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健論時報
  2001年12月  


■PKF本体業務凍結を早急に解除せよ
 東ティモール新PKOへの自衛隊派遣計画、概要判明する(11月2日)
 報道によると、国連暫定統治下にある東ティモールの独立に合わせ政府が派遣を検討していた国連平和維持活動(PKO)の派遣計画の全容が明らかになった。それによると、派遣対象として計画されているのは陸上自衛隊北部方面隊の第3施設団の一部約700人で、輸送には航空自衛隊のC-130H輸送機や海上自衛隊の輸送艦「おおすみ」が使用され、2002年3月上旬から順次東ティモールの首都ディリに派遣されるという。施設団(工兵旅団)の主な任務は輸送や道路、橋の補修などの後方支援になる。
 ところで、今回のPKO派遣に関連して、政府・自民党は当初、今の国会中に PKO協力法 を改正して停戦監視、武装解除等の任務にあたる国連平和維持軍(PKF)本体業務の凍結解除と隊員の武器使用基準の緩和を進める予定であったが、後者について連立与党の公明党が難色を示していることと、12月9日に閉会する今国会では審議時間が十分にとれないこと等から、今回は議員立法による法案提出に留め、来年春の通常国会で成立を期すこととなった(一部には、公明党の求める選挙制度改革が挫折したため、それと引き換えに PKO協力法 改正 も見送られたとの観測もある)。
 今回の同時テロ攻撃事件に対する我が国の対応を見るまでもなく、今日の我が国は国際政治の中で主要な役割を果たすことが期待されているし、また実際に果たすことが出来る国力を有している。遠くアフガニスタンの砂漠でのPKOはともかく、東南アジア地域での紛争処理と安定した環境の整備は我が国の責任範囲であり、東ティモールPKOに我が国が深く関与する(それも、代替性のある資金面でではなく、「顔が見える」形で人員や部隊を出す)ことは極めて重要である。既に成立した テロ対策特別措置法 では自己の管理下に入った難民・傷病兵を防護するための武器使用が認められているが、 PKO協力法 でも最低限この程度まで使用基準を緩和することは論理的に当然であるし、また我が国自衛隊が他国軍隊と同じように任務に参加し評価されるためには必要不可欠なことである。政局の道具にすることなく、野党・民主党の支持も得ながら、早急にPKF本体業務の凍結解除を実行すべきである。

■航空業界に衝撃を与えたニューヨーク墜落事故
 ニューヨークでアメリカン航空機が墜落・炎上(11月12日)
 報道によると、12日午前9時17分(日本時間同日午後11時17分)頃、ニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港を出発したサントドミンゴ(ドミニカ共和国)行きのアメリカン航空587便(エアバスA300型機、乗客251人、乗員9人)が離陸直後にニューヨーク市クイーンズのロッカウェイ地区に墜落・炎上した。この墜落が新たなテロ事件なのか、それとも偶発的な事故なのかはまだ不明だが、事件の捜査はアメリカ国家運輸安全委員会(NTSB)が担当しており、同機が装備していたエンジンに問題があったとの報道もあって、事故の可能性が高まっているという(マリオン・ブレーキー・NTSB委員長は「あらゆる情報が事故の可能性を示唆している」と発言)。目撃者の証言では、同機は墜落直前に本体とエンジンとが別々に落下していた。
 今回墜落したアメリカン航空機は搭乗するのに出国手続を要する国際線であり、9月11日以降の強化された空港警備体制を考えれば、これが前回と同じ手口によるテロである可能性は低い(但し、地上作業員がエンジンの止め金を外したり、外からスティンガー携行地対空ミサイルが発射された可能性も排除できない)。また、一部識者は、ケネディ空港があまりにも混雑していて短い間隔で航空機の離発着が行われているため、直前に離陸した航空機の作った空気の渦(乱気流)がアメリカン航空機の墜落に結びついたと指摘する。ただ、いずれにせよ、今回の「事件」が航空業界に与える影響は小さくなく、原因がある程度つきとめられ改善策が施されるまで、アメリカの航空需要は打撃を受けるであろう。

 

▲アメリカン航空機が墜落したニューヨーク市ロッカウェー地区
(左写真では墜落地点は外海側の細長い島で手前がケネディ空港、右写真では右下の細長い島)

