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「たまスーパー駅長」と「いちご&おもちゃ電車」の人気は今や不動!?


−GWの和歌山電鐵と4月27日の「貴志川線祭り」を訪問して−


TAKA  2008年05月24日



今やローカル線再生の象徴!? 和歌山電鐵のいちご電車&おもちゃ電車


 毎年GWには遠出をしているのですが、今年のGWは正しく「ローカル線訪問週間」になりました。私はローカル線に興味が有ると言っても「廃線趣味」は無いので、今活性化に努力して居るローカル線を主体に訪問する事になりました。
 と言いつつ、去年のGWも1日しか時間が取れ無かった為に、「たま駅長(当時)」で知名度の上がっていた和歌山電鐵を訪問したのですが、今年は「たまスーパー駅長」に会いに行こうと言うお誘いを受けていた事も有り、GW前半に和歌山電鐵・後半に銚子電鉄と言う形で、今まで訪問していた地方ローカル私鉄を「経過観察」という視点で2回目の訪問をする事にしました。

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 ☆ 和歌山電鐵のスター三連星!? 「おもちゃ電車」「いちご電車」「たまスーパー駅長」

 先ずは「活性化に頑張る地方ローカル電鉄を訪問する旅」の第一段としてGW前半の4月26日・27日に訪れた和歌山電鐵です。
 今回GW定番の「遠出旅行」として大阪を訪問した時に「再びたまスーパー駅長に会いたい」と思い、未だ乗った事の無い「あっとおどろくプロジェクト構想」の第二段として登場した「おもちゃ電車」の試乗と絡めて4月26日に訪問しました。

 和歌山電鐵のスター三連星の最初は「おもちゃ電車」を取り上げます。『おもちゃ電車「OMODEN」(以下おもちゃ電車と略す)』は、和歌山電鐵が「あっとおどろくプロジェクト構想」に基いて開業直後に作られたイベント電車(?)の第一弾で有る「いちご電車」に続く第二弾の電車として作られた電車で、07年7月29日のデビュー以来人気を集め、運行開始後18日間で約1万人の乗客を集めた人気電車で、(財)運輸政策研究機構発行の「数字で見る鉄道2007」の表紙に取り上げられるほど「素人も玄人も注目」の電車です。
 「おもちゃ電車」は、車両こそ地元のおもちゃのネット販売企業であるTJホールディングカンパニー( 現在民事再生法適用中 )がスポンサーとなり、既存車両を改造して外観を水戸岡氏のデザインで赤く塗装した上で、車内も木を基調としたデザインの上におもちゃを飾る木枠のショーケースや、おもちゃの販売機「ガチャポン」等を設置して、電車に乗りながらおもちゃにも接する事が出来る電車として造られました。
 今回「おもちゃ電車」に試乗しましたが、内装が大人の男性が乗って見ると「チョット恥ずかしいな」という感じがしますが、それでも子供連れ・家族連れが「観光目的」「非日常目的」で鉄道を利用する時にこの様な列車に乗るのであれば非常に楽しいでしょうし、「おもちゃ電車に乗る」という事が目的になると同時に、それにより(特に子供達に)おもちゃ電車に乗る事で夢と好印象を与える事が出来るのは、「利用者が増える」という短期的側面だけ出なく、もっと長期的な側面で大きなプラスが有ると思います。

 
左:貴志駅に停車中の「おもちゃ電車」 右:個性的なデザインのおもちゃ電車車内

 次は今や和歌山電鐵の「定番」ともいえるいちご電車です。いちご電車は2006年4月1日の和歌山電鐵開業から約4ヶ月経過後の2006年8月6日に「第一回貴志川線祭り」に合わせて発表されて、すでに登場から1年半以上経過しており、今では貴志川線の定番電車とも化しています。
 登場後始めて乗った時には内装に木が多用されて居る点からも「如何にも水戸岡デザインの電車だな」という感じがしましたが、「あっとおどろくプロジェクト」のおもちゃ電車が登場した現在となると「個性的だが日常利用も可能なデザインだな」と感じます。
 今では「おもちゃ電車」も登場してしまいましたし登場から1年半以上が経過して居る事も有り、(良く言えば)貴志川線の風景に馴染んだとも言えますし(悪く言えば)登場当初のインパクトは流石に無くなっています。しかし未だにいちご電車のマークを見て「かわいい」と言って携帯で撮影している女の子が居るなど、未だにその存在間は有るといえます。

