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健論時報
  2002年2月  


■韓国中心史観の押し付けは不当だ
 遠山敦子文相、日韓歴史共同研究の教科書反映を拒否(1月8日)
 報道によると、昨年10月の日韓首脳会議で合意された両国の歴史共同研究について、韓国政府がその成果を我が国の教科書に反映させることを求めている問題で、遠山敦子文部科学相は8日、我が国の教科書検定制度上韓国側の要求には応じられないとの姿勢を示したという。韓国側は研究会の名称も教科書問題に絡むような名前とするよう要求しているが、これについても日本側は難色を示している。
 もともと日韓の歴史教科書問題は、我が国の教科書制度や問題となった扶桑社の『新しい歴史教科書』に対する無理解、情報不足、誤解に端を発しており、我が国の歴史教科書を韓国中心に叙述するよう求める韓国側の要求には当初から無理があった。10月の小泉首相訪韓で関係改善を狙った妥協策として「共同研究」が提案されたが、「共同研究」は共通の「事実」を明らかにするためのものであって韓国の「価値観」や「見解」を我が国に強制するためのものではないしあってはならない。そしてまた、そうして明らかになった事実を反映させるかどうかは(学習指導要領の範囲で)教科書執筆者の判断によるのであり、政府が一つ一つを指定するものではない。しかも、「共同研究」の内容を反映させるというのは外国に我が国の教育内容に対する介入を許すものになりかねず、例え我が国の教科書が国定であっても、代償として韓国側も「共同研究」の内容を自国国定教科書に反映させるのでない限り認めてはならないものである。政府の対応は妥当であるし、また韓国側の要求は極めて不当という他ない。

■防衛庁・自衛隊は日本外交の一翼を担うべし
 防衛庁、新しい防衛計画の大綱でPKOを「本務」に格上げへ(1月8日)
 報道によると、防衛庁が平成17年度(2005年度)を目途に策定を目指している新しい「防衛計画の大綱」について、その概要が8日に明らかとなり、日本有事の直接侵略への対処を基本としつつも、ゲリラ・特殊部隊への対処や国連平和維持活動(PKO)、大規模災害への対応などを新たに「本来任務」として扱うことを検討しているという。
 本誌 2001年12月号 記事「 同時多発テロと日本外交 」でも指摘されたように、現在の我が国安全保障環境は、不審船事件や情報技術革命・軍事技術革命の進展、相互依存関係の進化等によって「有事(戦時)」と「平時」を画然と区別することが難しくなっており、「専守防衛」と称して国境線を守るだけでは我が国の安全を守ることは難しくなってきている。ところが一方で、現行の 自衛隊法 (昭和29年法律第165号)は、在留邦人救出任務(NEO)や国連平和維持活動(PKO)に対する協力を「 雑則 」の中で扱っており、時代の流れから取り残されてしまっている。「平時」と「有事」のグレーゾーンを埋め、領域警備法を含む有事法制を制定し、併せて我が国の国際社会における地位向上のための国際貢献任務を本来任務とすることは、もはや喫緊の課題であろう(そうであってはじめて、例えば海上自衛隊が1万3500トンの大型ヘリコプター護衛艦を建造する意義も出てくるというものである)。そしてまた防衛庁自身も、単なる「自衛隊管理庁」から軍事面での日本外交の一翼を担う「国防省」への変化が期待されている。
 ところで、「防衛計画の大綱」改正というと、必ずといっていいほど議論されるのが、その「別表」に記載された自衛隊「兵力」の削減である。しかし、今回の大綱改正は、中途半端な、軍縮のための軍縮に終わった前回の改正とは異なるのであって、単純に部隊・人員・装備の削減をすればよいというものではない。2001年9月11日以降、我々はセキュリティーにお金をかけることをためらってはならないということを学んだのであり、部隊のより一層の効率的運用のために装備の質的向上こそが求められよう(例えば、ヘリコプター、輸送機等の空中機動手段の増強、データ通信機能の拡充)。

