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公共交通運営と市場原理の狭間で必要な物は何か?
−阪神経営権を巡る一連の動きから公共交通運営に際し運営者に必要な物を考える−
TAKA 2006年05月20日
バブル崩壊後の日本経済の「失われた10年」の低迷期の間急速に衰退傾向をしました日本経済・日本企業に対し、欧米流の金融手法・市場原理を駆使した投資ファンドに代表される外資の進出が急速に進んでいます。
加えて近年ではその欧米流の手法を学び駆使した日本人運営(資本は海外から流入が多い)の投資ファンドも現れ、その様な金融界の動きに触発され日本の一般企業の間でもM&Aと言われる買収・出資・経営統合等の企業再編を絡めた金融手法を駆使した企業拡大手法が流行っています。
実際交通の分野でも「
TAKAの交通論の部屋
」で「日本の大手民鉄は再び「大再編時代」を迎えるのか?」等で触れてきたとおり、村上ファンドによる阪神電鉄株の45.73%買収やサーベラスによる西武ホールディングス(西武鉄道の持株会社)への45.52%出資や阪急ホールディングスによる阪神電鉄株のホワイトナイト的TOBの検討など、日本の公共交通の一翼を支える大手民鉄企業への投資ファンドの出資・買収攻勢が増えています。
又海外勢の進出と言う点で見れば間接的側面である大手民鉄への買収・出資だけでなく、名鉄の岐阜4線(揖斐線・美濃町線・田神線・市内線)廃止問題に際して、フランスのコネックス社が進出・運営を検討する等、間接的なファンドの介入でなくより直接的な事業会社の直接運営と言う進出方法を外資会社が検討する例が発生してきています。
今まで日本国内の資本が日本国内だけで行っていた世界的には極めて異例形態である「完全民間資本での旅客鉄道経営」が、今や資本の論理と外資の攻勢と言う荒波に曝されています。
しかし世界的に見れば極めて特殊である「完全民間資本での旅客鉄道経営」で有っても、日本人から見れば民間鉄道は「重要な公共交通の担い手」であり「民鉄会社による安全かつ円滑な鉄道運営は国民生活に直結している」非常に重要な物です。
今現在日本の公共交通の一分野である民営鉄道に発生しつつある、この様な市場原理による荒波と騒乱が果たして日本の公共交通にとって適切な物であるのか?公共交通を運営する為に真に必要な物は一体何なのか?一連の騒乱を基に「公共交通と資本市場原理」と言う関係を含めて考えて見たいと思います。
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☆「投資ファンドの鉄道経営」自体は昔から有ったもの?
先ずは今回村上ファンドの阪神株買収問題で問題になった「投資ファンドの鉄道経営」と言う問題ですが、物の見方次第で幾通りの見方がでる事では有りますが、果たして投資ファンドの実業経営と言う物は過去において存在したのでしょうか?
投資ファンドと言う概念
自体リンク先の説明を見れば明らかなように色々な物が該当すると言えますが、今回問題の
村上ファンド(M&Aコンサルティング)の場合
「M&Aを事業の柱として、様々な企業への投資ビジネスを展開している会社」と言う事ですから、要は「資本を投入して合併・買収をして会社の価値を上げ、その資本を売却して収益を上げる短期保有資本家」と言う事が出来ます。
「株に投資をする資本家」と言う概念で見れば、株への投資をする資本家自体は日本にも多数存在します。その中で投資家・資本家から鉄道経営者に転進し成功した人も実際に存在します。
私が考えるその人物とは「役員としての関与鉄道は24社に及び」「私設鉄道界で何人も君と比肩する者なき『鉄道王』の名を占むるに至った」(根津翁伝)と言われる東武鉄道社長(初代)
根津嘉一郎氏
です。
根津嘉一郎氏は東武鉄道社長としての鉄道経営者の知名度が高く、投資家と言うイメージは強く有りませんが、明治38年の東武鉄道社長就任前は「山梨県有数の豪農」の資産を活用した株式投資を積極的に行い明治38年時点で「14鉄道・17,997株・払込資本金726,996.5円」と幅広く投資し、九州鉄道では「改革運動に参加し改革運動の闘士として調査委員メンバーに選ばれる」等、「37年相場を止む」と称されその後明治38年東武鉄道社長に座り事業の中心を東武鉄道に据える前は、根津嘉一郎氏は今で言えば「外から物を言い経営を改革して行く」と言う今何処かで聞く様な投資家的行動をしています。
この様な行動パターンの投資家を現代で聞いた事が有りませんか?正しく根津嘉一郎氏が九鉄で行った行動は「村上ファンド」が阪神電鉄で株を買い占めた後
阪神タイガースの上場等阪神の経営改革を提案・協議
したのと似ていませんか?「財が有る人が投資する投資家」と「投資する金を集めてくるファンド」の差は有りますが、相場を張っていた時代の根津嘉一郎氏の行動と村上ファンドの行動には似た点があります。
その様な点を考えれば「投資ファンド」と言う現代的な形態に固執しなければ、株の投資家による鉄道経営自体は明治の昔から存在する物であり、今回の「村上ファンド」の行動自体も歴史の点から見れば決して「前代未聞」の物でないという事が出来ると考えます。
☆「投資ファンドの鉄道経営」は悪なのか?
