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房総半島横断鉄道を辿る 〜〜いすみ鉄道・小湊鉄道乗車記〜〜
TAKA 2005年 6月 2日
(6)平行の国道465号線〜国道297号線を走って
5月8日にいすみ鉄道・小湊鉄道を試乗したあと、17日に仕事で午後車で上総一ノ宮まで行く用事が有り仕事の後三時過ぎからフリーだったので、高速で帰るのも勿体無かったので上総一ノ宮〜大原〜465号線〜大多喜〜297号線〜市原インター〜東関道のルートで帰り、車で走りながらもう一度よく沿線を見てみました。
3時半過ぎに上総一ノ宮を出て海沿いの国道128号線を走ると大原まで20分位で到着します。沿道は畑が広がり昔から風景は変わりません。只大原の近くになると沿道にショッピングセンターが有りショッピングセンターだけが繁盛している状況です。駅前の衰退の状況と国道沿いのショッピングセンターを見ると如何に公共交通が弱く車中心の社会になっているか分かります。
国道128号線から大原の交差点を右折して国道465号線に入ります。国道465号線は国道としては規格が高いほうではなく、片側1車線の道路が大原〜大多喜間を結んでいますが、大原市街地と大原市新田のトンネル前後の区間では「乗用車がすれ違うのは問題ないが、片側に大型車が来ると乗用車でもどちらかが止まらないとすれ違えない」と言う状況です。この国道465号線に恒常的にバスが走るとなったときにはこの2区間の改修を行わないと路線設定は厳しいかもしれません。
国道465号線といすみ鉄道は大原〜大多喜間でほぼ完全に平行して居ますが、平行のバス路線は無く大原〜大多喜間の公共交通はいすみ鉄道しかない状況です。しかし人口の集積は国吉の駅周辺に多少有るだけで人口の絶対数が少なく、住民は車を利用できる人は殆ど車利用で残念ながら高級交通を利用するのは「学生か交通弱者か」と言うのが偽らざる状況です。
[25]いすみ鉄道と国道465号線(西大原〜上総東) [26]国道465号線といすみ鉄道新田野駅(駐輪場に注目)
[27]いすみ鉄道新田野駅を発車する列車 [28]国道465号線と並行して走るいすみ鉄道(大多喜〜上総中川間)
国道465号線を進むと大多喜で房総縦断の国道297号線にぶつかります。丁度その国道の交差点が写真[13]の所になります。この場所は大原・安房小湊・市原からの道路の接点で、夷隅郡の大多喜周辺地域から車でのアクセスが便利な所です。人口1万人の町に不相応な規模のショッピングセンターでしたが、周囲の道路環境を見ればショッピングセンターの立地には納得です。
此処で此処から先の旅の腹ごしらえにおおたきショッピングプラザのマクドナルドに寄りました。(大原駅前にも大多喜駅前にも無かった物です)おおたきショッピングプラザの裏に車を止めようとしたら裏に牛久〜勝浦間急行バスのバス停があり、隣接の住宅団地の後ろにはいすみ鉄道が走っています。バス停は屋根・自販機・数台の利用者用駐車場(有料)が用意されていて、中々立派な施設です。それに対していすみ鉄道は地域最大級のおおたきショッピングプラザから200m位の距離で、しかもその間には数十戸の小規模団地が有るのに駅がありません。確かに大多喜駅からは1km有るか無いかの距離ですが大多喜〜上総中川間は駅間距離が3.9km有るので駅が有っても可笑しくはありません。小湊のバス停がどれ位利用されていたかは分かりませんが、少なくとも大多喜〜上総中野間の各駅より利用客が有ると思われる立地です。
少なくともそういう点ではバスの方が柔軟かつ機動的に対応していると感じました。いすみ鉄道に限らずローカル鉄道の場合、この様なショッピングセンター近接地等にも積極的に駅を設置するべきだと思います。(ローカル鉄道の分無人駅でいいのですから・・・建設費以外のコストは加速の増加による動力費の増と駅のメンテ費用位ですから積極的に考えるべきです)
[28]ショッピングセンター内小湊バス停留所 [29]いすみ鉄道(踏切の所)とおおたきショッピングプラザ(右奥)と住宅団地(左奥)
※
