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夜 行 高 速 バ ス 炎 上 事 故 の 「 幸 運 」 と 「 不 幸 」 と は ?

−JRバス関東の夜行高速バス「青春メガドリーム号炎上事故」について考える−



TAKA  2009年 03月 22日



巨大な輸送力でツアーバスに対抗する「期待の星」の筈が・・・@東京駅


 ☆ ま え が き  −日本最大のバス「メガライナー」の炎上事故の概要−

 近年バスに関しては人為的な交通事故は色々発生して居ますが、車両の性能向上・整備技術の向上等が要因となり、大きな車両の事故は昔ほど聴かなくなったような気がします( 実際バスの事故は10〜12年に急増後ほぼ横ばい、車両単独事故はバス事故の数% )。その中で事故の規模の大きさで世間を驚かせるバス炎上事故が発生しました。それがJRバス関東の大型バスメガライナーの炎上事故です。
 この事故に関しては、事故の日の朝のラジオでも報道していましたし、午前中に寄った顧客先のバス会社でも話題になって居ましたが、ニュースで全焼の写真を見て「真っ黒に焼けてしまった」その状況に流石に驚きました。
 メガライナーはドイツ・ネオプラン社製の大型バスで、2階建てのバス長さが14.99m・定員84人と、現在日本で運用されて居る最大級のバスです。
 このバスは2000年に試験導入され、その後2002年から昼行高速バスで有数の「高利用路線」で有った東京駅〜つくばセンター線に投入されましたが、2005年のつくばエクスプレス開業を受けて、つくばセンター線から撤退し、その後その輸送力を生かして東京〜大阪間の「青春メガドリーム号」に投入され、低価格が受けて好評を得て居ました。

 その様な「好評を得て運行されていたバス」でしたが、元々ドイツネオプラン製と言う「海外製品」という事から、普通の国内メーカーバスを運行するのと異なる(特に整備上の)苦労が有ったと言うのは容易に想像出来ます。又メガライナーのメリットで有る「大きな輸送力」をもたらす大きなボディサイズは、日本国内標準を越える15mのボディ長から運行経路等で制限を受けると同時に説く別な許可が必要等と運行上に制約が有るため、運用する立場で考えれば制約が多く使い辛いバスで有ると言えます。
 その様な特殊なバスですが、2008年5月には日本に有る4台のバスの内1台が炎上事故を起こす(原因はエンジンブローと言う説が有力)事が有った為、車両面(設計or整備)に問題が有る「使い辛いバス」で有った事も事実の様です。特に今回、前回の炎上事故から僅か10ヶ月で炎上事故を再発させてしまった事からも、魅力はあれども「使い辛いバス」で有った事は、図らずしも証明されてしまったと言えます。
 今回はその「メガライナー」炎上事故がもたらす影響と言う側面からこの事故を考えてみたいと思います。

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 「事故報道・参考資料」
 ■ 高速バス「青春メガドリーム号」出火・全焼、乗客77人無事 (3月16日11時55分配信 読売新聞)
 ■ JRバス関東HP西日本JRバスHP
 ■「 ネオプラン・メガライナー
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 ※本記事は、私がmixiで日記として書いた物について、一部加筆・修正・編集の上、改めて「TAKAの交通論」の記事として掲載させて頂いてます。予めご了解下さい。


 ☆ メガライナー炎上事故の「幸運」と「不幸」とは?

 その様な「巨大な収容力」という「光」と「使い辛いバス」という「影」が有るメガライナーですが、前回及び今回の2回の大きな炎上事故で、メガライナー及びJRバス関東・西日本JRバスは「幸運」と「不幸」の二面性を示したのでは?と私は感じて居ます。

 ○ 2回のメガライナー炎上事故の最大の幸運は「一人も怪我人が出なかった事」

 まず「幸運」の側面は、此れだけの規模の「大型バス全焼」という事故を引き起こしていながら、両方の事故とも「乗客・乗員全員無事」と言う事です。これは2件の事故の唯一にして最大の「幸運」で有った事は間違い有りません。
 ましてや運転手一人で普通の大型バス2台分に近い80名近い客を運べるメガライナーで、しかも夜行バスで利用者が寝てしまうと言う「悪条件」の中で、どちらの事故も一人の怪我人も出さずに利用客を避難させられたのは「特筆」に価すると思います。
 確かに「安全にお客様を運ぶのが運輸事業者の当然の義務」ですが、一朝有時の事故時に上手く対応して乗客の安全を守る事は、非常に困難の伴う事です。それが前回・今回の火災事故でほぼ完璧に出来たのですから、(事故その物は検証・対応しなければならないですが)その事に関しては「事業者の教育の成果」「運転手の努力」が有った事は間違い無いですが、「幸運」の側面も無視は出来ないと思います。
 この幸運の要素として、やはり大きい事業者・運転手の「質」が大きいのかな?とは感じます。流石にJRバス関東も西日本JRバスも高速路線バスの超大手事業者です。それだけあり教育とかも十分行って居るでしょうし、無理の無い勤務体制等も調えられて居ると推察します。その様なバス事業者の「質」がこの様な幸運を引き寄せたのかも知れません。其処は「 高速バスとツアーバスの問題 」等を考える中でも重要かもしれません。

 ○ メガライナー炎上事故のもたらす「ミクロ」と「マクロ」の不幸とは?

