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いびき・睡眠時無呼吸 の原因と治療法
( Obstructive ) Sleep Apnea Syndrome)

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目 

次 
  1.睡眠時無呼吸が疑われる症状、
    その原因と、体や生活への影響。
  2.いびき・無呼吸時の咽喉(のど)の様子
  3.いびき・無呼吸の検査。
  4.重症度毎の治療の必要性
  5.いびき・無呼吸の治療。

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いびき・無呼吸の豆テスト
半分、お遊びです。
.  (医師の方、他 興味ある方見て下さい。)
「CPAPと内視鏡を併用した
薬物睡眠検査の有用性」
一緒にがんばろ〜!
ダイエット!コーナー



1-1.睡眠時無呼吸が疑われる症状
 次の様な方は、無呼吸が疑われます。
  [いびきが、ひどくて、]
   目覚めが凄く悪い /居眠りが多い /絞首刑等の夢を見る /
   夜間苦しくて目が醒める / 夜間のみ突然動悸がする /
   夜、おしっこが近い / 睡眠中のみ、咳払いをしたくなる /
   睡眠中の呼吸が不規則、浅く速い/
   息を吸う時、鎖骨の上が凹む。/"みぞおち"が凹んでいる(子供)

1-2.いびき・睡眠時無呼吸の原因
  ・なぜ、いびきの音はなぜ出るか?・・口笛と同じ原理です。
    周りが柔かく、狭い所を、空気が速く流れるからです。
  ・なぜ、空気が速く流れるか?・・同じ量の空気を吸うと、
    通り道が狭いので、その分、速度が速くなります。

 ・なぜ、空気の通り道が狭いか?・・
  空気の通り道にある”扁桃腺やアデノイド”が大きければ、
   空気の通り道としての残りのスペースは、狭くなります。
  肥満等により空気の通り道が少し狭く(かつ軟らかく)なり、
   このため、空気が速く流れます。
  ・顎が小さいと、(舌の大きさは変らないので)舌の後の隙間、
   つまり空気の通り道が狭くなります。

   そうすると、下唇に紙テープを当て、強く空気を吐くと、
   紙テープが舞い上がる(右図)のと同じ原理で、周りが
   吸い寄せられて、更に狭くなる場合が、あります。
   睡眠中は、筋肉の緊張は低下し、狭くなり易くなります。

1-3.無呼吸の体や生活への影響
  ・(体)酸素の薄い状態に長く居るわけですから、慢性疲労その他の全身
   への影響は、あります。特に、酸素が薄い分、たくさんの血液を
   送らなければならない、(しかも自分自身にも酸素が少ない)

   心臓には、大きな負担がかかります。同じ様に、肺や横隔膜にも
   大きな負担がかかります。子供の場合は、みぞおちが凹みます。
   更に詳しい説明は、関連サイト(他施設へのリンク)を御覧ください。

  ・(生活) 睡眠不足からくる様々の症状がでます。起床時頭痛、眠気、
   および、それによる活動性の低下、集中力低下、交通事故・・

  ・(肥満の悪循環) 日中の活動性が低下するため、カロリーが余り、
   肥満します。また、(本能的な所で)眠くて元気が出ないのは、
   カロリー不足のせいではないか?と感じ、さらに、カロリーを取るようになり、
   更に、肥満になります。肥満のため、無呼吸は更に悪化します。

*睡眠時無呼吸症候群(重症)の、体・生命予後(長生きできるか)への影響*

 睡眠時無呼吸症候群が、直接の死因となるのは、(無くはありませんが、)
それ程多くはありません(成人であれば、苦しくて目が醒める!)。
しかし、以下の様な形で、生命予後を悪く(早死にする)しています。

1.心臓・血管系への影響
 ①低酸素、呼吸努力、覚醒反応⇒交感神経の亢進(本来、睡眠中は副交感が主)
 ②無呼吸中の胸腔内圧低下⇒心臓の処理待ち血液量の増加
 ③無呼吸の度に起きる、血圧上昇、頻脈、不整脈
  これらが、肺や体の高血圧、心臓の肥大、不整脈、(⇒心筋梗塞、脳梗塞・出血)
  を引き起こし、無呼吸でない人の2.5〜5倍の死亡率の原因になります。