■「例外的」であろうが「選択的」であろうが問題の本質は変わらない
 法務省、「例外的」夫婦別姓法案を取りまとめ(1月9日)
 報道によると、法務省は9日、夫婦が結婚前の姓を名乗ることができる夫婦別姓制度について、同姓か別姓かを選択する「選択制」の方針を転換し、希望者に例外的にのみ別姓を認める「例外制」とする方針で法改正する方針を固めた。これは、与党・自由民主党内に別姓導入反対論が多い中で、別姓があくまで「例外」であることを強調するため、であるという。
 現在の法務省案では、1996年に法制審議会が出した答申に基づき、①夫婦は、婚姻時に各自の結婚前の姓を戸籍に記すことができる、②夫婦が別姓の場合は、複数の子の姓は全て夫又は妻の何れかに統一する(いつまでに決めるかについては検討中)終決定する、としている。新しい「例外制」案では、結婚後に別姓から同姓に変更することを認める他、逆に、結婚後に同姓から別姓に変更することは認めないという。
 確かにこの法務省案は、現在同姓の夫婦が突然姓を別姓に変更するといった事態を防ぐという点では新しい提案ではある。しかし、この案は結局別姓を認めるものであり、(同氏同籍原則はともかく)「親子同氏原則」を崩すという点で本質的には何も解決していないのであって、依然として賛同し難い。夫婦別姓論の焦点は、「親の都合で子供と違う氏の親を作ることを認めるかどうか」の一点にあり、この点で法務省案は結局親の都合を優先させているからである。

■「新成人」に対する警察の毅然とした態度を歓迎する
 沖縄県警、成人式で暴れた新成人ら6人を逮捕(1月14日)
 報道によると、沖縄県警那覇警察署は13日、那覇市が主催する成人式の会場(市民体育館)にワゴン車で突っ込んだ等として、新成人ら6人を現行犯逮捕した。調べによると、当日は禁止されていた酒類の会場への持ち込みを巡って朝から新成人らと警察官、市職員らがもみ合いになり、式典終了後、今度は酒樽を持ち込もうとしてワゴン車を門扉にむけて突進。運転していた同市内の19歳の土木作業員や18歳・高校2年の男子生徒(警察官の職務質問を妨害)ら、18歳から19歳の少年5人を 公務執行妨害 の現行犯で逮捕した。また、体育館前の県道交差点内を酒に酔った状態で自転車をジグザグ運転させたとして、新成人1人を道路交通法違反で現行犯逮捕した。
 「成人になる」ということは自由意思を以って自分の行動を選択してゆくということであり、またそれ相応の社会的責任を負わされるということである。那覇市は今年、新成人の代表らに式典の計画を任せ、新成人に一定の権限と責任を与えたというが、それでもやはり逸脱者が出ることを防げなかった。警察の毅然・断固とした態度を歓迎したい。
 元々、「成人式」は、戦後新成人らを励ます目的で始まった通過儀礼で、大学進学率も低かった当時としては、それなりに意義があったものと思われる。しかし、1学年の4割が大学に進学する昨今では、20歳=大学2年生ではまだモラトリアム時代の真っ只中で、彼らにとって真の成人式は就職活動である(しかも、そうした就職活動もせずに大学卒業後もフリーターとして生きる若者も増えている)。時代が変われば、儀式の意味合いも変化するものである。現在の「成人式」が通過儀礼としての意味を失った以上、この辺りでその廃止も検討してよいのではないだろうか。

