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「たま駅長」&「いちご電車」に続く「第三の手」が功を奏したか!?

-和歌山電鐵に登場した「おもちゃ電車」が大人気に?-



TAKA  2007年09月03日




和歌山電鐵の救世主「たま駅長」&「いちご電車」@貴志



 今日本中で地方ローカル鉄道が苦境に立たされています。赤字の鉄道は数知れず、毎年3月になると日本の何処かで「ローカル線廃止」が行われ、お別れのイベントに人が集まるのが「当たり前の光景」となってしまって居ます。今は貧富・都会vs地方など色々な側面での「格差」の時代だと日本中騒いで居ますが、鉄道業界でもJR&都会の大手民鉄vs地方のローカル私鉄の格差も又顕在化しているのが実情です。
 その中で「地方ローカル鉄道の輝く星」として立派に再生を果たそうとしているのが、大手民鉄の南海電鉄貴志川線から両備グループの傘下に入り「和歌山電鐵」と運営開始されて約1年半、順調に再生が果たされようとしている「和歌山電鐵貴志川線」です。今や両備グループは ローカル私鉄地方バス会社 両方の「再生の救世主」として注目を集めている会社ですが、和歌山電鐵でも「いちご電車」「たま駅長」などの色々なアイディアを考え出して、地元だけでなく観光客等のお客様を広い地域から集め、経営的に「地方鉄道が補助を受けつつ社会的役割を果たせる最低ライン」を見事にクリアさせて居ます。
 その様な和歌山電鐵の色々な取り組みに関しては、私も本年5月のGW期間中に和歌山電鐵を訪問し「 「たま駅長」と「いちご電車」がローカル鉄道を救うのか!? 」でも書きましたが、本当に今までの鉄道事業者の「既成概念」を打ち破る色々な取り組みが行われて居ましたが、今回「いちご電車」「たま駅長」に続く「活性化イベント第三弾」と言える列車が登場しました。それが「おもちゃ電車「OMODEN」」です。今回流石に和歌山へ訪問する事は出来ませんでしたが、和歌山電鐵の新しい取り組みとその成果について考えて見たいと思います。

  和歌山電鐵HP より
 ・ 「あっとおどろくプロジェクト構想」世界に例のない改造車両「おもちゃ電車」今夏デビュー (3/26)
 ・ おもちゃ電車「OMODEN」今夏運行予定 (5/9)
 ・ おもろい「OMODEN」披露ごあいさつ (8/14)

和歌山電鉄貴志川線:「おもちゃ電車」大人気、利用客1万人突破  /和歌山
◇デビューから18日
和歌山電鉄貴志川線を走る「おもちゃ電車」の利用客が、デビューから18日で1万人を突破したことが16日、同電鉄本社(和歌山市伊太祈曽)であった貴志川線運営委員会で報告された。
おもちゃ電車は先月29日にデビュー。車内にはおもちゃを飾る木枠のショーケースや、おもちゃの販売機「ガチャポン」が設置され、今年4月の構想発表後、全国から問い合わせが相次ぐなど話題を呼んでいた。
この日も、家族連れなどで車内は満員。ショーケースに飾られたおもちゃをカメラ付き携帯電話で撮る人もいた。おもちゃ電車に乗るのは3回目という市立東山東小3年の横出那乃花ちゃん(8)は「おもちゃがたくさんあって何回乗っても楽しい」と笑顔で話していた。【清水有香】
毎日新聞 2007年8月17日 記事より引用



 ☆ おもちゃ電車「OMODEN」は大成功!?