 先ずミクロ的側面は、収容力が大型バスの2倍と言う大収容力を生かしたメガライナーは、その乗客一人当りのコストの安さを武器にして、東京〜大阪間でツアーバスに対抗する「切り札」となり多くの人気を集めて居ました。
 この2回の火災事故で、JRバス関東・西日本JRバスはツアーバスに対抗する「切り札」を失ってしまいました。
 元々ツアーバスとの競争では、「異なる規制基準」というハンデの下で厳しい競争を強いられて居る路線高速バス事業者ですが、その競争の中で「企業努力で出来る対応策」で一番優れて居る「メガライナーの収容力を生かした低価格高速バス」を失う事で、競争の激しい東阪間の夜行バス輸送でJRバス関東・西日本JRバスはツアーバスに苦戦する事は確実です。
 これが対ツアーバスとの競争についての「ミクロの側面での不幸」と言えます。

 又マクロの側面の不幸とは、此の頃「バス輸送の能力を高める為」に導入されて居る「海外製バス」の導入に対して、ブレーキが掛かる可能性が有るという点です。
 特に車両制限令で定められて居る全長12m以上の大型バスやバスを2両繋げた連接バス等の「高輸送力バス」に関しては、運用に大きな制約・規制を受ける事からニーズが少ない事も有り、日本国内で生産して居ない為海外からの輸入が主流となっています。
 実際全長15mの「メガライナー」もドイツ・ネオプラン社製ですし、経世が導入した連接バスはボルボ社製で神奈川中央交通が導入した連接バスもドイツ・ネオプラン社製とドイツ・メルセデスベンツシターロ社製と言う様に、日本の大型バスで有る全長12mを越える(メガライナー・連接バス等の)「超大型バス」に関しては、殆どが海外製に頼って居ます。
 前回・今回の2つの事故の原因が未だ分からない段階で何とも言え無いにしても、同じ海外製エンジンを使った海外製バスが、短期間に二台も全焼して「あわや大惨事」という事故を引き起こした「現実」と超大型バス・連接バスの抱える「規制の問題」の制約から考えると、バス事業者が「海外製高輸送力バス」の導入に躊躇し、それが結果として「超大型バス・連接バス」等の「高輸送力バス」の導入自体にマイナスになる可能性も有ります。
 これが日本のバスの高機能化に対して足枷になるという点で「マクロの側面での不幸」と言えます。


 ☆ 事故は重く受け止めなければならない、しかし事故が進歩を止めてはならない

 今でもバスでは残念ながら事故は起きて居ます。しかしながらその内訳は(所謂車内での転倒等の)「車内事故」が大部分であり、車両に起因する「バス乗客の死亡・負傷事故」もしくは「その危険性が高い事故」と言える重大事故は、殆ど起きて居ないのが現状です。
 そう考えると、今回のメガライナーの「2回の炎上事故」は「負傷者・死者が出てもおかしく無い」事故の被害状況から考えて、極めて異例の状況で有る事は間違い有りません。
 此れにより、(TVのインタビューでも有りましたが)普通の乗客から「高速バスが危険だ」という意識を抱かせ、高速バスへの信頼を傷つけてしまったと言う意味でも、高速バスとツアーバスの激しい競争が続いて居る中で、大きな痛手で有るといえます。
 その高速バスへの信用低下と言う問題も実際の所は「乗客は無事」で有った以上、「事故自体を云々する」前にその事実に関しては冷静に考えなければならないと思います。又その事は事故の当事者で有るJRバス関東・西日本JRバスは「夜行高速バスの安全性」という点で世間に正確にアピールする必要が有ると思います。

 又今回のメガライナーの事故は、「高速バスへの信頼」だけでなく「海外製バスへの信頼」も著しく損なう可能性が有ると言うのも大きな痛手で有ると思います。
 日本のバス製造業が「規制の中でしかバスを作らない」事で、特に「大型化・輸送力増強」という点で遅れて居る事は間違い有りません。
 世界のバス市場の中で日本のバス製造業は「閉塞性が高い」市場で有ると同時に、市場の特性から「日本独自の規格の中に縮こまって居る」事から、メガライナー・連接バス等の先進的なバスが生まれづらい環境になって居る事は間違い無いと思います。
 その壁を打破して来たのが、先進的なバス事業者に寄る「幾多の壁を越えての海外バス導入」で有った事は間違い有りません。
 今回の一連の火災事故で、「海外製バスが日本の環境・(坂の多い)地形に対応できず負荷が高くなり事故の遠因となった」との説も有りますが、原因が分かって居無い今の段階では、必ずしもそれだけで「海外製バスがダメだ」とは言えません。
 今回の事故で、海外製のバスの導入に「二の足を踏む」バス事業者も出てくるかもしれません。しかし海外のバスの方が「進んで居る側面」も多々有る事は間違い無い事実で、日本のバス業界も「海外製バス導入で新しい側面を作ってきた」事も有ります。
 その流れが今回の事故で途切れて、バス業界の「海外の血の導入に寄る進歩」と「外圧に寄る競争の促進」という流れが止まってしまう事が無い事を、今では切に祈って居ます。




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