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「ハイブリッド」はそんなに素晴らしいのか?

−小海線を走る世界初の「ハイブリッドトレイン」を見て−



TAKA  2007年08月26日




「在来気動車キハ111系→ハイブリッド気動車キハE200系」の進歩は劇的か?@甲斐小泉


 ※本文は「 交通総合フォーラム 」「 TAKAの交通論の部屋 」のシェアコンテンツです。

 今年も本当に暑いですね。確かに「夏は暑い」と言うのは当然ですが、私が子供の時(約20年前)に比べたら明らかに暑くなって居ます。昔はクーラーが無くても生活出来ましたが今は夏にクーラーが無ければ生活出来ません(本年夏の初めに部屋のクーラーが故障して大変だった・・・)。何故これだけ暑くなったのか?東京では「ヒートアイランド現象」が進んだとも言われて居ますし、世界的にも「二酸化炭素等の温暖化ガスによる地球温暖化」が進んでいると言われて居ます。気候の変化等に限らず、この様な人間の営みに起因する地球の環境破壊は確実に進んでいる事は間違い有りません。
 と言うわけで、「環境問題」は日本に限らず世界的に非常に注目を集めていて、同時に早急に対応を求められている問題で有る事は間違い有りません。その為今産業界では「環境にやさしい」「温暖化ガスの排出が少ない」等々の新しい技術が続々と開発されてきています。
 その世間の流れは鉄道業界に置いても変わりません。特に JR東海がN700系登場時に宣伝 して居るように、鉄道は自動車等の個別輸送機関だけでなく飛行機・バス等の他の公共交通機関に比べても省エネルギーでしかも温暖化ガスである二酸化炭素等の排出が少ないと言うメリットが有る事もあり、鉄道は今「環境にやさしい省エネルギーな交通機関」として世間的にも注目を集めて居ます。
 その省エネルギーかつ環境にやさしい鉄道の中でも、電気駆動の電車・電気機関車に比べてエネルギー効率・排出ガス・騒音等で劣る内燃機関使用のディーゼル車に新しいシステムとして、世界初の「ハイブリッドディーゼル車」がJR東日本によって開発され、この度八ヶ岳の麓を走る「日本最高地点・駅が有る」小海線を「八ヶ岳高原列車」として走る事になりました。
 その為「青春18キップ」を持っていたので、これを利用し運行開始後約1ヶ月が経った8月の後半に小海線に乗り「世界初のハイブリッドディーゼル車」を試乗する事が出来ました。

 (ハイブリッドトレイン キハE200系の概要について)
 「 いよいよ世界初のハイブリッド鉄道車両が営業運転を開始します!! 」(JR東日本7月3日発表プレスリリース)
 「 ハイブリッド車両『こうみ』 」パンフレット(JR東日本長野支社発行)※左のリンクは駅で配っていたJR東日本長野支社のパンフレットをスキャンした物です。ハイブリッド車両の参考資料として適当と考え引用致しました。

(1)ハイブリッド気動車キハE200系とは?

 今回世界で始めてJR東日本が開発したキハE200系ハイブリッド気動車の特徴は、端的に言うと「ディーゼルエンジンで発電→モーターで駆動」を基本にして、それに「モーターによる電気回生」と「バッテリーシステムによる電気蓄積」を組み合わせて、「ディーゼルエンジンによる発電」「ブレーキ時の電気回生」により発生した電気を「バッテリーで蓄積」しながら効率的にエネルギー使用を出来る様に試みたシステムであると言う事が出来ます。

  
左:ハイブリッド気動車キハE200系  右:在来気動車キハ111系

 上の写真は小海線を走る「ハイブリッド気動車キハE200系」と「在来気動車キハ111系」の側面を比較した写真ですが、システム的には在来気動車は「ディーゼルエンジンで回転力を発生→変速機で変速→車輪を駆動して走る」と言う機械的駆動を行う為車両の床下にエンジン等の機器が有るだけですが、ハイブリッド気動車は(写真ではラジエーター側が写っているので分かり辛いが)エンジンに発電機が直結していて、コンバーター・インバーター等の主変換装置・制御装置が床下にあり、屋根上にはバッテリーである主回路蓄電装置が積んで有り、それらの機材が床下・屋根上に置かれている為に普通の気動車に比べて床下・屋根上に機械類が混みあって置かれて居ます。
 又そのハイブリッドシステムは、運転席の液晶モニターで見る事が出来ます。下の写真はキハE200系運転時に運転台のモニターを撮影した物ですが、モニターの左側のエンジンにコンバーターが付き右側の主電動機にはインバーターが付きその間に2つの蓄電池と補助電源装置(SIV)が付き其々が運転手の力行ノッチ・ブレーキノッチの操作に基づき、其々の動力源間で最適な組み合わせを探し動力の供給を行い加速・減速を行うようになって居ます。