 今回和歌山電鐵和歌山電鐵が生み出した『おもちゃ電車「OMODEN」(以下おもちゃ電車と略す)』は、和歌山電鐵が「あっとおどろくプロジェクト構想」で生み出した「いちご電車」に続く第二弾として作った車両です。
 このおもちゃ電車は、和歌山電鐵がラッピング電車の営業に地元のおもちゃのネット販売企業であるTJホールディングカンパニーを訪れた事をきっかけに登場した車両であるとの事です。そこでTJホールディングカンパニー側が「「ガンダム電車」で5年間広告支援したい」とラッピング電車の広告掲載を受けたのをきっかけに、「折角なら水戸岡デザインでいちご電車の弟にふさわしい電車としては、ガンダムより「おもちゃ電車」だ」と言う事で今のおもちゃ電車が生まれました。(上記掲載のサイトより要約引用)
 其処で和歌山電鐵の発想の凄いところは、本来ならガンダムラッピング列車にして5年間の広告収入を安定収入にした方が経営的には好ましそうに考えられる所を、デザイン的にも異なる「水戸岡デザインの車両」を提案して、しかも広告収入を先行投資して内装を変えて、「いちご電車」の弟分として相応しいデザインでありしかもおもちゃ企業のスポンサーのメリットになる良いイメージの車両を作り上げた事です。
 この様な発想は相応しい例えかは自信が持てませんが、「急がば回れ」「損して得取れ」とも言える事であり、経営者が考えに信念を持っていて下にまでその信念が行き渡っているからこそ、この様な柔軟かつ洗練された発想と提案をする事が出来たのだと思います。
 その様な「先見の明」のお蔭もあり、おもちゃ電車は「大成功」であると言えます。スポンサーのTJホールディングカンパニーにとって見れば上記引用の記事に小学生が「「おもちゃがたくさんあって何回乗っても楽しい」と笑顔で話していた」と言って居ますが、おもちゃの顧客である子供に興味を引かせると言うのは将来に渡りビジネスに繋がるメリットも有りますし、これだけ注目を集めれば企業のイメージ的にも十分効果が有ると言えます(ガンダムラッピング電車で此処まで注目を集めただろうか?)。
 加えて和歌山電鐵にしてみれば、折角獲得した5年間の広告収入を車両改修につぎ込んでしまいましたが、それで個性的な車両を作り話題を集めた価値は有り、「今年4月の構想発表後、全国から問い合わせが相次ぐ」と言う様に注目を集めると同時に、実利面でも「利用客がデビューから18日で1万人を突破」と言う様に、年間210万人の鉄道で1編成の電車を投入する事で半月で年間旅客の0.5%を増やしたのですからその効果は実際面でも非常に大きいと言えます。
 この様に見れば、色々な側面で見ても「おもちゃ電車」は「いちご電車」「たま駅長」に劣らない大成功で有ったと言う事が出来ます。

 ☆ 「おもちゃ電車」や「いちご電車」「たま駅長」の効果は「人の目を地域・公共交通に引き付ける事」か?

 この様に「おもちゃ電車」は和歌山電鐵的に見ても大成功で有ると言う事も出来ます。又前にも「 「たま駅長」と「いちご電車」がローカル鉄道を救うのか!? 」で述べて居ますが、昨年4月の登場以来「いちご電車」「たま駅長」に続いて「おもちゃ電車」を成功させた小嶋社長を中心とする和歌山電鐵の行動力・発想力は素晴らしい物が有ると言えます。この様な努力の結果として和歌山電鐵の再生が果たされた事は間違い有りません。
 確かに今や「和歌山電鐵」は地方ローカル線再生のモデルケースと賞賛されるほどです(私も正しくその通りだと思います)。今や日本各地で「散華」して行く地方ローカル線が後を絶たない中で、(色々な要素が有るのは分かって居るが)一度は捨てられかけた地方ローカル線である南海貴志川線が、利用客を1割近く増やして見事に再生した和歌山電鐵の事例は正しく「地方ローカル線再生の象徴」とも言える輝かしい成果でありますし、その様な成功をもたらした物の一つは「いちご電車」「たま駅長」「おもちゃ電車」等の和歌山電鐵の人の気持ちを捉えた企画であるのもまた事実です。
 しかしそれ以上の成果は、車両などで「魅力あるイベント」を行う事で、普通の人の目を鉄道に引き寄せた事では無いでしょうか?この側面は無視できないと思います。
 狭義の意味で考えれば「いちご電車」「たま駅長」「おもちゃ電車」等のイベントで、都市部等の和歌山電鐵線沿線と言う一地方以外の地域特に近くの大阪等の大都市に住む人々から注目を集め、其れにより「和歌山電鐵線に乗りに行こう・遊びに行こう」と言う沿線外の人々のニーズを呼び起こし、その結果「和歌山電鐵」に観光客を集め、和歌山電鐵自体に利用客増・増収と言うメリットを与えると同時に、沿線の商業・飲食業・観光業と言う様な地域全体にも「人々の目を引き付けた」と言う点で、地域全体が大きく注目を集めたと言う事が出来ます。
 同時に「いちご電車」「たま駅長」「おもちゃ電車」は鉄道と言う公共交通そのもので人に注目を集める仕掛けを作った事であり、普通の多数の人を「公共交通」に目を向けさせた事であると言えます。和歌山電鐵小嶋社長は『明日を担う子供たちがこの「OMODEN」に乗って、貴志駅長の三毛猫「たまちゃん」にも会っていただいて、夢を膨らませて、すくすくと育ってくれたら嬉しいと思います。また、大人になったら、この地域を担い、この電車たちを育ててくれたら、なお嬉しいと思います。』と挨拶していますが、ここが正しく重要で有ると思います。今人々の間でモータリゼイションの進展により公共交通離れが進んでいて「電車の乗り方を知らない」と言う様な子供も増えていると聞きます。その様な子供に対して「子供が魅力を感じる」公共交通を提示する事で「子供の目を公共交通に引き寄せさせる」と言う事は、公共交通の未来を考えるに際して非常に重要であると言えます。
 今公共交通では「子供の注目を集めるイベント」として「 ポケモンスタンプラリー 」等のイベントが有り、実際今年の夏も首都圏のJRでは「ポケモンのスタンプ帳」を持った子供が多数居て、「子供の目を公共交通に集める」イベントの成功例と言う事が出来ます。この様な「子供の関心を引くイベント」が公共交通に子供の目を引き付け興味を持たせ理解させ将来に渡り利用させる為にも重要な事は言うまでも有りません。
 その意味でも和歌山電鐵の「いちご電車」「たま駅長」「おもちゃ電車」は、公共交通に子供の目を向けさせると言う点で、非常に効果が有ったと言えます。これは将来のユーザーを確保すると言う点でも、長期的に見て非常に大きな意味が有ると言えます。特に「おもちゃ電車」は車内に「おもちゃの展示場や販売、それもこの電車でしか売っていないおもちゃ」等の子供の関心を引く物が有り、同時に子供に取り「乗って楽しい電車」を作る事は、「電車に乗る事が楽しい」と言う事を子供に覚えさせると言う点で非常に意味が有ると言えます。


