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− 市 街 地 を 行 く 香 港 ト ラ ム 試 乗 記 −
TAKA 2008年02月24日
有る意味で香港の公共系交通機関でピークトラムと並んで有名なのがトラム(路面電車)です。
香港のトラムは1904年開業で今年は開業104年という古い歴史を持って居て、「街中を走る」「二階建ての車両」が有名ですが、二階建ての車両は1912年登場で古い歴史を持っていて、東洋と西洋の融合的な雰囲気も有り大きな人気を集めて居ます。このトラムは民間企業の會徳豊グループの香港電車公司(同じ企業集団にスターフェリーも入って居る)が運営しており、元々は英国系の企業でしたが現在は華僑系の資本で運営されて居ます。そう言う意味では公的資金の入って居る香港の鉄道の大部分を占めるMTRの傘下でなく、完全に独立した存在といえます。
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今回の香港旅行では、12月の半ばになってから個人旅行として手配をしたため、「地下鉄駅から近いホテル」を探しましたが、利便性の高いホテルは既に埋まっていた為、ホテルがなかなか決まらず結局「空いているホテル」という理由で金鐘(アドミラリティ)のウェズリィホテルというホテルを予約する事になりました。
しかしエアポートエクスプレス香港駅からタクシーでホテルに着いてみると・・・、何とホテルは目の前にトラムが走っておりトラムの電停が目の前と言う立地で有り、「香港島内の繁華街」という限定を付ければ、トラムで非常に移動しやすい立地に有りました。
今回12月31日昼過ぎにホテルに着いたので、その立地を生かして早速トラムに乗り「香港島繁華街をまわる旅」に出る事にしました。けれども当てが有ってホテルを出た訳では有りません。なので取り合えず昼食を取る為に繁華街で有る灣仔(ワンチャイ)・銅鑼灣(コーズウエイベイ)方面を目指す事にして、ホテルの前の電停から来たトラムに乗る事にしました。
左:金鐘(アドミラリティ)周辺を行くトラム 右:灣仔(ワンチャイ)周辺を行くトラム
左:銅鑼灣(コーズウエイベイ)のハッピーバレイへの支線の分岐点 右:ハッピーバレイへの支線の途中の電停
しかし日本的には「何処の電停にも駅名が大きく出て居る」のが普通ですが、香港では違う様で何処に駅名が書いて有るか分かりません。もしかしたらホテルの前の電停は名前が無いのかも知れません(英語・中国語が読め無かっただけか?)。
しかし来たトラムにも行き先が書いてあるようでしたが、最初なので何も分からず只飛び載ってしまいました。トラムは香港名物の2階建てで定員は多い感じですが、乗ったトラムはかなりの混雑で、椅子に座るどころか車内に入る事も困難でした。その為後部のデッキに立ち(トラムは後乗り前降り)車窓を見ながら旅を楽しむ事にしました。
トラムは灣仔(ワンチャイ)の繁華街の中を走って行きます。トラムはまるで車の渋滞の中を泳ぐ様に走って行き、しかも電停は安全地帯が狭く(最低レベルの)ペイント電停もありますが、乗客も車の運転手も慣れて居るようで危ない感じは殆ど有りません。其処は歴史が有り生活の一部と化している事が大きなポイントになって居るのでしょう。
灣仔(ワンチャイ)から銅鑼灣(コーズウエイベイ)に入ると、トラムはいきなり本線から外れ狭い道路に引かれた単線の支線に入って行きます。取り合えず何処に連れて行かれるか分からない不安を感じたので、一度降り銅鑼灣(コーズウエイベイ)周辺で昼食を取る事にしました。
左:トラムの1階の客席 右:トラムの2階の客席
左:ハッピーバレイのターミナル 右:ハッピーバレイ競馬場の脇を行くトラム
銅鑼灣(コーズウエイベイ)で昼食を取った後、ガイドブックで調べるとこの単線の支線はハッピーバレイに行く路線で有る事が分かったので、トラムに乗りハッピーバレイを目指します。香港市街地から少し外れ住宅地といえるハッピーバレイのターミナルは繁華街と比べると長閑な感じです。
このターミナルは本線からハッピーバレイ競馬場を囲むようにループ線が引かれており、此処から堅尼地城(ケネディタウン)・上環(ショウワン)方面とサウケイワン方面にトラムが運行されて居るので、私は堅尼地城(ケネディタウン)行きのトラムの2階の最上部の席に陣取り西の終点を目指す事にします。
やはり堅尼地城(ケネディタウン)行きのトラムも、本線に入り灣仔(ワンチャイ)周辺に指しかかると混雑が激しくなり、急な階段を上り下りする必要が有る2階席も殆ど埋まるようになります。金鐘(アドミラリティ)を過ぎて香港のビジネスの中心街である中環(セントラル)に近づくと車内の混雑はピークに達します。銅鑼灣(コーズウエイベイ)〜上環(ショウワン)の区間はトラム路線の中でも本数の多い区間で有り、ひっきりなしにトラムとすれ違いますが、どのトラムも混雑しています。此れだけ混んで居るトラムは日本では見かけません。やはり「大都会の中心街」を走る事は大きい様です。
