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■皇室典範改正は慎重に
内親王さま、ご生誕(12月1日)
皇太子妃雅子さまは1日午後、初のお子様となる内親王さまをご出産された。御母子ともに健全で、身長49.6センチ・体重3102グラム。6日後にはお名前も付くという。皇太子ご夫妻には結婚後長い間お子様が無く、また最近はテロだの失業だの暗いニュースが続いていたので、今回の内親王さまご生誕は内外で久しぶりの明るいニュースとなった。まずは国民の一人として、内親王さまの御誕生を心からお喜び申し上げたい。
ところで、このご出産に関連して、女性の皇位継承を認めるよう 皇室典範 を改正する問題について中曽根康弘・元首相は同日、「現代社会は男女平等だ。私は以前から女性天皇を認めてはどうかと言ってきた。今度の事とはかかわりなく、検討しなくてはいけない課題だ」と述べ、また加藤紘一・自民党元幹事長も「歴史上、(日本に)女帝はあったし、中国、イギリスでもあるので、自由に考えればいい」と記者団に述べたという。更に野中広務・自民党元幹事長もテレビ番組で「(女帝を認める 皇室典範 改正は)男女共同参画のため当然あっていい」と述べている。
だが、この問題については、小泉純一郎首相の「慎重に検討した方がよいと思う。多くの国民の声を伺いながら、歴史、伝統を考えながら広く検討していければいい。まだ結論を出すのは早い」というコメントに尽きる。そもそも皇室に「男女共同参画」という概念がなじむのか、これまで男系に限ってきた皇位継承を女系にも認めるのか、過去に存在した女帝がどのような位置付けであったのかを慎重に見極める必要があろう。女系天皇を認めるとなると、皇族の数の増加や退位の問題も出てくる。その点野中・加藤両元幹事長の発言は、問題をやや単純化しているきらいがあるのではないだろうか。■改革反対派議員は党を割るべし
民主党、造反議員28人を処分(12月4日)
報道によると、民主党は4日、 テロ対策特別措置法 に基づく自衛隊派遣計画の国家承認で党議拘束に反し棄権・反対した衆参議員28人に対する処分を決定した。反対した横路孝弘・副代表と金田誠一・「次の内閣」厚生労働相を「3か月間の役職停止」に、国会の常任委員会理事を務める6人を「2ヶ月の役職停止」に、その他の反対議員を厳重注意処分、棄権・欠席者を注意処分としている。役職停止処分について鳩山由紀夫・代表は「役職停止期間が過ぎても復職できるかは分からない」と述べ、事実上の解任であることを示唆した。なお、岡崎トミ子・参議院議員副会長と円より子・参議院政策審査会長の提出した辞表も受理されたという。
今回の事件について、処分を受けた大橋巨泉・参議院議員は「今後も良心に反する投票はしない」等として逆に反発を強めている。テロ事件に対する我が国の積極的な取組みを拒否せんとするこれら造反議員らは、計画承認に反対した自由党、日本共産党、社会民主党と共に厳しく批判されるべきであろう。しかも、横路副代表らは記者会見で「小泉首相を支持するなら自民党に入れ」と語っており、民主党としては小泉首相の構造改革路線に反対すべきことを主張している。横路氏らのこうした態度は、改革を期待して一票を投じた有権者を裏切るばかりでなく、与野党双方に改革賛成派と反対派が共存する奇妙な状態を生んでしまっている。これこそ正に「永田町の論理」の典型、政治をわかり難くする根源であろう。一部野党議員からは民主党に「野党としての自覚」、即ち与党との対決姿勢を求める声もあるが、「与野党激突」は社会主義イデオロギーに支配されまっとうな議論が出来なかった55年体制時代の考え方であり、非生産的な国会運営でしかない。安全保障や構造改革で意見が決定的に対立する横路氏ら民主党議員は、党を割って新党を結成すべきである。■アフガン暫定行政機構に期待する
国連アフガン協議、暫定行政機構設立等で妥結(12月5日)
