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「 東 京 S M O O T H 」 は 実 現 す る の か ?

-首都高速中央環状新宿線 熊野町JCT〜西新宿JCT開業で東京の道路交通は変わるのか?-


TAKA  2008年1月4日





首都高速中央環状線山手トンネル開業で「東京SMOOTH」は実現するのか?



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 ☆ ま え が き

 都市の基本的道路網に取り「放射道路」と「環状道路」は道路網を構成する重要な要素ですが、世界有数の規模の都市で有る東京の場合、都心部と郊外・他の地域を結ぶ放射道路は「十分」といって良いレベルで整備されて居ますが、環状道路に関しては東京都部・周辺の関東圏で見ても十分整備されているとはいえません。
 特に関東に入る広域道路交通の中心で有る高速道路網に関しては、環状高速道路が東京の環状道路で最内部にある「首都高速都心環状線」しか存在しないため、東北・北海道と東海以西を移動する自動車通過流動も東京都心の皇居の周りをわざわざ廻って移動しなければならず、それらの通過流動と東京都市部の域内流動が首都高速都心環状線に集中する為、通過流動と域内流動を一手に引受ける首都高速道路は都心環状線を中心に、朝〜夜のほぼ常時数km〜10km以上の渋滞が発生して、東京都内での自動車移動に多くの無駄を生じさせて居ます。

 その様な「環状交通の不足」という問題に対応する為に、東京圏では首都高速中央環状線(以下中央環状線と略す)・東京外かく環状道路(以下外環と略す)・首都圏中央連絡自動車道(以下圏央道と略す)という「三環状の整備」が行われて居ますが、その整備は残念ながら「進んでいる」とはいえない状況です。特に西部地域に関してはその建設は殆ど進んでおらず、関越〜中央〜東名の3放射高速道路の全てを結ぶ環状高速道路はゼロという極めて厳しい整備状況になっています。しかも外環道は関越〜中央〜東名間で全く工事に着手しておらず「何時着手できるか不明」という絶望的な状況に有ります。
 しかしその様に整備が進んで居ない関東平野西部の三環状高速道路ですが、近年やっと整備が進みだしました。本年6月23日に「圏央道:あきる野IC〜八王子JCT」が開通して関越道と中央道が始めて結ばれました。加えて12月22日には「首都高速中央環状新宿線(以下中央環状新宿線と略す)」の北半分熊野町JCT〜西新宿JCT間が開業し、首都高速中央環状王子線・新宿線北半分の区間を介して中央道と東北・常磐道が結び付けられて、中央道と(東名を除く)各高速道路の接続状況は劇的に改善しました。
 6月に中央道と関越道を直結させた「圏央道:あきる野IC〜八王子JCT開通」に関して「 関越道⇔中央道直結で首都圏の車の流れは変わるのか? 」で取りあげましたが、今回はそれに続く第二弾として12月22日に開業した「中央環状新宿線熊野町JCT〜西新宿JCT間」について取りあげる事としました。

 今回開業した中央環状新宿線熊野町JCT〜西新宿JCTは、東京23区西部に住み仕事・プライベート共にこの地域を中心に活動している私に取り、正しく「地元」といえる地域であり、今回開業した中央環状新宿線の山手トンネルの上に有る山手通りを年間数十回は通っています。
 その地元に出来た環状高速道路が「東京の道路交通にどのような影響を与えたのか?」という視点を中心に、今回実際に走った走行記を含めて、首都高速中央環状新宿線がもたらした影響と効果について、私なりに考えてみたいと思います。

 「参考サイト」 ・ 首都高速道路㈱HP  ・ 首都高C2InformationCenterHP  ・ TOKYO TUNNELIX HP  ・国土交通省関東地方整備局 3環状HP


 ☆ 首都高速中央環状新宿線 西新宿JCT→熊野町JCT (外回り)走行記 (12月23日 12時頃)

