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駅ナカ店舗の「適材適所」とは?

−表参道と北千住の駅ナカ店舗に見る駅ナカ店舗の「TPO」「適材適所」−



TAKA  2006年06月19日



   

東京メトロの「エチカ表参道」と東武鉄道北千住駅の駅ナカ店舗


 近年注目されている鉄道駅ナカの店舗「駅ナカ」ですが、私が興味がある事も有り、「TAKAの交通論の部屋」でも色々な側面で何回か取り上げていますし、比較的都内・近郊の移動が多い事も有り色々な駅ナカ店舗も実際に試しています。
 その中で「駅ナカ」「駅隣接」を含めると、色々な種類の駅店舗が存在しますが、駅ナカ店舗も玉石混合で「これは!」と言う店になかなか巡り当たりません。過去に「TAKAの交通論の部屋」で取り上げた「 TXAVENUE守谷 」やJR東日本の「ecute・Dila」など幾つかの店舗を取り上げました。

 前回の「TXAVENUE守谷」に続いて、今回は東京メトロの「エチカ表参道」と東武鉄道北千住駅の駅ナカ店舗を取り上げます。この2店舗は正しく「正反対」の駅ナカ店舗であると言えます。しかしこの両店舗は全てにわたり正反対ではある物のどちらも「適材適所」「TPO」と言う側面で見ると正しく理想的な店舗であると言えます。
 今回は正しく正反対の構内店舗2点の形態を見比べる事で、「駅ナカ店舗に必要なTPO」がどれほど重要か、成功するには「適材適所」を配する事がどれほど重要か、と言う側面から、正反対の駅ナカ店舗を比較してみたいと思います。


 ☆ これぞフランスのメトロの駅か?「エチカ表参道」

 先ず最初は東京メトロが作った初の大型駅ナカ店舗である「エチカ表参道」を尋ねてみました。
 (参考資料: 東京メトロニュースリリース ・「 エチカ表参道 」HP・ フードリンクニュース 05/10/09版 )
 表参道は丁度06年2月11日に同潤会アパート跡地を森ビルが再開発した 表参道ヒルズ がオープンし、元々表参道の並木道にブランドショップ等が集まり東京でも極めて高級イメージの有る地域でしたが、それに高級ショッピングモールとも言える表参道ヒルズが完成し、「東京のシャンゼリゼ」と言ったら大げさかも知れませんが、東京で有数の高級かつ欧風の雰囲気が会う町に磨きが掛かった状況に変身しています。
 その表参道にオープンした駅ナカショップが「エチカ表参道」です。駅ナカショップの場所を捻出するのが難しい地下ですが、表参道駅の駅改良工事と合わせて店舗設置工事を行い、1,300㎡の広さを作り出し26店舗が進出しました。但し地下の制約ゆえラッチ内の完全駅ナカに進出できたのは紀伊国屋が出店した「OMO KINOKUNYA」など数店に限られ大部分の店はラッチ外に有ります。
 エチカ表参道には「資生堂・ワールド・ワコール・紀伊国屋・ファンケル・資生堂パーラー」等の比較的高級イメージが高く女性向けの感じの店が多く出店していますが、エチカ表参道の実質的なメインの核店舗は クリエイト・レスオランツ が展開しているフードコート「 MARCHE DE METRO 」です。
 私の場合「駅ナカ店舗を注目している」と言っても流石にメインはグルメ関係の店をメインに見ているので、流石に女性向けの物販店を見に行く事もできないので、フードコートの「MARCHE DE METRO」を訪問する事にしました。

 此の頃お気に入りの「エチカ表参道」の「MARCHE DE METRO」に取材に訪れたのは5月13日4時過ぎでした。平日の食事をするにはチョット早い時間でしたが、食事だけでなくカフェ的に使える事も出来るので、軽食方々寄って見る事にしました。(そう言いながら食べたのは軽食ではないが・・・)

  

左:「MARCHE DE METRO」入口  右:「MARCHE DE METRO」店内


 店は正しくフランスのカフェみたいな雰囲気です。伊達に「メトロ」の駅では有りません。今までの駅ナカ店舗にはない雰囲気の店で奥の喫煙席などは照明を少し落として居て椅子などもワングレード上の物が置いてあり、JRの駅ナカ店舗とは一味違う感じです。此れも「表参道」と言う場所の雰囲気にバッチリ合っている感じです。

  

