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■「共同声明」に調印はしたが・・・
村山訪朝団、ピョンヤンで共同声明に調印(12月3日)
報道によると、村山富市元首相(社会民主党)を団長とし、野中広務前官房長官(自由民主党)を幹事長とする超党派の訪朝議員団は3日、北朝鮮(自称「朝鮮民主主義人民共和国」)のピョンヤンにて、前提条件なしで国交正常化交渉に入ることを両国政府に勧告するという共同声明に署名し、午後帰国した。これを受けて政府では、国交正常化交渉の再開と経済制裁の解除を検討するという。
もっとも、果たして今回の共同声明にあるように、「前提条件なし」での国交正常化交渉など可能なのであろうか。「前提条件なし」とは、事実上ただちに国交正常化をすることであり、北朝鮮側が主張するような「戦後半世紀の敵視政策の賠償」といったことは当然「前提条件」となる。こうした過去のしがらみを完全に無視するかたちで(つまり、北朝鮮側がそうした法外かつ根拠無き賠償要求をしてこず、また植民地時代の財産請求権を放棄することと引き換えに、対北朝鮮経済制裁を解除する)国交正常化が可能ならば、それはそれでまだ適切な取引なのかもしれないが、そうでなければ単に北朝鮮の無理難題を一方的に受け入れるだけである。しかも、これでは日本人拉致事件の解決には何等結びつかないであろう。
果たして、我が国はそこまでして北朝鮮との国交を回復する必要があるのだろうか。■決裂はNGOの「戦果」ではない
WTO閣僚会議、決裂(12月4日)
報道によると、20日、アメリカ・シアトルで開催されていた世界貿易機関(WTO)の閣僚会議は、結局日米欧で反ダンピング措置の禁止等を巡って対立したまま、決裂したという。
ところで、今回の会議では、シアトル市内に過激派環境保護団体などNGO多数が集まり、一時は暴動を起こすといった事態も発生したが、会議決裂を受けて、これらのNGOは一様に「勝利宣言」をしているという。例えば、ある団体は、「米国、EU、日本、カナダの野望は内外の圧力で粉砕された」等という声明文を発表したが、これがNGOの圧力による決裂であったと言うのはあまりにも傲慢である。会議が決裂したのは、純粋に経済外交上の論点の食い違いや譲歩の限界からであって、決してNGOの圧力が会議を中止においこんだわけではない。暴徒化したNGOは州政府の非常事態宣言と州兵によって鎮圧されたのであって、勘違いをしてもらっては困るというものである。■マカオと台湾は異なる
マカオ、中国に返還(12月20日)
20日、ポルトガル領マカオの施政権が中国(中華人民共和国)に返還された。返還は、英中交渉に手間取った香港(香港島はイギリス本国領土、九龍と新界は99年間の租借)とは異なり比較的スムーズに行われ、今後半世紀は、「1国2制度」の下で引き続き資本主義経済により運営されていくという。
これで、中国が抱える植民地的領土は全て返還されたことになるが、今後、中国が台湾(中華民国)を武力か平和的方法で統一しようとしても、これまでのようには上手くは行くまい。香港、マカオの両植民地とも、領域としては極めて小さい一種の都市国家であり、独自の軍事力を持つわけでもなかった。だが、台湾は「中華民国」というれっきとした独立主権を持つ民主共和制国家であり、なおかつ東アジアでもかなり有力かつ近代的な軍事力を持っている。また歴史的に見て、台湾が中華人民共和国の領土であるかどうかはそもそも必ずしも自明ではない。■少年層の異常犯罪続発
京都の小学校で白昼殺人事件(12月21日)
報道によると、21日午後2時ごろ、京都市伏見区の市立日野小学校で、刃物を持った若い男が校庭で2年の中村俊希君(7歳)をナイフで切りつけ、逃走した。俊希君は首や右腕を切られ、出血多量のため間もなく死亡。中学生か小学校高学年くらいの犯人の男は、凶器の果物ナイフと「小学校にうらみがあり攻げきします」等と書いた犯行声明文を現場に残して徒歩で逃走したという。また、犯行声明文では謎めいた言葉を使い、5枚程度をコピーしてばら撒いたとされる。
その後の報道や犯行声明文からすれば、犯人は恐らく小学校高学年か、中学校1〜2年生程度であろうことが推測される。最近、音羽の幼女殺害事件やら児童虐待事件が報道されているが、それにしても、今回の事件もまた少年法や刑事不処罰年齢の壁によって真相が明らかにされないままに終わってしまうのかと思うと、大変残念である。加害者の親は、自分が加害者であった位の責任感を持って、事態に対応してほしい。■新しい大阪府知事に期待する
横山大阪府知事、猥褻疑惑で起訴され辞職(12月21日)
報道によると、大阪地方検察庁特捜部は21日、選挙運動中の猥褻疑惑で告訴されていた大阪府の横山ノック知事を在宅起訴し、これを受けて知事は辞意を表明した。
今回の事件では、選挙カー車内での猥褻行為の有無について刑事訴訟及び民事訴訟が提起され(横山知事側も女子大生を逆告訴していた)、知事も各種記者会見で「真っ赤なウソ」等と強気の発言を繰り返してたが、不戦敗戦術を採用した民事訴訟の法廷でそのことが逆に強く批判され、府議会からも辞職勧告決議をつきつけられ、最後は辞任に至った。民事訴訟の開き直り的な不戦敗が妥当かどうかは一先ず置くとしても、これで横山氏が地方行政のトップとして相応しくないことが改めて証明されたものと言えよう(恐らく、地検特捜部が起訴に踏み切ったことからしても、裁判では横山被告人側の有罪が言い渡されるであろう)。というのも、今回の事件は、単なる知事の一時的なミスなどではなく、知事自身の人格そのものが顕わになったものだからであり、芸人としてならともかく、行政の世界には全く向かないと言えるからである。
