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第6章 行政府
行政府においては、従来の議院内閣制を廃止し、首相公選制へ移行する。
「総理大臣」とは行政府の首長たる独任制の機関であり、合議制の機関たる「内閣」の構成員の首席である「内閣総理大臣」とは異なる。
なお、首相公選制を採用する理由としては、本誌2001年9月号「 首相公選制に賛同する 」を参照されたい。第76条(総理大臣)
総理大臣は行政府の最高指揮監督官であり、この国家憲章の規定に従って行政権を行使する。初期の改正案では、総理大臣は「大統領」として「元首」「政治的代表」とされ、また「天皇」が「君主」「文化的代表」であると規定されていた。しかし、第2版では、これを整理して「大統領」を「総理大臣」とし、行政府の長(独任制の機関)とした。。
第77条(総理大臣指名選挙)
総理大臣を指名する選挙は、全国を単位とする選挙区による直接選挙で行う。
2 前項の選挙において、候補者が4名以上立候補したときは、候補者を3名に限定するための予備選挙を行う。
3 引き続き20年以上日本国籍を持たない日本国民、現に国会議員、裁判官又は公務員である者は、この国家憲章に定める場合を除くほか、総理大臣となることができない。総理大臣立候補に関する国籍及び兼職禁止条項。「公務員である者」つまり現役軍人の立候補も当然のことながら禁止されている。また、総理大臣の被選挙権は30歳からとなる。
4 総理大臣の任期は4年とする。
5 何人も、2度を越えて総理大臣となることはできない。権力の集中を防止するため、総理大臣の三選は(県知事と異なり)禁止される。よって、最高は2期8年までである。
第78条(総理大臣の就任と宣誓)
総理大臣は、就任に先立ち天皇に対して、次に掲げる言辞でもって宣誓を行わなければならない。
「私(宣誓者氏名)は、国家に対し忠誠であり、国家及び全国民の利益のため、誠実に自らの職務を遂行し、あらゆる点について日本国国家憲章を擁護し、かつ遵守することをここに厳粛に宣誓する。」
2 総理大臣は、議会による弾劾を除いては、罷免されない。宣誓の言葉の新設。現在とは異なり、厳格な三権分立制度を採用するため、国会の弾劾以外で総理大臣は罷免されない。
総理大臣はあくまで天皇に対し宣誓し任命される存在なのであって、大統領ではない。
なお、初期の改正案では、「国家及び天皇に対し忠誠であり」として、忠誠を尽くすべき対象に「天皇」を加えていたが、天皇の代理である摂政は、天皇と同格になるためそれでもよいが、「助言と同意」を与える対象に「忠誠である」というと矛盾を生じる可能性があるので、この部分から「及び天皇」を削除した。第79条(国務大臣任免)
総理大臣は、国務大臣を任命し、罷免する。
2 国務大臣の人数の限度は、法律でこれを定める。ここでいう「国務大臣」とは、現行制度の如く「合議制の執行機関」たる「内閣」の構成員なのではなく、「総理大臣」という独任制の執行機関の補助機関である。
第80条(衆議院解散権)
総理大臣は、衆議院の解散を上奏することができる。総理大臣にも議会(衆議院)解散権を付与する(フランス式)。
第81条(職務)
総理大臣は、次に掲げる事務をつかさどる。
一 国務を総理し、国家の行政権を行使すること。
二 行政部を代表して予算案、法律案その他の議案を議会に提出し、一般国務および国防外交について議会に報告すること。アメリカと違って、行政府にも予算案、法律案提出権がある。
三 我が国を代表して外交関係を処理し、条約その他の国際協定を締結すること。ただし、条約の批准については、事前または事後に国会の承認を得るものとする。
四 必要に応じて国会の召集を上奏し、国会に出席すること。
五 この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。ただし、政令は、法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
六 特使、大使および公使を任命すること。
七 参議院の同意に基づいて、最高裁判所判事総長を指名すること。
八 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除および復権を決定すること。
九 法律の定めるところにより、栄典の授与を決定すること。
十 国が行う儀式を主宰し、天皇が行う儀式に参加すること。
十一 外国の元首および要人と会談し、またそのために国外に出張すること。
十二 国軍最高司令官として、国軍の最高指揮命令監督権を行使し、また国軍の部隊を観閲すること。「国軍最高司令官」であることの規定の新設。
十三 必要と認める事項について、国民投票を実施すること。但し、国民投票を行うには、国会のいずれかの議院の選挙が実施されてから1年以上経過しなくてはならない。
国民投票実施権の新設。
第82条(国務大臣の任務)
