・議院内閣制の廃止の観点、及び衆議院と参議院の区別の点から、いくつか修正を加えた。
第51条(国会の地位)
国会は、この国家憲章に定めるところにより、立法権を行使する。
2 国会に、衆議院と参議院を置き、衆議院と参議院(以下「両議院」という。)に、それぞれ衆議院議員、参議院議員を置く。
3 国会は、首都に位置する。「国権の最高機関」の文言を廃止する(三権分立の厳格化)。議会の場所に関する規定の新設。
第52条(役員選任、議院規則)
第53条(事務総局、委員会等)
両議院に、議長、副議長その他の役員を置く。
2 両議院の議長、副議長その他の役員は、各議院の議院の選挙により選出する。ただし、議長並びに副議長は、国会議員の中から選出しなければならない。
3 議長は、各議院を代表し、議事を整理し、議院に関する事務を総理し、国会内における秩序を維持する。
4 副議長は、議長を補佐し、議院に関する事務を分担掌理し、議長が職務を行うことができないときは、議長に代わって議長の職務を行う。
両議院に、事務総局、委員会その他の機関を置く。
2 この国家憲章に定めるものの他、両議院の組織に関して要な事項は、法律で定める。第54条(国会議員の選出)
衆議院議員は、法律の定めるところにより、直接選挙若しくは間接選挙により選出される。
2 参議院議員は、国民を代表し、全国を単位とする選挙区で選出される。また、参議院議員の選出は、投票者が立候補者の中から参議院議員にふさわしいと思われる人物を10名記し、投票する。
3 海外に居住する国民は、参議院において代表される。
4 この国家憲章に定めるものの他、衆議院議員及び参議院議員(以下、「国会議員」という。)の選出に関して要な事項は、法律で定める。参議院議員選挙の制限連記制を規定する。また、海外居住者に関する規定の新設。
第55条(議員の就任と宣誓)
国会議員は、就任に先立ち天皇に対して、次に掲げる言辞でもって宣誓を行わなければならない。
「私(宣誓者氏名)は、全日本国民の代表者であることを自覚し、もっぱら公の利益のために職務の遂行に邁進し、あらゆる点について民主政体を尊重することをここに宣誓する。」
2 国会議員は、全国民の代表者であって、一地域または一利益の代表者ではないことを自覚しつつ、公務を遂行しなければならない。宣誓の言葉の新設。及び「全国民の代表」であることの明記。
宣誓は、解散後・選挙後はじめての国会の開会式の場で一斉に行なうことになろう。第56条(議員定数)
衆議院議員の定数は、法律で定める。
2 参議院議員の定数は、60議席とする。参議院の定数の限定(そのかわりに、1議席からでも法案提出が可能となる)。
初期の改正案では、参議院の定数は100議席としていたが、これを60議席に減らし、2年毎に20人ずつ改選するものとし、なるべく全国の代表が選出されるようにした。第57条(選挙人・選挙資格の要件)
国会議員および国会議員を選出する選挙の選挙人たるの資格は、法律で定める。ただし、引き続き10年以上日本国籍を有しない者は、国会議員を選出する選挙に立候補することができない。
2 現に総理大臣、国務大臣、裁判官、軍務官その他の国家公務員である者若しくは汚職事件で有罪の判決が確定してから5年を経過していない者は、国会議員を選出する選挙に立候補することができない。
3 何人も、同時に衆議院議員と参議院議員を兼ねてはならない。公務員、汚職議員の立候補禁止(公民権一部停止)の規定の新設。勿論総理大臣と国会議員は兼任できない。
第58条(議員の任期)
衆議院議員の任期は3年、参議院議員の任期は6年とする。ただし、衆議院議員の任期は、衆議院の解散があったときはその時点で終了する。
2 参議院議員の選出は、2年毎に20議席ずつ行う。
3 国会議員を選出する選挙は、国会議員の任期が満了する日よりも30日以上前に実施しなければならない。衆議院議員の任期を4年から3年に短縮。また、参議院を20議席ずつ改選するものとした。
第59条(議員歳費)
