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健章時報 1999年1月
■千葉大学、西千葉校地に警察官のパトロールを導入
(12月4日)
報道によれば、千葉大学はこの春から、同大学西千葉校地に夜間、警察のパトロールを依頼しているという。これは、夜間同校地内で恐喝事件が多発したためで、当初は「大学の自治」という観点から慎重に議論が為されたものの、最終的に大学当局が「やむなく」決定した措置だという。
大学構内で犯罪が発生している以上、警察の導入は当然であり、千葉大学の決定は至極当然のことであろう。問題は、むしろこのような措置が新聞で報道されるほど注目されていることそれ自体である。記事にもあるように、大学当局は当初は「大学の自治」を理由に慎重な議論を進めていたというが、私に言わせれば、そのような議論自体が「大学の自治」ということを曲解した所産であり、不毛な議論である。
そもそも大学の自治とは、学問の自由の派生原理の一つとして欧米で誕生したものであり、端的にいえば、それは国家権力によって学問の自由を侵されないための制度的保障の一つである。ところが、この原理が60年代の学生運動華やかなりしころ警察の過激派学生鎮圧を阻止するための方便として使用され、しかも更に悪いことに学者教授の中にも過激派学生らの主張を採用して「大学の自治」を曲解する者がいたために、今日、この原則はあたかも「大学の治外法権」を意味するかの如く使用されているきらいがある。勿論、欧米の大学の中には警察権力の進入を制限しているところもあるが、それは大学側が自前の警察組織(大学警察)を保有しており、構内の治安維持に責任を持ってあたっているからこそ妥当とされるのであり、そのような権限が認められていない我が国においては、大学構内に警察が侵入することを正当な理由無く拒むことは許されない(勿論、一般的な私有地に認められた権利まで否定するわけではないが)はずである。ましてや、千葉大学西千葉校地は24時間開放された敷地であり、公園なみの公共性があったことを考えれば、多少とも「大学の自治」という観念に引きずられ、無責任な警備体制のまま構内で恐喝事件の発生を許してしまった大学側の責任は重いといわなければなるまい。■オウム真理教教祖の主任弁護人、逮捕される
(12月7日)
6日の報道によると、「地下鉄サリン事件」など17の事件で刑事裁判を受けているオウム真理教開祖・松本智津夫(自称「麻原彰晃」)被告人の主任弁護人で、東京第2弁護士会所属の弁護士・安田好弘容疑者が、6日警視庁によって強制執行妨害の嫌疑で逮捕されたという。安田弁護士は死刑廃止論者として知られ、松本被告人の刑事裁判でも国選弁護人として同被告人の弁護を担当していた人物だが、今回、安田氏が旧住宅金融専門会社の債権回収を妨害するという、弁護士の知識を悪用した行為の容疑で逮捕されたことは、オウム真理教松本被告人の弁護団に対する不信感を一層増大させたといえよう。
もともと、同弁護団に対しては、裁判進行日程を巡るトラブルや、検察側の提出した証拠や証人に対する瑣末な質問など、刑事被告人の弁護のあり方としては疑問な法廷戦術を採用しているとして、社会的にも批判の声が高まっていた。一部では、逮捕された安田弁護士をはじめとする死刑廃止論を唱える弁護士達が、松本被告人の裁判を引き伸ばし、松本被告人を獄死させ死刑を回避することで自己の政治的信条を満足させようとしているのではないか、という批判も為されており、弁護団はこのような社会的な批判に対して、きちんと答える義務がある。これは、現在捜査が進んでいる和歌山保険金詐欺事件の弁護団についても、同じである。
弁護士法第1条第1項によれば、弁護士は「基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする」のであって、単に刑事裁判において検察側の公判進行を法的手段を用いて妨害し、国家権力に対抗することではない。しかし、今回、強制執行妨害の容疑で安田主任弁護人が逮捕されたことは、松本被告人の国選弁護団の弁護士達が果たして弁護士法第1条をわきまえた弁護活動をしているのかどうか、ということについて、国民の間に大いなる疑義を生んだということが出来よう。■グリーンピース活動家、調査捕鯨母船に妨害工作
(12月9日)