国務大臣は、総理大臣を補佐し、行政府の事務を分担して掌理する。第83条(国務大臣の責任)
国務大臣は、任期中総理大臣の同意がなければ訴追されない。ただし、これがため、訴追の権利は消滅しない。第84条(非常事態宣言)
総理大臣は、国民生活に重大な影響を与える事由が発生し、かつ、一般の警察力を以ってしてはこれに対処できないと認めるときは、非常事態を宣言することができる。
2 総理大臣は、前項の規定により非常事態を宣言したときは、その承認を得るため、これにつきただちに参議院に報告し、30日以内に参議院の承認を得なければならない。参議院が承認しないときは、非常事態は将来に向かって無効となる。
3 総理大臣は、第1項の規定により非常事態を宣言したときは、全国の警察、沿岸警備組織その他の司法警察機関の一部又は全部をその統制下に置き、国軍の一部又は全部に治安維持のため、警察を支援させることができる。
4 この国家憲章に定めるもののほか、非常事態に関し必要な事項は、法律で定める。非常事態に関する条文の新設。非常事態とは、主に全国の警察・海上保安庁を統制し、国軍の一部を治安出動させる場合の宣言である。現行警察法上の「緊急事態の布告」に近い。非常事態宣言では、特段国民の権利制限は行われない。
第85条(戒厳)
総理大臣は、国土が戦争、動乱、天災その他の災害によって著しく荒廃し、又は政府の機能の全部又は一部が停止し、若しくは国家が交戦権を発動するときは、事前に国会の承認(衆議院が解散されているときは、 第64条 に規定する緊急集会による参議院の承認。)を得て、期間を定めて戒厳を布告することができる。ただし、特に緊急の必要があるときは、国会の承認を得ないで戒厳を布告することができる。
2 総理大臣は、前項但し書きの規定により戒厳を布告したときは、その承認を得るため、これにつきただちに国会に報告し、15日以内に国会の承認を得なければならない。国会が承認しないときは、戒厳令は将来に向かって無効となる。
3 戒厳が布告されたときは、前条で定める非常事態も同時に宣言されたものと看做す。
4 総理大臣は、戒厳が布告されたときは、法律の定めるところにより、他に有効な手段が存在しない場合若しくはやむを得ない事由のある場合に限り、必要なる最小限度において、第3章に定める国民の権利の一部又は全部を制限し、若しくは地方公共団体の事務を直接行うための緊急政令を定めることができる。ただし、国民の生命、内心及び信教の自由は、如何なる場合においても、侵してはならない。
5 前項の緊急政令は、天皇の認証を必要としない。
6 第4項の緊急政令は、戒厳が廃止された日に失効する。
7 戒厳が宣言されている場合において、総理大臣は、最高裁判所の承認を受けて、衆議院議員若しくは参議院議員の選挙を、一回に限り、最大2年間延期することができる。
8 この国家憲章に定めるもののほか、戒厳に関し必要な事項は、法律で定める。戒厳に関する条文の新設。こちらは、権利制限を伴うものであり、それだけに条件も厳しい。
なお、初期の改正案には、この他に「交戦権発動宣言」の規定もあったが、外交軍事に関しては立法政策上の問題であるので、憲法典からは削除した。※修正前の条文(旧第85条)
総理大臣は、憲章秩序、民主政体、天皇制、国の主権・領土と独立及び市民生活の安全、並びに国民の利益が侵害された場合であって、その必要があると認める場合には、事前に国会の承認(衆議院が解散されているときは、日本国国家憲章第65条に規定する緊急集会による参議院の承認。)を得て、我が国固有の自衛権に基づいて交戦権の発動を宣言し、もしくは撤回することができる。ただし、特に緊急の必要がある場合、もしくは現に我が国が侵略されている場合には、国会の承認を得ないで交戦権の発動を宣言することができる。
②総理大臣は、前項但し書きの規定により交戦権の発動を宣言したときは、その承認を得るため、これにつきただちに報告し、15日以内に議会の承認を得なければならない。議会で承認されない場合、交戦権の発動はただちに撤回され、将来に向かって無効となる。
③交戦権の発動が宣言された場合においては、非常事態宣言及び戒厳の布告がなされたものと見做す。
④総理大臣は、交戦権の発動が宣言されている間、国軍を戦時体制に移行させ、戦闘任務に出動させることができる。第86条(総理大臣の臨時代理)
総理大臣が職務を遂行できなくなったとき、または欠けたときは、総理大臣が予め指定された国務大臣が臨時総理大臣となる。臨時総理大臣が職務を遂行できなくなったとき、または欠けたときも同様とする。
2 総理大臣若しくは臨時総理大臣は、前項に定める臨時総理大臣となるべき国務大臣を指定しなければ、総理大臣若しくは臨時総理大臣に就任することはできない。
3 臨時総理大臣は、新しい総理大臣が選出されるまでの間、総理大臣の職務を遂行する。
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