2.交通事故
 実質的睡眠不足で、日中の眠気が強く、交通事故を起こす確率が、2.5〜7倍。

3.肥満・糖尿病の悪化
  肥満や糖尿病も、悪循環して悪化し、この合併症が死因となる事もあります。


2.いびき・無呼吸時の 咽頭(のど)の様子 

 それでは、いびき・睡眠時無呼吸の時の咽頭
 (のど)の様子を、見てみましょう。
右図は、人の
 頭の真ん中近くを、横から見た断面図です。

 鼻から入った空気は、オレンジの矢印のように
 進みます。この空気の通り道で 、狭くなり易い
 所が2ヶ所あります。

 1つは、上咽頭の下部(右図水色の楕円)で、
 前は軟口蓋(口の天井の一番後)、後は咽頭
 後壁(口をあいた時、突き当たりに見える壁)、
 両脇は扁桃腺の上部で囲まれています。

 2つ目は、舌根部(右図の楕円)で、舌の
 後の空間です。舌に下の方に、喉頭蓋
 (食事と空気が同じ場所を通るので、その
 交通整理をする板)があります。

 両部(楕円)の、色々な狭くなり方を、
 上方から見た写真で、以下に示します。
 (この分類はDr.岩田(関連サイト参照)の分類等を参考にしています。

それでは、いびき・無呼吸時の実際の(生の)咽喉の様子を見て見ましょう!
(正視できない方は、すぐに戻ってください)



3.いびき・無呼 吸の検査

 
 いびき・無呼吸の検査としては、(当科では)以下のようなことを行います。

3-1.初診時検査(外来検査)
 ・症状等の聞き取り:肥満度、睡眠体位(仰向け、横向き)、飲酒の習慣、
   いびき(音、連続性)、無呼吸(長さ、頻度)、夜間に目がさめる頻度、
   日中の症状(朝の頭痛、居眠り)、合併症(高血圧、不整脈、・・)
 ・診察:顎や首の形・扁桃腺や口蓋垂(のどちんこ)周囲の形・舌の観察

 ・喉頭ファイバー(胃カメラに似ているが、かなり細い)での観察
   空気の通り道に沿って、腫れ物がないか、どう狭くなりそうか観察します。
   ”2.いびき・無呼吸の時の咽頭の様子”は、こうして撮影したものです。
 ・画像診断(レントゲン写真やCT写真):顎の形や空気の通り道の広さを、
   数値化します。CTは、最近、あまり撮っていません。

3-2.終夜睡眠ポリグラフィー(入院検査)
 患者さんの都合が許せば、入院の上、実際に睡眠している時の、
 いびき・無呼吸の状況や重症度を、測定します。

 終夜睡眠ポリグラフィー検査とは、生体情報のセンサーを体に貼り、一晩寝て
 いただく検査です。センサーは、鼻と口の間(鼻や口からの呼吸の気流)、
 のど仏の脇(いびき)、胸と腹の間(胸腹の呼吸運動)、左手小指(血液中の
 酸素濃度・脈拍(心拍))に貼ります。大学病院レベルで睡眠時無呼吸を専門と
 している所は、さらに、脳波・眼の動き・筋肉の緊張・咽頭の気圧等も測定しています。


 当科では、以下の日程で、検査を行っています。


 1日目 夜  無治療の状態で、終夜睡眠ポリグラフィー検査(重症度判定)
 2日目 午後 安定剤による睡眠状態で、睡眠中の空気の通り道の狭くなり方を
          観察します。閉塞部が複数ある時は、その重症度差も調べます。

 2日目 夜  圧可変型CPAP(治療用装具、”4.治療”参照)を装用して睡眠。
          CPAPで改善することを確認し、適正CPAP圧推定する。
         (患者様にとっては)CPAPの装用感を経験し、馴染めるかを確認。
  マウスピース等を作成した場合は、その効果判定のために、もう一泊増えます。

