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健章時報 1999年12月
■皇居で文化勲章授与式(11月3日)
「文化の日」である11月3日、先に発表された文化勲章受賞者らに対する授賞式が皇居でおこなわれた。今回受賞したのは、小説家で元海軍予備士官の阿川弘之氏(78)、日本画家の秋野不矩氏(91)、英米法・憲法学者で元最高裁判事の伊藤正己氏(80)、日本文化研究者の梅原猛氏(74)、生物有機化学者の田村三郎(82)の5名だった。
筆者としては、個人的に文士の中でも特に敬意を表している阿川弘之氏が今回文化勲章を授与されたことを喜びたい。
■自由党、自民党と合流検討(11月10日)
報道によると、自由党の小沢一郎党首が自由民主党との合流を検討しており、自民党側にも非公式に伝えていたことが10日、明らかになったという。これは、自自公連立政権の中で独自性を次第に発揮できなくなり、また衆議院議員総選挙における選挙協力や政権運営に関する合意が進んでいないからであると見られている。
無論、現在の政局においては、自由党自身としてはみずからの存在意義をあまり感じることが出来ないのかもしれない。しかし、内政、外交の両面にわたり、これまでにも与党・自由民主党以上に先見的な政策を主張してきた同党の存在は大きく、また同党の主張の根源である小沢一郎党首の存在も又大きい。ここで、自由党が自民党と合流すれば、派閥の領袖の1人となるに過ぎない小沢氏の存在感は、却って小さくなってしまうのではないだろうか。同じ主張を持つ政党が合流するのは好ましいことではあるが、自民党には、自由党的な考え方を持つ人々の他にも、加藤紘一前幹事長や河野洋平外相のように、「ハト派」と呼ばれるほとんど別政党の議員とも思える政治家もまた一緒に所属しているのである。■天皇陛下、御即位10周年記念式典(11月12日)
今上天皇陛下の御即位10周年の記念式典が東京で開催され、皇居には6000人が一般参賀に訪れた。
もっとも、今回の一連の祝賀行事の中で、一つだけ腑に落ちない点があったとすれば、それは皇居前広場で開催された民間主催の祝賀行事において、若者に人気のロックグループらが出演したことである。無論、出演者側としては、行事の性質をよく理解してのことであり、それ自体は全く問題は無かったのであるが、その場にいたファンがそこまで理解していたかどうかは明かではない。
とはいえ、実はこうしたことは、陛下ご自身は全く問題になさっていないのかもしれない。例えば、当時警視庁機動隊を指揮していた佐々淳行氏が書いたところによれば、かつての東大紛争時代に「学生鎮圧」の内奏を警視総監を通じて行ったところ、昭和天皇陛下はそれについて「双方に死者が出なかったことはよかった」と述べられ、まるで機動隊と学生集団との対決を兄弟喧嘩の如く見ておられたという。つまり、昭和天皇陛下は騒乱事件をも国民全体の大局的な視野から御覧になっていた(昔風に言えば「一視同仁」)ということであって、こうした「国民統合の象徴」に相応しい真の帝王学は今上天皇陛下にも受け継がれているからである。■石原都知事、台北と姉妹都市提携で基本合意(11月14日)
報道によると、台湾(中華民国)を訪問している東京都の石原慎太郎知事は、台北市の馬英九市長とホテルで会談し、首都である両都市が時機を見て姉妹都市提携を結ぶことで基本合意した、という。
今回の石原都知事の訪台では、李登輝総統との会談を持つなど日台関係の強化に大きな意義があるものであったが、政府の公式な外交が日台関係について冷淡であるだけに、都市レベル、民間レベルでのこうした交流には大きな期待がかけられているといえよう。■神奈川県警元本部長ら、犯人隠匿罪で書類送検(11月14日)
報道によると、神奈川県警外事課の元警察官・酒寄美久容疑者(元警部補)の覚醒剤使用事件をもみ消した事件で、県警は14日、隠蔽工作を直接指揮していた当時の渡辺泉郎本部長(今年2月に退職)ら8人を犯人隠避容疑などで書類送検した、という。
今回の神奈川県警における一大不祥事は、正に県警に所属する警察官中でも幹部警察官の職務意識の低下によるものであり、厳しい反省が求められる。特に、身内の不祥事を監察官室までも関与してもみ消すというのは、組織の目的を忘れ、目的意識が失われて組織維持自体が自己目的化していたことの表れであり、職員のモラルを疑うものである。警察において目的意識とは、正しい法秩序を暴力から維持し、市民の安全を確保することであるが、これには、当然のことながら上司の隠蔽工作に対しては自身のキャリアを賭して抵抗する、といったようなことも含まれるはずである。■オウム新法、衆議院本会議で可決(11月18日)