 ☆ (あとがきに代えて)将来に渡り鉄道を含む公共交通を支えるに大切な事とは?

 この様に和歌山電鐵の「おもちゃ電車」を含めた一連の「あっとおどろくプロジェクト構想」は、短期的には鉄道存続の為の利用者増の実現と同時に、中長期的には「人々の目・関心を地方ローカル線を含めた公共交通に向けさせた」と言う点に置いて、非常に意味が有ると言えます。
 確かに「瀕死の地方ローカル線」にとっては「今生きる事が重要」であるのは間違い有りません。しかしそれだけでなく「将来に渡り育てるサポーターを確保する」と言う事も、将来への道筋と公共交通の永続性を確保すると言う意味で非常に重要であると言えます。其処までを考えないと公共交通の真の意味での将来は有り得ないと言えます。
 本来ならばこの様な事を考える事は「一鉄道事業者」が考えるには非常に荷が重い事であると言えます。実際的にはこの様な啓蒙活動的な活動はもっと大きな組織(具体的には公的セクター)が行うべきものでしょう。しかし学校の教育で「電車の乗り方」等を教える授業等が有るとは聞きますが、「面白さで興味を引き付ける」的な子供の自発的に関心を持たせる様な事は公的セクターでは行われて居ません。強制的に近い授業では真の意味で「子供の興味・関心」を引く事は難しいでしょう。
 それに対し和歌山電鐵の「おもちゃ電車」を含めた一連の「あっとおどろくプロジェクト構想」は、「おもちゃ」をツールとした「面白い仕掛け」を作る事で子供たちの関心を自然に集める様な仕掛けを作り、それが成功して「18日間で1万人」と言う人を集めたと言う点が凄いと言う事が出来ます。
 おもちゃ電車に乗った子供たちは、おもちゃで遊びながら「電車にこんな楽しい物があるんだ」と思えば、今度は実際の用などで電車を利用する時に「抵抗のハードル」が低くなる事は間違い有りません。そう言う点でおもちゃ電車の成功は「18日間で1万人」を集めたと言うよりは「18日間で1万人の鉄道へのサポーターを集めた」と言う方が正しいのかもしれません。
 一般的に色々な世界でも「興味を持ってくれる応援者」を集める事は非常に重要であると言えます。しかし鉄道は公共交通機関であり大量輸送機関です。その特性から考えると「コアな鉄ヲタ・鉄子」を少数作り出すより、「鉄道に興味を少しでも感じてくれた子供」を多数作り出す事の方が百倍重要であると言えます。その意味ではJR東日本の「ポケモンスタンプラリー」も和歌山電鐵の「おもちゃ電車」も非常に意味が有ると言えますが、1年前までは廃止寸前だったローカル線をイベントで活性化させ、その中の一つの「おもちゃ電車」が「地方のローカル線に子供の注目を集め」「多くの人をローカル線に引き寄せた」と言う点で、和歌山電鐵の成功は非常に意味が有ると言えます。
 (余談だが、JR東日本のポケモンスタンプラリーに「運賃収入を狙う営利性」と言う姿勢を感じるのに対し、和歌山電鐵の「おもちゃ電車」等には「如何にして鉄道の魅力を上げ人々に使ってもらうか」と言うのが姿勢の根本にあり「収入はそれに付帯して来る」と言う姿勢を感じる点が、両者への大きなイメージの差になっているのでは?又人々も其れを感じているのでは?と思えるのは私だけでしょうか?そう考えると、やはり物事の端々に見える和歌山電鐵・両備グループの企業に考え方の素晴らしさが有るのでは?と感じます)




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