報道によると、ドイツ連邦共和国のボン近郊で開催されている国連アフガニスタン協議は5日、今月22日のラマダン明けから暫定行政機構(31人)・最高裁判所・国民大会議(ロヤ・ジルガ)招集委員会(21人)を発足させ、首都カブールに多国籍軍を駐留させる等とした合意文書「暫定政権協定」に調印した。焦点となっていた暫定行政機構の閣僚人事では、議長(首相)にパシュトゥン人元国王派のハミド・カルザイ元外務次官が任命された他、北部同盟政権(現アフガン正統政権)のモハマド・ユニス・カヌーニ内相、モハマド・カシム・ファヒム国防相、アブドラ・アブドラ外相はそのまま暫定行政機構の内相、国防相兼副議長、外相に就任。女性閣僚としてシマ・ワリ副議長兼女性問題相、シマ・サマル保健相が任命された。ブラヒミ国連事務総長特別代表は調印式で、4派代表に「民族和解、人権尊重、善隣友好の新政府を築けるかどうかは、あなた方の努力にかかっている」と挨拶し、同時に国際社会に治安維持と復興への支援を求めたという。
暫定行政機構は、来春にザヒル・シャー元国王が招集する予定の緊急国民大会議が発足するまでの約半年間、アフガニスタンを統治する他、ラクダール・ブラヒミ国連事務総長特別代表も調整に関与する。また、緊急国民大会議招集後は、現在の暫定行政機構に代って暫定政府が設立され、更に18ヶ月以内に制憲議会(国民大会議)を、その後6ヶ月以内に総選挙を行う。国連代表権を保持し国際的な「正統政府」として承認されている北部同盟(アフガニスタン救国イスラム戦線)政権(ブルハヌディン・ラバニ大統領)は、22日にこの新政権に統治権を委譲する。
11月に政権協議がはじまった時点では、国内でまだタリバン勢力が強く抵抗していたこと、少数派民族主体ながら首都を制圧した北部同盟側が政権掌握を目論んだこと等から、難航も予想されていた。事実、北部同盟のラバニ大統領は、自派優先の閣僚人事を求めたり、多国籍軍のカブール展開を拒否したりしたこともあり、国際社会の批判を受けている。しかし、最終的に、多数派民族から首相が出、更に実務面で40代の北部同盟若手リーダーが手腕を振るうことになったことで、今後のアフガン情勢は、ひとまず和平へ向けた歩みをはじめることが出来たと言える。カヌーニ、ファヒム、アブドラの各氏はラバニ派軍事司令官故マスード氏の弟子とも言われ、一定の国際感覚も有しているとされているので、暫定行政機構の今後に期待したい。■国家公務員にはより柔軟で優秀な人材を
政府・自民党、国家公務員試験制度の改革方針を決定(12月5日)
報道によると、政府・自民党は4日、幹部公務員を採用する「国家公務員採用Ⅰ種試験」について、試験の合格者数を現在よりも大幅に増やす方針を固めた。現在、幹部公務員(いわゆる「キャリア」)になるためには、人事院の主催する「国家公務員採用Ⅰ種試験」を合格し、なおかつ試験中に実施される「官庁訪問」で採用希望官庁から内々定を得る必要がある。その為、平成13年度の試験合格者数が1308人であったのに対し採用者数は609人となっており、採用数の約2倍が試験に合格する仕組みになっている。政府が決定したのはこの試験合格者数を更に増やすというもので、平成14年度は採用数の約2.5倍に、平成15年度は約4倍にするという。
中央省庁は例年、民間企業との厳しい競争の中で人材の確保に奔走しているが、「官庁訪問」を行って内々定を得るためには採用試験の一次試験に合格しなければならず、その一次試験は暗記中心のマーク式試験で、民間企業と比べて試験の比重が極めて高くなっている。国の進むべき道が明らかであり、前例踏襲だけで行政機構の運営が上手く行っていた時代ではなく、暗記試験に強い人物が公務員として適任とは到底言い得ない時代になっている。その点、今回政府が試験合格者数の増加を決定したことは、公務員採用においてこの「暗記試験」の比率を下げることを意味するものであり、歓迎したい。■PKOは地雷撤去だけではない、法改正は依然必要だ
朝日新聞、「自衛隊に地雷一掃の技術なし」とする記事を掲載(12月6日)
「朝日新聞」は12月6日付けの紙面で、「 PKO法 改正案の『目玉』地雷一掃の技術なし 自衛隊」と題する記事を掲載し、今国会でPKF(国連平和維持軍本体業務)の参加凍結解除が議論されている自衛隊のPKO(国連平和維持活動)活動について、想定されているアフガニスタンでの地雷撤去活動は、「極めて困難であることが分かった」と報じた。それによると、現在陸上自衛隊には「地雷原処理車」という装備があるが、「除去は完全ではな」く、「住民がその土地を利用できるように、すべての地雷を取り除くことは想定していない。周囲にある施設や緑を破壊してしまうこともある」。「 国連平和維持活動(PKO)協力法 改正案は、・・・その根拠のひとつが揺らいでいる」と結んでいる。
