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− 本 州 〜 北 海 道 の 鉄 道 を 利 用 し て −

〜新幹線連絡輸送・北海道内都市間輸送・北斗星の現状〜



TAKA  2005年 10月 26日



 9月の23日〜25日の連休を使い、遅い夏休み方々4泊5日で北海道旅行に行ってきました。
 私自身北海道訪問は初めてで、何処が見所だか分からなかったのですが、色々な人の話を伺いながら「北海道の観光&交通事情見学」を兼ねて休養旅行に出かけてきました。
 幾つかには分けていますが、今回の旅行で見た事・感じた事をレポートしたいと思いますので御笑覧下さい。

 「今回の訪問行程」

 23日 11:22大宮→はやて11号→14:04八戸14:15→白鳥11号→17:31函館着
    市電で函館駅→湯の川(食事)→十字街と試乗→函館山登山→二十間坂周辺を散策

 24日 朝市見学→7:20函館→スーパー北斗1号→10:35札幌→ホテルにチェックイン後駅前のセンチュリーロイヤルホテルの展望レストランで食事
    13時頃の快速エアポート→新千歳空港(見学)→高速バスで福住バスターミナル→羊ヶ丘展望台見学→札幌ドーム見学
    (東豊線)→豊水すすきの→タクシー→サッポロビール園でジンギスカン食事→タクシー→大通公園でテレビ塔・時計台見学

 25日 札幌駅→すすきの(市電乗換)→電車事業所前→西四丁目(徒歩)→赤レンガ庁舎見学・雪印パーラー→札幌駅
    札幌駅→(札沼線)→新琴似→麻生→(地下鉄南北線)→北24条(バス結節見学)→大通→西四丁目(市電)→ロープウエイ入口
    ロープウエイもいわ山登山→ロープウエイ入口(市電)→中央図書館前→石山通(じょうてつバス)→真駒内(地下鉄・バス結節見学)
    真駒内→(南北線)→すすきの→ラーメンツアー(ラーメン横丁・五丈原・欅の3件)に出撃

 26日 札幌→(エアポート快速)→新札幌(JR・地下鉄・バス結節見学)→(東西線)→宮の沢(地下鉄・バス結節見学)
    徒歩→JR発寒→手稲→(エアポート快速)→小樽→(市内観光)→小樽→(エアポート快速)→札幌19:27→北斗星4号で帰京


 今回の北海道旅行では、北海道への移動手段として往路は新幹線〜在来線乗継を復路は北斗星(ロイヤル)を利用しました。
 実際は飛行機を利用した方が旅行の行程・コスト的には全然楽です。青函トンネルが1988年に開業してから17年、開業した時には私が高校1年生でしたが「一度は乗ってみたいな!」と思っていた物の、学生時代〜社会人時代を通して、機会が訪れず「乗ってみたいな」の願望で終わってました。今回17年間の悲願達成を一番贅沢な形で行おうと思い(今後長い期間の旅行が出来るか分からないので)新幹線+在来線&北斗星ロイヤルで北海道旅行をしてみました。
 本年5月に北海道新幹線新青森〜新函館間の着工が決まり、遠くない将来(10年後)には青函トンネルを巡る環境は日本初の「新幹線・在来線併用」と言う形で劇的に変化します。その様な新幹線導入による変化を踏まえ、今では珍しい「鉄道による北海道旅行」で見たことについてレポートしたいと思います。

 (1)新幹線+在来線で北海道に渡る

 この日は立川で仕事の打合せをした後、北海道に向う事になっていました。立川で仕事の打合せをした後に、大宮11:22発のはやて11号に間に合うように中央線・武蔵野線・埼京線を経由して立川から大宮に移動します。立川から東北新幹線へのアクセスは東京経由と大宮経由の2ルートが有ります。同じ列車に乗るのに立川発の時間は東京乗換10:00発・大宮乗換10:16発と16分違いますが、乗換は東京経由1回・大宮経由3回と全然東京経由の方が楽です。微妙な差ですが今回は仕事の都合で大宮経由を選択しました。
 今回は仕事の打合せが速く終わったので、早目の電車で大宮に向いました。その為大宮での乗換時間が確保できたので、前にレポートした「 ecute大宮 」で食事をして車内用に駅弁とビールを買うことが出来ました。駅ナカに魅力的な店が有ると、旅行の時などは非常に便利です。

 新幹線ホームに上がると既に乗るはやて・こまち11号に乗車する乗客がホームで待っています。流石に3連休だけ有って前のあさまも自由席に立客有りで出発しましたし、はやて・こまち11号も「全席指定で満席」と放送しています。
 はやて・こまち11号が入線して来たので停車したら早速乗車します。全席指定だから慌てる必要が無いですが待っている乗客が多いとやはり慌てます。乗客は3連休だけ有って乗客は私を含め観光客がかなりの割合を占めています。
 
  [1]大宮に入線するはやて・こまち11号          [2]はやて・こまち11号車内(仙台〜盛岡)
     

