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房総半島横断鉄道を辿る 〜〜いすみ鉄道・小湊鉄道乗車記〜〜
TAKA 2005年 6月 2日
(5)小湊鉄道に乗車して(上総中野〜五井間)
いすみ鉄道を終点上総中野で下車し駅周辺をウロウロした後、房総半島を縦断し東京に戻る為に小湊鉄道に乗り換えます。小湊鉄道に関しては和寒様がご自分のサイト「
以久科鉄道志学館
」の中で「
佳き時代の香薫〜〜小湊鉄道各駅停車
」と言う記事を書かれています。内容的には私は通過しながら見ただけですが、和寒様の記事は各駅についての事を中心に非常に細かく又丁寧に書かれています。しかしせっかく此処まで書いてきて「いすみ鉄道だけ・上総中野でお仕舞い、後は和寒様の記事を御覧下さい」と言うわけにも行きませんので、続きを書くことに致します。しかし小湊鉄道各駅の紹介等は私の分には無いので和寒様の記事も合わせてお読み下さい
16:30頃に上総中野駅に戻り小湊鉄道の列車の到着を待ちます。駅に戻るとすぐ小湊鉄道の列車が入ってきます。2両編成のディーゼル車で1961年製のキハ200系の2両編成です。列車を見る限り1988年の木原線転換時に製作されたいすみ鉄道のいすみ200型に比べたら、旧国鉄キハ20系を基に作られたキハ200系は老齢の車輌ですがそんなに古めかしい感じはしません。車内もそれなりに綺麗に清掃されており、古めかしくてもボロいと言う感じでは有りません。そう見ると車齢が若くてもどうも車内の清掃がイマイチのいすみ鉄道の方が整備が行き届いていない感じがしました。(どちらも窓ガラスの清掃は今二つと言う感じでした)
[17]上総中野駅でのいすみ200系と小湊キハ200系
到着した小湊の列車からは数人の人が降りましたが待っているいすみ鉄道に乗り継ぐ人は居らず、いすみ鉄道の車輌は2両編成ながら乗客ゼロで出発していきます。小湊鉄道の方には私を含めて6名程度の人が乗ります。(見た目私を含め4人が鉄道趣味系の人間系でしたが・・・)やはり市街地の規模が小さい事もあり、いすみ・小湊共にこの駅からの乗車は少ないです。
乗車するとまもなく出発です。小湊鉄道はツーマン運転で乗車客が有る無人駅を発車するとすぐに車掌が回ってきます。私も無人駅の上総中野から乗ったので乗車券を買おうとしたらビックリ女性の車掌が乗務しています。小湊鉄道のHPを見たら
嘱託社員で車掌の募集
を行っています。私も本当に久しぶりのローカル鉄道訪問ですが、左記の小湊のHPの嘱託社員募集の所に出ているような女性が車掌で接客しているとローカル線のイメージも変わります。その点はいすみ鉄道と大違いです。
上総中野時点では6名だった乗客も市原市に入り「上総牛久以南では唯一の有人駅で折り返し列車も有る駅」の養老渓谷で2両計で30名近く乗車してきました。乗ってきた乗客の殆どは高齢層の観光客です。「養老渓谷」と言えば房総でも名の知れた観光地です。そう考えると房総でも名の知れた観光地のもより駅からGWの最終日の夕方に乗ってきた客の数が30名近くと言うのも寂しい数字です。しかし「上総牛久以南では本数も激減し
養老渓谷(126名/日)以外はどの駅も50名以下の乗客しか居ない
」と言う厳しい現実の中では、さびしい数字でも無視できない状況です。
[18]小湊鉄道車内(養老渓谷出発時点)
養老渓谷を出た後列車は房総半島の分水嶺を越えるために、幾つかのトンネルを越えて進みます。この区間は山岳区間の為に駅間はかなり開いています。又駅の周りにも集落は少なく駅も整備されている物の無人駅で殆ど乗降客が居ません。養老渓谷〜上総牛久間で乗車があったのは上総鶴舞で2名の観光客らしい老夫婦が乗ってきた以外乗降客は殆ど有りませんでした。上総中野〜上総鶴舞間では小湊鉄道は房総縦貫のメインルートの国道297号線(大多喜街道)から外れて居る為元々人口が少ない地域で有る事が影響していると思われます。
養老渓谷を出たときと殆ど変わらない乗客数で上総牛久に到着です。上総牛久からは運行本数も非常に増え(平日下り基準で五井(30本)上総牛久(10本)養老渓谷(5本)上総中野)沿線風景も東京の郊外の最外延部と言う感じになってきます。又上総牛久は茂原発アクアライン経由成田空港・横浜への高速バスと大多喜・勝浦方面のバスの接続地(駅前で接続している)になっており、道路も国道297号線とアクアラインに繋がる国道409号線との接続ポイントであり交通の要衝です。その為乗客も多く10名以上の乗客が有ります。
上総牛久からは市原市を縦貫している国道297号線を又身近に見ながら進んでいきます。比較的線形が良い為60km/h程度の速度で走行していますが、軌道の整備が悪い為かカメラを車内で構えると手振れする位揺れています。又その速度でも整備されていてそれなりに空いている国道297号線を走る車に抜かれていきます。(車の速度超過は明らかですが)
[19]小湊鉄道と並行する国道297号線(上総牛久) [20]小湊鉄道車内(光風台出発時点)
上総牛久以北の沿線は住宅と田畑と国道沿いの店等がまだらに存在している状況です。只光風台は小湊鉄道で一番新しく出来た駅ですが、住宅地に対応する為にできた駅だけあり駅の南西斜面に新興住宅地が広がっていて多少雰囲気が変わり感じです。
しかし上総牛久以南とは異なり上総牛久〜五井間各駅ではどの駅でも2〜3名程度の乗降が有ります。上総牛久以南の市原市内は国道297号線の交通量を見てもかなり流動は多い感じです。光風台をすぎた頃には2両とも座席に多少空席が有る程度の乗客が有ります。日曜日夕方の上りで養老渓谷からの観光客(約40名)が有ることを考えてもかなり乗っています。此れ位乗れば鉄道としての存在意義は有るといえるでしょう。
その様な沿線・乗客の近郊的な状況に対して、小湊鉄道の状況は「時計が止まった鉄道」と言う感じです。車輌は前に紹介した1961年製ですし、駅舎は
和寒様の記事
で丁寧に触れられていますが、基本的には新設駅の光風台以外は「大正にタイムスリップした駅」状態です。(なんせ殆どの駅で木造・構内踏切ですから・・・)非常に良い味は出していますが、日常利用者はこの車輌・駅舎の状況を如何思っているのでしょうか?