では過去にも存在していたと言える「投資家(投資ファンド)」の鉄道経営自体は悪い物であると言えるのでしょうか?確かに投資家は鉄道経営に「素人」とまでは言えなくても「鉄道運営のプロ」とまでは言えません。その点で言えば不適当と言えるかも知れません。
その点で言えば、「
鉄道の実務経験がゼロの人間だけを取締役候補に指名
」と言う行動に出た村上ファンドは不適格と言えますし、根津嘉一郎氏自体も出資先鉄道の発起人・設立委員・調査委員等は経験していても社長として実際の経営を指定はいません。そういう点では今の基準から見れば好ましいと言えないのかも知れません。
但し村上ファンドの場合は未だ「会社の経営」と言う段階まで達していないので今から未来の事をコメントは出来ませんが、根津嘉一郎氏の場合は東武鉄道社長に就任後「増資・利根川架橋・足利延伸」を実施し今の東武の基礎を築くと同時に高野登山鉄道(後の大阪高野鉄道、今の南海高野線)を始め色々な鉄道に投資するなどして「鉄道王」としての地位・名声を不動の物にします。その点では鉄道経営の経験のない「投資家」でも優れた鉄道経営を出来る事を実績で示しています。
何故その様な実績が残せたかを考えると、東武社長就任後の根津嘉一郎氏の東武経営への力の入れ様・情熱は半端な物ではなく「(東武鉄道には)私が最も渾身の力を尽くした」「東武鉄道の各駅を朝から一日中掛かって一駅一駅降りて巡回する」程の事をしていたそうです。その様な情熱が有ったからこそ鉄道経営者として根津嘉一郎氏は成功したのだと考えられます。
過去においてこの様な「投資家(投資ファンド)による鉄道経営の成功例」が存在する以上、頭から「「投資家(投資ファンド)」の鉄道経営自体は悪い物」と否定する事はできないと思います。要は此処の人物の素質次第であると言う事であり、「投資家(投資ファンド)=悪」と言う事を方程式として考えるべきでないと言う事になります。
☆村上ファンドの行動は「志」でなく「野心」に基づく行動では?
では優れた経営者に必要な物は何なのでしょうか?少なくとも今まで例示のように形態で分類する事は正しい事では有りません。そうなると経営者自身の考え方・信念・行動・実績等と言う、ある意味抽象的では有りますが経営者の本質に迫る物が「真に優れた経営者を計る物差し」になると言えます。
元々優れた経営者に限らず、優れた指導者は優れた考え方・信念・行動・実績を周囲に示す事でリーダーシップを発揮し、部下・組織がそのリーダーに従い行動し素晴しい実績を上げて、世間から色々な意味で高い評価を受けると言うのが一般的です。
前述の根津嘉一郎東武鉄道社長も正しくこの条件に当てはまります。「増資・利根川架橋・足利延伸」の3点セットで北関東に進出させ、大正末期(1924年)〜昭和初期(1929年)の5年間に300kmに渡る東武路線を電化し140両の電車を新製投入し東武鉄道を高速電車に飛躍させる等、積極的な投資で東武を発展させ現在の礎を築くと言う経営者として東武鉄道に素晴しい実績を残しています。この様な事が優れた経営者に必要な「実績」であると言えます。
其れに対して現代の投資家(投資ファンド)である村上ファンドにこの様な考え方・信念・行動・実績が有るでしょうか?残念ながらNOと言わざる得ないと私は考えます。
チョット話が逸れますが、先日(5月15日)テレビ東京の
「カンブリア宮殿」と言う番組にゲストでSBIホールディングスの北尾吉孝CEOがゲストで出演
されていました。北尾氏は野村證券出身の巨大金融コングロマリットの経営者で、ライブドアのニッポン放送買収劇でホワイトナイトとして登場し、IT企業でありながら投資ファンド顔負けのマネーゲームを演じていたライブドアの前に立ち塞がり敵対的買収であったニッポン放送買収を断念に追い込んだ人物です。
この番組の中で村上ファンドの阪神買収劇を「あれはグリーンメーラーだ」と一刀両断していましたが、その番組の中でニッポン放送買収劇の時の堀江評である「
公共財としての資本市場の地下水を汚してはいけない。株式の大規模分割や敵対的買収などを立て続けに実施し、『インターネットと金融、メディアのドンになる』というのは許せない。私や孫さん(正義ソフトバンク社長)には志はあるが、堀江君のは野心だ
」 「孫さんの『インターネットで世の中を便利にする』と言う目的での行動は社会を良くしようと言う『志』だが、堀江氏の「ドンになる。金を儲ける」と言うのは『野心』に過ぎない」と言う言葉を再度述べられていました。