 出発すると停車駅が仙台・盛岡と1時間に1駅停車ペースに加え、全席指定と言う事も有り満席でも落ち着いており、A席(窓際)の特権で車窓を見ながらゆっくりビールを開けて寛ぎながら旅行できます。(此れがB席だったら落ち着かなかっただろうが)
 大宮を出て1時間強で仙台に到着、東北の中心都市だけ有って乗降客が多く3割位の客が降車します。その為北東北と東京を結ぶ速達列車なのに途中の仙台で空席が出てしまいます。北東北への速達列車の席を確保する為に全席指定にしているのでしょうが、仙台で3割位降りるのはちょっと降りすぎかな?と言う気がします。仙台〜北東北方面の席を確保する為にも一定の仙台降車客を乗せるのは正解ですが、座席配分のバランスは難しいにしても仙台で3割降りて1割しか乗らないのではバランスが取れないのでは?と感じます。
 仙台の次は盛岡です。仙台を出た後右手に新幹線総合車両センターが見えます。見てみると FASTECH360 が停車しています。流石に275km/hで走行してるのでデジカメを構える暇無く通過してしまいました。10年後新幹線が津軽海峡を超える時には、間違いなくこのFASTECH360の技術を利用した新幹線車両が主役となっているでしょう。そういう意味では「新幹線新時代を切り開く試金石」と言う事が出来るでしょう。
  盛岡も県庁所在地で人口約30万人の北東北の中心都市 で観光資源も多い都市だけあり、座席の1割強の乗客が降車します。盛岡では秋田新幹線のこまち11号が分割しますので、とりあえず鉄ヲタお約束の分割併合シーンを見学します。4分の停車時間しかないのでスムーズに分割した後すぐに発車です。この段階で先頭車両に飛び乗ったので3号車の自席まで車内を歩いて見ます。全体的には6割程度の乗車率で、新幹線車両10両編成運転で八戸着14時過ぎと言う中途半端な時間と考えると、それなりの乗車率で有ると言えます。
 盛岡から先はいわて沼宮内・二戸と連続停車します。両駅とも山の中の駅で風景はとても新幹線駅とは思えません。開発されてない安中榛名の状況と違い集落が有る分寂れているイメージが強いです。(実際乗降客も少なかった)その為乗車率5割を超える状況で八戸に到着です。

 八戸駅の到着ホームの向かいには東京行きのはやてが止まっています。東京行はやては中途半端な時間だけ有って3割程度の乗客しか居ません。その代わりホームははやて11号の降車客で溢れかえります。
 八戸駅は橋上駅舎になっているので、早速橋上駅舎コンコースに上がってみると降車客で賑わっています。コンコースの正面が新幹線の出口・右手が在来線乗換口になっており、降車客は3:7位の比率で乗換客の方が多くその大部分は青森・函館方面への乗り継ぎ列車の白鳥が待っている5番ホームへ降りて行きます。

 [3]新幹線八戸駅コンコース               [4]東北新幹線はやて&乗継特急白鳥
    

 5番ホームには白鳥11号が入線しています。本当ならスーパー白鳥&789系に乗りたかった所ですが、2本速い大宮9:18発のはやて7号に乗らなければならず仕事の都合で難しく諦めたので、次善の策として白鳥&485系リニューアル車と言う選択をしましたが、ワンランク低い列車で有った事が後で後悔を招くことになります。
 それはさておき、白鳥11号は10両の新幹線の6割(乗車率)*6割(乗換客)=3割5分近い乗客を485系6両で受ける事もあり、各車両共にほぼ満席の状況です。
 出発前に写真を取っているとEH500系に牽引された上りコンテナ貨物列車が通過していきます。この後も2〜3回上り貨物列車とすれ違いましたが、時間帯(東京に着くのは夜だから貨物配達は翌朝になる)を考えたら走っている貨物列車は多いと言えます。東北新幹線八戸延伸に伴い一部第三セクター化されたと言えやはり本州〜北海道間の(特に貨物)大動脈である事を実感させます。

 乗換客が収まり発車ベルが鳴り発車します。そこで一息ついて席をリクライニングさせようとしたら席がリクライニングしません。既に長時間座っていたのでリクライニングさせて楽な姿勢で座りたかったのですが、幾ら何でもリクライニングしないのには堪えました。それに走り出すとモーター音や微妙な振動等、特急としては問題ある乗り心地です。車両が485系のリニューアル車であり車齢が嵩んでいる国鉄世代の車両であることを踏まえても、特急料金を取っているのですからもう少し考えて欲しい物です。(後5年で新幹線が青森まで延びるのを踏まえても)2000年に増備され現在つがるに運用されているE751系程度の車両が特急列車としては必要なレベルでは無いでしょうか?
 走り出して暫くすると左手車窓に東北新幹線青森延伸工事の現場が見えてきます。既に工事は佳境に入って居るようです。
 三沢・野辺地・浅虫温泉と各車数名ずつ降車しながら、8割強の乗客が乗ったまま青森に到着します。流石に青森県の 中心都市で人口も盛岡市に近い30万人居る青森市 の駅なので降車も多く半分以上の乗客が降車します。しかし「青函間の輸送は不調」と言う話を聞いてたので「そんなに乗って来ないだろう」と思っていたら、団体客らしき人を含めて降車に近い数の乗客が乗ってきました。時期や曜日等の関係もあるのでしょうが、そんなに不調ではない感じがします。(この後すれ違った上りのスーパー白鳥・白鳥3本とも見た目で半分以上乗っていました)

 [5]EH500系EL牽引のコンテナ列車(八戸駅)       [6]函館駅での白鳥・北斗(左側にトワイライトエクスプレスも見える)
       