■韓国の犬肉食批判は欧米人の食文化的傲慢だ
 ワールドカップ韓国組織委員長、FIFAの犬肉食禁止要求を拒否(11月12日)
 報道によると、2002年FIFAワールドカップサッカーの鄭夢準・韓国組織委員会(KOWOC)委員長(FIFA副会長)は12日記者会見を行い、国際サッカー連盟(FIFA)のプラッター会長が求めていた「犬肉料理の追放」について、「1988年のソウル五輪でもIOCはこの問題に直接関与しなかった。犬肉食の問題はFIFAが関与する問題ではない」と反論。中止要請に応じない姿勢を示した。
 この問題は、FIFAやワールドカップスポンサーの各企業に動物愛護団体や環境保護団体からの抗議が殺到したことに端を発しており、これを受けてプラッター・FIFA会長が「韓国での犬の虐待に抗議する手紙が世界中から来ている」「動物を傷つけるだけでなく、韓国の国際的なイメージも損なう」として犬肉食の法的規制を求めていた。しかし、韓国では「補身湯(ポシンタン)」という煮込み料理など、伝統的に犬肉料理がよく食べられており、同国内では「犬肉食は動物虐待」とするFIFAの姿勢に対する反発が広がっているという。なお、この問題についてはFIFAの中でも意思統一が図れているわけではなく、ハヤトウ副会長は「韓国は長い歴史の文化を持っており、一回だけのW杯のためにこれを変えることは不可能」と理解を示している。
 欧米動物愛護団体が主張する「犬肉食は残虐で、犬がかわいそう」等といった主張は、極めて感情的かつ一方的で、文化の多様性を認めない傲慢なものであるという他ない。何故犬を食用に供すると「虐待」で牛を食べると「虐待ではない」ということになるのか。合理的な説明は不可能であり、それが単に欧米流の食生活にそぐわないというだけのことであろう。そうした思潮が単に一部の過激な動物「愛護」団体だけのものでないことは、FIFAの会長がそれに安易に同調していることからも明らかである。
 こうした食文化を巡る欧米との摩擦は、実は韓国だけの問題ではない。既に我が国では商業捕鯨が禁止された関係で鯨食文化が衰退しつつあるし、最近ではマグロ遠洋漁業も「環境保護」の美名の下にますます規制が厳しくなっている。しかも、それらの規制は、条約上は「資源の有効利用」のためであるとされながらも、実際には「クジラやマグロがかわいそう」「高等動物であるクジラを捕食するのは野蛮である」といった欧米の一部動物愛護団体の思想に基づいており、しかもそうした「無邪気な」文化帝国主義的思想を一部の欧州諸国や豪州・ニュージーランドが国家ぐるみで支援している。
 2002年のワールドカップサッカーは我が国と韓国との共催であり、しかもこの食文化を巡る欧米との対立は我が国としても他人事ではない。しかも、今年の日韓関係は(それらの問題の責任の所在は別にして)歴史教科書問題や靖国問題でぎくしゃくしており、来年のスムーズな大会運営への影響が懸念されている。であるならば、ワールドカップサッカーの日本側組織委員会としても、ここでこの問題に対する韓国組織委員会の立場を強力に支持し、欧米人の食文化的傲慢をアジアの視点から共に批判して、日韓両国の連帯を築くよう努力すべきではないだろうか。

■テロ特措法による多国籍軍参加を早急に検討せよ
 アフガニスタン北部同盟、首都カブール等国土の半分以上を制圧(11月12日)
 報道によると、アフガニスタンのタリバン政権に反対する北部同盟は12日、タリバン政権軍が撤退した後の首都カブールを占領。国土の50%以上を支配下に置いた(その他、タリバン政権軍は14日になって南部の本拠地カンダハルをも撤退、オサマ・ビン・ラディンら「アル・カイーダ」と共に山岳地帯に逃げ込んだと報じられた)。また、これを受けて国連安全保障理事会は14日夜、アフガニスタン国民による暫定政権早期樹立を支援するよう国連に求め、「すでにタリバンの支配下でなくなった地域、特に全アフガン国民の首都カブールの安全と治安の確保の努力を理事国が支持する」等として多国籍軍の緊急展開を承認する決議(第1378号)を全会一致で採択した。既にイギリスが海兵隊旅団と空挺部隊等4000人規模の地上軍を派遣する意向を示している他、米英両国は北大西洋条約機構(NATO)加盟国の一部やオーストラリア、バングラデシュに参加を打診しているという。
 今回、国連で決議された多国籍軍の派遣はその後のアフガン新政権樹立に向けた環境整備の一貫であり、最終的にはアフガン問題に対する各国の発言力の強さを決定することになる。従って、アフガン復興のあり方も多国籍軍に兵力を派遣する=「汗を流す」欧米諸国の意向を反映したものとなり、我が国の出る余地は限られたものになる可能性が高い。現に、当初我が国が東京での開催を呼びかけていたアフガン復興会議はいつのまにかニューヨークで日米共催となり、しかもそれに対して欧州諸国から反対論が提出されて調整がつかない始末となっている。これでは、新政権の枠組みについての我が国の考え方など反映されないであろうし、単に経済支援を行って気前よく資金をばら撒くだけに終わりかねない。
 幸いなことに、我が国は先頃「 テロ対策特別措置法 」を制定し、難民支援等の目的で自衛隊を海外派遣することが可能となった。しかも、法案成立から基本計画策定までタイムラグがあったため基本計画はまだ国会承認の段階に達しておらず、今ならまだ再検討を行う余地がある。「 テロ対策特措法 」は単なる対米支援法ではなく、テロと闘う全ての国を支援可能である以上、我が国としてもテロ特措法を活用して自衛隊を多国籍軍に参加させ、難民支援(これには適切な治安の下で帰国した難民に生活基盤を提供することも含まれよう)の分野において積極的な役割を果たすべきではないだろうか。