  
運転台モニターのハイブリッド情報 左:駅停車時のアイドリング状態  右:エンジン使用の力行状態

 それが分かりやすく表示されているのが、キハE200系車内に有るエネルギーモニターです。さすがに未だ試験運用・宣伝運用的な側面が強い事も有り、ハイブリッドシステムが分かり易い様に車内に液晶のエネルギーモニターが設置されていて見れば誰にでも「どの様な形で運転されているか」分かる様になっています。
 そのモニターが示した状況について撮影したものです。これを見ると車内のモニターは簡単な模式図でエネルギーの流れを示しているだけですが、これでも十分にハイブリッドシステムのエネルギー(要は電流)の流れが分かる様になっています。
 基本的にキハE200系は下の写真の①〜④の流れで列車を動かし停車させます。停車時には①サービス用の補助電源(SIV)をバッテリーで駆動させ、発車時には②バッテリーの電源でモーターを動かし発車させ、加速時には③バッテリーの電気+ディーゼルエンジンで発電した電気でより強力にモーターを動かし、ブレーキ時には④モーターを逆に使い回生で電力を発電しバッテリーに充電する(それで制動力が不足する場合はエンジンブレーキを併用)すると言うのが、キハE200系のハイブリッドシステムの基本的構造であると言えます。

  
車内のエネルギーモニターが示すエネルギー使用状況 左:①バッテリーでの補助電源(SIV)駆動状況 右:②バッテリーでの発車状況

  
車内のエネルギーモニターが示すエネルギー使用状況 左:③バッテリー+エンジンで駆動の力行状況  右:④減速による発電とバッテリーへの充電状況

 JR東日本のプレスリリースによるとキハE200系はハイブリッドシステムにより、在来車のキハ110系に比べて「燃料消費量の低減・窒素酸化物(NOx)・粒子状物質(PM)を約60%低減・エンジン騒音の低減:約30dB(駅停車時アイドリングストップ)」改善する事が出来ると言って居ます。これはディーゼルエンジンを「発電用に限定」し最高効率の運転が継続的に出来る様に運転し、発車時等のディーゼルエンジンにとって燃費・排気ガス・騒音にマイナスな高負荷運転をする場面にはハイブリッドシステムのメリットでバッテリーに蓄えられた電気で充当する事に寄り、この様な環境に優しい気動車を作る事が出来たのであると言えます。
 確かに今小海線で運用されているキハ111系等の キハ100系・キハ110系系列 は、既に登場以来約17年経過していますが「高出力直噴ディーゼルエンジン+高効率変速機」「軽量車体・ボルスタレス台車」「電気指令式ブレーキ採用」等の新技術を使い、旧国鉄型気動車を使っていたローカル線の輸送を改善させた立役者であり素晴らしい車両で有ると思います。しかしキハE200系はシステムの根本にハイブリッドシステムを用いて、根本的に違う発想のシステムが使われていてキハ100系系列と比べると「大きな進歩」を果たしていると言えます。
 果たしてその革新的技術はどれぐらい素晴らしいのか?期待に胸を膨らませてキハE200系を試乗してみる事にしました。

(2)ハイブリッド気動車キハE200系に乗ってみて @小海線 小淵沢〜野辺山間(小淵沢14:02→14:38野辺山14:48→小淵沢15:22)