 函館直通列車は青森で方向転換するので「(座席を転換させれば)リクライニング故障から脱出できる」と喜びながら座席を転換させ写真を取りに出ます。戻って座ったらビックリ此方のリクライニングシートも故障しています。一つ故障なら未だ我慢できますが両方故障には流石に呆れました。特急列車なのですからその様な座席等の整備はきちんとして欲しい物です。又前の席と斜め前の席に結構酒の入ったおじさんの集団が座り485系の騒音に負けない位盛り上がっていますし、隣の客は大荷物を持ち込み私が席を立つのも憚る様な状況です。23日最後の移動ルートの青函間は「苦行の旅」となってしまいました。
青森を出た白鳥は津軽海峡線に入ります。津軽海峡線に入ると単線になり白鳥11号も青函間で2回特急交換の運転停車をしますし、運転速度も東北本線に比べると明らかに落ちます。又民家の周りには防音壁が立ち並び貨物列車の騒音に悩まされている状況が分かります。国鉄破綻時の苦しい時代に作った幹線ですが、本州〜北海道間の動脈としては明らかに「木に竹を接ぐ」状況であり明らかに見劣りします。この区間が有る限り特急が青函間で平均して2時間を切って運転するのは困難で有ると言えます。
 青森から約30分で蟹田に到着です。蟹田を出発し暫くすると津軽線と分岐し津軽海峡線に入ります。すぐに北海道新幹線合流地点で線路間が広がり縮まった後スラブ軌道の新幹線規格の高規格軌道の上をスムーズに進んでいきます。スラブ軌道特有のうるささは有りますが在来線と考えたら格別の軌道です。
 
 暫くすると幾つかのトンネルを通りその内トンネルが切れなくなり青函トンネルに入った事に気付きます。当然ですが海や海底が見える訳ではなく普通の長大トンネルと変わりません。強いて風景が変わるのは竜飛・吉岡の海底駅の所だけです。この列車は竜飛海底駅に停車しますが、前述のような環境下で席も動けずどれだけの利用客があったのかは分かりません。
 こう考えると青函トンネルは「 世界に誇るべき土木技術の結晶 」ですが、普通の人々にとっては「騒音と圧迫感」は有りますが風景が見えないので、瀬戸大橋のように風景が見える所と違い、只の長大トンネルで有り観光地では無いのは明らかです。此れを 観光地として売り収入増に結び付けようとするJR北海道の努力 は良く分かりますが、中々難しいと言うのが実情で有ると考えます。
 
 青函トンネルを越えると北海道ですが、見える風景は「植栽が少し変わったかな?」と言う感じで、素人目には特に変わったと言う感じはしません。木古内を過ぎて又在来線区間に入ると、本州区間より一層曲線が厳しくなり海岸線に沿って右へ左へと曲がりながら函館を目指します。途中の茂辺地で上りのスーパー白鳥と日本海と交換します。日本海には客車で4両と言う寂しい編成で見える限りでは殆ど乗客は居ません。この区間だけ見ればお荷物列車と言われても仕方ないでしょう。
 巨大なセメント工場の有る上磯を過ぎると函館市街地に近づき平地になり周囲の家も増え、単行の区間運転の気動車ともすれ違います。暫くすると五稜郭で函館本線と合流して右に函館運転所を見ながら終点函館到着です。
 函館では向かいのホームに北斗19号が止まっています。此れに乗れば21:28に札幌に到着できますが、乗り換える人は殆ど居らず(でも私の隣席の人は青森〜札幌の指定券を持っていたので皆無とは言わないが・・・)大部分の人はホームから改札へ向い街に消えていきます。私も「当日中の札幌入り」も考えましたが、特に在来線区間の苦行を耐えた後に又3時間半も列車に乗るのは厳しい物であり、観光方々函館宿泊にしましたが余程の人でなければ昼行列車で東京〜札幌間を乗り通す人は居ないでしょう。そういう意味では6時間半近い今の東京〜函館間が、普通の人なら飛行機を使う時間だが、粘り強い物好きにとっても限界なのかな?と言う感じが改めてしました。

 (2)スーパー北斗で札幌で「道内都市間移動」を経験する。
 
 23日は函館で観光した後一泊し、翌日朝のスーパー北斗1号で札幌に向う事にしました。 函館は人口約30万人の道南の中心都市 で有り、函館〜札幌間はJR北海道にとっては札幌〜旭川間に次ぐ都市間輸送の大動脈で11往復中7往復が130km/h運転対応振り子式特急の281系・283系 スーパー北斗 が運転されており、3時間〜3時間20分で結んでいます。(4往復の普通の北斗は3時間半〜3時間40分)
 スーパー北斗は最高速度130km/hで表定速度100km/hを超えると言う高速特急であり、線形が良く軌道レベルの高い函館本線・室蘭本線を制御式振り子で飛ばすと言う、電車顔負けの高速気動車特急であり(休日で有るが)北海道の都市間輸送の実情を見るにはピッタシの区間であると思い、今回函館で1泊したのを奇禍として朝一番のスーパー北斗1号を利用して、函館〜札幌間の都市間輸送の実情を見てみました。
 