報道によると、11月19日、共同船舶所有の鯨類捕獲調査母船「日新丸」(7575トン、山城謙二船長)はオーストラリア沖で火災事故を起こし自力航行不能となったため、タグボートに曳航されてフランス領ニューカレドニアのヌーメアに緊急寄港したところ、12月7日、日本の調査捕鯨に反対する過激派環境保護団体・グリーンピースの活動家4名が、停泊中の「日新丸」及び「第1京丸」の出港を阻止すべく妨害工作を行い、両船が被害を受けたという。活動家らは、「日新丸」のもやい綱(船と岸壁とを結ぶ綱)にぶら下がり、あるいはプロペラ(推進機)にチェーンを巻きつけて航行を妨害し、また小型ボートが両船の周囲に張りついて抗議活動を繰り広げていた。なお、「日新丸」の火災は9日間にわたって延焼を続けたが、その過程で乗組員1人が自殺するという悲劇も発生している。
グリーンピースの妨害行為について、船主の共同船舶(高山武弘社長)ではグリーンピースに対する訴訟提起も辞さないとしており、また日本捕鯨協会も、「海難救助を受けている船へのテロ行為であり、このような行為を行なう団体を環境保護団体と呼ぶことは『環境保護』への侮辱である」とグリーンピース側を強く批判している。一方グリーンピース側は、グリーンピース・ジャパンが第1京丸船長に対して謝罪状を送付したが、報道機関に対しては「今回の抗議行動に関しても、捕鯨船や乗員を傷つける目的はまったくなく、あくまでも、再び南極海へ繰り出すことを阻止する目的で行っています。」と発表し、行動はあくまでも非暴力的な直接行動であったと説明している。
今回グリーンピースが行ったような、暴力的で違法な手段に訴える「環境保護運動」に名を借りたテロリズムは断じて許されるべきではないし、その価値を認めがたい(グリーンピース側は今回の抗議行動を「非暴力的直接行動」と表現しているが、表現をすりかえただけで詭弁である。威力で業務を妨害することは暴力的であり<「暴力」とは「有形力の行使」だけではない>、言論によってではなくそうした違法な手段で特定の主張を為すことを正にテロリズムと呼ぶ。グリーンピース側はまた、「乗員は事故等で疲労しており、ここで出港を強行するのは乗員のためにもよくない」等と主張しているが、乗組員の疲労度を上げているのは事故の他にグリーピースによる抗議行動があったからであって、自ら疲労の原因を作っておきながらそれを更に利用した主張を行う等というのは、到底理解し難い)。特に、日本捕鯨協会が指摘するように、今回の「日新丸」のヌーメア寄港は火災事故の応急修理という緊急目的(船舶の火災事故は、沈没の危険すらある重大な事故である)によるものであり、それに対する妨害行為は正に感情的、非人道的な行為であって、そのような団体に果たして環境保護、鯨類保護を訴える資格があるのか大いに疑問である。そもそも、例え今回の事件が報道されたとしても、捕鯨問題に対する世論の喚起には全く寄与しないばかりか、むしろ環境保護運動に対する疑念を増幅させる結果を招くのではないだろうか。グリーンピースが真剣な態度で世論の喚起を望むのであれば、もっと草の根的なところから運動をはじめるべきであろう。■法制審議会、少年法改正の答申案決定
(12月12日)
報道によると、法務省の法制審議会少年法部会は11日、少年審判制度の根本的な改正等を内容とする答申案を決定したという。答申案では、重大事件については検察官の少年審判廷への出席を(家裁の判断で)認めて対審構造をとるほか、審判の結果に不服な場合検察官が抗告すること、少年に付添人(刑事裁判における弁護人)がいない場合に国選の付添人を付すこと、審判を正確にするため3人の裁判官による合議制を採用すること、被害者へ審判結果を通知すること、身柄拘束期間を最大12週間に延長すること(従来は最大4週間)等が盛り込まれており、画期的な内容であって、評価できる。特に、審判結果の被害者通知制度(これには、少年の実名も含まれるという)は、それまで法的に全く無視されてきた少年犯罪被害者をはじめて「配慮」した制度であり、不充分ではあるものの前進の大きな第1歩であるといえる。