左:「MARCHE DE METRO」内のビストロ 「 Bistoro LYON 」  右:「MARCHE DE METRO」内の 「CAFE de METRO」


 「MARCHE DE METRO」の中はカフェテリア型式になっていて、フランス料理のビストロやイタリア料理のパスタ店など計6店舗は行っています。カフェテリア型式はTXAVENUE守谷など他の駅ナカ店舗にも有りますが、此処の特色はワイン等の酒が普通に呑める事です。確かにフランス料理やイタリア料理にはワインが付き物です。その点を考慮してでしょうが、軽食が出来る+軽くお酒も飲めるという店のコンセプトは提供する料理と比較して考えても上手くマッチしていると言えます。

  

左:「Bistoro LYON」のビーフステーキライス  右:「Crepe Sucre」のガレット


 入って「取りあえず軽食を」と思いましたが、店を見ているうちに食欲が湧いて来て本物の食事を取ってしまう事にします。まして土曜日夕方でその日の仕事も終わっているので一杯引っ掛けてしまう事にします。メインの料理を扱っている4店舗(ビストロ・パスタ・クレープ・フォー(ベトナムの麺)がメイン)の前に行ってしまうと流石にいろいろ有って迷ってしまいます。その中でビストロから肉料理の「ビーフステーキライス」とクレープ店から「サーモンクリームのガレット(そば粉のクレープ)」と白ワイン・シャンパンをそれぞれ1杯ずつ頼む事にしました。
 頼んで暫くすると料理が出来てきますが、「ビーフステーキライス」も写真を見ればわかるように一皿盛ですがランチで有っても十分なかなりの量です。肉が「チョット硬いかな?」と言う感じでしたが流石フランス料理のビストロだけあってソースもいい味で、それ以外は不満の無いいい味です。その様な上質な料理でも御値段はこれで880円です。流石にこれにはビックリしました。其れこそ1000円有れば普通の人であれば十分食事が出来ます。表参道でこの雰囲気でこの御値段の店は他にはないのではないでしょうか?表参道のハイソなイメージを壊さず、しかも値段は無理のないリーズナブルな値段です。これは非常に良心的な店であると言えます。

 今まで色々な駅ナカ店舗を訪ねてきましたが、JR東日本のecuteも比較的上級志向の店造りを行ってきていましたが、ecuteの場合は「作りも中身もチョット高級」と言う感じで大宮・品川と言う場所に不似合いの側面も感じられました。しかし「エチカ表参道」そんな感じが微塵とも感じられません。作った場所自体が東京で位置にを争うハイソな場所である表参道に、パリを模した雰囲気の店を作り高級感を出しつつ中身はコストパフォーマンスの高い比較的リーズナブルな物を提供するというコンセプトは「街にあいつつ」「街にない物を提供する」と言う店では素晴しい発想であると思います。これであれば街に合いつつ街に競争相手が居ないしかも不特定多数の人が通る街で嫌われない商品構成であると言えます。
 多分「エチカ表参道」は企画を自前で行ったJR東日本のecuteとは異なり、企画・店舗誘致等の部分で外部の力を借りていると推察します。(普通はノウハウの乏しい第1号の形態ならそうする)多分プロの協力を頼った事が店のコンセプト作りにプラスに作用して、街と合った「駅ナカ店舗のTPO」を構成する事が出来て「適材適所」にはめ込む事が出来たのだと思います。
 その様な意味から考えて「エチカ表参道」は素晴しい駅ナカ店舗であると思います。但しメトロの場合はこの次に出店する時が問題です。駅は良い所に有るが場所が地下でなかなかいい駅ナカ店舗の立地が無いと言う制約があるので、次何処に出すかは非常に難しいと言えます。只この「エチカ表参道」のコンセプトをそのまま移植できる街の雰囲気の場所は東京には殆ど有りません。(強いて言えば銀座か?)上野や浅草にこの様なパリを思わせる駅ナカ店舗を作ったら完全に場違いです。「表参道に合うコンセプトの駅ナカ店舗」を作ってしまったが故にコンセプトが使い捨てになってしまうと言うのが、東京メトロの駅ナカ事業の中で第1号の「エチカ表参道」の最大の欠点であると思います。でもその欠点ゆえに「エチカ表参道」は成功したという店では痛し痒しであると言えます。