 ホテルを6時半前に出て、7時20分のスーパー北斗1号出発までの間駅の隣に有る「函館朝市」でお土産購入と朝食に勤しむ事にしました。流石に有名な函館朝市です。いい海産物が多くあり必要なお土産のかなりの部分(特にカニ・ウニ・ホタテ)を満足行く内容で購入し宅急便で送ることが出来ました。しかしお土産購入に熱を出していたら7時になってしまい、慌ててお土産を売っていた店の食堂に駆け込み二色丼(イクラ&ウニ)を食べて函館駅へダッシュします。その為2分前に駆け込み乗車だったので、函館駅の状況を観察する余裕が有りませんでした。
 自分の指定席に座り荷物を整理したら、すぐにベルが鳴り出発します。出発するとゆっくり走りすぐ五稜郭に止まります。五稜郭を出発すると気動車と思えぬ鋭い加速で速度を上げ特急本来の走りになります。連休中日で休日朝の札幌行き特急ですが、この時点で2号車喫煙指定車は7割強の乗車率です。休日でもこの利用率ですからスーパー北斗1号がビジネス特急に最適の時間帯で有ることを考えると平日はかなりの利用客数で有る事が推察されます。
 とりあえず席に座り寛いで風景を見ていると大沼公園・駒ケ岳周辺の風景は素晴しく、下車してゆっくり観光しなかった事を後悔する位でした。
 森からは函館本線は基本的に(部分的に単線の残る)複線になり(函館〜森間も実質複線だが・・・)噴火湾に沿って北上します。噴火湾沿岸の区間はトンネルが多くても基本的に線形も良く軌道のレベルも高く殆ど100km/h以上の高速で走行し、平行の国道5号線・37号線を走る車を抜き去りながら走っていきます。
 平均100km/h位の高速で走っているにも関わらず、軌道状況が良いので不快な衝撃や走行音等も少ないと言えます。しかしながらカーブを曲がるときの振り子式特有の「足元をすくわれる様な横揺れ」とディーゼルエンジンの騒音と振動には厳しい物が有りました。特にエンジンの騒音は「気動車の宿命」かもしれませんが、新型の281系でしたが路線バスの最後部席(リアエンジンの上)と同じ位の騒音をほぼ常時感じていました。比較対象としては好ましくないかも知れませんが、同じ内燃機関の乗用車のエンジン音は比較的安い車でも、気動車のエンジン音に比べもっと静かです。ガソリンエンジン・ディーゼルエンジンの特性差が有ると言えども同じ内燃機関ですから、ディーゼルエンジンの改良・車両面の振動や騒音対策・思い切ったガソリンエンジンの採用等の改良策は有ると思います。幾ら気動車といえども特急列車なのでもう少し振動・騒音を減らす努力がほしいと言えます。

 [7]スーパー北斗1号車内(函館〜森間)         [8]室蘭本線と噴火湾と国道37号線
     

 [9]スーパー北斗1号と北斗星4号(洞爺)
 

 スーパー北斗1号は室蘭本線沿線の森・八雲・長万部・洞爺・伊達紋別と噴火湾沿岸の小都市に停車しながら札幌を目指します。しかし小都市とバカにはできません。各駅とも指定席にも数人ずつ乗ってきますし、写真を取る為や仕事の電話をする為に最前部のデッキに出ていた洞爺・伊達紋別で見てみると、前の自由席には10〜20人程度の人が乗り込み、特に乗客の多かった伊達紋別では自由席デッキに多くの立ち客が出る状況でした。此れだけ乗客が有るのでしたらスーパー北斗1号の1時間〜1時間半前に、丁度札幌に9時過ぎに付く時間で長万部〜札幌間の区間運転北斗が1本有っても良いのではないかと感じました。
 東室蘭からは電化区間に入り、東室蘭・登別・苫小牧・南千歳と停車していきますが、流石に前にすずらんが2本走っていて札幌着が10時半過ぎの時間だったので、それほどの乗客が有りません。しかし東室蘭時点でかなりの乗客が乗っていて立ち客が出る状況では此れで十分バランスが取れているとも言えます。
 南千歳を出て暫くして札幌の副都心新札幌に停車します。新札幌は殆ど知らない土地でしたが、地下鉄東西線が乗り入れているだけ有り、高層ビル(シェラトンホテル)も立つ副都心で、各車両から10名以上合計100名近い人が降りた感じです。完全に札幌の第二の玄関口として認知されている感じです。
 新札幌を過ぎれば乗客が慌てて降車の準備を始め札幌が近づいた事を感じさせます。流石に 札幌は人口190万の北海道の中心都市 のだけあり賑やかで、大丸等のテナントが入る JRタワー も出来非常に活気付いているのは明らかです。北海道の中でも活気の有る中心都市なので求心力が有るのは当然であり、その求心力への輸送手段がJR北海道の特急列車であるのが見た目にも明らかで有ると言えます。その点から考えてもJR北海道の都市間輸送は北海道の動脈であると同時にJR北海道の生命線であると言う事が出来ます。

 (3)北斗星で夜行列車による長距離移動の実情を見る。

 北海道観光を終わった後、北斗星を利用し夜行列車で帰京する事にしました。東京〜札幌間の距離(在来線で約1200km)は(1)で述べた様に、新幹線が有るといえども昼行で乗り継ぎながら1日で移動するには酷な距離です。その為27日には午後から仕事を抱えている事も有り、今までは「夢の夜行列車」である北斗星で帰ることにしました。
 せっかく北斗星を利用するのなら「ロイヤル」利用を考えていましたが、実を言うと20日近く前の私の予約の段階で23日下り・25日上りは北斗星ロイヤル・カシオペア共に取る事が出来ず、仕方なく仕事を調整し札幌滞在を1日伸ばし唯一1席取れた26日下り4号のロイヤルを利用して帰ることにしました。運行開始当時から「プラチナチケット」と言われていた北斗星ロイヤルのチケットですが、カシオペアを含め夜行列車高級個室の人気いまだ衰えずと言う事を改めて実感しました。
 北斗星ロイヤルのチケットは取得するのも困難でしたが、取得してみると金額も驚きでした。北斗星ロイヤルの金額は運賃16,080円+特急料金2,890円+個室寝台料金17,180円=36,150円(B寝台で25,270円)です。此れは新幹線+特急料金27,340円や飛行機の通常料金(AIR・DO(23,000円)や特割1(24,700円)はもっと安い)28,300円に比べてかなり高いと言えます。少なくとも夜行列車を費用の側面で選ぶ人は居ません。今回はそれに加えて夕食の食堂車グランシャリオのフランス料理コース7,800円を加えて予約したので総額が43,950円になってしまいました。これは正しく「清水の舞台を飛び降りる」金額です。こう考えると北斗星ロイヤルの旅行はまさしく「特別な旅行」であると言う事が出来ます。