 今回ハイブリッド気動車を試乗に行ったのは8月25日の土曜日でした。丁度「青春18キップ」も2日分しか使っておらず「18キップの有効利用」が命題として浮上していたのに加えて、朝10時過ぎまで新百合ヶ丘で仕事の打ち合わせがあり出かけられる範囲が限られて居ましたので、近場で夏休み前に廻る事が出来なかった小海線ハイブリッド試乗に向かう事にしました。
 立川・高尾と乗り換えて甲府まで普通電車で来ましたが出足が遅かった事が響いて間に合わなくなり甲府〜小淵沢をあずさ17号でワープして小淵沢に着いたのは13:58でハイブリッドの八ヶ岳高原列車の発車4分前でした。取りあえず何枚か写真を撮って列車に乗り込みます。確かに発車前の車内ではディーゼルカー特有のアイドリング時のカラカラ音もせず、「JR東日本の宣伝」通り騒音の少なく静かな感じはしました。
 暫くすると発車時間になり発車します。発車の時にはバッテリー+モーターだけでスタートする為に非常に静かで、目を瞑らされて「これは電車です」と言われても分からない感じがします。ここがハイブリッドの最大の特徴かもしれません。しかし発車後直ぐに中央本線と離れ右に大きく曲がり八ヶ岳と「風林火山」と稲穂で書かれた稲田を見る様になると急勾配に掛かり、ディーゼルエンジンのエンジン音が大きく唸り出します。急勾配も多い小海線ですが、33‰等の急勾配を上るとなるとバッテリーに電気もフルに使い発電機直結のディーゼルエンジンも全開です。感じ的には急勾配を上るのにチョット力強くは見えましたが、この様な急勾配になると音を聞いていると普通のディーゼル気動車と変わらない感じがします。

  
左:小淵沢駅で発車を待つキハE200系「八ヶ岳高原列車」  右:車窓の八ヶ岳と「風林火山」とデザインされた稲田

  
左:観光客でごった返す折返しの野辺山駅(客の中にツアーの旗を持つ人が居るのに注目)  右:高い所を走るからハイブリッドの意味があるのか?@JR最高駅の野辺山

 途中駅の甲斐小泉で上りのキハ111系と交換した後、ハイブリットトレインは只ひたすら八ヶ岳の麓の高原地帯を目指して坂を上って行きます。乗車率は60%〜70%程度で混んでいる程でも無い事も有り軽快に清里・野辺山を目指して登って行きます。
 八ヶ岳高原の麓の有名観光地である清里に着くとホームには多数の乗客が待って居ます。その客の多くはカメラを構えて居ますが、客層が大幅に異なり「鉄ヲタ」系の人達(如何も集団で見に来た様だ)が3分の1に対して残りの3分の2は「如何見ても観光客」と言う人達です。その為清里で乗車率は100%を越えるほどになり大幅に混雑して、鉄道最高地点を通り過ぎ終点の野辺山を目指します。野辺山に着くと降車客に入り混じり多くの乗車客が入れ違いに乗ってきます。駅前を見ると観光バスが2〜3台停まっていて、観光会社の旗を持った添乗員が「清里で降りてください」と乗客に連呼していました。如何もハイブリッド列車への試乗がツアーに組み込まれている様です。小海線でのハイブリッドトレインの試験運行には色々な意味があるとアナウンスされていますがその一つに「観光への寄与」と言う話がありましたが、この状況を見るとその意味は大きいのかもしれません。
 取りあえず野辺山からの折返し列車に乗り小淵沢に戻る事にしましたが、やはり観光客で車内はあふれかえって居ます。(私も世間的にはそう見えるだろうが)鉄ヲタ系の試乗客もそれなりに居る感じですが、それ以上に観光客が多い感じがします。只それらの観光客は清里で降りてしまい、又70%〜80%の乗車客に戻り小淵沢へ戻って行きます。
 今度は小淵沢→野辺山間の行きの逆で完全に下り坂一辺倒になります。ですから一旦発車してしまえばその先は自然と加速してくれる為大幅な力行は要らなく運転する事が出来ます。その為今度はディーゼルエンジンは殆どアイドリング状態で、発電とバッテリーへの蓄電で速度を抑速しながら坂を下って行きます。又それで制動力が足りなくなるとエンジンブレーキを併用して要るようです。ここは「エネルギーの有効活用」と言う意味でハイブリッドの面目躍如と言えるでしょう。

  
キハE200系の車内 左:運転台 中:車内 右:出入り口

 小淵沢に着いた後キハE200系は、車庫の有る中込への回送を兼ねて15:33発快速中込行き臨時列車として運行されるため、未だ帰りの列車16:17発ホリデー快速ビューやまなし号まで時間が有った為、今度は観光客と鉄ヲタの居なくなった車内を堪能しつつ甲斐小泉まで行く事にしました。
 システム的にはハイブリッドシステムと言う今までのキハ111系とは違うシステムであり、「日本にも世界にも無い車両」と言えるキハE200系ですが、車内はキハ111系とは流石に製造年の差が有る分ユニバーサルデザインと言う点で違うとは言えますが、基本的には近年のJR東日本の車内デザインと大差がなく只普通の「新しい車両」と言う感じです。運転席も外から見ましたが見た目は「ごく普通の電車」と言う感じで、車内・運転席共に「ハイブリッドだからこれが違う」と言う物は有る意味当然ですが有りませんでした。やはりキハE200系は「ハイブリッドシステム」こそが肝心要なのであり、それ以外は普通の新しい車両だと言う事を改めて感じさせられました。

(3)ハイブリッド気動車はそんなに劇的かつ革新的で素晴らしい車両なのだろうか?