確かに、陸上自衛隊が保有する地雷処理器具(70式地雷原爆破装置、92式地雷原処理車、92式地雷原処理ローラー)は、(処理ローラーを除いては)爆薬を用いて車両・人員の通路を開設するものであり、その処理効率は軍事的な必要性を満たす約80%程度と言われている。一方で、民生用技術としての地雷処理は軍事目的よりも高い99.6%の確度が要求され、これは地雷撤去NGOによる手作業に頼る他無い。以上の点からしても、アフガニスタンにおける地雷撤去については、各国軍隊よりもNGOに依頼したほうが効率的であると言い得る。実際、経済的な基盤が破壊されたアフガニスタンにおいては、土地鑑の無い各国軍隊が地雷を撤去するよりも、撤去技術を現地のアフガン人に教え、彼らを多数雇用して「地雷撤去産業」を創設したほうがよかろう。
しかし、だからといって、今回の PKO協力法 改正やそれに伴うアフガニスタンへの自衛隊派遣が不要となるわけではない。そもそもこの「地雷撤去」任務は、今年10月に山崎 拓・自由民主党幹事長が PKO協力法 改正の必要性を説明する中で提言したために注目されているが、PKO本体業務(PKF)は「放棄された武器の収集、保管、処分」だけではなく、むしろ民間では困難な要人警護や治安維持がメインである。第一、治安が悪いところには民間のNGOを派遣することも出来ないし、経済復興も何も進まない。このところ、9月11日の同時テロ攻撃事件やアフガニスタン情勢の変化から、一時世論の間で高まった外交論議が急速に縮小しつつあるが、 PKO協力法 改正の必要性は9月以前から全く変わっていない。■対タリバン戦争の米軍勝利を歓迎する
タリバン政権、カンダハルから撤退し消滅(12月7日)、米軍がトラボラのアル・カイーダ拠点制圧(12月16日)
報道によると、タリバン政権系のアフガン・イスラム通信(AIP)は7日、同政権の本拠地であるアフガニスタン南部の要地カンダハルの支配権をイスラム教聖職者らで構成する評議会に委譲。最高指導者ムハマド・オマル師も退去し、同日を以って「オマル師の政権は終わった」と伝え、タリバン政権の消滅を宣言した。また、ジョージ・ブッシュ米大統領も7日、帰国した原子力空母「エンタープライズ」の艦上で「タリバンは2か月前、ほぼ全土を支配していた。いま彼らに残されているのは、いくつかの洞穴だけだ」と対タリバン戦の勝利を宣言したという。また、14日にはアフガン東部のトラボラ周辺に点在していた国際イスラムテロ組織「アル・カイーダ」の拠点を米英軍と地元反タリバン勢力が攻撃。反タリバン勢力は16日には同拠点を制圧したという。但し、同組織の指導者オサマ・ビン・ラディン一派は発見できていない。
1996年にパキスタン難民キャンプの神学校で産声を上げたタリバンは、その年にはパシュトゥン人が多数を占めるアフガン南部を制圧。地元部族や軍閥を政略・軍事作戦で取り込みながら進撃を続けたものの、1998年には少数民族が多い北部の攻略に失敗。このころからオサマ・ビン・ラディンらの影響を受けて「世直し運動」としての性格を薄め、軍事力の中枢を外国人(アラブ人)に依存してイスラム教とパシュトゥンワレイ(部族慣習法)を融合させた極端な戒律を押しつけるようになった。今回、北部同盟(アフガニスタン救国イスラム統一戦線)が首都カブールを奪還し、最終的には旧タリバン政権抜きの暫定政権が樹立されたことで、タリバンは政治的にも敗北したと言える。またタリバンに庇護された外国兵主体の「アル・カイーダ」も拠点を失い、完敗した。
10月に米英軍がアフガニスタンでの軍事作戦を開始した当初、国際世論は一応この攻撃を正当なものとして承認したものの、その展望については、アフガン介入で失敗した旧ソ連軍を例に、米軍部隊の苦戦を予想するものが多かった。しかし、世界各地の米国権益を守るために日夜懸命に働いているアメリカ国防部(国防総省)が旧ソ連と同じ過ちを犯すほど愚かであろうはずもなく(自身のベトナム戦争での失敗体験もある)、最終的には必ずやアメリカが勝利するであろうことは予想されたところであり、まずは順当な結末と言える(付言すれば、旧ソ連はアフガンに陸軍10万人を派遣し9年間で1万人の死者を出したが、今回のテロ事件で死亡した民間人が5000人だったことを考えれば、米軍が4000〜5000人の被害を覚悟の上大部隊を派遣する可能性もあった)。