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「 簡 易 的 交 通 手 段 」 と は 有 効 な 物 な の か ?
- 峠の町のニュータウンに有る簡便な住民の足「スカイレール」 -
TAKA 2008年10月10日
☆ ま え が き
交通手段としての「軌道系交通機関」という存在を考えると、色々な物が当てはまります。大は鉄道から始まり多種多様な物が有ります。しかし「軌道系交通機関」として一番小さい部類には居るのは何でしょうか?。小さい部類だとロープウェイ・ケーブルカー・新交通システム・等が当てはまると思いますが、その中でも「一番輸送力が小さいのでは?」といえる交通機関があります。それが広島県に有るスカイレールです。
スカイレールは、広島県広島市安芸区瀬野に有る積水ハウスが分譲している「スカイレールタウンみどり坂」の域内交通機関として造られた交通機関で、ロープウェイ・懸垂式モノレールの合いの子という感じの、三菱重工・神戸製鋼所などが開発した「スカイレール」という交通システムが導入されて居ます。
今回「夏の旅行」として8月初旬に岡山を訪問し、その後
交通総合フォーラム
でご一緒させて頂いて居るKAZ様に御同道して頂き、1日掛けて岡山→尾道→瀬野→広島と廻ったのですが、その時にKAZ様に勧められて「スカイレール」に寄りました。
「スカイレール」は流石に日本には此処にしか無い交通機関で有り、非常に珍しい交通機関です。只珍しい輸送システムですが、一度乗って見て「スカイレール」が持って居る色々な可能性が見えて来た様な気がしました。その辺りを含めて「訪問記」と合わせて「スカイレール」について書いて見たいと思います。
☆ 参考HP ・
青空散歩−スカイレール−
(
IDOstyle
・
交通総合フォーラム
)
・
スカイレールタウン みどり坂 HP
(積水ハウス) ・
スカイレールサービス広島短距離交通瀬野線
(wikipedia)
・
都市内交通システム:スカイレール
(神戸製鋼所) ・
製品紹介 短距離交通システム -ロープ駆動式懸垂方交通システム“スカイレール”-
(三菱重工)
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☆ スカイレール駆け足訪問記(2008年8月9日午後)
スカイレールの有る瀬野ですが、今まで私は訪問した事が有りませんでしたから、「山陽本線の瀬野」と言えば鉄道ファンには「
瀬野八越え
」で有名であり、私もそれでしか知りませんでした。瀬野には瀬野八越えの補機専用の瀬野機関区が有りました。山越えの補機専用の機関区が有る所となると、普通は「さぞかし山深い所だろう」と思います。実際瀬野は瀬野川沿いに「瀬野八越えの鉄道の街」として開けた街ですが、街の周囲には山が迫っており如何にも「峠の入口の街」と言った感じです
しかしその様な山の迫った「峠の入口の街」で有るのと同時に、もう一つの顔として「広島まで6駅(シティライナーで)13分」で広島の中心街八丁堀までも30分程度で行ける「100万都市広島のベットタウン」と言える場所です。「人口10,000人規模のベットタウンが出来る立地」でありながら「厳しい峠越えが有る立地」と言う「二つの顔を持つ」街だからこそ、みどり坂ニュータウンの足として「スカイレール」が出来たのです。先ず其処は今回始めて現地を訪問して「なるほど」と思った所です。
スカイレールの実質的なターミナルで有るみどり口駅は、山陽本線瀬野駅の脇に有り橋上駅舎の瀬野駅と結びついています。廻りは山が多く「此処が都会から近い所なの?」と思う感じですが、山陽本線瀬野駅からは対広島で毎時5〜6本確保されて居るため広島市街地へのアクセスは十分便利だと言えます。国道2号線の道の悪さや廻りの地形の悪さというデメリットと、広島までの鉄道アクセスの良さを合わせて考えると、ニュータウンを上手く繁盛させるのは「対広島アクセスの根幹のJR駅までのフィーダーアクセスを如何に整備するか?」が重要で有る事は間違い有りません。その回答がスカイレールなのでしょう。
左:山陽本線瀬野駅に接続のスカイレールみどり口駅 右:みどり口駅改札口
早速スカイレールみどり口駅に向かいます。駅は外観は「普通よりチョット簡素な新交通システムの駅」という感じです。しかし中に入るとコンコースには幾つかの飲み物・タバコの自動販売機は目立ちますが、鉄道関連は簡素な自動券売機が1台と簡素な自動改札機が2台だけ置かれて居ます。この辺りは輸送量も少ない事も有り割り切った配置です。