 ☆ 此方は「帰宅時のサラリーマンの味方?」東武鉄道北千住駅ナカ店舗

 同日エチカ表参道を訪ねた後、木場の医者に寄った後第二の目的地である北千住の駅ナカ店舗に向います。此処は前に一度所用で夜TXから乗換て東武のダイヤ改正後の状況を見に行った後夕食の場所を探してフラフラした時に発見した店です。
 北千住駅の駅ナカ店舗の特徴の第一は「素晴しい立地」と言う点に有ります。東武鉄道北千住駅自体は東武鉄道から都心に向う最大級のターミナル&乗換駅であり、駅ナカ店舗の立地条件としては十分条件を充たしています。加えて北千住の場合1階が急行線ホームで3階が日比谷線・緩行線ホームで乗換に2階を通過すると同時に、TX・JRの乗換改札がコンコースの2階に有る為にそのコンコースの広いスペースと相まって駅ナカ店舗の立地条件としては素晴しい状況に有ります。
 くわえて第二の特徴は「統一された駅ナカ店舗」では無いと言う店です。駅の構造的に千代田線乗換通路の前や2階コンコース等に分散して存在しますが、「此処に店を置ける所に置いた」と言う民鉄駅ナカ店舗の一番古い形態で、統一したブランド名称も案内も有りません。その為 東武鉄道HP を見ても何も案内が出ていません。それがecute・エチカ・TXAVENUE等の最新の駅ナカ店舗と異なる点です。しかし立地条件に有った駅ナカ店舗の構成(気兼ねなく寄れる飲食店・本屋・ampm(ホーム)等がある)がそのマイナスを補って余りあると言えます。

 その様な「古典的であるがTPOが合った適材適所の駅ナカ店舗」である東武鉄道北千住駅ナカ店舗を5月13日8時過ぎに訪問しました。時間的には土曜日の8時過ぎなので、通勤需要が多い駅の駅ナカ店舗としてはマイナスの時間帯です。
 又本当は物販店を含めて一通り見たかったのですが、訪問した時間が9時過ぎでお腹も空いていたので目を付けていた飲食店2店舗(お好み焼きの「染太郎」・回転寿司の「三崎港」)を梯子するだけにしてしまいました。只それでも不利な時間訪問したのにかなりの賑わいだったので、北千住の駅ナカ店舗のポテンシャルの高さを見ることが出来ました。

  

左:北千住駅2階のお好み焼き屋「染太郎」  右:北千住駅2階の回転寿司「三崎港」


 北千住駅2階コンコースは土曜日の9時頃でもかなりの人が出ています。やはり乗換のメイン動線だけあって通行人は非常に多く店を置くには良い立地です。其処の両サイドにお好み焼きの「染太郎」・回転寿司の「三崎港」が有りますが、風景は駅の施設になじんだ感じで極端に目立っている訳では有りません。
 しかし店の外観に個性が乏しくても、お好み焼き屋「染太郎」から流れてくる「音と香り」にはビックリしました。店の中でお好み焼きを焼いていてその音と香りがコンコースまで流れてきて通行人を誘惑します。この誘惑は「店の雰囲気」とか「外観」などとは違い通行人に直接作用します。最初にこの駅ナカ店舗に惹かれたのもこのお好み焼きの「音と香り」でした。この「音と香り」に依る演出は非常にポイントが高いと言えます。

  

左:お好み焼き屋「染太郎」店内  右:「染太郎」のオム焼きそば


 先ずは染太郎に入りお好み焼きを食べてみます。この店はお好み焼きとの店といえども色々な物を取り扱っています。その為夜になれば「ビールとつまみで一杯」と言う居酒屋的使われ方も良くされている様でこの日もその様な客も散見されます。通勤客が主体となり利用される駅の場所である事を考えるとこの様な店が有る事は「労働者のオアシス」とも言える良い状況を作り出しています。
 此処ではチョット軽めの物を食べたかったので、お好み焼きではなくオム焼きそばを注文します。オム焼きそばチョットソースの味が濃い焼きそばでしたがなかなか味が良く美味しかったです。
 でもこの店は味も大切ですが、「通勤客主体の場所に居酒屋的な店が有る」と言う存在が大切であると言えます。其れこそ「帰りに一杯」と言う時に駅から出なく「チョット飲む」と言う形態が出来るのは一般的な利用者である通勤客にしてみたら大きなポイントであると思います。

  

