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房総半島横断鉄道を辿る 〜〜いすみ鉄道・小湊鉄道乗車記〜〜

 

TAKA  2005年 6月 2日

 

 

 (7)まとめにかえて 〜果たして房総横断鉄道の貧弱な鉄路を維持できるのか?〜

 今回5月にいすみ鉄道・小湊鉄道を利用して見て又並行国道の国道465号線・297号線を利用して見て、一応大原〜五井間で房総を横断している鉄道を利用し周囲の状況を見てみました。私にとって久しぶりのフォーラム投稿の「 夏の会津路一周記AIZUマウントエクスプレス鬼怒川温泉直通記念訪問記 」以来のローカル鉄道訪問でしたが、比較的恵まれているであろう関東地方に有るにも関わらず乗降数・沿線人口共に少なく、改めて地方過疎地域の鉄道の厳しさを感じさせられるローカル線訪問であったと言えます。
 そこで今回の訪問記のまとめにかえて、「いすみ鉄道・小湊鉄道の現状」「県の『房総半島横断鉄道活性化プロジェクト』は有効なのか?」「いすみ鉄道・小湊鉄道の取るべき道」の3項目に分けて意見を述べたいと思います。

 1.いすみ鉄道・小湊鉄道の現状

 今回訪問したいすみ鉄道・小湊鉄道は全て同じ状況に有るわけではありません。ですからこの鉄道を「接続して繋がっている」と言うだけで十把一からげに語るわけにもいきません。
 その為いすみ鉄道・小湊鉄道について、上総中野で別れている経営上の分類の他に、置かれている状況・環境に応じて房総横断鉄道を利用者の流れ・駅利用客数等から大きく3つの区間に分けてそぜぞれの状況に応じて考えたいと思います。

 Ⅰ小湊鉄道五井〜上総牛久間→市原市内住宅点在地域を結ぶ郊外路線。1日当たり利用客が各駅共130名〜900名程度有る。
 Ⅱ小湊鉄道上総牛久〜いすみ鉄道大多喜間→房総半島内陸部を貫くローカル線。1日当たり利用客が各駅共50名以下。
 (養老渓谷と上総中野のみ100名以上)
 Ⅲいすみ鉄道大多喜〜大原間→大多喜と大原を結ぶ都市間利用的路線。学生利用が多く乗り通し利用も多い。

 この様に「ローカル線である」とも「都市近郊鉄道である」とも言えない、複数の性質(私は上記の3つに分けられると考える)を持ち合わせている鉄道です。この分類から見るとⅠ→千葉の近郊鉄道・Ⅱ→典型的過疎ローカル鉄道・Ⅲ→地方にある(此処の場合外房線の)フィーダー路線に分類されると考えます
 只この分類は、公式の分類ではなく私の主観的分類です。しかし「当たらずしも遠からず」と言う現状です。又存続問題・運営上の対策を考える上で分かりやすくする為に乗降人数から分類した物であります。以下においてこの分類を基にいすみ鉄道・小湊鉄道について考えたいと思います。
 
2.県の「房総半島横断鉄道活性化プログラム」は有効なのか?