■反対するなら堂々と「自衛隊反対」を主張せよ
 「朝日新聞」、PKO協力法改正に反対する社説を掲載(11月15日)
 『朝日新聞』は15日付けの朝刊に「この性急さは疑問だ」とする社説を掲載し、与党三党が今国会で検討している PKO協力法 の改正に反対する姿勢を示した。社説の中で同社は、自衛隊によるこれまでの国連平和維持活動(PKO)への参加について、「地道な活動ぶりは、国連で高い評価を得ている」「疲弊した東ティモールの復興には、できる限り支援の手を差し伸べたい。国連PKOへの協力は、これからの日本外交の柱の一つに育てるべきだ。参加条件や現地情勢を検討した上で派遣要請に積極的に応じる。それは憲法の理念にも沿う道だろう」として積極的に評価しているものの、与党三党の提案する法改正については「『テロ対策特措法に続け』といわんばかりの、 PKO協力法 改正に向けた政府の性急さには、強い疑問を覚える。」として反対。特に武器使用基準の緩和について、「2年間の時限立法の テロ特措法 が認めた武器使用基準を、 PKO協力法 にほぼ適用するやり方が妥当なのか。国会で厳しく吟味されなければならない」として強い反対姿勢を示している。
 しかし、こうした『朝日新聞』の主張は、立場の違いを考慮に入れたとしてもなお「不当である」と評しなければなるまい。何故なら、同社社説は後半部分で武器使用基準の緩和に反対しておきながら、その直前の段落で「現在の武器使用基準では、派遣要員が同僚を守る目的なら武器は使えるが、隣で活動する外国や国際機関の要員のためには使えない。あまりに硬直的では、不測の事態に備える上で現実的とはいえまい。」という全く矛盾する主張を行っているからである。
 思うに、同社が本当に主張したかったのは武器使用基準そのものの問題ではなく、自衛隊の活動範囲拡大に対する反対論なのではないだろうか。いみじくも同社説は最後の部分で、「PKO大国をめざすなら本来、専門組織を持つのが望ましい。その第一歩として自衛隊の中にPKO待機隊を設けてはどうか」と主張しており、事実上自衛隊をPKO任務から外し、自衛隊の役割を縮小することを提案している(自衛隊の目的や訓練・装備体系を、海外における平和維持活動や多国籍軍での活動を考慮したものに改編すること自体は妥当であるが・・・)。つまり、「自衛隊は何が何でもダメ」ということであるが、それならそうと、きちんと「自衛隊の派遣反対」「PKO不参加」を正面から主張すべきであろう。このような本心を隠蔽するかの如き言論は、堂々たる全国紙の社説が行う言語行為ではない。