 25日は小樽旅行が終わった後、19時過ぎに札幌駅に入り北斗星に乗車します。ホームに上がった段階では既に北斗星は入線しており、乗客が三々五々乗り込んでいきます。 北斗星はB開放寝台も有る物の個室寝台がメインの寝台列車 です。発車までに車内を一巡しましたが、B開放寝台が3分の1程度の乗車率でロイヤルが満室で有る以外は個室は半分〜3分の2程度の乗車率です。平日である事を踏まえれば九州ブルートレインの惨状よりかなり良い利用状況です。
 しかし車両は 個室主体で北斗星運行開始時に各種改良を行われている車両 と言えども、1970年代前半に作られた 24系 を改良した車両でもう30年近く使用されています。正しく「老婆に鞭打つ」状況の車両であり綺麗に整備されている物の、車両自体の根本的老朽化は隠す事が出来ません。車両を維持する為にJRが努力している事は否定できませんが、高額な料金を払う列車でこの状況は好ましいことでは有りません。
 発車するとすぐにロイヤルにはウエルカムドリンクのサービスと車掌による改札があります。ウエルカムドリンクには水・お茶・ウイスキー・ワインが付いておりサービスとしては素晴らしい物です。この後も感じましたが車掌・ウエイトレス等の人的な面でのサービスはホスピタリティ溢れるサービスで非常に好感が持てるものです。その分インフラたる車両設備の老朽化ぶりが目に余る物であると言えます。
 札幌19:27発でグランシャリオのディナー開始が19:30だったので、早々に食堂車に向かい夕食をとることにします。昔は予約を取る事も難しいと言われていましたが、今回はディナー満席になっておらず2卓空席が有りました。まあ食堂車の金額とちょっと遅い時間(札幌で早めの食事を取るのも有力な選択肢)を考えれば仕方ないのかもしれません。
 ディナーはフランス料理フルコースで「雲丹風味のクレープ包み海の幸サラダ仕立て・真鯛とアスパラのクリームスープ・牛フィレ肉のソテー野菜のメロディー赤ワインソース・ココナッツミルクのスープ仕立て小豆のアイスクリーム添え・パン・コーヒー」と、東京のレストラン顔負けのメニューで、味も東京のレストランに負けて居ません。しかし飲み物に白・赤のワインを頼みましたが食堂車で食事中に南千歳・苫小牧と停車しましたが、その停車・発車のたびに客車特有の衝撃が食卓を襲いました。流石にワインがこぼれる事は有りませんでしたが気持ち良い物では有りません。客車列車の宿命と言えども電車や気動車では此処まで酷くありません。此れには今後就寝時も苦しめられましたが何とかならないでしょうか?
 食事の終了後団体客で五月蝿いロビーカーを諦め自分の部屋に戻りました。個室でロイヤルの特権の自分専用のシャワーを浴びワインを飲みながらビデオを見ながら時間を過ごします。車窓を楽しむといっても一部の街以外は真っ暗で車窓は全く期待できません。(でも函館到着直前の函館の夜景は非常に綺麗だった)仕方ないのでビデオを見て居ましたが、ビデオも2本の短編映画が繰り返し放送されているので、3時間も経つと時間を持て余してしまいます。
 その為函館で写真を取った後、青函トンネルに入った事を確認しそのままベットに付き寝てしまいました。しかし青函トンネル内は走行音が五月蝿く中々寝付けなかったですし、列車が停車・発車するたびの衝撃に何回か目が覚めてしまいます。それなりの広さを持つ個室(東横インのシングル位の広さ)で有るのでプライバシーが保て落ち着く事は出来ますが、「寝るに適した場所」で有るか?と言われると首を傾げざる得ません。
 
[10]北斗星食堂車での食事(朝の和定食)        [11]上野に到着の北斗星4号
     

 翌朝は6時過ぎ宮城県内走行中に目が覚めます。列車特有の振動でちょっと寝不足です。なので目覚めにシャワーを浴びる事にしました。流石に完全にカーテンを閉めた個室の中なのでだらしない格好で洗顔・シャワーを浴びても問題が有りません。この様にプライバシーが確保出来るのは個室のメリットであり助かります。
 仙台到着時息抜きにホームへ出てみると、B寝台を中心に30〜40名位の降車客が有ります。(その後暇なので福島・郡山でホームに下りてみましたが、両駅とも見た目で10〜20名位の降車も有りました)確かに時間的には6時半〜8時半位に到着する仙台〜福島県内が北斗星4号を一番利用しやすい地域かも知れません。
 福島発車後の8時ごろに前日頼んであった朝の紅茶と新聞が届けられます。ロイヤルの特別サービスと言えどもやはり「朝の一杯の紅茶」がゆっくり飲めると言う事は素晴らしい物です。航空機では「スチュワーデスによる飲み物サービス」等は当然ですから、鉄道でも今は一部グリーン車・個室等だけのウエルカムドリンク・朝のドリンク等の乗客の優越感をくすぐる様なハイグレードサービスが、観光用の高級列車ではもっと一般的に有っていも良いかもしれません。
 郡山出発後の8時半過ぎに朝食を食べに食堂車に向かいます。時間が遅い為か食堂車には私の他もうひと組しか居ません。和定食・洋定食共にちょっと高めの1,680円です。ウエイターの人が前日夜食事をしたのを覚えていて「昨夜はフランス料理でしたから、今朝は未だ和定食がありますので如何ですか?」と勧めてくれるので素直に従います。和定食は中々味も良く、かなりのボリュームがあり「朝食にはちょっと重いかな?」と言う位の量が有ります。食事中にも襲ってくる振動・衝撃は相変わらずですが食堂車の味・サービスは文句なしです。昔子供の時に新幹線100系2階の食堂車で食事をしてその景色と雰囲気に特に感激したのを思い出しました。ノスタルジーの側面からだけ考えるのなら食堂車は素晴らしい物です。
 食事を終わった頃に関東に入り既に旅行も最終行程に入ってきました。しかしその日が平日で有る事もあり、9時半頃になると携帯に仕事の電話が入ってきて落ち着かなくなります。仕方なく携帯で電話したりPCを開き仕事のメール等のやり取りをして、個室の中で仕事を始めます。そうすると困った事が発生しました。個室の中にはコンセントがひとつもありません。登場当時は列車の中で使う電化製品といえば電気カミソリ位だったかも知れませんが、今はデジカメ・携帯・ノートPC等充電の為にコンセントを必要とする物を日常の中で普通に多数保有している状況ですので、一箇所ぐらいコンセントが有っても良い物だろうとは思います。その様な点からも北斗星24系の時代遅れ振りを痛感させられます。
 仕事をしているうちに大宮を発車し、上野へのラストスパートに入ります。流石に荷物を整理し降車の準備を整えたあと荷物を持って車内を一巡してみます。大体最後まで乗りとおした客は1割5分〜2割程度です。幾ら観光主体と言えども流石に11時過ぎに到着では遅すぎます。そうこうしている内に寝台列車が多く発着する上野駅13番ホームに到着します。13番ホームには夕方寝台列車発車時間中にオープンする待合室が有ります。贅沢なのは承知していますが長距離夜行列車にはやはり雰囲気が大切です。札幌や東京の様に通勤列車と同じホームと言うのはちょっと味気なさ過ぎます。その点カシオペア就役時に改良した上野の13番線は合格点と言えます。サービスにしてもホームの改良にしても、小さくても出来る範囲からサービス向上に努めている姿勢に感服して今回の旅行を終えました。

