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  健章時報 1999年11月  


パキスタンで軍事クーデター(10月13日)
 報道によると、パキスタンで12日、ムシャラフ陸軍参謀総長らが指揮するクーデター軍がシャリフ首相ら現政権の閣僚、放送局、空港等主用な拠点を制圧し、その後首相を解任し憲法を停止。自らが最高行政責任者に就任したという。なお、同国の大統領はそのまま留任している。パキスタンが核保有国であり、またインドとの領土問題で頻繁に小競り合いを続けている発展途上国であることから、軍事政権の手に核兵器管理権がおさめられるのは多少危険な印象を受ける。だが、情報によれば、ムシャラフ氏はサダム=フセイン・イラク大統領の如き政治的野心家では全く無く、実際軍事政権の「閣僚」に海軍・空軍参謀総長にまじって民間人、女性も任命している点や憲法の人権条項を準用する等発言していることから、突然何らかの国際紛争を誘うということはあるまい。

西村防衛政務次官、核武装発言(10月20日)
 報道によると、小渕内閣の西村真悟防衛政務次官(自由党)は19日、発売された週刊「プレイボーイ」誌での対談で、我が国も核武装について国会で検討すべきこと等の持論を展開し、物議を醸しているという。
 記事の中で西村次官は、インドとパキスタンとの核開発に関して意見を求められた中で、個人的な見解としつつ「核を持たないところがいちばん危険なんだ。日本がいちばん危ない。日本も核武装したほうがええかもわからんということも国会で検討せなアカンな。」と述べたという。また、その他の部分では、「核とは『抑止力』なんですよ。強姦してもなんにも罰せられんのやったら、オレらみんな強姦魔になってるやん。けど、罰の抑止力があるからそうならない。」「周辺諸国が日本の大都市に中距離弾道ミサイルの照準を合わせておるのであれば、我々はいかにすべきなのかということを国会で論議する時期に日本もきているんです。」、(不審船舶の接近といった事態に対して)「今の段階では海上警備行動の発令でしょう。でも、今度はホンマにやる。ホンマに撃って、そんで撃沈する。」、(「地球防衛軍」でも創設したらどうか、との編集者の問いに)「そら、オモロイ。全世界への展開。『大東亜共栄圏、八紘一宇を地球に広げる』や。」等とも発言しているという。
 西村次官の発言内容そのものについては、必ずしも突飛かつ異常なものと言えるわけではない。「プレイボーイ誌」で次官が語ったのは、普通の表現をすれば、①核抑止力のあり方についても国権の最高機関たる国会で議論があっていい、②周辺諸国は既に大量破壊兵器の運搬手段を保有しているのであれば、我が国としても防衛策を講じなければならない、③領海を侵犯した不審船舶は、危険であれば撃沈する、といったことであって、とくに②や③はむしろ極めて妥当な論議である。
 ただ、今回の西村発言に問題があったとすれば、それは次の2点であろう。まず第一に、表現があまりにも砕けすぎ、かつ直截的であることである。例えば、抑止力概念を説明するのに強姦の例を引き、自分も刑法がなければ強姦魔になっているだろう等というのは、酒宴の席での発言ならばともかく、責任ある一国の国防担当者の発言としては品位に欠けるといわなければなるまい(もっとも、だからといって、辻元清美・社会民主党代議士らが主張するように、これが女性蔑視の表現であるということではないが)。あるいは、質問や議論の文脈からして、8割方冗談であることが理解できるものの、『大東亜共栄圏、八紘一宇を地球に広げる』という発言は、あらぬ誤解を惹起し、却って一部政治勢力に批判の言質を与えかねないものであろう。第二に、西村次官の発言それ自体が、あまりにも身軽である点である。この記事内容から察するに、恐らく西村次官は「プレイボーイ」誌の狡猾な編集者に乗せられたものと思われるのであるが、そうしたガードの甘さは、結局のところ西村次官自身に影響として跳ね返ってくるものである。「プレイボーイ」という雑誌の読者層や論壇における位置を考えれば、西村次官はそもそもこの雑誌のインタビューに応じるべきではなかったのではないだろうか。いずれによせ、近年、戦後半世紀にわたり封じられてきた我が国防衛体制の正常化へ向けての議論がようやく「解禁」され、これから有事法制や不審船対策の議論が為されようとしている矢先に、場合によっては冷戦時代の「なんでも反対党」の人々に勇気を与えかねないこうした発言は非常に残念である。
 なお、この西村発言について、鳩山由紀夫・民主党代表は「核武装というのは国威発揚至上主義で、信じられない議論」と批判。志位和夫・日本共産党書記局長も記者会見で「政府の責任ある立場の人が非核3原則の国是に反することを発言するのは許されない。罷免を要求する」等との談話を発表したというが、批判の理由付けが全く妥当ではないと言うべきである。西村次官の発言を「信じられない議論」と批判したいのであれば、それはそうした発言が「国威発揚至上主義」だからではなくて「我が国が推進している世界的な核兵器管理体制と矛盾する可能性がある」からである。また、共産党の批判も、政府の責任ある立場の人間だからこそ国是を変更する可能性があるというのに、それを全く逆にして批判しているのであって、(かつての中村法務大臣辞任要求時と同様)批判としては説得力を欠くといえよう。

キルギスの日本人人質、解放(10月25日)
 報道によると、中央アジアのイスラム原理主義武装集団「ウズベキスタン」に拉致されていた日本人技師ら4人は25日、キルギス政府との解放交渉によって無事解放されたという。キルギス政府は、人権活動家や国会議員など様々な交渉ルートを作り交渉する一方、軍の予備役を招集し特殊部隊を編成するなどして軍事的圧力も強め、最後は何等かの対価が渡された可能性もあるという。

河野外相、「平和主義堅持」と発言(10月25日)
 報道によると、訪韓中の河野洋平外務大臣25日、ソウル市内で講演し、この中で「現在の憲法の平和主義、民主主義、基本的人権の尊重という根幹部分はゆるがせにしてはならない」等と発言したという。更に河野外相は、「半世紀にわたり海外での武力行使、武力による威嚇などを行ってこなかったことは日本国民の選択であり、誇るべきことだ」「多国籍軍に自衛隊は参加できない」等とも発言したという。
 だが、河野外相のこうした発言は、昨今の国内及び国際情勢からすれば極めて疑問といわなければならない。少なくとも、国際政治の事実の点では、先の西村真悟前防衛政務次官のほうがはるかに正確である。そもそも、我が国が「半世紀にわたり海外での武力行使、武力による威嚇などを行ってこなかった」のは、我が国周辺が東西冷戦の東側二大共産国家(ソ連、中国)と近かったからであり、手前勝手な武力行使は東西のバランスを崩すものであったためであり、また、国土を防衛すること自体が、これら二大共産国家の世界制覇をよく抑えたからである。実際、そうした事情が全て変わり、日本国民が「武力行使を行わない」との「誇るべき選択」をした1991年の湾岸戦争では、どうなっていたか。外務大臣として、そのあたりの見解はどうなのか、お尋ねしたいものである。


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