この答申案に対して日本弁護士連合会等は「検察官の関与」と「検察官の抗告権」について特に反発しているが、少年犯罪の凶悪化等の現状を見れば、「少年審判の教育的機能を損なう」とする日弁連の批判は妥当なものとは言いがたい。確かに、少年審判廷は本来、保護事件で逮捕された少年の保護処分を決定する場所であり、保護処分は保安処分の一種であって、制裁・非難の意味を持つ刑事処分を決定する刑事手続きとはその性質を異にする。しかし、今回の答申案を見ればわかるように、検察官の関与はあくまで一定の重大事件に限ったことであって、必ずしも少年側が事実認定を巡って争う場合全てにおいて対審構造がとられるわけではない。少年の犯した罪が凶悪であろうとなかろうと、少年院に送致されるかどうかは少年にとっては重大な関心事であり、それだけに、むしろ少年側の人権に配慮すればこそ、きちんとした事実認定を可能とする対審構造の導入や複数の裁判官の出廷といった改革を実施すべきなのではないだろうか。その点、今回の答申案は、不完全ではあるが改革への第一歩といえるだろう(もっとも、検察官送致(所謂「逆送」)が可能となる年齢が引き下げられないことについては、私も又不満である。如何に少年であろうとも、凶悪な事件について弁別能力や統御能力が全く欠如している等ということは無い。であれば、凶悪事件をおこした少年は、少年審判のような比較的軽い逸脱を経験した少年の処遇を決定する場ではなく、制裁としての刑罰を課すことを問う刑事裁判において処断されるべきではないだろうか)。■防衛庁、富士重工を1年間取引停止に
(12月16日)
報道によると、防衛庁は15日午前、海上自衛隊の救難飛行艇「US-1A改」の受注を巡る汚職事件で収賄の疑いが持たれている富士重工業との取引を、一連の事件に対する「制裁」として今後1年間停止することを発表した。これは、世論の防衛庁や富士重工業に対する風当たりに配慮してのことだと思われるが、果たしてこの措置は妥当だったのであろうか。
確かに、今回の一連の汚職事件で我が国の防衛産業を混乱させ、世論の批判に晒した富士重工業及び逮捕された中島洋次郎代議士の責任は大きく、最近の防衛庁幹部の汚職事件ともあわせて、防衛庁に対する世論の批判は一層激化しているといえるかもしれない。しかし、だからといって、世論・マスコミからの攻撃回避という目的のために、国家の重要施策の一つである新規防衛装備の調達を中断するというのは、国防を担当する官庁としてやや拙速な決断のように思われる。特に、我が国の防衛産業は、東西冷戦終結やこのところの景気後退の影響を大きく受けており、現状はそれに輪をかけて人為的な不景気を作り出すべき状況には無い。そもそも、US-1A改は来年度より試作機の製作を開始する計画であったところ、今回の「取引停止」で計画全体が2年間遅れており、しかもその間にも退役する従来型US-1飛行艇の代替装備が必要になっているがそれについても対応はまだ決まっていない。海上自衛隊の救難飛行艇は、単に自衛隊機の救難だけでなく、民間船舶の遭難事故や飛行場の無い離島における急患輸送等の重要な業務を行っており、稼働率の低下は避けるべきであるから、遅れる2年の間も飛行艇発注を取りやめるわけにもゆかないのである。報道によれば、防衛庁内部では現行US-1A型を新たに2機発注することで埋め合わせる、といった見解もあったそうだが、そのようなことをするのであれば何故最初から新型機の試作に移らないのか、理解に苦しむところである。
このように、今回防衛庁がとった行動は多くの問題を抱えているのであり、私はこの措置は妥当であったということは出来ないと考える。防衛庁が問題点に対して何等効果的な対策を出せないのであれば、今回の措置は「制裁」の名を借りた防衛庁の責任転嫁ないし報道むけのスタンドプレーと認識されてもやむを得ないだろう。■米英連合軍、イラクを空爆
(12月17日)
報道によると、日本時間17日午前6時ごろ、ペルシャ湾岸地域に展開するアメリカ・イギリスの両軍は、イラク大統領宮殿等の軍事施設に対して空爆を実施したという。今回の空爆は、国連大量破壊兵器廃棄特別委員会(UNSCOM。リチャード・バトラー委員長)の査察に対して、イラク側が度々妨害行為を行ったことに対する制裁として実施されたもので、96年9月の武力行使以来2年ぶりの空爆であり、湾岸戦争以来最大規模のものとなる。空爆に参加したのは、トマホーク巡航ミサイル200発、米海軍空母艦載機、及び米空軍のB52戦略爆撃機等とされている。アメリカ側は、今回の攻撃は数日間(我が国政府の発表によれば約5日間)徹底して行われるとしており、又国連安全保障理事会の常任理事国の内イギリス以外のロシア、フランス、中国(中華人民共和国)の3国は、揃って米英の軍事行動を批判している(とはいえ、この3ヶ国には批判を外交交渉で体現する以上のことは出来ないであろう)。