■国際平和と安定に向けた恒久的自衛隊派遣法を整備せよ
 政府、テロ特措法上の自衛隊派遣の基本計画を閣議決定(11月16日)
 報道によると、政府は16日安全保障会議と臨時閣議を開催し、 テロ対策特措法 に基づき自衛隊が行う米軍等への後方支援活動の内容を定める基本計画を決定した。22日には同法に基づいて国会に提出され、民主党等の賛成も得て承認される見通し。基本計画によると、同計画では自衛艦6隻(護衛艦、補給艦、掃海母艦。隊員1200人)、輸送機6機、多用途支援機2機(隊員180人)を派遣し、インド洋やペルシャ湾、オーストラリア、グアム、国内米軍基地間で物資輸送を行う他、米兵らの捜索救助活動、被災民救援活動も行う。26日には数隻の自衛隊艦艇が出港し、既に防衛庁設置法に基づいて派遣されていた自衛艦3隻に合流する。また、隊員は護身用に9ミリ拳銃を携行する。しかし、最新鋭の防空システムを搭載するイージス護衛艦の派遣については、アフガニスタン情勢の変化や与党内の慎重論に配慮して見送られたという。
 アフガニスタン情勢は11月中旬から急変しており、既にアメリカは空爆の規模をタリバン・アルカイーダ勢力に絞るため縮小。隣国パキスンタンから流入したタリバン支援義勇兵も敗退しており、軍事的な側面よりも政治的・治安警察的側面が徐々にクローズアップされてきている。無論、今回の基本計画で派遣された自衛隊部隊は米軍をよく支援し、10年前の湾岸戦争において着せられた我が国の汚名を挽回するであろう。首都が陥落したとはいえ依然としてタリバン政権やアルカイーダの幹部は確保されておらず、これがこのまま終戦・アフガニスタン和平へと向かうかどうかはわからない。しかし、9月11日に同時テロ攻撃事件が発生してからテロ特措法が成立するまで1ヶ月以上かかり、更に実際に自衛隊部隊が支援活動を開始するまでに実に2ヶ月の時間を要しており、その間に事態が進行して貢献が遅延してしまったという印象は拭えない。現に、北部同盟の首都奪還を受けて英軍を中心とする多国籍軍が派遣されることになったが、これには英王立海兵隊と英陸軍空挺部隊が48時間以内に出動しており、海外展開能力・即応能力の違いは明らかである。 テロ対策特措法 に代る、国際貢献のための恒久的な自衛隊海外派遣法を制定し、必要なら憲法を改正し、同時に自衛隊部隊の海外展開能力・即応能力を高めるような施策が図られるべきではないだろうか。
 付言すれば、そのような基本計画策定の遅れが結局、イージス艦派遣論議にも悪影響を与えてしまった。イージス艦は戦略ミサイル原潜のような特殊な軍艦ではなく、単に「高性能の防空システムを搭載したミサイル護衛艦」に過ぎない。データリンクなら普通の護衛艦も装備しているし、第一最新鋭の護衛艦は相応の情報システム、武器管制システムを備えていてイージス艦だけが特殊なのではない。イージス・システムの外見上の特徴であるフェーズド・アレイ・レーダー(SPY-1D)は高性能であるが、国産のフェーズド・アレイ・レーダーは「あさぎり」「むらさめ」型の護衛艦にも搭載されている。「日本の存在感を示す」という「高揚感」で自衛隊を派遣することは「危うい」とする議論もあるが、1兆円出しても世界から批判された湾岸戦争当時の日本外交に何も感じない感覚のほうが「危うい」国際感覚というべきであろう。この問題についても冷静な議論が望まれるところである。

■職場学習に自衛隊を選んで何が問題か
 全国で450校の小中学校が「職場体験」に自衛隊駐屯地を訪問(11月17日)
 「朝日新聞」の報道によると、「総合学習の時間」の一貫として小中学校で行われている「職場体験」授業に、昨年度は450校(陸上自衛隊に小学校20校・中学校399校、海上自衛隊に中学校2校、航空自衛隊に中学校28校)の小中学校が地元の自衛隊基地や駐屯地を選択。隊員と泊りがけで生活したり、戦車や機関銃に触れた例もあったという。
 こうした事態に対して、一部の教職員組合からは「まるで体験入隊」「子どもたちにカッコイイとか、あこがれといった誤った価値観を抱かせかねない」といった批判の声が挙がっているという。しかし、イデオロギー的に自衛隊や軍事力を認めない立場の教職員による反対はともかく、一般論として、郵便事業によって一国の政治・経済に貢献している郵便局を見学するのがよくて一国の主権と国民の安全を守る自衛隊の基地を見学することに問題があるという議論には説得力が無い。「戦車や機関銃は人殺しの武器だ」という議論もあるが、それらは自衛隊という仕事場に必要不可欠な「商売道具」であり、理髪店の店主のハサミや屠殺場の包丁と同じものに過ぎない。それを見学せずして自衛隊の「職場」を「体験した」とは言えないのではないのである。