この話を聞いて「ハッ」と思いました。確かに経営者に必要な物は考え方・信念に裏付された「志」です。「野心」には利を共にする人しか付いて来ませんが「志」には共感したより広い人が付いてきます。
此処で上記の北尾氏の堀江評に当てはめて、今民鉄業界で阪神電鉄買収騒動で話題の村上ファンドについて考えてみると、やはり堀江氏と同じ様に「野心」で行動しているのではないかと思う側面も多々存在します。
実際村上ファンドは「純投資」で株の購入を進め、
阪神タイガース上場提案
による「株主価値の増大」を主張し、最終的には
株主提案で「過半数の役員派遣」を提案
しながら時価を上回る金額での株の阪急ホールディングスへの売却を図るなど、経営権奪取をちらつかせながら株売り抜けで利益を目指す「二正面作戦」を展開しています。
遂には村上ファンドは阪神電鉄株買収劇などで世間からの風当たりが強くなると、何を考えてか「
拠点をシンガポールに移転
」させ、日本の投資顧問業法規制下から脱出する動きすら見せています。
この様な投資家に社会を良くすると言うような「志」は有るのでしょうか?私はNOと言わざる得ないと考えます。村上ファンドの「純投資と言い規制を逃れながら経営権掌握まで株を買い進める事で大量保有報告書の特例を上手く活用」「最後は高値売り抜けのグリーンメーラー」「風向きが悪くなり何かやましい事が有ると拠点を海外に移して敵前逃亡的な行動を取る」と言う様な行動は、崇高な「志」が有るとは思えず逸れこそホリエモン流の「野心」しか見えてきません。その点では村上ファンドも堀江氏・ライブドアと同類であると言う事が出来ます。
☆公益事業である鉄道事業を運営する主体として村上ファンドは相応しいか?
その様な「野心」に塗れた村上ファンドが行っている阪神電鉄の買収劇ですが、既に現実問題として
買い増しが進んでいて過半数に迫る46.65%を保有
するまでに至っています。この数字は過半数まではあとわずかですが、実質的には株主総会で出席者の過半数をほぼ確実に取れて経営の支配権を取れる状況になっています。
只村上ファンドが「野心」に基づいて現実的に経営権を支配しようとしている阪神電鉄は、公共交通を担う「公器」であり公益事業であります。その点は普通の企業を投資ファンドを買収し、リストラ・会社分割・売却等の手段を使い利益の極大化を計る場合と比べて、投資ファンドによる公益事業買収による行動が社会全体に大きな影響を与える可能性が高いと言えます。
確かに「民間企業」「民間投資ファンド」である以上、幾ら「鉄道は公共交通で公益事業」と言えども利益は追求しなければなりません。その点だけで言えば、資産を売却する事や鉄道運営を効率化する事で利益を極大化する行動は正しい行動であると言えます。但し鉄道会社が公共交通・公益事業を担う立場としては「利益の極大化」が全てでは有りません。鉄道会社はその高い公共性から各種の補助・規制・保護等を受けています。その点から考えると公益事業者である民間企業の鉄道事業者としては「利益と公共性のバランス」を十分に考慮して行動する必要が有ると言えます。
しかし今回の話題の主流に有る村上ファンドは、前にも述べたように阪神電鉄買収を「社会を良くすると言うような『志』」で行っている訳ではなく「自己の利潤極大が全てグリーンメールや企業分割売却で儲ける『野心』」で今回の買収劇を行っています。その様な野心家でしかも外資になってしまった村上ファンドが、公益事業である鉄道事業を運営する事が合法的であろうとも社会的には好ましい事ではないと言えます。
実際に公益事業を運営する事業者として鉄道事業者に必要な事は「利潤と公共性のバランスの取れた追求」と「如何に安全に輸送を実行するか」と言う点にあると言えます。
その点から考えると村上ファンドに関しては、公益事業である鉄道事業を運営する主体として好ましい組織では有りません。村上ファンドには鉄道の運営経験も有りませんし、今回の買収が友好的な買収関係では有りませんので買収しても既存の阪神電鉄役員・社員を上手く活用する事が出来ないでしょう。そうなると
周囲から危惧が出ている様に
村上ファンド買収下の阪神電鉄の経営が上手く行かず、阪神電鉄が担っている阪神間海岸部の公共輸送に大きな影響を及ぼす可能性も有ります。
実際昨年のJR西日本尼崎事故以来鉄道事業に対する安全への規制が強くなり、
改正鉄道事業法では取締役から安全統括管理者を選任する義務