■不満だけでなく苦労を分かち合う姿勢を
 田中外相、仮庁舎に初登庁し不満漏らす(1月16日)
 報道によると、耐震工事のため港区芝公園に移転した外務省仮庁舎に初登庁した田中真紀子外相は15日、「巡り合わせの悪いときに大臣になったもんだと思っております」「地震に弱そうなガラスでできてて大丈夫かいな」「アフガニスタン復興会議の会場の(都内の)ホテル、国会、ここと三角で移動して、また遅刻した、なんて言われるといけない」等と語り、仮庁舎での執務に不満を示したという。同庁舎は永田町の国会からはやや離れており、そのためか外相は「できるだけ早く一部でも改修していただき、本庁舎で仕事をしたい」「シャトルバスでも出して、できるだけ国会開会中は集まっていただかないと。局長(専用)車でふんぞり返って、間に合いませんと言われたんじゃ」とも語った。仮庁舎は2年半ほど使用し、その間に耐震性に問題のある霞ヶ関の現庁舎を改修する。
 仮庁舎はあくまで仮のものであるから、住み心地が多少悪くなるのもやむを得まい。また、仮庁舎の問題点について、内閣に対し何か言うべきことがあれば、主務大臣として発言することは必要であろう。議院内閣制である以上、中央省庁と「国権の最高機関」(国会)が遠いのは何かと不便かもしれない。ただ、国会が遠くて不便であるのは一般職員も同じであり、またそれは外務省職員のせいではない。それに、市ヶ谷の防衛庁庁舎や総務省統計センターのように、霞ヶ関からやや離れたところにある庁舎もある。不満をマスコミに漏らすだけでなく、そうした不便や苦労を職員と分かち合い士気を高める、といった姿勢も必要なのではあるまいか。

■無差別殺人者に対する当然の判決だ
 池袋通り魔事件犯人に死刑判決(1月18日)
 報道によると、東京都豊島区池袋の「サンシャイン通り」の路上で3年前(1999年)の9月、包丁と金づちを使って通航人の女性2人を殺害、6人に重軽傷を負わせたとして 殺人・殺人未遂 等に問われた岡山県出身の元新聞配達員・造田 博被告(26歳)に対する判決公判で、東京地方裁判所(大野市太郎裁判長)は、求刑通り死刑判決を言い渡した。判決の中で大野裁判長は、造田被告人の境遇(高校中退を余儀なくされ、両親が失踪したため独力で生計を立てざるを得なかった経緯等)について「同情の余地がないわけではない」と述べたが、犯行については「心から悔悟の姿勢を示しているとは言い難い」「自己中心的かつ冷酷な犯行で刑事責任は誠に重大。死刑をもって臨むことはやむを得ない」とした。争点となっていた責任能力については、「無差別殺人をするという目的に沿って凶器の準備をするなどの行動からすれば、犯行時の被告は善悪を判断し、行動を制御する能力を失っていなかった」と述べたという。なお、弁護側は判決を不服として即日控訴している。
 本事件で被告人は、白昼堂々無辜の市民を2人殺害しており、動機の点でもまた被害者感情の点でも、死刑判決は当然のことである。弁護側は被告人を心神耗弱又は心神喪失だというが、それでは犯罪に臨んで異常心理状態にある全ての加害者が「心神耗弱」になりかねない。