 今回世界初のハイブリッドトレインであるキハE200系に試乗する事がで来ましたが、確かに「比較的新型」の気動車であるキハ111系と比べても、確かに「環境に優しい最新技術で出来た車両だな」と感じさせられました。それは小淵沢で見たキハ111系がエンジン始動時に黒煙を噴出した時に感じさせられました。確かに昔より良くなったと言えどもディーゼルエンジンは始動時・高負荷時等に良く黒煙を出します。これは車も一緒である意味避けられないものであると言えます。しかしその黒煙には有害物質の窒素酸化物(NOx)・粒子状物質(PM)が多く含まれて居ますから防げるに越した物ではありません。
 その点キハE200系は、根本のディーゼルエンジンに環境に優しいとして自動車を中心に使われている コモンレール式 ディーゼルエンジンにエネルギーをバッテリーで蓄えられる蓄電設備とエネルギーが比較的蓄えやすい電気駆動をハイブリッドシステムとして採用した事で、環境に優しいコモンレール式ディーゼルエンジンを環境・燃費負荷の少ない定率で動かす事が出来る事が可能になったと言う点で、この様に環境に優しい技術が作り出されたと言えます。
 しかしこのキハE200系の技術は果たして「劇的かつ革新的な技術」なのでしょうか?実を言えばそうでは有りません。確かに鉄道としては「世界初のディーゼルハイブリッドトレイン」ですが、実を言えばどれも既に採用されている技術であると言えます。コモンレール式ディーゼルエンジンは世界の多くの自動車に既に採用されていますし、ハイブリッドシステムも車では トヨタプリウス が世界初のハイブリッドカーとして登場したのは10年前であり、キハE200系とプリウスのハイブリッドシステムを見比べると概念・システムはほぼ同じであり、ハイブリッドと言う技術だけを見ればキハE200系は「車では10年前に実用化された物がやっと鉄道でも実用化で来た」と言うものであると言う事が出来ます。まして電気の駆動系はハイブリッドシステムにエンジンエネルギーを電気に転換するシリーズハイブリッドを採用している為、モーター・電気回路等に電車の技術をそのまま応用しています。
 そう言う意味ではハイブリッドトレインであるキハE200系は「今の段階で他でも使われている技術を鉄道に応用した」と言う意味で、車の技術を鉄道に応用したと言う点で新しい物ですが、技術的には特に目新しいものはありません。逆に言えば既存技術を寄せ集めて鉄道にとって新しいシステムを作り出したと言う事がモジュール型の技術開発であると言う事が出来ます。この様な技術何処かで今注目を集めて居ませんか?そうです「既存の技術を集めて作り出した新しいシステム」と言う点ではJR北海道のDMVが当てはまります。

