このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

CPAPと内視鏡を併用した薬物睡眠検査の有用性



OSASの治療法を決定する場合、耳鼻咽喉科的診察が必須である。
当院では、(現在までの所)昼間薬物睡眠検査において、
内視鏡とCPAPを併用し観察を行っている。

その手順を、以下に記す。
患者様に、簡易暗室で臥床していただき、ライン確保する。
ホリゾンR(セルシンR)を、1/2〜1/4 A(最大2Aまで)ずつ静注する。
イビキをかき始めたら、鼻咽腔ファイバーで観察を開始する。
次に、CPAPを装着し、同様に観察する。

この検査から、信頼性・有用性に富む多くの情報が得られる。
しかし、
この検査は時間がかかる(1時間弱、場合によっては2時間)が、
手技・検査としての保険点数がない。つまり、やればやるほど赤字だ。
でも、
最適の治療法を決めるのに最も良い検査だ。

そんな訳で、今回(H16年1月)、
平成13年4月に第76回日耳鼻福島県地方部会、平成13年11月に
平成13年度福島県自治体病院医学会で口演したスライドの一部を
(”この検査の有用性を認識し保険点数化してほしいな”という願いを込めて”)
UPした。


写真は、薬物睡眠時に、鼻咽喉撓性ファイバー(胃カメラを細くしたもの、
直径4mm)を、外鼻孔から挿入し、咽喉を、上から観察したものである。
上が後(咽頭後壁)、下が前(のどチンコ、舌、喉頭蓋)である。

症例1は、軽度肥満の30代男性である。
無圧時の上咽頭は、軟口蓋により
完全に閉塞されている。

4mbar (≒cmH2O)の気圧で、
吸気時に少し隙間(中央左)ができ、
呼気時は、呼気圧に軟口蓋が
跳ね上げられ閉塞している。
(口から呼気する)

8mbarでは、呼気時も少し隙間が
できる。11mbarで完全に開く。

4mbar時の舌根部は、
喉頭蓋は開いたり閉じたりだが、

7mbarで、安定した開放状態だ。
(呼吸障害無し)
この観察で、下記の事が解る。
・閉塞部位は、上咽頭と舌根部で、上咽頭が、より重症である。
・閉塞パターンは、軟口蓋型である。
・最適の治療法は、手術(UPPPまたは軟口蓋形成術のみ)である。
 必要であれば、マウスピースも併用する。
・CPAPで治療するなら、設定圧は、9〜11mbarが良い。

蛇足:スライドの表記に、CPAP下と書いものと、CPAP圧下と書いたものが
    あった事に、今、気づいた。 ぐ(^o~;;


症例2は、超肥満の70代女性である。
横向きに寝て、尚、最重症に近いデーターであった。
無圧時の上咽頭は、
強く全周性に 閉塞している。

7mbarでは、吸気時は、薄い粘膜で
閉じている。呼気時は、前後方向に
細長い隙間ができてきた。

11mbarでは、(UPで見ると)
吸気時も少し隙間ができ、
呼気時には、広く開いている。

14mbarでは、吸気時も全開だ。

一方、舌根部の気道閉塞はない。

4mbarでは、喉頭が吸気時下がり、
呼気時に上がる上下運動している。

9mbarでは、喉頭の動きもなく、
安定して開いている。
この観察で、下記の事が解る。

・閉塞部位は、上咽頭で、全周型である。
・”岩永ら”に拠れば、手術の効果は無い。
・最適な治療法は、CPAPで、適正圧は、12mbar前後である。
 40 kg 以上のダイエット(肥満度120 % 未満)が可能なら、それも良い。


症例3は、高度肥満の60代後半の男性である。
 本症例は、声嗄れで受診したが、OSASも疑われ、その検査もした。
 (声嗄れの原因は、左声帯の乳頭腫(右端写真の中央の白いもの)だった)

(この写真は、”咽喉の様子”の
 ”舌根部全周型”にも使用した。)

無圧の時は、咽頭の外壁全周が
絞られる様に狭窄してくる。
5mbarでは全周性の狭窄は無く、
喉頭蓋が開閉している。

8mbarでは、下咽頭は安定して
開いている。

舌根部の閉塞では、舌正中楔形切除術を行っている施設もある。
しかし、無圧時のこの閉塞状況を見ると、舌を少し楔形切除しても、
効果があるとは、私は思えない。

やはり、治療はダイエットか、CPAP(適正圧は、6〜8mbar)だろう。



                   ま と め

1. CPAPと内視鏡を併用した薬物睡眠検査により、OSASの診断と
  治療方針の決定に必要〜極めて有用な情報が得られた。
2. 特に、閉塞部位、閉塞パターン、複数ある閉塞部位の重症度差、
  気道が安定して保たれるCPAP圧の情報は有用であった。

                    文 献
角田保雄、他: 睡眠時無呼吸診断における、咽頭圧測定およびCPAP下観察の有用性 . 福島医研誌 17: 13〜17, 2001.



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