 
左:伊太祁曽駅に到着した「いちご電車」 右:「おもちゃ電車」よりは汎用性の高いいちご電車内部

 最後に和歌山電鐵のスター三連星の取りを飾るのは、当然ですが「たまスーパー駅長」です。たまスーパー駅長の場合「スター」と言うより「スーパースター」です。今や和歌山電鐵貴志川線は「日本一知名度の高いローカル線」と言っても過言では有りません。その立役者が「たまスーパー駅長」です。2007年1月の駅長就任以来、テレビに全国区で報道されたり雑誌に取り上げられた事は数知れず、遂には写真集も発行され「日本代表ネコ」としてフランスの映画に出演するほどの人気者となっています。
 既に登場以来1年半近くが経過して、スーパー駅長になってからも5ヶ月以上が経過しています。既に此れだけ一般の世界では報道され「手垢が付いた話題」とも言えますし私のサイトでも複数取り上げて居ますが、鉄道系の雑誌などでは(信じられない事に)殆ど取り上げられて居ませんから、「此処は少しでもたまスーパー駅長の活躍を知らせるのが大切」と思い、取り上げる事にしました。

 
左:今年新しく作られた「たまスーパー駅長」駅長室には観客が多数! 右:たまスーパー駅長とミーコ助役

 私の母親がネコ好きで家に8匹もネコが居る事も有り私自身もネコが嫌いではありません。その様な「消極的なネコ好き」の人も居ますが、世の中には「ネコを飼って居る」「ネコ大好き」と言う人は非常に多く、間違い無く鉄道マニアより多いと言えます。しかもそれらのネコ好きは「家の無い猫が拾われた」的な「お涙頂戴話」は大好きですし可愛い猫も大好きです。この愛らしい三毛猫のたまスーパー駅長は正しくこれらの条件に合致したからこそ此れだけ人気が盛り上がったのでしょう。
 前回和歌山電鐵を訪問したのが1年前のGWですから、私に取っては約1年ぶりの和歌山電鐵とたまスーパー駅長の訪問になります。前回のGW時にも、たま駅長の見物客で結構混んで居ましたが、今回訪問した時も前回に負けず劣らずたまスーパー駅長を見るお客さんで、終点の貴志駅は賑わっていました。
 今回は和歌山電鐵で作った立派な駅長室が出来ていて、多数の来訪客がたまスーパー駅長の御尊顔を拝しに来ていました。その中で一部貴志駅に車で乗り着けて来た観光客も居ましたが、電車で来る人も多くおもちゃ電車から降りてきてたまスーパー駅長を見ると言う行動パターンを取る人が結構いました。これが和歌山電鐵の収入に大きく貢献して居る事は間違い有りません。
 又貴志駅の小山商店(たま駅長誕生の立役者の一人)やその後寄った伊太祁曽駅で「たまスーパー駅長」の各種グッズが販売されていました。私はお土産に結構買って行きましたが、これらも和歌山電鐵の収入や貴志駅を実質的に維持管理している小山商店の収入になり、廻りまわって和歌山電鐵や地域に貢献するkとになります。これらの相乗効果を考えると「たまスーパー駅長」の色々な点での貢献度は非常に大きいと言えます。本当に何時見ても「たまスーパー駅長」には驚かされます。


 ☆ 4月27日 「和歌山電鐵と地域が共に歩む象徴!?」貴志川線祭りを訪ねる

 さて当初は4月26日和歌山電鐵訪問で、4月27日は他の場所を訪問する予定でした。しかし「たまスーパー駅長」訪問の帰りに伊太祁曽駅訪問して居る時に、駅構内の車庫部分で和歌山電鐵社員と地元の人達が翌日の「貴志川線祭り」の準備をしている状況を見ました。其処で待合室で電車を待って居る私達の所に強風で飛ばされたテントが飛んできてあわや衝突して大怪我をしかねない状況に直面しました。幸いにして誰も怪我は無く「怖かった」で済んだんで良かったですが、逆に私には「貴志川線祭り」の存在を大きく認識させる事となり、4月27日は急遽予定変更で午前中に和歌山を再訪して伊太祁曽の貴志川線祭りの会場を訪問する事にしました。

 
左:貴志川線祭りの最寄駅伊太祁曽駅は来場者で大混雑 右:和歌山電鐵車庫内の貴志川線祭り会場

 4月27日は朝早く新大阪で写真撮影をした後、地下鉄〜南海〜JR経由で和歌山に向かい、此処からは和歌山電鐵のおもちゃ電車で会場の有る伊太祁曽駅に向かいました。和歌山駅出発時点では家族連れを中心に立ち客が10名/両程度出る程の混雑です。果たして此れがGWの貴志川線沿線の観光客なのか?貴志川線祭りに向かう人なのか?この段階では不明ですが、かなりの乗客が乗って居る事は間違い有りません。
 和歌山を出てから各駅に停まる度に数名〜10名程度の家族連れの乗車客があります。前日の利用時には和歌山から貴志に向かい漸減する利用状況から見ると、この日の利用状況は明らかにおかしい感じです。最終的に伊太祁曽に到着する時には2両編成のおもちゃ電車の車内は「一体何のイベントが有るんだ!」と言うほどの大根雑になっていました。
 それが・・・何と伊太祁曽駅で大部分の乗客が降車します。何とおもちゃ電車の乗客の大部分が「貴志川線祭り」に向かう人達だったのです。私が着いた時間は10時の開始時間より遅れていて会場に既に人が入っていましたし、帰り伊太祁曽駅で待っていた時に和歌山から来た電車も立ち客が出てかなり混んでいました。この集客力は驚きです。