■『ええかっこしい』の馬脚を現した社民党政審会長
 辻元代議士と小泉首相・塩川蔵相が応酬(1月22日)
 報道によると、22日に衆議院本会議で開かれた平成13年度第2次補正予算案の審議の中で、社会民主党の辻元清美・政策審議会長「小泉総理の政治手法の特徴は、『ええかっこしい』だと思っています。(補正予算案でも国債発行の30兆円枠を守ったとする首相に対して)特に今回の第2次補正予算予算につきましては、この『ええかっこしい』の馬脚を現したものではないかと」と小泉純一郎首相を批判。首相の政治姿勢についても、「自民党をぶっ壊すと、身振り手振りをつけてこの場所で、上半身では改革のパフォーマンスを演じていらっしゃいますが、下半身はどっぷり、古い自民党体質という岩盤に組み込まれてしまっているのではないでしょうか」と語気を強めた。これに対して小泉首相は、「『ええかっこしい』と言いますけどね、何がこれ『ええかっこ』なんですか。現在の厳しい財政状況を考えて、(NTT株を売却する等して作った)苦心惨たんの策ですよ」「私は、一定の規制の下で企業・団体献金を受けることは、必ずしも悪だとは思っていません。企業献金・団体献金を受けなかった場合、政治活動は誰がやるんですか。税金でやるんですか?」と反論。続いて答弁に立った塩川正十郎蔵相も、「辻元さんは、再三再四、えー、小泉総理を『ええかっこしい』とおっしゃいましたが、最近若い人はああいうのを『パフォーマンスがいい』というですよ。その意味で、あなたもなかなか、『ええかっこしい』のところ、ありまっせ」と辻元政審会長をたしなめた。
 国会の論戦を面白くするために一定の範囲でレトリックを駆使のは構わない。しかし、このようなあまり内容の無い、野党第3党の質問を放映する時間があったら、他の野党の真面目な質問を正面から報道したほうがよいのではないか。辻元政審会長も党勢拡大のためテレビへの露出を増やしているのであろうが、「露出」は真面目な政策討論によるべきで、ワイドショーまがいの応酬は建設的ではない。

■食肉業界全体の責任が問われている
 雪印食品、輸入牛肉を国産に偽装し補助金を不正領収(1月24日)
 報道によると、雪印乳業の子会社で大手食肉会社の「雪印食品」が昨年10月、豪州から輸入した牛肉13.8トンを国産牛肉の箱に詰めかえる等して国産に偽装。狂牛病(牛海綿状脳症、BSE)対策として実施された国の牛肉買い上げ制度を悪用し、業界団体「日本ハム・ソーセージ工業協同組合」に買い取らせていたことが判明した。同牛肉は国産肉と同じ手法でカットされていて見た目には見分けがつかないもので、消費者の牛肉離れで余っていたもの。昨年10月31日、兵庫県西宮市の冷蔵保管会社に預けてあったこれを雪印社員8〜9人が詰め替え、更に外装のシールを偽造。昨年11月、こうして偽装した肉663箱を業界団体に買い取らせ、代金1460万円の内約900万円を既に受領していた。23日に記者会見した雪印食品の吉田升三社長は、事実関係を認めた上で「日増しに在庫が溜まっていて将来が不安になった関西ミートセンター長が独断で行ったもの」と語った。一方、兵庫県警察本部と兵庫県・西宮市保険所は同日、食品衛生法違反(表示義務違反)や詐欺の疑いで調査・捜査に着手したという。
 なお、その後の報道で、同社はこの牛肉13.8トンの内約1トンを水増し請求していた他、売れづらくなった北海道産の牛肉のラベルを「熊本産」に張替え、偽って販売していたことも判明している。
 「雪印食品」は昨年11月、関西在住を名乗る男性から「ミートセンターで輸入牛を国産として扱っているのではないか」との情報が寄せられたため内部調査を実施。しかし、保管会社「西宮冷蔵」作成の牛肉の入出荷伝票等を全くチェックしないまま調査を終了していた。同社の親会社「雪印乳業」は2年前の夏、集団食中毒事件を起こして社会的信用を失っており、信頼回復にむけて努力していた矢先の出来事だけに、同社の信用度は傾いたままだ。狂牛病対策の制度を悪用する今回の行為は悪質で、食中毒事件を受けて制定された「雪印再建計画」「雪印企業行動憲章」も、不徹底に終わったというべきであろう。
 しかしながら、今回のこの事件は、単なる「雪印食品」という一企業の問題ではない。昨年、我が国ではじめて狂牛病に感染した肉牛が発見された際、多くの報道は行政(農林水産省、厚生労働省)の対応のまずさばかりを指摘。あたかも消費者に安全な食品を提供する全責任が行政にあるかのように扱い、畜産農家や食肉業者は全面的にその被害者であるかのように報じられた。だが、農林水産省は1996年4月16日、畜産局流通飼料課長から各都道府県等に「反芻動物(牛、羊、ヤギ等)の組織を用いた飼料原料(肉骨粉等)を、反芻動物の飼料としないよう周知を図られたい」とする行政指導を行っていた。この行政指導は現場農家への周知徹底が不十分だったとされるが、この時期では既に欧州諸国で狂牛病が問題化しており、食肉業界として問題意識を持てない時期ではない。それを、「行政の規制が無いから」「行政指導には法的拘束力や罰則が無いから」というだけで肉骨粉を使いつづけたのであり、現に昨年9月の時点で15道県5129頭の牛が、肉骨粉やそれが混ざった飼料を食べていたのである。もし食肉業界関係者が、消費者の利益を考え何よりも増して安全な牛肉の供給を真剣に考えていたのであれば、行政の規制や行政法上の形式に拘泥する必要は無い。即ち、現在消費者が牛肉に対して不信感を懐いている根本的な原因は、こうした食肉業界の対応にこそ存するのではないか。無論、農林水産省側も、国内2頭目の狂牛病感染牛が食べていた血漿蛋白を含む飼料の規制が後でに回ったり、問題があったイタリア産の飼料の輸入規制が遅れた、といった不手際があった。しかし、それは単に行政が行政としての責任を十分果たしていなかったというだけのことであって、食肉業界が無罪放免になることを意味しない。ちょうと、医療ミスを犯した病院があったからといって、それで保健所や厚生労働省の責任だけが責任追求され、ミスを犯した当の医者が無罪になるわけではないのと同様である。
 勿論、全ての畜産関係者が食品安全に無関心というわけではあるまい。ただ、これまでの報道があまりにも行政の責任のみを追及するものであったことからすれば、今回のこの事件で食肉業界の一部にある「体質」が明らかになったことは、消費者にとってよいことであったと言えるであろう。