 (4)本州〜北海道間の鉄道移動で感じた事。

 今回上記の様な本州〜北海道間鉄道旅行と言う「時間に余裕が無いと出来ない」旅行をしました。今や本州〜北海道間の移動手段は飛行機主流であり、所要時間は航空機1時間半(空港間の飛行時間):10時間(新幹線+スーパー白鳥+スーパー北斗)、利用客のシェアは JR5.5%:船舶8.2%:航空機86.3% と言うほど差が隔絶しています。
 この中で鉄道は青函トンネルと言う素晴しいインフラで結ばれている物の、そのインフラが生かされていないことは明白です。その様な状況の中で今回の旅行で感じた事・必要である事をこの節の結論に変えて述べたいと思います。

  「1」北海道新幹線の早期完成が重要?
 
 今回の旅行で行きは新幹線+在来線で札幌入りしましたが、改めて感じた事は「北海道新幹線の有用性」です。北海道新幹線に関してはフォーラムでもFASTECH360に関して書いた時( 新幹線も 360km/h運転時代に突入? )に触れていますが、今回改めて本州〜北海道間を鉄道利用して見てその必要性に関して感じました。
 現在東北・北海道新幹線は八戸〜新青森〜新函館間で建設が着手・進行しており、既に青函トンネル部分82kmは新幹線規格で完成しており(標準軌・狭軌三線化工事が有るが)八戸〜新青森間に関しては既に 用地買収がかなり完了しており土木構造物が出来始めている状況 で北海道新幹線は 5月22日に起工式を行い渡島当別Tの工事発注や中心線杭打ち式等工事が着々と始まりつつある状況 です。東北新幹線八戸〜新青森間は2010年度に北海道新幹線新青森〜新函館間は平成27年度に完成予定です。

  [12]建設中の東北新幹線(八戸〜新青森間)     [13]青函トンネル内のスラブ軌道(標準軌導入・三線化の準備は出来ている)
    

 この様に東北新幹線・北海道新幹線は八戸〜新函館間では完成の目処が立っています。しかしそこから先新函館〜新札幌間に関しては未だ工事が認可されておらず、何時完成するか残念ながら目処は立っていません。
 又既に工事着手している新青森〜新函館間も、開業予定は決まっている物の詳細を見れば、新規建設区間よりすでに新幹線規格既完成区間の青函トンネル区間の工事に技術的・工事的制約が有ると言えます。上記写真のように既に青函トンネル内のスラブ軌道には標準軌・狭軌三線化の基礎的準備は出来ています。しかし3線化工事は工事基地も竜飛・吉岡の2箇所しか設置できない中で夜間も貨物列車・夜行列車が走り保守間合を取るのが難しい難工事であり、300km/h以上の新幹線と100km/h程度のコンテナ貨物列車や夜行列車が同じ線路を走ると言う「クローズドシステム」の日本の新幹線にとっては今までに前例の無い「難易度の高い技術的制約」をクリアしなければなりません。逆にインフラの出来ている青函区間での技術的問題が北海道新幹線新青森〜新函館間開業への最大のネックと言えるでしょう。
 同時に平行在来線に関しても問題が有るといえます。特にJR北海道の区間は貨物輸送にとっては大動脈で有る物の、都市間輸送が新幹線に移行したら(函館・札幌近郊を除き)地域輸送はバスで賄える程度の輸送量しかないのは、現地の状況を見たら明らかです。又JR北海道の経営力を考えると容赦なく平行在来線を切り捨てないと経営は成立しません。事実平行在来線である江差線の末端で経営分離対象外の木古内〜江差間を赤字ローカル線として廃止すると表明しています。
 読売新聞北海道版「着工の春北海道新幹線」  地域の足難題   難題の在来線存廃問題
 この先北海道新幹線が札幌まで延伸されれば、先ずは貨物輸送に関係の無い函館本線長万部〜小樽間で廃止の問題が出てくるでしょう。北海道内の平行在来線の函館近郊を除く大部分は対本州の貨物輸送が有れども、第三セクターに転換しても既に 廃止問題が浮上しているふるさと銀河線 と同じような状況になるでしょう。
 此れを如何するかも問題です。余りに利用客の少ない路線は廃止するにしても、それ以外は現行制度を変更しても「新幹線との一体経営を行い、その経営主体の赤字に公的補助をつぎ込む」「平行在来線をJR貨物に保有させ、一部を旅客運営会社にサブリースする」等の新しい対応策を考えなければ不良第三セクターの拡大再生産になりかねません。