もともと、今回の武力攻撃は一連のアメリカのUNSCOM査察圧力(及びサダム・フセイン政権そのものの打倒を狙った経済制裁の継続)と、それに反発し経済制裁の解除を要求するイラクとの駆け引きに端を発した事態であり、イラクと他のアラブ諸国との関係も微妙であるだけに、今回の事態がただちに湾岸戦争規模の大規模地域紛争に発展する可能性は少ない(イランが、イラク人を擁護する声明を発表したのは面白かったが)。また、憲法上及び軍事上の行動手段を欠く我が国としては、ペルシャ湾岸における我が国友好国の増加と産油地域の安定(即ち我が国経済の安定)の観点から、イラクのような地域覇権国家が核兵器を保持して湾岸地域の秩序を乱すような事態は何としても避けるべきであり、この点我が国の国益とアメリカ合衆国のそれとは完全に一致するのであって、アメリカの空爆にいち早く賛同した政府の対応は、大いに評価できる。特に、最近アメリカが指摘している北朝鮮(自称「朝鮮民主主義人民共和国」)の核兵器開発疑惑を考慮すれば、我が国及びアメリカ合衆国が「大量破壊兵器の製造に対しては断固たる態度をとる」ことを明確にする」、という意味でも、今回の武力行使には意味があったということが出来るだろう。また、今回の事件を機会に、政府・自民党に対しては、所謂「ガイドライン関連法案(周辺事態法案)」の審議を一層促進することを期待したい。■韓国軍、北朝鮮潜水艇を対馬沖で撃沈
(12月18日)
報道によると、日本時間17日午後11時15分ごろ、韓国陸軍は同国南部麗水市から巨済島にかけて航行していた、北朝鮮(自称「朝鮮民主主義人民共和国」)のものと見られる小型輸送潜水艇を発見し、陸海空軍の合同部隊が警告射撃の後公海上で撃沈したという。なお、我が国運輸省の発表によれば、今回の事件を海上保安庁の航路標識測定船「つしま」(LL-01、満載排水量約2000トン)が13キロ離れたところから目撃したが、「つしま」に被害は無かった。この小型潜水艇は、母船から発進し隠密裏に特殊工作員を上陸させるためのもので(今回発見された艇は5〜6人乗りと見られる)、実際今回の事件でも既に上陸した工作員と見られる人物の遺体1体が発見されており、他にも侵入者が居たものと見られている。このため韓国南部では、軍が検問等を行って工作員の捜索を行っている。
今回発見されたのは小型潜水艇であったが、このような航行能力の貧弱な潜水艇であっても、母船から発進する方式であれば北朝鮮本国からかなり離れた地点(韓国南部)でも運用可能であり、今回の事件ではその運用能力が改めて証明されたといえよう。北朝鮮と接する日本海側に長大な海岸線を持つ我が国としても、このことは重大な問題として受け止めるべきことであり、対人地雷全面禁止条約批准の問題と合わせて、我が国の海岸防衛の在り方を改めて問いなおしてみるべきである。
※その後の報道で、今回撃沈されたのは、正確には「潜水艇」ではなく「半潜水艇」であることが判明した。■米英軍のイラク空爆終了
(12月20日)
報道によると、アメリカのウィリアム・クリントン大統領は19日(日本時間20日)、湾岸戦争以来最大規模の軍事行動となった「砂漠の狐」作戦の終了を宣言した(イギリスのトニー・ブレア首相も同日、攻撃終了を発表)。アメリカ・イギリスの両国は対イラク封じ込め政策の継続を決めており、イラクが大量破壊兵器開発を再開すれば再度攻撃すると警告しているが、イラク側は勝利を宣言し、国連査察への協力拒否を表明しているという。
無論、今回のアメリカ・イギリスの両国による空爆は、単に「核開発には断固たる措置をとる」という意思表示に他ならず、そのためにはアメリカは軍事力行使も厭わないことを示したこと以上の意味は無い。実際、再び地上戦を戦ってバクダットを制圧でもしないかぎり、空爆だけでフセイン政権そのものは勿論その核開発を完全に防止することは不可能であり、そのことはアメリカ・イラクとも十分承知している。今後アメリカとしては、「湾岸地域の平和と安定」(または湾岸地域の親米的安定)という自国(及び我が国?)の国益を守るために、場合によっては従来の「国連大量破壊兵器廃棄特別委員会(UNSCOM)」と比べてより強力な強制力を持つ、国連の軍隊に護衛された強制査察団のようなものの派遣を検討することになるのではないだろうか(他の安全保障理事会常任理事国がどう動くかにもよるが)。■民主党の菅代表、自衛隊の後方支援参加を容認
(12月26日)
毎日新聞の報道によれば、12月26日、民主党の菅直人代表と公明党の神崎武法代表はテレビ朝日の報道番組に出演し、今年度の通常国家での議論が予想されている「日米防衛協力の指針」(ガイドライン)関連法案をめぐって、朝鮮半島有事の際には米軍の要請や国連決議に基づく自衛隊の後方支援を認める考えを明らかにしたという。