■少年らの凶悪な犯行は刑事処分相当だ
 東村山市の少年4人、ホームレスの男性を暴行し殺害(1月27日)
 報道によると、警視庁は27日、東京都東村山市のゲートボール場で25日夜、住所不定・無職の鈴木邦彦さん(55歳)を暴行し死亡させたとして、同市市立中学校に通う14歳の少年3人を傷害致死容疑で逮捕、13歳少年を東京都北児童相談所に通告した。調べによると、少年らは事件前日の24日、市内の図書館で携帯電話を使ったり大声で騒いだり等したため鈴木さんと図書館職員に注意されたが、これに腹を立てた少年らは鈴木さんの襲撃を計画。25日午後6時過ぎにゲートボール場におしかけたが、このときは反撃されて断念。その後2度にわたり仲間を加える等して襲撃し、最終的には約1時間半にわたって執拗に角材で殴ったり、胸を踏みつけたりしたという。
 その後の報道によれば、少年らはこれまでも学校等で問題行動を繰り返しており、これに対して学校側が十分な対応をとったか疑問が残る。とはいえ、自らの反社会的行為を注意した人間を逆恨みし、繰り返し襲撃して欲するままに相手に暴行を加えるのは非常に悪質な行為であり、昨年施行された改正少年法の趣旨に照らしても逆送致・刑事処分(それも本来は「死刑」)が相当であろう。少年らの将来の更生や社会復帰は、あくまで被害者(及びその遺族)に対する責任を果たした後論じるべき話であり、行政処分たる保護処分では軽きに過ぎる(この点、被害者の権利を代弁してくれる人がきちんといるのか、少年らの処分を決定する裁判官がそうした点にきちんと思いを致せるか、社会としても注視していくべきであろう)。