切符を買い自動改札を通り上の階のホームに向かいます。運賃が均一運賃の為、自動改札に切符を入れると此処で回収されます。ホームに上がると小さいホームにホームドアが一つ付いていて、既にスカイレールのゴンドラが停まって居ます。スカイレール自体ゴンドラ1台当りの定員が25名でゴンドラ自体の台数が6台とそんなに多く準備されて居ない感じなので、ホームもかなり手狭に感じる広さしか有りません。スカイレール自体が輸送人員が817人/日ですから此れで十分なのでしょう。
ホームに停まって居るゴンドラには、先客が親子連れで2名(だったかな?)乗っていたので、私とKAZ様も早速乗り込んで、みどり中央駅を目指します。
左:スカイレールみどり口駅ホームとゴンドラ 右:みどり口駅よりみどり中街方面を見る
スカイレールはみどり口駅を出ると、急斜面に取り付き急勾配を上り、みどり坂ニュータウンの中に入って行きます。みどり坂ニュータウンは丘陵地に作られて居る為にニュータウン自体が「南側斜面の段々畑」に出来て居ます。この特性から必然的にニュータウン全体の傾斜が厳しく、何か補助的な交通機関が無いとニュータウン内の交通が不便になる状況から、スカイレールが出来たのでしょう。
しかしこの傾斜を考えると、液からの何かしらのアクセス手段を整備しないとスカイレールタウンは「不動産として売りにくかった」と言う事は有ったのだと思います。実際に中央線四方津駅前に有るニュータウンのコモアしおつに有るアクセス手段の「
コモアブリッジ
」と同じでしょう。其処から考えれば要はスカイレールの役割は、「マンションのエレベーター」と同じで、ニュータウン内の住民アクセス手段でありそれが少々大きくなった存在なのでは?と改めて思いました。
けれども、此れは「ニュータウンのプランニング」という問題だと思うのですが、スカイレールのみどり口駅は山陽本線瀬野駅直結ですが、駅以外の施設が有るわけでなく、中間駅のみどり中街駅は駅の廻りは全て住宅街ですし、終点みどり中央駅の周辺も「核になる施設」が有る訳でなく、本当に「駅と住宅地を結ぶだけ」の施設であり、ニュータウン内唯一のスーパーがみどり口〜みどり中街間の「スカイレールではアクセス出来ない所」に有る事も、「スカイレールの地域内交通機関」としての重要性にマイナスになり、結局ニュータウン内でも車に頼る状況を作り出して居ると思います。その点はスカイレールは「大きな失敗」をしたのかもしれません。
左:急勾配区間を上手く走って居るのが良く分かる@みどり中街〜みどり中央間 右:終点みどり中央はかなり標高が高い!
終点みどり中央に着いた後、廻りは住宅街で駅周辺の空き地では「住宅販売会」を行って居るだけで見る物も特になく、その後での広島方面での予定も有るので、早速折返してみどり口駅に戻る事にします。
帰りの車両も乗客は寂しい限りです。土曜日という事も有るのでしょうが殆ど利用客は居ません。基本的にスカイレールタウンみどり坂自体が計画人口10,000人の規模のニュータウンですから、ニュータウンとしての「域内交通機関として軌道系が必要か?」という規模です。だからこそ閑古鳥が鳴いているのでしょうが、マンションにエレベーターが必要な様に、高低差が160mも有る「スカイレールタウンみどり坂」には街の設備・インフラとしてスカイレールが必要だったのでしょう。
そう言う意味では、スカイレールは「公共交通機関」と言うよりかは、コモアしおつの「
コモアブリッジ
」やユーカリが丘の「
山万ユーカリが丘線
」の様に、ニュータウン内完結の限定的交通機関という意味合いが強いのでしょう。
しかしその中でも、傾斜地など特殊な場所での「少量輸送機関」(中量と言うにはチョット小さすぎる)として、他にも何か使い道が有る交通システムなのでは?とは感じました。有る意味特殊な交通機関ですが、なかなか利いただけでは分からない交通機関のイメージを見る事ではっきり分かったという点で、寄った価値は有ったなと思います。
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☆ あとがきに代えて - 簡易的移動手段の有効な場所とは? -
今回岡山〜広島旅行の途中で移動に尾道経由で在来線を使ったので、瀬野駅で途中下車をしてスカイレールを見る事が出来ました。