旧ソ連を打ち負かしたゲリラ戦士達も米軍の最新鋭軍備(特に航空・宇宙戦力)の前には手が出せず、しかも旧ソ連時代と異なり逃走して戦力を回復する「聖域」や「支援国」が無かったタリバン軍が最終的に敗北したのは、軍事的には当然のことであった。その意味では、「米軍の介入→紛争の泥沼化→暴力の連鎖」という構図でアメリカの軍事作戦を批判していた一部識者は、全くアテが外れる結果になったと言えよう。これから米軍は海兵隊等を使ってオサマ・ビン・ラディンら「アル・カイーダ」一派が潜伏する洞窟を一つ一つ捜索・破壊していくというが、そうした作業は太平洋戦争中の旧日本軍との島嶼作戦や朝鮮戦争、ベトナム戦争で米軍が何度も遭遇した任務であり、成功率は高かろう。■憲法解釈云々は中国の余計なお節介
中国が自衛艦インド洋派遣に反対姿勢(12月17日)
報道によると、11月21日に北京で開催された日中外交当局の局長級協議(高野紀元・外務審議官、佐藤重和・アジア大洋州局審議官、王毅・外務次官、傳瑩・アジア局長出席)で、我が国の テロ対策特別措置法 に基づく自衛隊艦船のインド洋派遣に関し、中国側が「日本が堅持してきた専守防衛の方針と明らかに合致しないものだ。 憲法 に基づいて行動してほしい」との見解を主張し、派遣に反対していたことが明らかになった。単なる反対表明ではなく、 我が国憲法 の解釈を提示しながら反対を表明するのは内政干渉にあたるという。
アル・カイーダ撲滅のための我が国の国際貢献は我が国の役割や発言力を高めるものであり、それに中国(中華人民共和国)が反発するのはあり得ることである。しかし、それに 我が国憲法 を持ち出して云々するのは、国民感情を害するあまりにも無節操で余計なお節介ではないか。中国の圧力に屈することなく、国際社会における我が国の考え方・役割を確固として発信・実践していく必要があろう。■天皇陛下訪韓見送りは妥当だ
天皇陛下訪韓、見送りへ(12月20日)
報道によると、来年ソウルで開催される2002年ワールドカップサッカー日韓共催大会の開会式に天皇陛下が訪韓し出席されるかどうかについて、政府部内では見送りの方針が固まったという。ワールドカップサッカーでは、開催国の国家元首が開会式に出席するのが慣例となっており、日韓共催となった今回の大会でも、金大中・韓国大統領や鄭夢準・韓国サッカー協会会長が訪韓を求めていた。
我が国と韓国との外交関係は今年、歴史教科書問題や靖国神社首相参拝問題で大きく後退しており、我が国国内にも韓国世論に対する反発も少なくない。日韓関係は金大中大統領の登場で日本文化解禁等が行われ前進したが、韓国国内に残る反日感情が完全に払拭されたわけでもなく、それが歴史教科書問題におけるかの国の不条理な主張に繋がっている。こうした状態では、天皇陛下が韓国を訪問される状況に無いことは明らかであり、政府の決定は妥当なものと言えよう。「サッカー大会があるから」といった政治的な理由で焦るのではなく、地道な民間交流と相互理解の中で、天皇陛下が韓国を訪問できる日を迎えたい。■犠牲者数は2992人
米ニューヨーク世界貿易センタービルの火災、鎮火(12月20日)
報道によると、ニューヨーク市消防局は現地時間19日、9月11日の米国テロ攻撃事件で崩壊したニューヨークの世界貿易センタービルの最終的な鎮火を確認したという。同ビルの火災は突撃した航空機の燃料や付近のガス管のガスによって事件後も燻り続け、事件後4〜5日間は崩壊現場から上空に大きくあがる煙が見られ、また現場付近には異臭が残っていた。なお、ニューヨーク市当局は、貿易ビル崩壊現場での死者・行方不明者総数を「2992人」と発表した。
犠牲者の方々に改めて御冥福をお祈りしたい。■アフガン新政権の発足を歓迎する
アフガニスタン暫定政権、発足(12月22日)
報道によると、タリバン政権の崩壊したアフガニスタンでハミド・カルザイ氏を議長とする暫定政権が始動し、同時に国連代表権を北部同盟(アフガニスタン救国イスラム戦線同盟)から承継した。1979年に旧ソ連軍がアフガニスタンに侵攻して以来続いてきた内戦が完全に終結し、国民の和解と戦災復興に向けて建設的な一歩を踏み出した。30人からなる新政府の閣僚は前政権(北部同盟)から19人、ザヒル・シャー元国王派から7人、ペシャワル派から3人、その他1人となり、一応アフガン各民族を全て網羅したものとなっている。発足式典は首都カブールの内務省ホールで開催され、現場は北部同盟軍と英軍が警備にあたったという。暫定行政機構は半年以内に、「ロヤ・ジルガ」(国民大会議)の緊急会議を招集し暫定政府に移行した後、1年6ヶ月以内に更に本格政権に移行する。なお、政権委譲を受けて、我が国も暫定行政機構をアフガニスタンの正統政府として政府承認を行った。