  
日本独自の先進的気動車技術 果たしてどちらが劇的かつ革新的なのか? 左:JR東日本のハイブリッド気動車  右:JR北海道のDMV

 前にJR北海道のDMVに関しては「 「両刀遣いのサラマンダー」は地方ローカル線の救世主たり得るか? 」で取り上げましたが、DMVは「マイクロバスに軌陸車のシステム・油圧制御にスタットレスタイヤ」等、今世間で一般的に使われているシステムを使い誰もが夢見つつ失敗して来た「道路と鉄道を簡単に併用して走れるお客さんを載せるシステム」を作り上げました。そう言う意味ではDMVも「既存技術を組み合わせたモジュール型の技術」と言う事が出来ます。
 しかしJR北海道のDMVとJR東日本のキハE200系には根本的な差が有ります。それは「イノベーション(革新)が存在するか」と言う点です。
 JR北海道のDMVに関しては(工事用としては有っても)「お客さんを乗せて軌道と道路を両方走れる車両」と言うのが夢で語られていた中で既存の技術を組み合わせてその「夢」を実現化したと言う点で十分革新的であると言う事が出来ます。逆に言えばこれこそ「技術のもたらしたイノベーション」と言えるでしょう。DMVはJR北海道の独創的な発想の出来る技術陣が居なければあと10年以上実用化出来なかったでしょう。そう言う点でも大きな意味を持つ技術開発と言えます。
 しかしハイブリッドトレインのキハE200系に関しては、既に10年前に車で実用化された技術であり、しかもディーゼルエンジンで発電しモーターで駆動すると言うシステムは「 電気式気動車 」として日本でも主流にはならなかった物の1930年代から実用化されています。キハE200系は極論すると「電気式気動車にプリウスのシステムを加えた物」と言う事になります。しかも環境には優しいものの「ハイブリッドトレインが何か鉄道に革新をもたらすか?」となると、今の段階では其れは残念ながら見えません。その革新性の有無が一番大きな差で有ると言えます。
 そう言う点では表題の命題「ハイブリッド気動車はそんなに劇的かつ革新的で素晴らしい車両なのだろうか?」に関しては、残念ながらNOと言う事が出来ます。有る意味はキハE200系は環境に優しく経済的な車両であるが、劇的でも革新的でもないと言うのが、キハE200系に対する技術的な評価になると言えます。これだけ既存技術があり其れを集めて作った車両ですから、環境に対する認識の高まりと燃料コストの上昇と合わさって「遅かれ早かれ登場した車両」であると言う事が出来ます。

 しかしハイブリッドトレイン自体には未だ今後「大化けする可能性」が有ると言えます。それは無公害システムとしての「発電装置に燃料電池を採用」したハイブリッド燃料電池車の登場の可能性と、電気駆動システムを生かした「電化路線は架線からの集電で非電化路線はディーゼル駆動+ハイブリッドで走る」と言うエネルギーデュアルモードトレインとも言える列車の可能性です。
 エネルギーデュアルモードトレインは今のキハE200系にパンタグラフを付けて架線集電時に電気がモーターとバッテリーに流れるように配線を調整してあげれば直ぐ出来るシステムです。これが出来れば電化路線と非電化路線の直通時に効果が有ると言えますし、これを進めれば「駅停車時に架線からバッテリーに充電し駅間はバッテリーで走る。又非常時用に車両に最低限の発電エンジンだけ積む」と言う様な川崎重工が開発中の「 「超低床電池駆動路面電車 (LRV) SWIMO 」の鉄道版の様な「新しい簡易電化システム」が出来る可能性も有ります。その様なシステムが出来れば正しく「ハイブリッドシステムの進化がもたらしたイノベーション」と言う事になるでしょう。
 又今燃料電池ハイブリッド車に関してはJR東日本が「 NEトレイン(NewEnergy Train)を改造し燃料電池鉄道車両の試験 」と言う形で開発を進めていますが、ハイブリッドシステムの本命は有る意味此方かもしれません。燃料電池車が出来た場合環境面・エネルギー面から見ても革新的であり、車は今必死に実用化への実験をしていますがなかなか捗って居ない様であり、車より器具の置くスペースの大きい鉄道車両の場合燃料電池システム等の小型化で苦戦する可能性が低く、「燃料電池」自体は実用化が見えている段階でありそう年数が掛からず実現できる技術であると言えます。
 この技術が出来れば、例えばエタノール改質燃料電池を積んだハイブリッドトレインを開発し地方ローカル線に投入し、その燃料のエタノールは走る地方の田舎の休耕田等でエタノールの原料になる大豆等を栽培し沿線にエタノール精製工場を設置して、同時に車に関してもエタノ−ル駆動の自動車に買える等の社会全般を変えるプロジェクトが実施できれば、沿線で自分たちの使うエネルギーを作り出しエコロジーな地方交通を実現すると同時に、地方の農業・産業の活性化を図り同時に環境にも優しいトータルシステムを作ると言う壮大な構想も可能になります。こうなれば正しく燃料電池ハイブリッドトレインをきっかけにして「壮大なイノベーション」が実現できる可能性も有ると言えます。
 この様に見れば「今は在り来たりの技術の寄せ集め」であるキハE200系のハイブリッドシステムですが、今後の技術開発が進めば、(チョット大風呂敷を広げてしまいましたが)上述の様に「真にイノベーションをもたらす技術」に化ける可能性があります。今回のキハE200系の小海線での実験走行がその「真のイノベーションへの第一歩」としてのハイブリッドシステムの実験と世間へのPRの機会と考え、これをステップにJR東日本の開発が今後の更なる「イノベーションが出来る技術への発展」へと繋がる様に期待したいと思います。




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