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2010年 民鉄特急の最高峰を目指して「新型スカイライナー」出発進行!

- 京成電鉄「新型スカイライナー」の報道発表を受けて -


TAKA  2008年04月10日


果たしてスカイライナーは華麗に変身するのか?




 (1) ま え が き

 在京民鉄の中で「京成電鉄」というと、東京人にして見ると「海外旅行のスカイライナー」or「下町を走る地味な電車」というイメージが強い電車です。又京成電鉄はイメージだけでなく鉄道会社としても経営的にも地味な存在です。鉄道的には「生まれが軌道」で有る事に加え、オイルショック後に経営悪化して昭和40年代後半〜昭和60年代を経営再建に費やし、その時代の停滞が響き非常に地味なイメージが根付いて居る様に感じます。
 その京成電鉄の中で一番存在感を示しているのが「成田空港輸送」です。近年はライバルとしてJR東日本の成田エクスプレスも頑張って居ますが、それでも京成の看板列車「スカイライナー」の存在感は非常に大きい物が有ります。

 その京成電鉄の看板ともいえる「成田空港輸送」と「スカイライナー」に近々大きな変革の時が訪れます。それは平成22年度を開業目標に現在整備が進んでいる「成田新高速鉄道整備事業」による成田空港アクセスの新ルート開業です。
 平成18年2月に起工式を行った成田新高速鉄道整備事業は、此の頃急ピッチで工事が進んでおり、最近では開業後のダイヤについて「最大で毎時スカイライナー*3・新高速経由一般特急*3・京成経由一般特急*3の"3・3・3ダイヤ"」を考えている事が報道(1月11日交通新聞)など、成田新高速鉄道整備事業について色々な動きが出て来ています。
 その様な動きの中で、4月9日に又大きな動きが有りました。それは成田新高速鉄道経由で日暮里〜成田空港を結ぶ「新型スカイライナー」のデザインが発表されたことです。今回はこの事について取り上げたいと思います。

 「参考サイト」・ 京成電鉄HP  ・ 新型スカイライナーデザイン発表プレスリリース (京成電鉄HP) ・ 京成電鉄 新型スカイライナーwebサイト
        ・ 新東京国際空港(成田空港)改善に必要なのは「発着枠増便」と「成田新高速建設」か? (TAKAの交通論の部屋)
        ・ 2007年年末、「成田新高速」沿線踏破の記録 (Straphanger's Eye)
        ・鉄道ホビダス  編集長敬白


 (2) 今回公表された京成電鉄新型スカイライナー

 今回公開された新型スカイライナーの概要は下記のリンク先に掲載されている通りです。

 新型スカイライナー: デザインコンセプトボディデザイン車内デザイン概要  (新型スカイライナーwebサイトよりリンク)

 最初に Yahooニュース で新型スカイライナーのお披露目について知ったのですが、記事を読んだだけで「ひっくり返らんばかり」に驚きました。在来線国内最速160キロという「売り」については既に 京成社長のインタビュー を始め色々な所で公表されていたので別に驚きませんでしたが、記事の中の「車体デザインは世界的デザイナーの山本寛斎を起用」「特別ゲストとして上戸彩がセクシーなミニスカート姿で登場」という内容には流石に驚きました。
 新型スカイライナーのデザインコンセプトは「お客様を旅へと誘う「風」と「凛」」との事で、デザイン的に流行りの「ドーム型車内天井」「間接照明」などが採用されていますすが、山本寛斎氏デザインプロディユースという事で「奇を衒うのか?」と思いましたが、外部デザインは同じ160km/h運転をするJR西日本683系と似ている感じですし、車内デザインを見る限り「空港アクセス列車として基本的に必要な点」は既存の空港アクセス列車と大きく変わらない「基本的なつぼを押さえたデザイン」です。
 「山本寛斎氏デザインプロディユース」というのにも驚きましたが、それ以上に驚いたのは「特別ゲストに上戸彩」というのには驚きました。良く鉄道会社のイベントで、今流行りの「鉄ドル」である「 木村裕子 」「 豊岡真澄 」を呼ぶ事が有りますが、「鉄ドル」は所詮限定的マニアに任期の有るアイドルであり世間へのインパクトは弱いといえます。しかし「上戸彩」が登場すれば話は別でしょう。その世間への注目度は大きいといえます。上戸彩とのコラボは今回の新型スカイライナーの最大のヒットです。


 (3) 外部デザイナー採用で「百花繚乱」の車両デザイン?