スカイレール自体は1ゴンドラ当り25人程度の輸送力しかなく、1ゴンドラ辺りの輸送力はエレベーターに毛が生えた程度しかありません。只ゴンドラは能力的には75秒間隔で運行可能との事ですので、1時間当り2,000人を越える程度の輸送力が有ります。しかし「バスで30台〜40台」程度の輸送力が有る事を考えると、スカイレールの輸送機関としての位置付けは「中量輸送機関の中でも一番少量の輸送機関」という「簡易的な輸送機関」のレベルの有ると思います。
この輸送力となると、どの様な交通機関が類似の交通機関として当てはまるのでしょうか?先ず思いつくのは「スキー場のゴンドラ」「循環式のロープウェイ」です。確かにゴンドラやロープウェイは「ロープで吊られて居る」のとスカイレールは「鋼製軌道に吊られて居る」差は有りますが、客が乗るゴンドラ自体は殆ど同じ物であり殆ど差が無いといえます。しかしスカイレールは鋼製軌道ですからルート構成で「スパンを飛ばす」事が簡単ではなく「視覚的に重い」デメリットが有りますが、代わりに「風に強い」メリットも有り、安定的な公共交通機関の役割を考えると一番スカイレールが安定的で良いのかも知れません。
もう一つ似た交通機関として、上海で見た「外灘観光隧道」が挙げられます。此れは軌道上を走る物ですが走って居る車両はゴンドラその物であり、「軌道を走るゴンドラ」という事が出来ます。「ロープで吊られる」と「軌道上を走る」という差は有りますが、輸送力的には似た存在で有ると言えます。
その様な「一番小さい中量輸送機関」と言えるスカイレールですが、その「適当な量の輸送機関」「比較的自由にルートを選べる」という特性を生かして、どの様なシチュエーションで交通機関として生かせる事が出来るでしょうか?
一つはスカイレールタウンの様な「傾斜地ニュータウン」での域内交通機関としての役割です。確かにスカイレールを「ニュータウン内のフィーダーアクセス交通機関」として見れば、コモアしおつの「コモアブリッジ」やユーカリが丘の「ユーカリが丘線」に近い物あり、機能的には「巨大で料金を取るエレベーター」という感じです。その役割から考えると、スカイレールは「エレベーターに毛が生えた」という輸送力的に丁度良いレベルで勾配に強いので、傾斜地に造られたニュータウンの地域内交通機関として適当な存在で有ると言えます。
もう一つは、鋼製軌道だが懸垂式モノレールなどに比べて比較的軌道が軽いメリットを生かして、ビルの屋上等に支柱を設けて軌道を設置して都市内交通機関として活用するやり方です。確かに交通機関が充実して居る都市内でも、「駅から目的地までのチョットしたアクセス機関」が欲しいという場合は結構有ります。そこに「スカイレール」は結構良い交通手段として使えるかもしれません。チョット妄想チックかもしれませんが、「駅をスタートしてビルを伝いながら街を廻り大きなビルの屋上に駅を造り屋上からビルに直接アクセス」などという交通機関が有っても面白いかもしれません。実際遊戯施設的な意味合いが強い物の昭和20年代には「
渋谷駅にロープウェイが走って居た
」事も有り、「都市にロープウェイやスカイレールを走らせる」という事は強ち「無謀な発想」とは言えません。場所の選択は難しいですが一考の余地は有ると言えます。
今回現地訪問に御同道頂いたKAZ様と、その様な「スカイレールの可能性」について話していて、KAZ様が「スカイレールの都市内での活用の可能性」について話されて居ましたが、このスカイレールの「絶妙に簡易な交通機関」ぶりが、色々な所で活用の可能性を引き出すのでは?と思います。
しかし「絶妙に簡易な交通機関」という事は、同時に「中途半端な交通機関」と見做されて「コストを掛けて造るに値しない輸送力しか無い」と言われてしまう可能性は有ります。しかしスカイレールのもう一つの可能性は「最小曲線半径30m・最大勾配27%」という性能を生かす事です。此れは都市内でも生かせますが、郊外のニュータウン等で丘陵地帯など傾斜の厳しい地区での交通機関として生かすのも又道だと思います。実際唯一の実用例で有るスカイレールはこの様な環境で使われて居るので、この例を基に活用法を考えるのも方策だと思います。
どちらにしても、スカイレールは「簡易的交通手段」として、このまま「眠らせてしまう」には惜しい交通機関で有ると思います。見た様に活用方法は「考え方」として色々有ると思うので、何とか「活躍出来る場所」を探してもらい「第二・第三のスカイレール」が登場する事を願って止みません。
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