 この様に問題が有る北海道新幹線ですが、大局的に見ればフォーラムで書いた様に北海道新幹線は「必要」で有る事は間違い有りません。
 今回の旅行で感じた事は「鉄道旅行は4時間程度が限界」と言う事です。実際飛行機(+空港アクセス)と所要時間で競えるのは3時間程度ですし、座席に座り快適に旅行できる限界は(私的には)4時間程度です。前にも フォーラムで触れました が、やはり航空機と新幹線が対等に戦えるのは東京〜広島間の例が示すように新幹線で4時間程度です。
 その基準から考えれば、今の東京〜函館最短5時間58分では飛行機にかないませんし、東京〜札幌10時間と言うのは鉄道旅行の所要時間として論外と言う事になります。しかし新幹線が青森まで来ても 東京〜青森間が3時間20分 に縮まる事で東京〜函館間も5時間15分程度に短縮されますが、此れでも未だ不十分です。
 その点北海道新幹線が完成すれば最高速度300km/hでも 東京〜札幌間4時間27分・東京〜函館間3時間35分 ですし、FASTECH360が実用化して最高速度が350km/hになれば東京〜札幌間が3時間57分になります。北海道にとって新幹線延伸は函館延伸だけでも道南地域には十分効果的ですが、180万都市札幌まで延伸されれば北海道全体に与える効果は計り知れない物が有ります。
 この効果を考えたら30万都市が連なる青森・函館への延伸だけでは効果の側面から考えても不十分ですし、需要・採算性の面から考えても北海道新幹線は180万都市札幌へ速やかに延伸する事が非常に重要で有ると言えます。終点に180万都市札幌を抱える北海道新幹線は、北陸地域から関東・関西両方向への需要の期待できる北陸新幹線と並ぶほど有望な新幹線で有ると言えます。

 又青函トンネルの有効活用と言う点でもやはり此れだけ有望な新幹線が一番有力な事は言うまでも有りません。
 青函トンネルの旅客・貨物の通行量は低下の一途を辿っています( 本州〜北海道間の鉄道利用客は5年間で20万人減少 同期間で貨物も576,000トン減少 )。只東北新幹線八戸延伸時のダイヤ改正で登場したスーパー白鳥・白鳥は好調でJR北海道では 平成17年度事業計画 で海峡線特急車両の増備を(11両増備され5両編成4本+増結用3両→6両編成5本+増結用2両編成2本になる)行いますが、それでも海峡線の利用客は昔ほど回復していない状況だと推察されます。
 過去においては青函トンネルの有効活用策として「 青函カートレイン構想 」が浮上していますが、色々な問題(狭軌では輸送できる車が限られる・青函トンネルまでのアクセス道路の不備・津軽海峡線の線路容量等々)があったためと推察されますが、実用化の目処が立っていません。(新幹線延伸が決まった以上現実としては沙汰闇だろう。でも勿体無い計画であるのは事実である)
 青函トンネルの最大のメリットは「気候・状況に左右されず安定的に本州〜北海道間を結ぶ唯一のルート」と言う事です。これは旅客・貨物両方に当てはまります。この様なメリットを持つインフラは最大限に活用されるべきであると言えます。その活用法としては「新幹線・コンテナ輸送・カートレイン」が有力で有ると考えます。新幹線規格の路線で青森〜函館間が結ばれれば、カートレインも如何なる方法でも活用化が出来ます。(新幹線サイズの大型専用車両で毎時2〜3本程度青森〜函館間を結ぶカートレインを新幹線上で走らせる事は、北海道新幹線の線路容量に余裕の有る間は難しく無い)
 この様に北海道新幹線が開業する事で、青函トンネルには色々な活用法が生まれてくると言えます。その為にも北海道新幹線は北海道にとって重要なインフラで有ると言えます

  「2」北斗星は如何にすべきか?〜特殊列車維持の難しさ〜

 今回の旅行で北斗星を利用しましたが、北斗星(含むカシオペア)は東京(上野)〜札幌間を結ぶ象徴的列車であり、イメージ的にも鉄道旅行の象徴となる様な最上級の豪華列車です。その素晴しさに関しては上記旅行記でも触れましたが、此処にも華やかな寝台列車の陰に隠れた色々な問題が有るといえます。
 その最大の問題は設備の老朽化です。カシオペアこそ 99年にデビューしたE26系 が登場し新型車両が一部には登場してますが、それ以外の 北斗星2往復に使用されてる車両は製造から30年以上経った24系 です。北斗星転用時に大改修していると言えども、既に20年近い歳月が経とうとしています。又牽引の機関車に関してもEF81系・DD51系にしても同じ様な状況であり国鉄時代に作られた30年選手です。
 この様な状況から、カシオペア(客車だけだが)を除く海峡線寝台特急(特に北斗星)に関して言えば「残念ながら設備的にはすでに寿命が尽きつつある列車」と言う事ができます。