が生じます。そうなると役員の半数が投資ファンドの社員で占められ残り半数は被買収企業の協力的でない役員で占められる村上ファンド下の阪神電鉄に有効な安全統括管理者を設置できなくなる可能性も有りますし、設置できたとしても実際に阪神電鉄社員と乖離した状況では、有効な安全対策を取る事が出来ず、北側国交相が懸念した様な「
安全に疑義ある場合
」が発生する可能性も有ります。
この様な状況の中で「村上ファンドに一度経営をさせて規制の中で運営能力がないと言うボロを出させろ」と言う意見も有りますが、村上ファンドが経営権を握り経営陣と組合・従業員が対立して鉄道の安全に重大な支障が発生し大規模な事故でも発生してしまったら、その社会的損失はきわめて大きい物があり好ましい事では有りません。そうなる前に未然に社会的損失が大きくなる可能製のある事に関しては芽を摘んでおく必要が有ると言えます。
その様な点からも「村上ファンド」は公益事業である鉄道事業を運営する主体として相応しくない事は明らかです。本来なら公益事業ですから、「放送法による放送会社への外国人保有規制」の様な「公益事業に相応しくない人・組織が運営主体として名乗りを上げる前にハードルを設置する」事が必要ですが、現在その様な規制はありません。その様な規制が無い以上、現実的対応として誰かがグリーンメールを買い取る形でも鉄道事業者に波乱を起こす要素(村上ファンド)に退場を願い、鉄道業界に新たな秩序を作り出すきっかけにするのが現状においては一番好ましい事であると考えます。
☆今回の問題の最後の落とし所「阪急ホールディングスのTOB」に必要な事
実際問題として「村上ファンドが阪神の経営主体として好ましくない」と言う事になると、現状における一番有力な解決策は「阪急ホールディングスによるTOB」と言う事になります。阪急ホールディングスは今回所謂
ホワイトナイト
として登場していますが、この阪急のホワイトナイトには長年の歴史と事業エリアが阪神間に競合する事から阪急の野心を疑う向きと、大手民鉄の再編の一環として期待する考えと両方があると言えます。
確かに一番想像しづらい組み合わせが突然登場した事も有りますし、阪急ホールディングスの意図が公表されていない事もあり色々な噂や嫌疑が発生している事は間違いありません。しかし何も鉄道を知らない無知な村上ファンドが阪神電鉄を経営するより、同業者である阪急ホールディングスが阪神電鉄を経営するほうが公共性・社会性と言う側面からも好ましい形態であると言えます。
但し未だ村上ファンドと阪急ホールディングス間の交渉が水面下の状況で流動的な状況であり、阪急ホールディングスの意図が明らかになっていないため「阪神タイガースが阪急タイガースになるのか?」「阪神間の輸送は阪急線に集中させ、阪神線はローカル輸送化させるのでは?」と言う話なども出ています。しかしこれ等が阪急の純経営的に見ても2000億とも言われる巨額費用を投じて手に入れた阪神に「餌を与えない」と言うのが投資効率的に好ましい事でなく、既存阪急事業と共存しつつ買収した阪神事業を活性化させ相乗効果を引き出す事が好ましい事も明らかです。
今回の阪急ホールディングスの阪神電鉄TOBは、村上ファンドの買収により降って沸いた事であり、阪急ホールディングス的には「漁夫の利を得る」状況であると思います。
しかし阪急ホールディングスとしても必要なのは「阪急・阪神統合」による阪神間の民鉄企業の再編に伴う理念と効果を明確にする事です。そうでなければ阪急と阪神の経営統合は自社の利益だけを追求する「野心」に依る統合と化して村上ファンドの企業買収と変わらない存在になってしまいます。
民鉄業界は戦前は合従連衡による集中が進み最後は
陸上交通事業調整法
による戦時統合が進み、戦後は戦時統合の分割再編後大手民鉄は京成の経営危機等波乱は有れども、基本的に大手15社体制が維持されてきました。
今回の村上ファンドによる阪神電鉄買収劇に端を発した、阪急ホールディングスの阪急・阪神経営統合はその様な大手民鉄の安寧の時代を打ち崩す維新で有る事は間違い有りません。只維新には「これからどこに進むのか」と言うビジョン・志が必要です。そうしないと後に続く会社が居なくなってしまいます。もし阪急が経営統合により阪神を「飼い殺し」状態にした場合「経営統合では一歩間違えれば乗っ取られる」と言うイメージが固定化してしまい、今後の大手民鉄の再編の大きなマイナスになってしまいます。
今や大手民鉄の「再編」は「
日本の大手民鉄は再び「大再編時代」を迎えるのか?