 先ずは今存在する具体的活性化策について考えたいと思います。今回訪問のいすみ鉄道・小湊鉄道に関しては流石に関係自治体の千葉県や沿線自治体もこのままで良いとは思ってないようで、県等が主体となり国交省の「公共交通活性化プログラム事業」を使い、房総横断鉄道活性化プログラム推進委員会が「 房総を横断するローカル鉄道の活性化策と沿線地域観光振興策の策定に関する報告 」を平成16年度に行っています。(※ 同報告施策イメージ図
 この報告では「小湊鐵道といすみ鉄道との乗り入れ」「デュアル・モード・ビークル(DMV)による運行の可能性」「沿線地域PRのための鉄道とバスを組み合わせたツアーの実証実験及び参加者のアンケート調査」「小湊、いすみ両鉄道とアクアライン高速バス等を組み合わせた企画乗車券の設定等による旅客誘致方策の検討」「沿線観光資源をPRし、観光客誘致を促進するための利用者向けガイドブック及びガイドマップを作成」と言う5項目について検討を加えています。
 この中で後ろの3項目に関しては沿線地域のPR・企画乗車券の設定・ガイドブックの作成等、有る意味効果は疑問のですが一般的な施策であり、養老渓谷・大多喜と言う観光資源を抱えている小湊・いすみ両鉄道の活性化にとって多少なりとも役に立つ施策で有るとは思います。但し効果は「多少」であり決定的な対策になる物ではないと考えます。それに対して問題は「直通運転」「DMV導入」と言う施策です。直通運転は有る意味いすみ・小湊量鉄道に影響する施策ですし、DMVは未だ実験中ですがローカル線導入を期待されている技術です。その2点に絞り活性化プログラムの意味について考えて見たいと思います。

 (Ⅰ)直通運転は有効か?→五井乗換ではハンデだし、少なくともJR特急・高速バス利用より早くならないと意味は無い。
 直通運転に関しては前に大多喜〜上総中野間の試乗記の時に大多喜〜東京間の所要時間を比較しましたが、現実問題として大原経由JR特急・京成高速バスよりかも所要時間で1時間以上掛かります。又非電化で有るので五井から千葉方面に乗り入れるのは難しく、上総上のでは直通しても五井での乗換を強いられる事に有ります。
 それで「距離が短いのを利用して所要時間を短縮しよう」としても、今のいすみ鉄道・小湊鉄道の軌道状況等ではとても高速化は無理な話です。と言って高速化をするだけの投資をしても沿線人口の絶対数が少ないから採算が取れるだけの利用は有りません。その様に考えると、直通運転をしても活性化への寄与は限りなく少ないと言えます。

 (Ⅱ)DMVは有効か?→DMV輸送力以上の瞬間的輸送量が有る?又バスの輸送力で軌道を維持する必要が有るのか?
 JR北海道が研究開発しているDMVですが、一般的には「ローカル線生き残りの有効策」と思われていますが、果たして本当なのでしょうか?奇しくもいすみ鉄道は昭和29年にレールバスキハ01が初めて投入された路線です。(「 国鉄木原線と小湊鉄道 」参照)このレールバスは今の富士重工製レールバスよりももっとバスっぽい簡単に言えば軌道上しか走れないDMVであったということが出来るでしょう。
 この木原線での昭和20〜30年代のレールバス採用の時点でも通学時には輸送力が足りずに普通型気動車が使われていました。同じ事が今にも言えないでしょうか?現有のいすみ200系は定員が103名でバスよりは定員が多い程度ですが現況で2両連結で運転しないと運べない状況も有りますし、1両で運転の場合もそれなりに乗っています。此れを敢てより定員の少ないDMVにかえるメリットは何処に有るのか?と言う気がします。多分DMVを導入しても大多喜〜大原間では賄い切れない場合が発生すると言えます。そうなると既存のレールバスも保有していないと間に合わなくなります。こうなると2重投資です。私はDMVはいすみ鉄道の場合キハ01の二の舞になると考えます。
 もし「DMVで十分の需要しか恒常的に無い」と言う場合、「何故バスをレールの上に走らせる必要が有るのか?」と言う疑問にぶつかります。既に国道・県道と言う基盤が有るのならバスで十分なら道路を走らせればいいのです。その様に考えるとDMVは中途半端であり無駄が出てくると言えます。少なくともいすみ鉄道にDMV導入の意味は極めて乏しいと言えます。

 この様な理由から考え、県の「房総半島横断鉄道活性化プログラム」は有効か?と考えると大きな疑問になると言えます。しかし最後まで諦めずに何とか鉄道を存続させる方策を考える必要が有ると言えます。私の個人的考えは「全部救う事は不可能でも、もう少し現実的方策と覚悟で救う部分が有る」と考えます。

 

 

 

 

 

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