おおたきショッピングプラザ周辺地図(ゼンリンデーターコム)
おおたきショッピングプラザで小休止した後、今度は市原を目指して国道297号線を進みます。国道297号線は大多喜〜市原を結んでいる房総縦断国道ですが大多喜〜上総鶴舞間では厳しい山間地を上総中野経由で迂回しているいすみ鉄道・小湊鉄道ルートとは平行せず、直線でショートカットしています。
その為かなり大多喜市街地を出た所で数箇所のヘアピンカーブを含む厳しい坂道が待っています。道路幅員はかなり有る物のトレーラー等の大型車がその区間を通るとすれ違うのが厳しい状況で難所となっています。只このルートは
京成バス・鴨川日東バスの東京〜安房小湊線
と
小湊バスの上総牛久〜安房小湊線
の他に鉄道と平行していない区間ではローカルバスとして一般路線の小湊バスの大多喜〜上総牛久線が走っていますが、朝の時間以外は2時間に1本程度しか走っていません。
国道297号線を走ると大多喜の次に市街地になるのは市原市内に入っての鶴舞地区になります。鶴舞は元々は鶴舞藩2万石の城下町で今の市原市南部地域の中心地でした。今でも鶴舞自然公園等の観光地の他かなり大きな市街地と商業高校・循環器病センター等の公共施設も有り、又大蔵屋団地等の団地も有ります。(
上総鶴舞駅と鶴舞周辺の地図(ゼンリンデーターコム)
)
只地図を見て明らかな様に市街地は国道から登った丘の上にあり小湊鉄道はこの手前で勾配を避けてか南側に大きく曲がっていて小湊鉄道の上総鶴舞駅は市街地や大蔵屋団地から1km以上離れている状況で鶴舞の市街地のアクセスは上総牛久駅前から30分に1本程度出ている小湊鉄道バスが主体になっています。その為上総鶴舞は駅国道沿いに有る物の利用客が非常に少なくさびしい状況です。
私も国道297号線を走っていて始めての小湊鉄道の駅だったのでふらりと寄って見ました。駅前は多少広いロータリーみたいになっているので車を止めて駅舎を見てみました。駅舎は小湊鉄道特有の「大正時代物の味の有る駅舎」です。それで駅前に行ってみたら驚きました。「関東の駅百選」に選ばれている駅で、平日夕方なのに乗客(学生)が1人しか居ないのに私を含めて4名写真を撮っている人が居ました。難しい所ですが平日でもこの様な観光客が居るのなら土日の昼だけでも有人でもいいかもしれません。又上手く折り返しができれば一部の上総牛久折り返し列車を上総鶴舞まで持ってこれれば利用客は増えるかも知れません。但し国道297でパークアンドライドできる駐車場や鶴舞市街地を結ぶバス路線(牛久〜市街地間バスを振り替えるか?)等の利便性向上策が必要なのは言うまでもありません。でもそうすると今の良い雰囲気は無くなるでしょう。「関東の駅百選選定駅=観光地」と考えると其処は難しい所かも知れません。
上総鶴舞で写真を撮っていたら上り列車が20分位待てば来る時間だったので、ここで待って列車の写真を狙いました。来た上り列車には2両編成で合計10名程度の乗客しか乗っていませんでした。上総鶴舞からも乗客ゼロ(待っていた学生は下り利用の様だった)でした。平日はこんな物かも知れません。
[30]上総鶴舞駅駅舎 [31]上総鶴舞駅構内
[32]上総鶴舞駅に入って来る上り列車 [33]国道297号線と小湊鉄道(上総川間〜上総牛久)
上総鶴舞で上り列車を見送った後、早速私も列車を追いかけながら国道297号線で上総牛久を目指します。すぐ車を出して制限速度+α程度の速度で走り出すと暫くしたら隣駅の上総川間に止まっている列車に追いつきます。並んでしまうと信号の無く流れている国道の乗用車の方が有利で、上総牛久の手前で車を止めて写真を撮ることが出来ました。この様に並走してみると車の速度の優位さは明らかです。
[33]の写真を撮った後、上総牛久の駅を覗いて見ます。国道297号線から上総牛久駅へ行く為に上総牛久市街地への道である国道409号線に入ります。上総牛久駅周辺の国道409号線は「国道」と言う名前から考えれば狭い道路ですが、かなり商店があり地域の中心の町の感じがします。上総牛久は国道297号線と国道409号線の交差点であり交通の要衝です。上総牛久からであれば東京へも409号線・アクアライン経由と297号線・市原IC経由東関道のどちらのルートでも東京・横浜へアクセス出来るので道路交通の便はかなり良いと言えます。