只それも上環(ショウワン)を過ぎると沿道の風景が徐々にビジネス街から住宅街へ変わってきます。それに従い乗客も徐々に減ってきて、最後の西の終点堅尼地城(ケネディタウン)に着いた時には乗客は10名程度まで減っていました。やはり沿線の商業・ビジネスの集積が利用客数に大きく影響して居るようです。
左:中環(セントラル)の中心市街地を行くトラム 右:堅尼地城(ケネディタウン)のトラム折返し場
左:上環(ショウワン)を行くトラム 右:サウケイワンのトラム折返し場
堅尼地城(ケネディタウン)から再びトラムに乗り上環(ショウワン)迄戻り、其処から今度は平行して走って居る地下鉄に乗り東の終点サウケイワンまで移動しました。地下鉄も利用率的にはかなり利用されていてトラムが混んでいた中環(セントラル)〜銅鑼灣(コーズウエイベイ)間では立ち客が多数出て居る状況でした。短距離の移動の場合地下への移動が必要になる地下鉄の場合、時間的ロスが大きくなります。1両当りの輸送力が限られて居るトラムの場合必然的に運行本数が多くなります。その頻度と短い電停のによる利便性間隔が短距離の場合有利に働いて、地下鉄との間で上手く住み分けが出来て居る感じがしました。日本の大都市では地下鉄開業と同時に路面電車が廃止されてきましたが、香港ではトラムが生き残って居る理由はその辺りに有るのでしょう。
東の終点サウケイワンも広場で線路がループしていてそのまま折り返せるようになっています。日本の場合だと「ループ線での折返し」と言う例は殆ど有りませんが、香港の場合だと各折り返し点でループ線が構築されていてスムーズに折り返せるようになっています。この辺りはさすが香港が英国植民地で有り、元が英国資本の会社が作っただけの事は有り、二階建ての車両と並んで「英国が作ったトラム」という「欧米の風」を感じる点で有るといえます。
左:銅鑼灣(コーズウエイベイ)の折返し場を行くトラム 右:銅鑼灣(コーズウエイベイ)の繁華街を行くトラム
サウケイワンからは最後の未乗ルート潰しをかねて、北角(ノースポイント)・銅鑼灣(コーズウエイベイ)を経由してホテルの有る金鐘(アドミラリティ)に向かう事にしました。北角(ノースポイント)・銅鑼灣(コーズウエイベイ)に近づくと、香港島最大の繁華街に近づく事も有り町並みが賑やかになり百貨店の立地も目立つようになります。
特に銅鑼灣(コーズウエイベイ)に近づくと、車道に平行して走る2階建てバスの姿が目立つようになります。バスに関しては繁華街のターミナルとして銅鑼灣(コーズウエイベイ)に乗入れてくる路線と、トラム・地下鉄に平行して走る平行路線が数多く有り、トラムの競合路線となっていますが、地下鉄とトラムの関係と同じように上手く住み分けが出来て居るようです。
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12月31日のトラム乗車は最後に金鐘(アドミラリティ)まで乗って終わりましたが、香港でのトラムの利用はそれだけでは終わりませんでした。ホテルの目の前から乗れて便利な為、MTR線にに乗る時にも中環(セントラル)まで地下鉄に乗ったりしましたし、滞在中はホテルに朝食が無く同時にお粥が好きだった事も有り、毎朝中環(セントラル)と上環(ショウワン)の間に有るお気に入りのお粥の店までトラムに乗り朝食を食べに行くという事も行いました。
この様に私は香港滞在中はトラムを「日常の足」として利用しましたが、実際香港の人達も低運賃の事も有り、その様に「チョイ乗り」で使うような利用形態が多いようです。その様な点から見ると香港のトラムは「観光資源で有ると同時に生活の一部」となって居るといえます。
しかし現代的な水準から見ると「古典的トラム」で有る事は間違い有りません。特に車両は古典的な車両でバリアフリーの点から問題が有ると同時に車両の老朽化という点で問題を抱えて居ます。
けれども此処に現代的なLRTが走っても、確かに香港住民の利用的には「利用しやすいバリアフリー完備の車両」が登場する事は利便性が上がり好ましい事ですが、観光の側面からは「特徴的な2階建て車両の風情」が失われ大きなマイナスになる事は明らかで有るといえます。
確かにトラムは路線設定等では非常に恵まれていますし、地下鉄と平行していながら地下鉄には無いサービスを提供して独自の地位を築いています。その中で矛盾するともいえる、如何にして都市交通としての機能と観光としての機能を両立して行くか?という事が、これからの香港のトラムに課された課題なのかもしれません。
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