」でも述べたとおり、「地域統合型」「(乗入を絡めた)地域横断型」色々な形態での民鉄企業間での再編が起きる可能性が有ると考えられます。阪急ホールディングスによる阪神電鉄TOBはその流れの最先端を行く可能性が非常に高いと言えます。
この統合が最先端を行くからこそ、今後の大手民鉄の再編の流れを占う物になると言えます。その様な再編・経営統合ですから「外部からの異物の村上ファンド除去」と言うだけでなく、その先に「統合が何をもたらすか」を阪急ホールディングスが示す必要が有ります。阪急が将来への統合ビジョンを示して其れに従い行動できるかの一点に大手民鉄の再編の流れの将来はかかっていると言えます。その点からも阪急ホールディングスの「志」の高さが問われる事になると言えます。
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今回の村上ファンドの阪神電鉄買収騒動は、ホリエモンのニッポン放送買収・楽天のTBS株購入などに続く、「野心に塗れたマネーゲーム」の一環であると思います。今の時代ホリエモンが持て囃されたように、今までの日本では考えられなかったような「投機による虚業」が持て囃される時代になっています。
しかしこの流れが決して好ましい訳では有りません。投資をする事で「金を儲ける」と言う事自体は貨幣経済下で人間生きていく為には必要な事です。只其処には「実」が有り「志」がなければ所詮マネーゲームに過ぎず、其れをやりすぎればホリエモンの様に「塀の中に入る」事になってしまいます。村上ファンドに違法性があるかは現段階で立証されていませんが、やっている事自体はホリエモンと変わらないと思います。
その様な事を容認する社会が何処か間違っている事は間違いないと私は思います。それは上記の北尾吉孝SBIホールディングスCEOが述べた「孫さんの『インターネットで世の中を便利にする』と言う目的での行動は社会を良くしようと言う『志』だが、堀江氏の「ドンになる。金を儲ける」と言うのは『野心』に過ぎない」と言う言葉を聞いて、私はハッと思いました。今の投機的マネーゲームは「野心」に基づいた行動で所詮「虚」に過ぎず、真に経営に必要なのは「何かで世の中を良くすると言う『志』なのだ」と言う事だと改めて考えさせられました。
何度も繰り返した様に鉄道事業は公益事業でありその社会性・公共性は高いという事が出来ます。そのような事業にマネーゲームだけを行う野心家に付入らせて混乱させる事は社会的に見ても大きな損失です。一面的見方をすれば「上場している民間企業だから買収等のマネーゲームに巻き込まれても致し方ない」と言う見方も出来ますが、実際的には鉄道会社の公共交通に対するその公共性・社会性から考えてマネーゲームに対する一定の対策が必要であると言えます。
少なくとも今のこの「ギャンブル的経済」を推奨する小泉内閣が本年9月まで現存している限りは、この「危なくなったら海外に逃亡する様な輩による、野心に塗れた投機的マネーゲーム」を規制する事はしないでしょう。しかしその後は「放送法による放送会社への外国人保有規制」の様な公共性の高い民営企業を守る何かしらの規制が必要であると考えます。
鉄道に限らず公共性の高い企業が混乱したり外国に乗っ取られる事での長期的な経済的損失は大きな物があると言えます。只規制ばかり掛けて経済の自由度を失うことも好ましい事では有りません。そのバランスを考えつつ公共性の高い企業を「野心家」から救う方策を考えておく事が必要でないかと考えます。
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