国会議員は、法律の定めるところにより、相当額の歳費を受け取ることができる。第60条(国会議員の不逮捕特権)
国は、国会が開会しているときは、次の各号に掲げる場合を除くほか、国会議員を逮捕することができない。
一 当該国会議員の所属する議院の許諾があるとき
二 現に犯罪を行ったとき
2 国は、国会議員を逮捕した場合であって、その国会議員の所属する議院の請求があったときは、国会が開会されている間、その国会議員を釈放しなければならない。ただし、当該国会議員が現に犯罪を行って逮捕されたときは、この限りでない。第61条(国会議員の免責特権)
国会議員は、国会で行った演説、討論または表決については、国会の外部で法律上の責任を問われない。第62条(規則の制定、国会議員の罷免)
両議院は、それぞれその会議その他の手続き及び規律に関する規則を制定し、院内の秩序を乱した者を懲罰する。ただし、国会議員の罷免については、その所属する議院の国会議員の4分の3以上の賛成がなければ、罷免されない。議院罷免の要件を4分の3以上の賛成多数とした。
第63条(通常国会)
通常国会は、年1回開催する。第64条(臨時国会)
総理大臣または両議院の議長は、臨時国会の召集を上奏することができる。
2 両議院の議長は、いずれかの議院の議員の10分の1以上の請求があったときは、臨時国会の召集を上奏しなければならない。「抑制と均衡」の法理の下で、総理大臣も議会を召集することができる。
但し、直接「召集することができる」のではなく、「召集を上奏することができる」とした。第65条(解散と緊急集会、緊急法律)
衆議院が解散されたときは、解散の日から30日以内に衆議院議員を選出する選挙を行わなくてはならない。
2 衆議院が解散されたときは、参議院は閉会される。
3 総理大臣は、前項の規定に関わらず、国家の緊急事態において必要と認めるときは、参議院の緊急集会を招請し、参議院の同意を得て、緊急法律を布告することができる。この場合において、緊急法律は法律と同一の効力を有する。
4 総理大臣は、前項の定めるところにより緊急法律を布告したときは、次の国会が召集された日から10日以内に、衆議院の同意を求めなければならない。緊急法律は、同意を求めから10日以内に衆議院が同意を与えないときは、将来に向かってその効力を失う。ここでいう「緊急政令」とは、大日本帝国憲法でいう「緊急勅令」「独立命令」のことではなく、ただ緊急集会によって成立した法律を指しているに過ぎない(実際、参議院の議決を要している)。但し、その効力は、衆議院で否決されたときでも「将来に向かってその効力を失う」のみで、遡及効は無い。もっとも、遡及効を必要とするような場合は、新たに立法措置をとればよい。
第66条(定足数、表決)
衆議院は、定数の4分の1以上の衆議院議員が出席しなければ、議事を開き議決をおこなうことができない。
2 参議院は、定数の5分の3以上の参議院議員が出席しなければ、議事を開き議決をおこなうことができない。
3 両議院の議事は、この国家憲章に特別の定めがある場合を除くほか、出席した国会議員の過半数の賛成を得て可決される。可否が同数となったときは、議長の裁定による。衆議院については定足数の制限を緩和し、逆に参議院では強化した。このため、野党が審議拒否戦術に出ると、定足数不足になって会議がひらけなくなる。参議院議員については、個々人の良識が期待されているからである。
第67条(議事の公開及び議事録)
両議院は、議院で行われた討議を議事録に記録し、国民に公開しなければならない。ただし、各議院の定数の4分の3以上の賛成があったときは、討議又は議事録を公開しないことができる。議会の公開及び議事録に関する規定の新設。
第68条(法律の成立、総理大臣の拒否権)
衆議院議員は衆議院の全議員数の100分の1以上の数の議員の共同で、参議院議員は単独で、それぞれ法律案を提出することができる。
2 法律案は、両議院において可決され、かつ、総理大臣の署名を得たときは、法律として成立する。