この中で菅氏は、憲法上も自衛隊を戦闘目的で海外に出すことは出来ないとした上で、「北朝鮮を巡る問題は日本に対する直接的脅威だから、イラクの場合とは状況が違うかもしれない。専守防衛、日米安保条約上の(米軍支援)義務に重なってくることであり、ある程度サポートすることは有り得る」と述べた。 また、神崎氏は、「現在党で議論中」と断った上で、「戦闘行為には加わらないが後方支援はすべきだ」と述べ、武力行使と一体にならない後方支援に理解を示した。
いわゆる「自自連立政権」構想が報じられるに連れて、自民・自由両党との対決姿勢を明確にしてきた民主、公明両党だが、今回の両代表のガイドライン関連法案に関する発言は、不自然なまでに自民党の方針を認めたかたちになっている。これは、両代表の優れた現実主義的な政治手法の現れともいえるが、今後民主党内の旧社民党系議員や共産党、社民党などの政党から異論が出ることは必死で、この問題だけでも次期通常国会における野党共闘は難しくなるであろう。私は元来自民党・自由党支持者であるから、そうした野党間の亀裂は特に問題ではないが、不倫疑惑で打撃を受けた菅直人民主党代表の通常国会における采配ぶりが注目されるところである。■鉄道総研、フリーゲージトレインを報道公開
(12月26日)
報道によると、鉄道総合技術研究所は26日、新幹線と在来線のようにレール幅が異なる線路でも走行できる「フリーゲージトレイン」の本格的な走行実験を、来春から米コロラド州プエブロの実験専用線で始めると発表したという。このフリーゲージトレインは、既に鉄道雑誌等では写真も公開されており、GCT01-1・GCT01-2・GCT01-3の3両編成を組んでで、「軌間変更軌道」と呼ばれる特殊なレールを通過することで、車軸を在来線の1067ミリの狭軌にも新幹線の1435ミリの標準軌にも対応させることが出来る。1994年の運輸省技術審議会で「SUCCESS21」という表題の答申が為されて以来研究が続けられ、1999年1月からは山陰本線で在来線運転の試験を行った後アメリカに運ばれ、一周21.6キロある高速実験線で標準軌での時速250キロの高速運転・耐久実験を行い、2000年までには実用化の目処をつけるとしている。軌間を変更できる列車としてはスペイン国鉄の「タルゴ」が有名で、既に30年以上の実績があるが、これは客車であって車軸に動力は伝わらず、今回のフリーゲージトレインは動力車としては世界初になる。
このように、実用化に向けて動いている夢のフリーゲージトレインであるが、まだ問題もある。軌間変更区間における脱線例もあり、また根本的な問題として、果たしてこのような大仕掛けの車両が本当に必要なのかということも挙げられるだろう。例えば、私は新在直通運転のためには、何も秋田・山形新幹線のように在来線を無理矢理標準軌に改軌するのではなく、現在のフル規格新幹線の軌道にレールをもう1本敷設し、3線軌道として新型在来線車両を走らせたほうが手っ取り早く、何も軌間をかえるような難しい技術を導入する必要無いのではないかと考えているが、いかがだろうか。■不自然なドラマの台詞
(12月28日)
28日午後9時からTBSテレビで放映された年末特別企画ドラマ「校長がかわれば学校がかわる・第2弾」の中で、何とも不自然な台詞を耳にした。主人公の校長の息子が家族と話ているシーン(10時30分ごろ放映)で、カンボジアに行ってきたといその息子が、対人地雷の悲惨さについて両親に説き、「100円あれば地雷を撤去できる」「僕は写真展を開いたお金で地雷撤去を助ける」等と言って、何と対人地雷の全面禁止に賛成する主張を述べるシーンがあったのである。
確かにその「息子」が発言した内容に嘘があるわけではなく、単なるドラマの登場人物ゆえ目くじらを立てて批判するほどのことでも無いのかもしれないが、彼の台詞の内容は、参加反対派の見解を一切考慮せず専ら感情的に「対人地雷全面禁止条約」に賛成する意見であって、「学校の校長先生」を扱ったドラマとしては非常に不自然な場面に思える。少なくとも、(顕在化こそしていないが)依然対立のある対人地雷条約参加問題について、一方的な「条約賛成」の見解をドラマの中に紛れ組ませ、視聴者に向けて放映するというTBSの方針には、不信感を抱かざるを得なかった。
製作著作:健章会・中島 健 無断転載禁止
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