 それでは、終夜睡眠ポリグラフィーで得られたデーターを、見てみましょう。
 最重症ではありませんが、重症に分類される症例です
 [2段目のグラフ(胸腹の呼吸運動)を見て
 ください。]1.胸腹は空気を吸おうと動いて
 いるのに、
 [3段目]のどが狭くなり閉塞しているので、
 2.空気は全く流れていません。

 [4段目]その間に、3.血液中の酸素は、
 どんどん減っていきます。
 [1段目右]もう、周りの酸素は、富士山頂
 より、もしかしたら4.チョモランマより薄い
 状態なのに(=自分自身も酸素が無くて
 苦しいのに)、心臓は、必死で、さらに
 パワーアップして、仲間に血液を送って
 います。

 心臓に凄い負担が、かかっているのが、
 よく解ります。


4.重症度毎の治療の必要性
   (解りづらっかたら、ここは、飛ばし読みしてください。)
   (数値は、研究者により差があります!。重症度は、Dr.太田の分類等を採用しました。)

 (1)言葉の意味
  ・低換気(=低呼吸):換気量(呼吸時、出入りする空気の量)が、通常の半分
        以下の状態が10秒以上続くこと。
  ・無呼吸:10秒以上続く呼吸停止。
  ・閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS):空気の通り道が狭くなって、おきるもの。
        いびきを伴います。一般多く気付かれれるのは、こちらです。
        このページでの説明も、ほとんどOSASに関してです。

  ・中枢性睡眠時無呼吸症候群:脳からの呼吸しなさいという命令が、胸腹に
        届かないため、おきるもの。基本的に、いびきを伴わない。
        脳・神経系や心臓の病気、動脈硬化・加齢が原因です。
        治療を必要とするものは、他の症状も、出ているかと思います。

   中枢性無呼吸(高齢者等)については、こちら(別ページ)で詳説しました。
このページを見終わってから、ご覧下さい。


 (2)重症度分類
  いびき症:いびきするが、低換気・無呼吸は無いか、あっても極わずか。
        体への悪影響は、ほとんど無い。周囲の迷惑を考えれば治療すべき?

  睡眠時無呼吸症候群
    軽症:1時間当たりの無呼吸数5回以上、または、低換気数10回以上。
        (無呼吸数は、深夜、熟睡している時に多くなります。)
        今すぐ、命にかかわる程ではありません。周囲の人も含めて、
        日常生活に何らかの支障があれば、治療した方が良いでしょう。

    中等症:1時間当たりの無呼吸数(又は、無呼吸〜低換気の数)が
        20以上研究者によっては10以上。生命予後に影響します(早死する?)。
        従って、治療すべきです。
        ((無呼吸数が少なくても、低換気時間が長く、血液中の酸素低下の
         時間が長い場合も、中等症〜重症に入ります。))

    重症:1時間当たりの無呼吸〜低換気の数が40以上。または、
        血液中の酸素が、正常の90%以下の時間が、一晩で45〜130分。
        日常生活の支障(眠気等)が強く出るはず。治療すべきです。
        CPAP(5.治療参照)も健康保険適応になります。

    最重症:細かい数字は挙げません。”今すぐ危ない”ということです。


5.いびき・無呼吸の治療

 当科では、上の”3.検査”(”2.様子”も参照してください)の結果を参考にし、
 各治療法の、症状改善期待値や長短所を、患者さんに説明し、
 概ね、下表に沿って、治療方針を決定します。
 表内の略語は、表の下の、治療法の”具体的説明”を参照してください。

 治療方針選択基準
閉塞
部位
閉塞パターン治療法
手術療法保存療法


全周性
軟口蓋型
(高度肥満)
 