 私が首都高速中央環状新宿線の今回開業区間を訪問したのは、開業の翌日23日の昼前でした。本当は開業直後に訪問しようと思って居たのですが、夕方になって暗くなる事に加えて、急に23日午後に予定が入ってしまい車で移動する必要性が出てきたので、中央環状新宿線の訪問を翌日の日中に廻しゆっくりと見学をする事にしました。
 其処で訪問の行程を考えると、首都高中央環状線を全線通過するとなると4号線初台入口or幡ヶ谷出口と5号線板橋本町出入口間で移動するのが一番短距離で、自宅が環状七号線沿線に有る事と目的地が青梅街道沿線で有る事から考えて、この日は「4号線永福入口→(中央環状線)→5号線板橋本町出口・5号線板橋本町入口→(中央環状線)→4号線幡ヶ谷出口」と中央環状新宿線を往復したあと、山手通りを熊野町交差点まで往復して最後に中野坂上交差点から青梅街道に入るルートで、約2時間程度中央環状新宿線と山手通りを見てきました。

 先ずは明大前で昼食を取ったあと、甲州街道をUターンして上り線永福の入口から4号線に入ります。この日は年末で休日といえども3連休の中日で比較的通行量は少なそうな日です。その為か?環状七号線も空いており永福で入った4号線上りも車の数は比較的多いものの、「渋滞」までは行かず40km/h〜50km/h程度で流れて行きます。
 4号線を暫く走ると、今までは「調整中」だった大きな「都心環状線・中央環状線経由の混雑・所要時間掲示板」が稼動しています。此れを見ると流石に都心環状線で一部渋滞しているだけです。その為4号線→常磐道間の所要時間はほぼ同じと出ています。しかし23日という「特殊な日」で有る事から考えると、この渋滞掲示板の表示を「混雑緩和=中央環状新宿線の効果」とは即断する事は出来ません。

  
左:首都高4号線上りにある都心環状線・中央環状線経由の混雑・所要時間掲示板  右:「東北道」の掲示が目新しい西新宿JCTの案内表示


  
左:現在は4号線高井戸方面⇔埼玉・東北道・常磐道方面しか行けない西新宿JCT  右:狭い甲州街道初台交差点の上に作った西新宿JCTには急カーブが有る


 暫く4号線を走り初台の入口を過ぎると左手に東京オペラシティの建物が見えてきて、その先に直ぐ西新宿JCTの立体交差が見えてきます。西新宿JCTは4号線西側⇔中央環状新宿線を結ぶJCTであり、中央環状新宿線から4号線上り方面には直接行けず、3号線経由で無いと行けません。将来混雑緩和のために「中央環状線中野長者橋⇔4号線新宿」の間で一般道を経由した乗り継ぎ制度を考えても良いかもしれません。
 西新宿JCTを側道に入り上に昇ると、急カーブで90度左右に分岐します。今の段階では北側しか開業していないために分岐の準備だけですが、南側は2年後の完成を目指して急ピッチで工事をしているのが車窓からも分かります。今は片側に曲がるだけなので気を付けて徐行をすればいいですが、将来は此処の分岐の手前で減速する事が渋滞の新たなネックになりかねません。この点は心配といえます。
 90度に曲がると今度は8%の急勾配で山手トンネルに入ります。西新宿ジャンクションの一番高い所で建物の7階〜8階程度で山手トンネルは地下かなり深い所ですから、高低差で30m以上は有る感じです。流石に8%の下り勾配だと慎重に下って行く必要が有ります。此処は対面通行に近い事も有り、流石に「チョット怖いな」と感じました。

  
左:8%の急勾配を下り山手トンネルに入る  右:山手トンネルの入口


  
左:将来の中央環状新宿線と本線の合流地点  右:外回り唯一の出口西池袋出口への分流部


 地下の山手トンネルに入ってしまうと、左から将来の本線が合流して片側2車線の自動車道に変わります。長さが6000m有る山手トンネルは、基本的にはシールドトンネルで造られていて、その間に山手通り上に建つ換気塔と結ばれた換気とシールド発進基地をかねた縦抗部分があり、その部分は開削工法で作られたためボックス構造になっています。
 山手トンネルは「大深度に近い深さのトンネル」ではありますが、山手通りに沿って造られているためにかなり上下に勾配があり左右にカーブが厳しい状況です。山手通り直下の清水橋〜中落合間で中央環状新宿線の下に先に造った大江戸線のシールドトンネルが有る事や首都高速中央環状新宿線は1990年代前半の都市計画決定で平成13年度施行の「 大深度地下の公共的使用に関する特別措置法 」が間に合わなかった事が有り「大深度で直線で造る」という事を妨げたのでしょうが、車を運転する立場としては折角の自動車道ですから、もう少し走りやすい道にして欲しかったと感じます。
 「走りづらい」といえば、「シールドトンネルの径は工事費に直結する」という事も有るのでしょうが、チョットトンネルの幅が狭いと感じました。確かに換気塔の開削部分に待避所が有るので、「路側帯が広く無くても走行上は問題はない」という事なのでしょう。又「大きい路側帯を造る為にシールドトンネルの径を太くする」というのも無駄が有る気もします。費用の問題が絡むので「広い路側帯を選びますか?(建設費上昇による)高速料金UPを選びますか?」といわれると難しい話ですが、車で走るドライバー的な視点で考えると「もう少し何とかして欲しかった」という気はします。