■アフガン和平は全アフガン人の義務だ
 ドイツでアフガン暫定政権樹立にむけた政治協議、始まる(11月27日)
 報道によると、タリバン政権崩壊後の暫定政権樹立に向けた協議がドイツのボンで始まり、北部同盟(アフガン救国イスラム統一戦線、国連代表権あり)とザヒル・シャー元国王派から各11名、ペシャワールに拠点を置く集団とキプロス島に拠点を置く親イラン派から各5名の代表者が、国連のブラヒミ特別代表の下で会議を開始した。今回の会議は、これまで銃をとって戦っていたゲリラ各派同志がはじめて同じ和平のテーブルについて話し合いをするもので、少数民族主体であるものの首都カブールを占領した北部同盟と、アフガン多数派民族のパシュトゥン人の和解が焦点となっている。
 ところで、今回の和平会議は画期的なものであるが、同時にこれまで殺し会っていた各派が話し合うものであるだけに難航も予想されている。例えば、パシュトゥン人主体の元国王派が首都カブールの非武装・中立化を求める一方で北部同盟のカヌーニ内相は多国籍軍の展開を拒絶しており、一時は英軍がバグラム空軍基地確保のために派遣した100人の部隊も拒否する姿勢を示した。
 しかし、こうした誤った姿勢は、北部同盟側がアフガン内戦終結に消極的であるとの印象を与え、国際社会から厳しい批判を受ける可能性が高いと言わなければなるまい。実際、北部同盟軍が首都制圧に成功したのは米英軍による空爆があったからであり、また米英軍が空爆を行ったのは抑圧的で過激なタリバン政権を打倒しアフガンに平和をもたらすためである。その「恩」を忘れ、北部同盟側があたかも自力でタリバン軍撃退を実現したかのように考え、首都を占領しているのをいいことに主導権を握ろうとするのは、如何にも傲慢・無責任な態度という他ない。無論、アフガン問題をアフガン人自身が解決することは重要であり、我が国としてもそれに助力することはやぶさかではないが、彼らには解決する権利とともに解決する義務があり、国家の統一と発展に特別の責任を負っている。北部同盟が頑迷な態度をとり祖国をきちんと統治できないのであれば、国際社会主導の政府を樹立する他ない。
 今回の機会を失しては、国際社会はもはやアフガニスタンを永久に見捨てるであろう。全てのアフガン人の、和平にむけた奮起を求めたい。

■同時テロ攻撃事件の重大性を忘れた造反議員
 自衛隊派遣の国会承認案で民主党から造反議員(11月27日)
 報道によると、 テロ対策特別措置法 に基づき国会に提出された自衛隊の派遣計画案は27日、衆議院本会議で自民・公明・保守の与党三党と民主党などの賛成多数で可決され、参議院に送付された。しかし、採決にあたっては党議拘束をかけて賛成を決めていた民主党から、旧社会党系の横路孝弘副代表をはじめ21人が造反。横路副代表や金田誠一・民主党「次の内閣」厚生労働担当相らが反対にまわった他、10人が棄権した。また、参議院本会議では、大橋巨泉、神本美恵子の両参議院議員が反対、3人が棄権した。派遣計画案では、(1)米国、英国、オーストラリアの他、物品の積み降ろしを行う国や、ペルシャ湾を含むインド洋での米艦艇への補給、輸送など協力支援、(2)インド洋沿岸の国などで遭難した米兵などを救助する戦闘捜索救助、(3)パキスタンなどでの被災民救援、の3種類の活動を自衛隊が実施するとしている。この計画で派遣される自衛隊艦船は既に出発しているが、焦点となったイージス護衛艦の派遣は見送られた。民主党は、反対した横路副代表らを解任する他、役職停止等の処分を行うという。
 この事件を報道したマスコミの中には、造反議員の中に保守系議員も含まれていたこともあり、さも造反議員側に分があるかのような紙面構成をとったものもあったが、今回のテロ特措法が5000人の一般市民を殺戮した同時テロ攻撃事件に対処するためのものであることに鑑みれば、計画反対は結局テロに味方する行為であり、厳しく批判されるべきであることは疑いない。テロ事件から2ヶ月以上経過し、アフガニスタンにおける軍事作戦も終盤に向かいつつあることから、最近の我が国世論においてはこの問題に対する関心がやや薄れつつあるが、「喉元過ぎれば暑さを忘れる」のは日本人の悪いクセであろう。
 横路副代表らは最近、小泉首相の経済構造改革路線に対して協力的な鳩山由紀夫代表ら民主党執行部に対しても批判を強めており、社会民主党等と同じく「小泉改革反対」の立場を鮮明にしている。であるならば、横路副代表らが意見を相違している見解は安全保障の分野に留まらないのであり、そうであるならば潔く党を割って新党を結成すべきではないか。安保や経済で執行部との間に決定的な対立があるのに同じ政党に留まるのは正に「永田町の論理」であり、「野党版自社さ野合政権」である。


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製作著作:健論会・中島 健 無断転載禁止
 
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