※
上総牛久駅周辺の地図(ゼンリンデーターコム)
上総牛久駅前は駅舎は小湊スタイル(木造で創業時から変わらない)の駅舎ですが、駅前は多少の広場になっており大多喜・鶴舞・勝浦へのバス停がありバスも待機しています。又駅構内には今は駐車場になっていますが昔の貨物用の側線らしき場所と倉庫らしき物が有り(上総鶴舞にもあった)地域の物流の中心だった過去の状況がしのばれます。
しかし駅前はそれなりの人が居て駅前と国道沿いに店が有り地方の町の中心の駅前と言う感じです。駅の構内には先ほど写真を撮った上り列車と下りの上総中野行きが入ってきて交換します。上総中野行きは30名程度乗っており、20名近い人が降りて改札口を出て行き自転車や迎えの車等で去っていきます。又上り五井行きは20名以上の人が乗り出発していきました。
やはり上総牛久は統計に出ているように小湊鉄道の乗客流動的には大きな谷間で、上総牛久〜五井間は「鉄道として存続できる最低限の流動・最低限の周辺人口が有る」地域であると言うのがこの状況からも実感できます。
[34]上総牛久駅駅舎 [35]上総牛久駅前広場状況
[36]上総牛久駅構内 [37]国道297号線と小湊鉄道(上総牛久〜馬立間)
上総牛久を出た段階ですでに18時頃で日が落ちかけていましたので、東京に戻る為に国道297号線を市原インターに向い進みましたが、もう一箇所見ておきたいと思い既に日が暮れかけていましたが、もし計画が実現していたら千葉への分岐駅になり京成が乗り入れていたか小湊の分岐駅になっていた海士有木に寄って見ました。
海士有木は五井から2つ目で所要時間8分・駅間距離5.4kmと言う距離であり、東京駅までも直通快速を使い乗換時間を考えなければ1時間10分程度で付ける距離であり十分東京への通勤圏内と言える立地です。海士有木周辺は前に乗ったときも沿線にかなり住宅があり、国道297号線沿いにもそれなりに住宅の有る地域です。
駅自体は国道から道を入った奥に有りますが、駅前は既に19時前で店じまいした店が一軒有るだけで閑散とした感じです。幾ら五井に近い住宅地の中で「店が殆ど無い駅前」「木造の駅舎」「側線と倉庫跡の残る構内」は完全にローカル線の様相です。ましてや下の写真の通り「人が売る券売所」「構内踏切の有る姿」です。此れが東京駅から1時間強の所に有る路線の駅とは思えません。ローカル線風情を楽しむ趣味的には好ましいでしょうが、日常利用する立場で見れば明らかに「時間が止まり取り残された駅」としか言いようが有りません。
※
海士有木駅周辺の地図(ゼンリンデーターコム)
東京駅から1時間強の位置にありながら30分に1本ローカル線の気動車が来るだけの田舎の駅と言う海士有木の状況は、果たして好ましいと言えるのか?と感じます。地図を見ても駅の南側〜国道沿いにはそれなりの人口集積が有ります。通勤距離としてそれ相応の立地なのに、現実は住宅は有れども良好な住宅街とは言えない状況が有ります。原因は何なのか?少なくとも日常利用にも有る意味抵抗を感じるレベルの小湊鉄道の前近代的な運営状況も有るのではないかと思います。
千葉急行電鉄→京成千原線の苦しい経営状況から、なんとか「海士有木まで延伸・小湊の改軌及び電化・沿線を区画整理を含めて総合的に開発」と言う事が出来なかったのかと思います。今では既に手遅れですが市原・土気・大網や小湊沿線の光風台の様に等の千葉県の「東京駅から1時間+α」地域のニュータウン開発が進んでいたバブル期であれば、小湊鉄道も都市近郊鉄道に脱皮する機会が有ったのかもしれません。此れを「取り残された」と見るか「バブルに踊らされなく救われた」と見るかは別にして考えさせられる事だと改めて思いました。
[38]海土有木駅駅舎 [39]海土有木駅内部
[40]海士有木駅構内(向かいのホームの後ろは畑)
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