  
左・右:中央環状新宿線と5号線の合流 熊野町JCT


  
左:中央環状線を走り通すには一番左から一番右へ頻繁な車線変更が必要?  右:5号線と中央環状王子線の分流地点


 西池袋出口を過ぎると、暫くして上り勾配が見えてくると山手トンネルの出口は直ぐ其処です。山手トンネルの出口は西新宿JCTと同じように急勾配になっています。
 丁度山手トンネルの勾配を昇りきると、今までの2車線が合流して1車線に減り、5号線と合流する熊野町JCTになります。此処では今まで川越街道の上を走ってきた5号線が90度カーブして北に方向を変えて進行方向左側から来る中央環状線と合流して、その先の板橋JCTで右側へ中央環状王子線が分流して行く、中央環状線を走り通す人に取っては、「5号線の走行車線2車線を平面交差で横断する」というかなり酷な道路形状になっています。
 今の段階では通行量が少ない為、此れといった渋滞は発生して居ませんが、今後中央環状線がどんどん完成して行けば中央環状線の通行量が増加して熊野町JCT⇔板橋JCT間の混雑激化が予想されます。その為に今後 首都高渋滞対策アクションプログラム で示された受胎緩和策の一環として、この場所を含む 中央環状線関連3箇所のJCT改良工事 が行われる事となり、熊野町JCT⇔板橋JCT間・堀切JCT⇔小菅JCT間改良と小松川JCT新設に関しては 平成19年度概算要求 で予算を認められた事で、整備が現実化します。その為将来的には熊野町JCTでの混雑の懸念もかなり解消されるのでは?と考えます。


 ☆ 首都高速中央環状新宿線 熊野町JCT→西新宿JCT (内回り)走行記 (12月23日 13時頃)

 最初に外周りを走り終えて、板橋本町で一度降りて大和町交差点でUターンした後、今度は再び板橋本町で5号線上りに乗り今度は内回りを走る事にします。
 板橋本町で高速に昇ると早速本線の流れが滞りがちです。板橋本町の入口からは中央環状王子線には行けませんので必然的に5号線方面に入る事になりますが、そこでサッと見てみると5号線方面に向かう車の方が圧倒的に多く、5号線と王子線の比率は5:1位です。しかし中央環状王子線からは流出する車の場合以上の車が5号線に流入してきます。その為3車線ある板橋JCT→熊野町JCT間でもかなり激しく混雑します。此処を見ると熊野町JCT⇔板橋JCT間の改良は速やかに必要で有るといえます。
 暫く走ると熊野町JCTで5号線と中央環状新宿線が分流しますが、此処での比率は5号線4:中央環状新宿線1という比率です。流石にこの先4号線高井戸方面しか進めない以上、利用が進まないのは致し方ないかもしれませんが、今や「首都高速有数の混雑路線」である5号線から1割でも2割でも通行量が減ってくれれば、利用者としては大歓迎です。

  
左:将来的にはボトルネックになるか?板橋JCT〜熊野町JCT間の3車線区間  右:5号線と中央環状新宿線の分流地点


  
左:本線でも山手トンネルの入口は急勾配  右:内廻りの西池袋出口


 熊野町JCTを過ぎると2車線2段構造の高速道路が少し続きますが、直ぐに下りの勾配に入り山手通り要町交差点の手前で再び山手トンネルに入ります。此処は本線で高架→大深度トンネルに入る区間ですが、勾配は西新宿JCTの勾配と同じ位です。此処は渋滞箇所にはなりそうにも有りませんが、左にカーブしながらの急な下り勾配ですから、「この先で渋滞でもしていたら?」と考えるとチョット心配です。
 しかしトンネルに入ると、勾配・カーブの区間を除けば、幅が狭い事を除けば特に直線区間では比較的走りやすい環境に有るといえます。まあ制限速度は60km/hですから「制限速度で走る」という基準で考えるとカーブ・勾配の厳しい区間で無ければ比較的走りやすいのかもしれません。それ以上に今は車が少なくチョット流れに乗り走ると制限速度をOVERしてしまうので、そちらのリスクの方が大きいのかもしれません。(トンネル内にオービスも有るので要注意)