 今回京成の「新型スカイライナー」への本気度を感じたのは、「デザイナー・プロデューサー 山本 寛斎」という異色の設定です。元々山本寛斎氏はイベント等も手がけて居ますが、基本的には世界的に有名なファッションデザイナーであり、デザインセンスは世界に通用する物が有りますが、工業製品のデザインをする感じの人ではありません。
 昔は鉄道車両のデザインはメーカー主導で決められ、建築・車などと比べるとそんなに意識される事は有りませんでした。しかし此の頃その流れが変わりつつあります。その流れを変えたのが水戸岡鋭治氏がデザインしたJR九州の特急車両群でしょう。このJR九州の特急群のデザインの評判が良く、鉄道に置けるデザインの重要性が認識され出してきて、水戸岡氏が岡山電気軌道のMOMO・和歌山電鐵のいちご電車をデザインし評判になり、小田急電鉄がVSE・MSEの2代のロマンスカーのデザインを関空ターミナルビル設計の建築家岡部憲明氏に依頼するなど、特急車両や特別な車両のデザインを外部の著名デザイナーに依頼する流れが鉄道の社会でも一般化して、近年の鉄道車両のデザインは正しく「百花繚乱」の時代に入ったといえます。

 
右:水戸岡鋭治氏デザインの岡山電気軌道MOMO  左:岡部憲明氏デザインの小田急ロマンスカーMSE

 その様な流れの中でも、今回デザイナー・プロデューサーとして山本寛斎氏を起用したのには、京成電鉄の並々ならぬ「決意」を感じました。
 今回のスカイライナーのデザインは、決して「奇を衒う」デザインではありません。しかしそれでも、京成電鉄のフラッグシップトレインを造る以上没個性化しては意味がありません。「奇を衒わず、没個性化せずに、その存在を主張するデザインを造るとなると、並大抵のデザイナーでは難しいといえます。しかも空港アクセス特急ですから「世界に通用するデザインとネームバリュー」が必要です。
 そこで「建築や工業性品を取り扱うデザイナー」を外して、鉄道車両デザインの「百花繚乱」時代でその存在をアピールする個性を出しつつ、世界的に知名度の有るデザイナーの山本寛斎氏を採用する事でネームバリューを獲得した、今回の京成電鉄のデザインコンセプトは高く評価しても言いと思います。


 (4) 2010年 新型スカイライナーと成田新高速開業で京成は変身するのか?

 この様に、私は今回の「新型スカイライナー」は、その発表された中身に非常に驚かされると同時に、京成電鉄の変化と決意を感じる事が出来ました。
 確かに平成22年度の成田新高速鉄道開業により、東京の国際空港で有る成田空港へのアクセスは大きく変わる事になります。その主役は成田新高速鉄道の第二種鉄道事業者になる京成電鉄ですが、既にライバルのJR東日本が先手を打って E259系導入 を発表するなど、成田空港アクセスに対する競争はヒートアップしつつ有ります。
 その様な競争の中で今回発表された新型スカイライナーは、色々な要素で京成電鉄に必要な「成田空港アクセス競争で勝ち抜く為に必要な決意と変化」が備わりつつ有る事を、世間に示したという事が出来ます。

 今回の新型スカイライナー発表で目立ったのは「デザイナー・プロデューサーとして山本寛斎氏を起用」「特別ゲストとして上戸彩を招く」という点ですが、先ずは国土交通副大臣を招いてこの様な盛大は デザイン発表 を行う事自体に、社長の定例記者会見で新型車両を発表したJR東日本と比べて、京成電鉄の意気込みを感じる事が出来ます。
 しかも鉄道車両というデザイナーとして未知の分野に、世界的デザイナー山本寛斎氏を引きこむ事が出来た事、特別ゲストとして上戸彩を招くほどの企画力が有るというのは、京成電鉄の「大きな変化」で有ると感じました。
 (大変申し訳有りませんが)京成電鉄というと地味なイメージが強く、これだけ派手で目立つアピールが得意な会社とは思って居ませんでした。これは実状としてそんなには間違えていないと思います。しかし鉄道業界でも「勝ち組」と「負け組」が明らかになりつつ有る昨今、まして競争環境下で巨額の投資を迫られる京成電鉄に取り、成田新高速プロジェクトは「社運を賭けた一大プロジェクト」です。
 競争環境下で競争に勝ち、社運を賭けた巨大投資を成功させるには、通常的手法では上手くは行きません。ブレークスルーをする事が必要ですし、会社自体も大きく変化しなければ生き残る事が出来ません。
 そういう意味では、成田新高速プロジェクトは京成電鉄に取り「危機では有ると同時にチャンス」といえる物だと思います。其処で不特定多数の流動客が利用する「国際空港アクセス」で競争に勝ち抜くには「目立つ事」も重要な要素です。今回京成電鉄は新型スカイライナーで「会社の変化」を感じると共に「競争環境下で成田新高速鉄道をピンチからチャンスに変える」力が有る事を示せたと思います。
 今後もっと成田新高速鉄道プロジェクトに関しては、色々な事が明らかになるでしょう。その中でどの様な「サプライズ」が登場するか?これだけ変身しヤル気と決意を感じられる京成電鉄の今後におおいに注目だなと今回改めて思いました。




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