3 両議院の議長は、法律案が可決されたときは、総理大臣にこれを送付し、総理大臣の署名を求めなければならない。
3 総理大臣は、法律案の送付を受けたときは、その法律案に対する署名をしないことができる。
4 両議院は、総理大臣が送付を受けた法律案を15日以内に署名しないときは、当該法律案を再び議題として審議することができる。この場合において、当該法律案は、両議院が出席議員の3分の2以上の多数で再議決したときは、法律として成立する。この場合においては、参議院議長が総理大臣に代って法律案に署名するものとする。第69条(法律の認証、公布)
法律は、天皇による認証及び公布を経て効力を生じる。総理大臣拒否権の規定を新設した。
第70条(衆議院の優越権)
次の各号に掲げる議案は、先に衆議院に提出しなければならない。
一 予算及び決算
二 対外関係並びに条約に関すること
2 前項に掲げる議案について、衆議院で可決し、参議院でこれと異なった議決が行われた場合であって、その議案は衆議院における出席議員の3分の2以上の多数で再議決されたときは、その議案は、成立する。
3 第1項に掲げる議案が両議院で可決されたときは、その議案は総理大臣の署名及び天皇の認証によって効力を生ずる。ただし、両議院で可決された第1項に掲げる議案を、送付されてから15日以内に総理大臣が署名しないとき、その議案は、衆議院及び参議院における出席議員の3分の2以上の多数で再議決された時は、成立する。この場合においては、衆議院議長が総理大臣に代って予算案に署名し、天皇が認証し公布するものとする。第71条(両院協議会)
両議院は、両議院の間の問題を調整するため、両院協議会を開く。
2 両院協議会は、参議院から21人、衆議院から20人の議員を以って構成する。
3 両院協議会に、会長1人を置く。
4 会長は、委員の中から互選する。
5 会長は、両院協議会を代表し、議事を整理し、両院協議会に関する事務を掌理する。
6 両院協議会は、定数の2分の1以上の議員が出席しなければ、議事を開き議決をおこなうことができない。
7 両院協議会の議案は、出席議員の過半数で可決される。可否が同数となったときは、会長の裁定による。第69条・第70条第1項で定められた優越権に関する事項は抽象的な規定であるため、両院間で優越権に関する争いが生じる可能性がある。そこで両院協議会を設けてこれを決定することになるが、その議員数は参議院が優越するように設計されている。
第72条(国政調査権)
両議院は、司法の独立に配慮しつつ、各々国政に関する調査を行い、これに関して証人の出頭、証言及び記録の提出を求めることができる。特に「司法府の独立に配慮しつつ」の文言を加えた。
第73条(行政府の公務員の議会出席権及び義務)
総理大臣、国務大臣その他の行政府の公務員は、何時でも議案について発言するため、衆議院若しくは参議院に出席することができる。
2 総理大臣、国務大臣その他の行政府の公務員は、衆議院若しくは参議院から答弁または説明のために出席を求められた時には、出席を求められた議院に出席しなければならない。第74条(裁判官弾劾裁判所、訴追委員会)
参議院に、罷免の訴追を受けた裁判官の裁判を行うため、参議院議員で組織する裁判官弾劾裁判所を置く。
2 裁判官弾劾裁判所に判事を置き、参議院議員を以って充てる。
3 衆議院に、前項の訴追のため、裁判官訴追委員会を置く。
4 裁判官訴追委員会に委員を置き、衆議院議員を以って充てる。
5 この国家憲章に定めるもののほか、訴追および弾劾に関する事項は、法律で定める。弾劾裁判(裁判官役)は参議院、訴追委員会(検察官役)は衆議院の専権事項とする。
第75条(総理大臣弾劾)
参議院は、総理大臣の職務に国家憲章違反その他の重大な過失があった場合、これを弾劾することができる。総理大臣弾劾規定の新設。
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