左:回転寿司「三崎港」店内  右:回転寿司の鮨とビール


 「染太郎」で食事をした後、向かいの回転寿司店「三崎港」に向います。「三崎港」は「回転寿司形態」の店と普通の寿司屋の形態で「皿の柄で金額を示す形態」の店が有りますが、北千住駅ナカの場合は「回転寿司形態」です。(私の住んでいるマンションにも普通店舗形態の「三崎港」が入って居るので身近といえば身近なイメージが有る)
 しかし北千住の駅ナカで回転寿司店を見たときには正直って驚きました。今まで「何で駅ナカに吉野家(今は赤羽に有る)・松屋」が無いのだろう?」と考えた事は有りますが、流石に「駅ナカに回転寿司」までは考えませんでした。しかし今の巷での「回転寿司ブーム」を見ると駅ナカに回転寿司屋が有っても不思議では無いのかもしれません。
 客層的には「一人の客:2人連れの客が半々」と言う状況で、利用客の約3分の1がアルコール類を注文していました。その点から見たら「鮨を食べる」と言う事が主目的の客が殆どと言う事だと思います。確かに目の前に廻ってくる物を自分のペースに合わせて取れば良い回転寿司ですから、「チョット小腹が減った」と言う場合から「食事をちゃんとする」場合まで色々なニーズに合わせられるのかもしれません。又夜のこの時間に多かったのが御土産の需要です。確かに「チョット飲んだ時に家に持って変える御土産」の定番は御寿司です。回転寿司といえども一廉のネタを使っています。(下手な寂れた街の寿司屋より良いネタだ)その点から考えても「御土産需要」は見逃せない物があると思います。

 この様な店の状況から考えると、東武鉄道北千住駅の駅ナカ店舗は結果論なのかもしれませんが「適材適所」が当てはまっていると言えます。悪く言うと「何処にでもある店」と言う事が出来ますが、よく言えば「その何処にでもある店が通勤客の多い駅ナカに欲しかった」ので、「最高の適材適所」と言う事も出来ます。
 この2店舗は普通の食事の需要だけでなく、チョットした御弁当需要(染太郎ではおにぎり等も売っている)から、居酒屋的需要や夜の家庭への御土産需要まで、一般的な鉄道利用客や通勤客が「手に届く範囲のニーズ」を上手く押えていると言えます。その点で言えばこの駅ナカ店舗の店の配置は大正解であると言えます。


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 今回正しくコンセプトが正反対の2つの駅ナカ店舗を訪問しましたが、どちらもその駅の利用者のニーズを上手く捕らえた上で、駅の雰囲気・状況に合わせた上手い店造りであると言えます。
 只どちらも駅ナカ店舗の成功例であると言えますが、其れが「エチカ表参道」の場合は「計算された上で狙って作られた店舗」で利用者のニーズを捉え周りの雰囲気に有った店を作り出したが、東武鉄道北千住の場合「計算高く企画した上での店舗計画」では無い物の、東武鉄道の企画者の「以心伝心?」が利用者のニーズを絶妙に捉えた店舗誘致が出来たと言う点で、その企画の仕方は正反対で有ったと推察する事が出来ます。
 しかし大切な事は「経過」より「結果」です。その点で言えば「結果」はどちらも「満点に近い高得点」と言う事が出来ます。その点から言えばどちらの駅ナカ店舗も「駅ナカ店舗の成功例」と胸を張ってもいいと言えます。

 けれども同時にこの2つの駅ナカ店舗の成功は、駅ナカ店舗の作り方の難しさも合わせて示しています。間違いなく言える事は「エチカ表参道が北千住に有り」「北千住の染太郎と三崎港が表参道に有った」場合はどちらも大失敗になるであろうと言う事です。
 つまりは駅ナカ店舗のコンセプトは、その駅の「施設・雰囲気・利用者の客層・周囲の環境」等に合わせて別にオーダーメイドをしないと成功はおぼつかないという事です。それは確かに駅の利用客や沿線の環境を見ても「都心・東京西部・東京東部」を大雑把に分けて見ても路線や駅の雰囲気だけでも大きく違います。其処に画一的な店舗を持ち込んでも確かに成功しないでしょう。
 そういう意味では「エチカ表参道」「東武鉄道北千住駅ナカ店舗」は確かに「駅のTPO」に合った「適材適所」の店舗を配置し成功したという事が出来ます。と同時にこの2つの駅ナカ店舗は「成功する事の困難さ」もあわせて示した「駅ナカ店舗成功への方策のモデル例」と言う事が出来るのではないでしょうか?





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