これで、東京と大阪で、期せずして民衆の一時的熱狂で生まれたヒットラー的な知事2人が退場したことになるが、大阪府においても、東京都の石原慎太郎知事の如き大物が是非知事の職についてほしいものである。■鯨類保護は不法行為を正当化し得ない
グリーンピース活動船が調査捕鯨船に衝突(12月21日)
日本捕鯨協会 からの情報によると、南氷洋で国際捕鯨取締条約8条第1項等の規定に基づき鯨類捕獲調査(調査捕鯨)を行っていた共同船舶(株)所有の調査母船「日新丸」(7575総トン、遠山大介船長)は21日、過激派環境保護団体 グリーンピース の活動船「アークティック・サンライズ」号に追突され、「日新丸」は右舷船尾外板を曲損したという(怪我人なし)。同協会によると、「サンライズ」号はそれまで、クジラそのものに飛び移る等の派手な妨害活動を行っていたが、21日現地時間午後2時頃「日新丸」に異常接近し、その後、日新丸の度重なる警告にも関わらず15分間接近を続け、午後2時15分(日本時間午後5時15分)「日新丸」の右舷後部に衝突したという。なお、「サンライズ」号は、97年4月にも、ニュージーランド沖合いで我が国日本のマグロ延縄船に異常接近して漁具を絡め、漁船乗組員を海中に転落させるという「事故」を起こしている。この問題についてグリーンピース側は「日新丸がサンライズ号に衝突した」と発表しており、また、全日本海員組合との間では、「捕鯨問題には、お互いの主張を述べるにとどまったが、海上の安全確保について今後十分安全を確保した行うことで確認」している(10月22日)とも発表している。
99年7月には、我が国のMOX燃料を輸送する武装輸送船「パシフィック・ピンテール」「パシフィック・ティール」両船の出港や入港を妨害したり、98年11月には今回と同じ「日新丸」が火災事故で仏領ニューカレドニア・ヌメアに寄港した際、出港を妨害したりといった違法行為を行っているが、今回の追突も、グリーンピースの無法ぶりを改めて印象づける結果となったと言えよう。無論、今回、グリーンピース側が故意に船を衝突させたとは必ずしも断定できないが、それはグリーンピース側を全く免罪しない。2隻の船舶を異常に接近させると、スクリューによる攪拌等の影響で不意の衝突事故を起こしやすいことは船乗りなら誰でも知っている常識であり、少なくとも「ランライズ」号側に「未必の故意」(「衝突してしまっても仕方がないだろう」という認容)はあったといえるからである。「主張せんとする主義思想が正しければ、手段の違法性には目をつむる」というわけにはゆかないことは小学生にでもわかりそうな話だが、ことグリーンピースに関しては、それが非暴力であることと目的が環境保護であることを理由に違法行為を当然のことの如く正当化しており、始末が悪い。違法行為を繰り返しながら開き直るというのでは、オウム真理教と同じではないか。日本捕鯨協会は、この事件を機会に、グリーンピース側に対して不法行為の損害賠償請求訴訟を提起し、同団体の違法性を法廷で明かにしてもらいたいところである。■普天間基地は移設の必要なし
名護市議会、米軍基地の移設促進決議可決(12月24日)
報道によると、アメリカ海兵隊普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題で、名護市議会(定数30議席、うち与党18、野党12)は23日早朝、20時間以上の審議の末、「移設整備促進決議」を17対10で可決したという(議長は投票せず、野党・公明2人は退席)。この決議を受けて同市の岸本建男市長は、年内に移設受け入れを表明することを示唆した。
普天間基地の移設問題は、海兵隊員少女暴行事件によって高まった沖縄の反基地運動対策であったSACOの答申(1996年)によるものだが、そもそも移設の必然性があまり強くないにも関わらず「移設カード」を切ってしまった橋本龍太郎前首相のために、今度は名護市でゴタゴタが起きてしまっているとの感が拭えない。そもそも移設推進派(奇妙なことに、これには基地反対派と政府が「相乗り」している)による普天間基地の問題点については既に1998年5月号(「 普天間基地問題は原点に立ち戻れ 」)で書いた通りだが、その時に感じた違和感は、今回の名護市移転騒動でもなお感じられるのである。「現実的視点」が導入されたわけでもなく、政府は「軍民共用」の美名で移設を正当化し、また県側は「使用期限15年」に拘って交渉のカードとしている。
何かの施設を移設するというのは、首都機能移転問題と同じで、ともすれば不必要なことを様々に理由をつけて行われるフシがある。そのほうが公共事業がたくさん起工されるであるとか振興策としてお金が落ちるということがあるからだが、これでは何時までたっても財政再建なぞ不可能である。この問題は、反戦イデオロギー闘争でもなく、あるいは外交・安全保障問題としてでもなく、(首都機能移転問題のような)一種の公共事業問題としてこそ見るべきなのではないだろうか。■安易な「おめでとう」報道が妃殿下を悲しませる
雅子さま、流産される(12月31日)
報道によると、御懐妊が報じされていた皇太子妃雅子さまは、30日の宮内庁病院での2回目の検査の結果「流産」と診断され、手術を受けられたという。皇太子殿下御一家に初めてのお子様ということで、社会的にも期待が膨らんでいただけに、大変残念な結果に終わってしまった。もっとも、今回は、御懐妊の推測報道後宮内庁のほうから何等の具体的なコメントもなされなかったので、御懐妊が必ずしも安定してはいないということは薄々感じられたことは確かで、その点、安易に「御懐妊おめでとう」の報道に走っていた一部週刊誌は大いに問題である。
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