上総牛久で対向列車と交換したあと、海士有木でも下り列車と交換します。上総牛久以北は上総三又以外は交換可能です。(一番閉鎖区間が長いのは上総牛久〜馬立間で4km・5分間)この状況からするとこの区間はもう少し増発が可能です。
海士有木は昔の計画では千葉延長線(後に京成に免許譲渡→ちはら台までは京成千原線として完成)が分岐予定でした。海士有木も駅自体は「駅前に店も無い有るのは住宅と空き地だけ」と言う状況ですが、進行方向右側のこどもの国・ちはら台方面には車窓からも丘の上に結構住宅地が見えます。
今更「歴史のIF」ですが京成千原線が海士有木まで乗り入れていた場合小湊鉄道はどうなっていたでしょうか?京成の競争力の弱さが引っかかりますが、小湊の上総牛久以北区間の人口の状況から考えたら、今の市原ニュータウン内で苦戦している現状よりかも以外に善戦したのかもしれません。けれども今延伸しても厳しいことには変わりなく、少なくともバブル期前に海士有木延伸・小湊鉄道直通が出来ていたら小湊鉄道の上総牛久以北区間の状況は変わっていたかも知れません。
(しかし京成と小湊の関係は芳しく無い様で、京成は1944年に安田系の小湊を戦時統合を口実に安田保善社から持ち株(約74%)を買い取り系列に入れてますが、過去に「佐原押上連絡自動車商会」をめぐり昭和10年に対立する等で京成・小湊の関係は好ましくなかった様で、昭和53年までは京成の子会社になっていたが京成の経営危機の時に「京成→九十九里鉄道へ小湊株の売却・京成→小湊鉄道社長個人に売却」と言う複雑な小湊の系列脱出策が行われ、今は小湊の株主構成は「第1位九十九里鉄道→50.5%・第二位京成電鉄→29.8%」となっている現状から、京成・小湊間の関係はスムーズでなかった可能性は高く、その様な状況で「千葉〜海士有木間新線」は積極的で有るべきメリットの多い小湊が「免許取得→京成乗入へ規格変更→千葉急行電鉄へ免許譲渡・共同出資」とズルズルと後退させられた段階で海士有木まで延伸できなくなった事は確実になったのかもしれません。)
※上記は「鉄道ピクトリアル96年4月特別号関東地方のローカル鉄道」「97年1月特別号京成電鉄」中の記事を参考にしました)
海士有木をすぎ、東関東自動車道館山線の下を潜ったら五井の駅すぐ其処です。右にカーブしながら内房線に接着し五井の駅に到着、房総横断鉄道の旅は終わりになります。五井の駅には小湊鉄道本社・鉄道の車庫等があり駅もJRと共用ながら橋上駅舎で近代的な造りです。
列車から降りた後、駅自由通路に出て鉄道部の車庫を見てみます。橋上通路自由通路から見てみたら・・・、タイムマシンにでも乗ったのでしょうか?未だ木造の車庫が残っています。和寒様の記事の最初の「五井」の所にも
車庫の写真
が出ていますが今も未だ殆どが変わっていません。(奥に洗車機らしき物が出来たが・・・)下の写真と見比べて見てください。鉄道マニア的には「良い味出している」のですが、車輌・施設・駅の全てが時代が止まった様な近郊鉄道が果たして好ましいのか?それとも設備更新を止めたがゆえに今何とかギリギリ収支均衡を保っているから存続できているのか?考え方は複数出てきて、どれも正しくどれも間違っているとも言え非常に難しい問題で有ると改めて考えさせられました。
[21]海士有木で交換する対向列車 [22]車窓からこどもの国・ちはら台方面を見る
[23]五井駅に停車するキハ200系(内房線ホームより撮影) [24]小湊鉄道五井車庫全景
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