 しかし特に北斗星はこの様な危機的状況ですが、特に個室に関してはそれなりの需要があり、今や衰退の究極に達し絶滅しつつ有る九州寝台特急と比較して言えば未だ救いの有る状況です。この差は何なのか?それはロイヤルを筆頭とする個室設備や食堂車等の設備とスタッフの優れたサービスが有るからと言えます。それが無いと九州寝台特急と同じ状況となっていたでしょう。
 その点から考えてこの列車の維持にJR北海道・JR東日本が果たした努力は大きな物が有ると言えます。よく「九州寝台特急はJR4社間に跨った運行だったので責任が分散され放置された」と言われますが、その点北斗星の場合「JR北海道・JR東日本が収入を2分しただけで済んだので放置されなかった」と言う点は有るでしょう。しかしそれ以上にJR東日本に関して自社のイメージ向上につながる「看板列車」で、JR北海道にしてはドル箱の観光客を引き込んでくれるイメージ列車と考え、可能な限りの力を注ぎ込んできた事が今まで北斗星を支えたと言えるでしょう。
 
 けれども「北斗星・カシオペア」の場合「老朽化=廃止」と言うには勿体無いほど今でも高いイメージとそれなりの人気が有ります。その点では九州寝台特急の歩んだ「縮小・廃止」の道を歩むには勿体無い状況に有ると言えます(同じ事はトワイライトエクスプレスにも言える)。正しく「鶏肋」(実入りは少ないが捨てるには勿体無い)の状況に有ると言えます。
 但し24系車両・牽引の機関車は経年の側面から既に限界を迎えています。と言って新型車両を投入して採算が取れると言う状況には無いです。では如何するべきなのでしょうか?
 これは北海道新幹線新函館開業時の運行形態を如何にするか?と言う10年後に迫った変革の時期への対応と言う問題も絡んでいますが、それを踏まえながら今後の方策について考える必要が有るといえます。
 
 現況で考える前提として「本州〜北海道間の狭軌路線網が維持される」「貨物輸送は現況のレベルで継続される」と言う条件の「新幹線新函館開業時にも寝台特急運行可能な状況で有る」状況の中で考えれば方策は下記の様な形には絞られてくると思います。
 (1)運行会社は原則旅客会社として、高級個室寝台列車に特化して、観光用・会社イメージ向上用の「走る広告塔」と割り切る。
 (2)コンセプトは「北海道旅行用の観光列車」と言う分野に特化する。(高級にする代わりに(運賃ではなく)料金を値上げする)
 (3)トワイライトエクスプレスは現行の本数・北斗星とカシオペアは1往復+臨時運転1往復程度に絞り込む。
 (4)客車に関しては現行の「カシオペア」レベル(もしくはもっと高級)の車両を旅客会社で上記レベル運行に必要な最低限増備する。
 (5)機関車運転に関してはJR貨物に移管し、共通運用とする事で機関車老朽化への対策とする。
 (6)将来的には客車内の食堂車・サービス部門に関しては、サービスのノウハウの豊富なホテル会社等に委託することも考慮する。
 (別に合弁で運行専門会社を作り、観光用高級寝台列車運行を専門にさせる事も考慮に値するかも知れない)
 この様な思い切った方策を取り高級化を図ることで増収を図り、投資に対し有る程度担保を取れる方策を立てる事が、今後とも北海道夜行列車を生き残らせる為には必要なことであると思います。

 今や飛行機利用が一般化し、全国各地に航空網が整備されており同時に安価な夜行高速バスが全国を走っている時代では、特定用途にしか使えない寝台車両を増備し運用することで採算を取らせる事は非常に困難です。現実問題として夜行バスに対しては時間が変わらず料金では敵わない状況で、航空機+現地宿泊に対しては快適さ・料金・時間で敵わない状況です。この状況では「安価な旅行を望む層・ビジネス利用層」に寝台列車をアピールする事は現実的に不可能です。その点から考えれば九州寝台特急の衰退は歴史の必然と言えます。
 しかし私は「寝台列車は完全に時代遅れ」と言うほど悲観的では有りません。極めて限られた層ですが、「観光需要で時間が有り金を使うこと惜しまない」と言う極めて限られた層に狙いを定めれば生き残ることは可能で有ると考えます。要は「投資をしてもそれだけのサービスに金を投じてくれる層」を探し出せばニッチでも成立すると考えます。
 その下地はトワイライトエクスプレス・カシオペア・北斗星には備わっていると言えます。そういう点では新型車両を投入したが航空・高速バスと似た様な需要を競い合う「サンライズ」より生き残る目算は有ると考えます。
 同時に鉄道会社としても、観光需要が無視できない中で「列車に乗る事が憧れ」と言う夢を抱かせる事がビジネス的には重要な側面も有ります。北海道観光にしても飛行機主流と言う流れは今や覆す事はできません。しかし旅行にバリエーションが必要であるのも又事実ですし、鉄道会社のイメージ向上の為に「走る広告塔」「イメージリーダー」「乗る事に憧れる列車」が必要なことは言うまでも有りません。それが周辺でもビジネス・収入に結びつくのです。
 その点では未だ北海道寝台列車には存在意義はありますし、生き残る方策は有ります。只現況のレベルでは提供されるサービスは良くても、設備のインフラ面で存亡の瀬戸際に立っている事は間違いありません。そこを如何に切り抜け新しいビジョンが打ち出せるか?寝台列車と言う極めて特殊な部類の列車でありそれを残す為の方策と言うものには各種困難が伴う事は事実ですが、北海道新幹線新函館延伸がスケジュールに昇って来た今の時期に、生かすのか安楽死させるのか考えなければならないと思います。
 但し[新幹線が開業するから廃止」と言うのは余りに安直過ぎると考えます。今の北海道寝台特急が「鶏肋」で有るのは事実ですが、今まで築いてきた物を考えると簡単に捨てるのは勿体無いと言えます。その点は十二分に考えたほうが良いとは感じます。





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