■国際法の解釈・適用を誤った日本共産党
 日本共産党、海上保安庁の船体射撃を批判(1月28日)
 報道によると、日本共産党の志位和夫・中央執行委員長は28日記者会見し、昨年末の東シナ海不審船事件に関連して、「同水域は国際法上、不審船に対する取り決めはなく、密漁などのケース以外は日本の主権は及ばない。危害射撃は問題海上保安庁は最初から漁船ではないという前提で行動しており、漁業法違反容疑での対処は国際法上容認されない」等と海事当局の対応を批判した。志位委員長は「日本が中国、韓国、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)、ロシアなど、周辺国と協力して不審船に対処できる
ルールづくりを行うべきだ」とも述べた。なお、同党は領海での現行法による不審船取締りについては「当然だ」としている。
 だが、同党の本見解は不当という他ない。確かに、先の不審船事件においては、国内法上の不備から漁業法違反を容疑として船舶検査を実施せざるを得なかったが、国際法的には同船は無国籍船であり、 国連海洋法条約第110条 に基づいて、条約加盟国の軍艦と政府専用船は当然にこれを臨検する権利がある(詳細は 本誌2002年1月号東シナ海不審船事件について 」を参照されたい)。周辺国としても、我が国国内法の解釈に介入することは内政干渉にあたるので、こうした我が国の国際法上適法な行為について批判していないのである。
 更に志位委員長は、不審船について周辺国と協力して対処することを提案しているが、不審船そのものが北朝鮮(自称「挑戦民主主義人民共和国」)の特殊工作用と見られている中で、当の北朝鮮がその取締りに協力する等と想定することはナンセンスである。

■筋は通っているが有権者を裏切ってもいる
 民主党の大橋巨泉参議院議員、議員辞職願を提出(1月29日)
 報道によると、民主党の大橋巨泉・参議院議員(比例区)は29日、井上 裕・参議院議長に議員辞職願を提出した。国会法(昭和22年法律第79号)第107条は「各議院は、その議員の辞職を許可することができる。但し、閉会中は、議長においてこれを許可することができる。」と定めており、本会議で可決されれば(参議院規則第190条・第191条)辞職が認められる。辞職理由について大橋議員は「(最近のNGO出席問題を巡る政局のような)政治全体に対する不信と、民主党の党運営に対する不満がある」等と述べているという。なお、辞職に伴い、民主党のツルネン・マルテイ・元神奈川県湯河原町議会議員(61歳)が繰り上げ当選となる。29日午後4時から開かれた記者会見には辻元清美・社会民主党政策審議会長ら社民党の女性議員や民主党の旧社会党系議員らが詰め掛け、「やめないで!」と騒ぎになる一駒もあった。
 大橋議員は昨年7月の参議院選挙に「小泉政権と対決する」等として民主党比例区から出馬。41万票あまりを獲得してトップ当選したが、その後は テロ対策特別措置法 上の自衛隊海外派遣承認案に反対票を投じて厳重注意処分となったり、政権と対決しない鳩山由紀夫・民主党代表らの政治姿勢を批判。民主党を中道左派政党にすべきと主張していた。また、最近の有事法制論議でも、法整備に積極的な民主党執行部を批判し、野党の有事法制整備の反対集会に出席。構造改革反対、有事法制反対を唱えていた。
 辞職を決意した理由について大橋議員は、「自分は41万票を頂いているが、民主党から貰った60万票もある」として、「民主党」票に配慮したことを明らかにしている。確かに、その点大橋議員の主張は筋が通っていると言えるだろうが、同氏が獲得した41万票は結局民主党全体に「横流し」されたことになるのは見逃せない。また、テロ対策法反対や構造改革反対、有事法制反対といった同議員の「中道左派」的主張は旧社会党の主張そのものであり、時代錯誤も甚だしいと言わなければなるまい。現在の民主党が旧新進党から分裂した当初の旧民主党と違って支持を伸ばしているのは、「何でも反対」という旧社会党の悪弊を脱し、安全保障政策にも現実的に対応する責任政党になったからに他ならない。その意味で、確かに大橋議員の辞職は有権者の信頼を裏切る「職場放棄」(福田康夫・官房長官)の観があるが、それは結局、民主党にとっても、また我が国の政治にとってもプラスだったのではないか。


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製作著作:健論会・中島 健 無断転載禁止
 
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