CPAP











軟口蓋型LAUP、
UPPP

CPAP
口蓋
扁桃型
扁桃腺摘出、
UPPP
 
小児
アデノイド・
扁桃腺摘出
 


・全周型 
・舌根沈下型
・喉頭蓋型 
MLG,CGL
(当科では
 経験なし)
マウスピース、
CPAP


上咽頭(軟口蓋等)+
         舌根部
 CPAP
LAUP or UPPP+
   マウスピース or 横臥位



 治療法の具体的説明

  保存的療法

  1.CPAP(continuous positive airway pressure)
    送気(加圧)装置につながった鼻マスクです。
    大半の人に有効です。毎晩、装着して寝ます。
    息を吐く時に、少し抵抗を感じますが、慣れます。
    
    あまり重症でない人は、続かない事が多いようです。
    高度肥満の方の治療法は、これしかありません。 
    ・CPAP無効例:扁桃腺等の大きさが主因、喉頭蓋が主因の時

    biPAPだと、息を吐く時の抵抗感は激減します。重症(居眠りが
     相当多い)な方は、健保診療でCPAPレンタル(3割負担で
     約5千円弱/月)あり。価格CPAP:16〜38万円、biPAP:64万円位

  2.マウスピース(歯列プロテーゼ、スリープ・スプリント、
   口腔内装具 等とも言う)下の歯が、数mm前に行く様
   に作ったマウスピースです。舌の落ち込みが原因で、
   重症でない人に有効です。
    毎晩、装着して寝ます。
  3.減量   :肥満が原因の方は、dietすべき。しかし失敗する人も多い。
  4.睡眠体位:横向きで寝ると、かなり軽減します。しかし気が付くと仰向け?
  5.減酒   :ベット・パートナーの方は、よく解っています。
  6.内服   :ある利尿剤は多少効果あり。夜尿が多くなる?

 手術的療法

  1.UPPP(uvulopalatopharyngoplasty)
    病院耳鼻科で、最も行われている手術です。
    扁桃腺(右図、緑横線)と軟口蓋等(青縦線)を
    切り取ります。5〜7割のいびき・無呼吸に
    有効ですが、10日弱の入院が必要です。

  2.LAUP(laser assisted uvulopalatoplasty )
    耳鼻科医院で、最も行われている手術です。
    レーザーで、軟口蓋(青縦線)を切り取ります。
    主に”いびき”に有効で、外来でも出来ます。
    傷の痛みが、1〜2週間続く事もあります。

    (レーザーの出力にもよりますが)3年後頃に、症状
    が戻ってしまう方も多い様です。当座(3年?)
    の一時凌ぎと考えた方が良いかもしれません。

cf.:Mac G4のIE 5は、GIFアニメだと画像
荒いです
こちらの分解写真を!
  3.MLG(midline laser glossectomy):舌の後を三角に切り取ります。術後安全管理が厳しい。
  4.CGL(correction of glossolarynx):舌の前下の策状物と筋肉の一部を切る。評価未確定。


Q&A(FAQ)に、具体的な検査・治療の例をUPしました。よろしければ、下記も
御覧下さい。

   Q15:検査・手術の実例1
   Q15 補遺1:手術例その2・その3
   Q15 補遺2:手術療法の限界超例・限界未満例、保存的治療例
   Q18:LAUP術後の再発に対する再手術




文献 Dr. の方等、興味ありましたら、下記文献も御参照ください。
 ・岩永耕一、他:閉塞型睡眠時無呼吸症における閉塞部位診断. 耳鼻咽喉科臨床 90:1123〜1127. 1997.
  ・角田保雄、他:睡眠時呼吸障害治療における歯列プロテーゼの効果 福島医研誌 15:51〜56, 1999.
   ・角田保雄、他:当院における睡眠時無呼吸の診断・治療方針. 福島医研誌 16: 3〜17, 2000
       訂正:LAUPに関しては、垂直線2本のみの方が良いと、思い始めてます。
   ・角田保雄、他:睡眠時無呼吸診断における、咽頭圧測定およびCPAP下観察の有用性. 福島医研誌 17:13〜17, 2001..

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