  
左:都心の大深度長大トンネルだが車が少なければ走るのは楽?  右:3号線大橋JCTへのトンネルは何時開通するのか?


  
左:重い車やパワーの無い車では厳しい西新宿JCTの8%勾配?  右:西新宿JCTの全景


 流れに乗って走るとあっという間に西池袋・中野長者橋の2出口を通り過ぎてしまい、今の段階の終点で有る西新宿JCTに到着です。西新宿JCTでは走行車線の2車線から流出の車線に纏められて地上への出口に向かいます。今の段階では通行量が多く無く( 33,000台〜37,000台/日 )流れがスムーズですが、2年後の全線開業前の今の段階で便利さが知られて通行量が増えると、外回りの熊野町JCTの終点の1車線への合流と並んで「ネックポイント」となる可能性も有ります。
 此処で又急勾配の登場です。此処の場合車線変更・車線減少で減速した上での8%の上り勾配ですから、下手したら乗用車等でもチョット走りづらい区間かもしれません。今の段階では中央環状線内回りを走る車は、この区間を通る事は避けられません。元々山手通りは神田川の所が谷底になっていて其処から初台へ上り坂で有るのに加えて、その上4号線の高架の上に西新宿JCTを造らざる得ない状況で生まれた線形なので「代替策は有るか?」といわれると「此れ以外造り方は無かった」としか言えませんが、将来此処が本線で無くなっても今度は坂の上り詰めた所に東名方面からの合流が加わる事になり(合流を造らず車線を別にするにはチョット幅員が狭いか?)、新たな渋滞ポイントになりかねません。もし今後交通量が増えて8%の坂の途中で渋滞したら・・・MT車等での坂道発進に自信の無い人には「地獄の道」になりかねません。
 しかし「渋滞が無く」「勾配に注意した運転」と「カーブに注意した運転」で「60km/hの制限速度を遵守」して走れば、比較的安全かつ快適に走る事の出来る道なのかな?とは感じました。実際の所既に地上・地下・空中共にかなり開発が進んでいる東京では、市街地に後から新たなインフラ施設を加える事は、なにかしらの困難・無理等の問題が生まれてしまう事は致し方ないのかもしれません。その中でインフラが生まれる事でのメリットを考えながら、如何にして使いやすいインフラを造るか?という事が如何に難しいのか?という事を、今回首都高徳中央高速新宿線を走って改めて感じさせられました。


 ☆ (結論に変えて)首都高速中央環状新宿線 西新宿IC⇔熊野町IC 間の開業で「東京SMOOTH」は実現できるのか?

 今回12月22日に開業した首都高速中央環状新宿線 西新宿IC⇔熊野町IC 間を試走してきましたが、確かに今まで類を見ない都市長大トンネル道路で、曲線・アップダウン等が有れども渋滞してトンネル内で長時間トロトロ運転にでもならない限りは、比較的走りやすく「良い感じの高速道路かな?」とは感じました。
 又8%・10%という高速道路ではなかなか見る事が出来ないレベルの勾配で地下に潜り、道路として見れば「(イメージ的に)かなりの大深度」というレベルの深さに、シールド工法を主体に用いて長大トンネル自動車道を造った土木技術は「素晴らしい」の一言で有ると思います。実際上に走る山手通りの拡幅も行われて居ますが、一般道の直下大深度に長大自動車道トンネルを造る事が出来る日本の土木技術が無ければ、池袋〜新宿〜渋谷という副都心の外側を走る都市高速道路をこの様な形で今の時期に造る事は出来なかったと思います。