戦乱の続くアフガニスタンは、アフガン国民にとっても、またその影響を受ける諸外国にとっても放置できない害悪であった。外国軍隊(ソ連軍)や外国兵(アル・カイーダ)によってアフガン一般国民の平穏な生活が破壊されたことは明らかであるし、領土をきちんと統治できる政府が存在しないが故に、周辺諸国としても介入せざるを得ないという状況があった。新政府の成立は、この害悪を根本的に処理する第一歩であり、政権成立を歓迎したい。アフガンをきちんと統治し運営していくことは、アフガン全民族の権利でありまた責任である。■台湾の民主的・政治的独立を否定する田中外相発言
田中真紀子外相、台湾の中国主導での統一が望ましいと発言(12月25日)
報道によると、田中真紀子外相は25日、定例記者会見で台湾問題について触れ、台湾(中華民国)も両岸の政治対話の中で香港同様に解決されるべきとの考え方を示し、中国(中華人民共和国)主導での統一が望ましいとした。また同じ会見で台湾の李登輝・前総統の訪日問題について、日中・日台関係を考えた場合同氏訪日は「何でも受け入れてあげる・・・という状態ではない」と述べ、否定的な態度を示したという。なお、外相は23日付け「日本経済新聞」のインタビューで「台湾は(中国と)同一民族だから将来香港みたいに収斂されると思う」とも発言している。
外務省の公表した会見記録では、田中外相は、「自分は中国人の皆さんの・・・非常に時間をかけて政治的問題を解決していくというふうな手法・・・を見ていると、香港はああしたルールに則って返還されて、軟着陸をしているという実情を踏まえて、台湾の問題もそのようになるとよろしいと思うし、それを阻害するようなことにならないように、・・・平和的に解決する方向に国際社会も努力をするべきであるということである。」と述べている。この発言は、台湾も香港同様、(それが一国ニ制度であるかどうかはともかく)中国主導で統一されるべきであるとするもので、1972年の日中共同声明で示された我が国政府の見解(日本政府は中国<共産党>政府が中国の唯一の合法政府であることを承認、台湾が中国の領土の不可分の一部であるとの中国政府の主張を理解し、尊重)から逸脱するものである。のみならず、この発言は、台湾の民主的で独立した政治体制を否定し、台湾が必ずや中国大陸に併呑されなければならないとの見解を示したもので、極めて不見識という他ない。台湾の帰属は台湾住民の意思に委ねられるべきだが、その住民の中で現在の中華人民共和国に統一されることを望む者はほとんどいない。田中外相は28日になって「香港の問題が平和的に解決されたことに着目している。武力政策ではなく、話し合いをしなければならないと強調しているつもりだ」「本意が正確に伝わるとありがたい。単なる言葉じりではなく、(取材側は真意を)確認しないとならないのでは」と釈明した。しかしそれは、「台湾は中国と同民族で、平和的にせよ統一されなければならない」との前提で話をしている時点で、依然不当である。
この外相発言について小泉純一郎首相は、記者団に「(政府見解と)違ってないと思う。あんまり(事を)荒立てることじゃない」と擁護しているというが、これに対して台湾(中華民国)外交部は26日、呉子丹・政務次長(政務次官)が財団法人「交流協会」台北事務所(外務省の外郭団体で、台湾との非公式関係を処理する窓口。大使館に相当)の山下新太郎・所長を呼び、「明らかに妥当性を欠く」として日本政府に抗議している。台湾国内でも抗議が広がっており、ある外交当局者は「今回の外相発言は(日本政府の)政策転換を意味すると取られても仕方がない。憤りを禁じ得ない」と語っているという。田中外相のあまりにも中国よりの発言が、国益を損ねたという他ない。
製作著作:健論会・中島 健 無断転載禁止
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