報道によると、オウム真理教などの無差別大量殺人行為を行った団体に対して、公安審査委員会の採決を以って観察処分や立入検査、再発防止処分が可能となるオウム新法が自民・自由・公明・民主の賛成多数で可決され、参議院に送付された、という。この法律案は、決議の際民主党側からの提案によって一部修正され、5年ごとに廃止を含めた見なおしを行うこととなった。
ところで、今回のこの法案では、無差別殺人行為は過去10年以内に行われたものであること、5年ごとに見なおすことなどが定められているが、何故こうした修正がなされたのであろうか。そもそも、その主体がオウムであろうとなかろうと、無差別殺人行為を行った団体があればこれからもこれを規制してゆくべきであるし、その点、無差別殺人行為を過去10年に限定する必要は無い。また、5年ごとの見なおしといっても、将来再び同じようなカルト教団が誕生するかもしれない(現に、「ライフスペース」なる新組織が最近報道されている)以上、この団体規制法案を廃止してしまう必要は無いはずである。こうした条件の裏には、「この法案はあくまでオウム対策」という合意があるからなのであるが、逆に、この法案こそは「オウム対策」といって目的を矮小化することなく、我が国におけるカルト教団対策立法の切り札とすべきではないだろうか。■国家公務員給与、引き下げ(11月18日)
報道によると、来年度の国家公務員等の給与を平均9万5000円減額する法案が、衆議院本会議で自民・自由・公明・民主の賛成多数で可決・成立したという。
しかし、果たして、こうした給与引き下げの根拠となる最近の物価情勢は下落しているのであろうか。あるいは、これら公務員の働きが落ちているというのであろうか。一連の官僚不祥事のあとも、幹部クラスの国家公務員の給与大幅引き上げはなお実現していないが、その中で今回の給与引き下げは、官僚不祥事問題の解決とはほどとおいものであったといえよう。■国防省設置へ向けて議員連盟(11月20日)
報道によると、自由民主党、自由党らの参議院議員が、防衛庁の「国防省」乃至「防衛省」昇格を求める超党派議員連盟を組織することとなったという。この議員連盟には村上正邦自民党参議院議員会長、扇千景自由党参議院議員会長らが中心となっており、更に両党だけでなく民主党や公明党からも参加を募っている。これは、防衛庁が国家安全保障という国家機能の中心を担う重要官庁でありながら、総理府の外局として省より下のままというのは問題であり、自衛隊員の士気にもかかわるためで、今後、2001年の中央省庁再編時に「国防省設置法案」を議員立法のかたちで提出するという。
そもそも、この防衛庁昇格問題は、橋本龍太郎内閣当時に行政改革会議側からも答申があったものであるが、当時の連立政権の相手であった社会民主党や新党さきがけに配慮しすぎるあまり、結局総務省の外局として位置付けられてしまったという経緯がある。しかし、上述したように、防衛庁ほどの重要な国家行政機関が外局のままというのはそもそも行政の設計として問題であるし(外局というのは、あくまで本省の一部という建前であり、この場合は総理府・総務省の「雑務」の中に位置付けられているということになる)、現に、防衛庁は、外局の更に外局として防衛施設庁を持っていることからも、事実上「省」と同じ扱いを受けている。この超党派議員連盟が一日も早く「国防省」設置を達成することを願ってやまない。■自衛隊機墜落で都内停電(11月22日)
22日午後1時ごろ、東京都23区北西部から都下北東部にかけて停電がおこり、交通や産業に大きな影響が出た。これは、当日訓練飛行中であった航空自衛隊の練習機が緊急着陸を試み、その際高圧電線を切断してしまったためで、自衛隊機に搭乗していたパイロット2人は死亡したという。それにしても、今回の停電騒ぎは、第2次関東大震災が発生した際首都はどのような混乱に襲われるのか、を体験するよい機会だったのではないだろうか。
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