 しかしその様な「地下大深度長大トンネル都市高速道路」という中央環状新宿線の特長が、近くに拠点を持つ利用者として不便さを感じさせる弱点としての側面も持ち合わせている事も忘れてはならないと思います。それは「高速道路への出入口の少なさ」という問題です。
 今回の中央環状新宿線の開業区間には、出入口が内回りでは西池袋入口・中野長者町出口の2箇所が外回りには中野長者町入口・西池袋出口・高松入口の3箇所の合計5箇所があります。確かにこの出入口の配置を見ると、副都心へのアクセスには池袋に対しては高松・西池袋が有り新宿へのアクセスには中野長者橋が有るという様に「それなりに配慮している」といえます。しかし今までは有った内廻りの高松の出口が廃止されたため、埼玉方面から池袋へのアクセスは東池袋出口に絞られてしまったので、かなり不便にはなりました。

  
左:外回り今回開業区間唯一の入口 中野長者橋入口(山手通り⇔中央環状新宿線外回りでは他に既存の高松入口も有る)  右:新宿副都心へのアクセスポイント 中野長者橋出口

  
左:地下への出入口は併用している西池袋出口  右:西武池袋線椎名陸橋上に有る西池袋入口

 加えて中央環状新宿線と交差している一般道の放射道路で有る青梅街道・新目白通りから見ると、中央環状新宿線は「かなり使いづらい道路」に見えてきます。実際青梅街道中野坂上交差点・新目白通り中落合二丁目交差点から中央環状線に入ろうとすると、内廻り・外廻り共に今の段階では直接中央環状新宿線には入れず、中央環状新宿線から新青梅街道・新目白通りに行こうとすると外廻りからは西池袋からUターン・内回りからも中野長者橋からUターンという感じになり、多摩地域へのアクセス道路である青梅街道、関越道へのアクセス道路である新目白通りと中央環状新宿線のアクセス関係は、残念ながら非常に悪いといえます。
 これはやはり、「大深度地下高速道路」という事が影響している事は間違い有りません。山手通りの直下には首都高中央環状新宿線だけで無く都営大江戸線も建設されており、その様な事から首都高速中央環状新宿線は大深度で建設されており、出入口部には8%・10%という急勾配が有る状況なので、必然的に出入口の箇所数を絞らざる得なかった結果として、今の出入口配置になったとは想像は付きます。
 しかし沿線地域から見ると、やはり「使いづらい」という事は否めません。実際の所中央環状新宿線は「三環状」の一環として造られた事も有り、「首都東京の環状道路」では有るけれども実際は「首都東京の通過交通の為の道路」として建設されたという背景が、この様な出入口配置にも反映されているのかもしれません。確かに中央高速・4号線沿線から東北道・常磐道方面へは格段に通過しやすくなりました。その意味では「通過交通を流す為の環状道路」としては間違い無く機能して居ますが、その便利さを出入口を増やす事で地域にも解放して欲しかったな?とは、東京西部に住む住民としては残念ながら感じました。

 その様に「通過交通への対応が主体」といえる今回の中央環状新宿線の整備ですが、実際の所地域の住民にはメリットの無いものなのでしょうか?必ずしもメリットが無いとはいえません。池袋〜新宿〜渋谷を中心とする東京の副都心地域と東京23区西部を車での活動エリアとする人達に取っては、首都高中央環状線の真の整備効果は此れから享受する事になります。それは「 山手通りの拡幅整備 」が控えているからです。
 確かに今まで環八・環七等に流れていた通過流動が、中央環状新宿線に転移した事による間接効果が有るなど、間接的なメリットが存在している事は間違い有りません。実際環七大原交差点内回り右折車線(中央高速へ向かうポイント、右折車線が短いので此処から良く渋滞が起きる)も比較的曲がりやすくなったと感じる事から、其れなりの効果が有るといえます。

  
左:高速道路工事完了後の山手通りの整備が「東京SMOOTH」のカギ?  右:こうなれば混雑緩和の効果は出るか? ほぼ整備が完了した山手通り(落合地区)

 しかしそれ以上に劇的な効果を引き起こす可能性が有るのは、今は中央環状新宿線の工事スペース等に使われている山手通り路上スペースを使っての「山手通り整備」ではないでしょうか?確かに山手通りに新規立体交差は出来ないですし、車線も今の片側2車線からは変わらないですが、歩道・路側帯・右折レーンが整備され今までと違い「2車線は確実にスムーズに走れる」環境が出来る事は、車でこの地域を走る人達に取っては非常に効果が大きいといえます。
 まして「整備された環状道路」が1本出来る効果は色々な所に出て来るでしょう。実際新目白通り⇔新宿方面へは東中野経由・小滝橋通り・地域の細い道経由など幾つものバイパス抜け道ルートが有りましたが、整備が完了すればそれらの抜け道より山手通りの方が時間が読める可能性が出てきます。その為地域の道路事情の改善に効果が有るといえますし、東京の副都心で有る池袋〜新宿〜渋谷を結ぶ整備された環状道路が出来る事で、山手通りの処理能力向上による周辺の環状道路である明治通り・環状七号線などへの波及効果も大きいといえます。そうなると山手通りの整備効果は東京23区西部のかなり広い範囲に広がる事になります。
 この様な「山手通りの整備効果」こそ、通過交通主体に整備された首都高速中央環状線に変わる、東京23区西部への大きな恩恵といえるでしょう。落合周辺では整備が完了している所もありますが、大部分は此れからの整備になります。今後の他の区間が落合のように整備されて行くのが楽しみで有るといえます。

 この様に今回開通した首都高速中央環状新宿線について見て来ましたが、この様に見ると首都高中央環状新宿線は東京を都心通過する広域流動に対して効果が有り、付帯の山手通り整備は東京23区西部の道路交通に効果をもたらす事は確実で有るといえます。
 今回首都高中央環状新宿線山手トンネル開通に際して、首都高速道路会社はCM・看板・ラッピングバス等色々な手段で広告を出して居ますが、そのテーマが表題に有る「東京SMOOTH」です。このCMでは「中央環状新宿線が出来れば東京の道路交通がスムースになる」という事をアピールしたい意図で「東京SMOOTH」という言葉を使っているのでしょう。
 では本当に首都高中央環状新宿線が出来れば、「東京SMOOTH」が実現するのでしょうか?
 此れはまだ開業から数日程度しか経っていない状況なのでまだ何とも言えませんが、私見た限りの感想でいえば今や「東京SMOOTH」は実現しつつ有ると感じています。私は22日の開業後中央環状新宿線を(23日の取材以外に)26・27日に各1回ずつ使用して居ると同時に25・26・27の3日間にこの周辺を車で移動して居ますが、年末最終週の「道路工事を中断するほどの混雑期」でありながら驚くべき光景を目にしました。
 先ず首都高速は25日朝8時前に5号線を利用した時に「渋滞北池袋→護国寺2km」しか表示が出ていなかった事です。こんなに空いている事はは普通の平日朝では先ずありえません。又午後4号線下りを使った時に対向の上りは三宅坂先頭に2km程度しか混んでいなかったのです。此れも又珍しい事です。4号線の状況は26日も同じ様な状況でした。この点から見ても首都高速でかなり混雑緩和が進んでいる事は間違いなさそうです。
 加えて26日に利用した環七大原交差点もかなり混雑が緩和された感じがしましたし、26日夕方和光で人と待ち合わせしていましたが、その人が「高井戸〜和光が環八+笹目通りで30分以下殆ど渋滞していない」といってましたし、私も帰り環八を一部利用していましたが和光〜四面道間で殆ど渋滞していませんでした。今までの年末では考えられない事です。  では「今年は何が違うのか?」と考えると考えられる要素は、例えば「燃料代が上がって車の通行量が減ったのか?」とか考えられる事は色々有りますが、その内の要素に「圏央道で中央道⇔関越道が結ばれた」「中央環状新宿線の部分開業」も考えられます。しかし先月まではこんなに空いている事は有りませんでした。そうなると混雑緩和の効果は12月22日に開業した「中央環状新宿線西新宿IC⇔熊野町IC 間の開業」という事になるのではないでしょうか?
 実際の所、数ヶ月〜1年経過して調査の結果どれだけ混雑が緩和されたか?又山手通りの整備工事が竣工して本当にすべての整備が終わらないと、本当の効果は分からないといえます。
 しかしここ数日の私の体感的には、明らかに首都高中央環状新宿線開業の効果は有ったと感じています。私的には「東京SMOOTH」という首都高速会社のPRは実現されつつある?と感じました。今後「東京SMOOTH」がどれだけ拡大して行くか?楽しみです。




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