 
左:此処でも人気のたまスーパー駅長と小山商店のおばさん 右:伊太祁曽神社内のの貴志川線祭り会場

 「貴志川線祭り」は伊太祁曽駅脇の車庫内と伊太祁曽神社の境内の2箇所を会場にして開かれており、伊太祁曽駅脇の会場では電車の洗車体験・保線車両の見学会等の鉄道系の展示を中心に行われ、伊太祁曽神社境内では「MOMOの模型列車乗車」「各種演芸展示」「たまスーパー駅長のコーナー」「各種即売会」「貴志川線の未来を“つくる”会の展示」等が行われていました。
 やはり人気の中心は「たまスーパー駅長」でしたが、他のコーナーでも其れなりに人が集まっており、演芸コーナーの出し物はチョット「ベタすぎて見るのに気が引ける」感じでしたが、特に物販のコーナーは「たまスーパー駅長グッズ」を始めかなり魅力的な物が多数有り、私もいちごジャムなどのお土産を買う事が出来ました。
 祭りの内容を見て居る限り、「もう少し目玉的イベントが欲しいな」とは感じました。しかし市民手作り感が強いこの祭りですから、その辺りは仕方無いのかもしれません。只子供が居る家族連れの姿も多かったので、電車系の展示にプラスアルファとして子供が遊んで楽しめるイベントが幾つか有るだけでも、もっと楽しい祭りになったかもしれません。

 
左:地元の市民団体「貴志川線の未来を“つくる”会」の展示 右:遂にキャラクターまで登場!? たまスーパー駅長のイメージキャラクター


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 今回私にって「年に数回の遠出旅行」で、予定を敢えて変更してまで「たまスーパー駅長」と「貴志川線祭り」を中心に和歌山電鐵を訪問しましたが、訪問して見て和歌山電鐵と貴志川線祭りの様子を見た価値は有ったと思って居ます。
 貴志川線祭り自体は「市民手作りの祭り」という感じが前面に出た祭りであり、普通の人が「楽しむ」という点ではチョット物足りない側面が有る祭りでしたが、多くの家族連れが集まっており沿線の住民を中心に貴志川線祭りへの注目は高い事が見て取れました。実際 貴志川線の未来を"つくる"会 のHPによると「 第三回貴志川線祭りに3500人参加 」という記事が有る通り、GWと言えども手作りのマイナーな祭りに3500人も動員したのは驚きで有ると言えます。
 ましてや見ての通り、貴志川線祭りに来訪した人達は大部分が貴志川線を利用して居ました。実際3500人来訪と有るので、その内の2500人が貴志川線を使っていたとして、往復で5000人の利用になり一人当りの運賃単価最低でも170円(=初乗り料金)を掛ければ85万円の収入になります。此れは大きいです。此れだけでも和歌山電鐵に収入になりますし、貴志川線祭りに来て始めて貴志川線に乗って「存在を知った・気に入った」と言う人が居て「又利用しよう」とでも思ってくれる人が少しでもでれば、祭りは大成功で有ったと思います。

 モータリゼイションが進む地方では、自動車の利用が進み「鉄道パッシング」が進んで居ます。その様なパッシングという名のスルーが進んでしまうと、鉄道に関心が無くなり鉄道は利用されなくなります。その様な状況下で先ず第一は「鉄道に関心を持ってもらう事」が肝心で有ると言えます。「たまスーパー駅長」は沿線以外の人々の関心を集めその人気から沿線外からの観光客に寄り定期外収入が増加しましたが、収入の根幹となるのは沿線住民の利用であり、その為には沿線の住民の関心は必要で有ると言えます。その沿線関心が高い事について貴志川線祭りの集客が証明しました。
 ローカル線再生の成功については「色々な努力」と同時に地域住民の幅広い関心と支援が必要な事は間違い有りません。その点から見れば和歌山電鐵と貴志川線祭りはその「成功の要因」が満たされて居る事の証明の一つになるのでは?と感じます。
 正直言えば未だ先行きは厳しい物が多く、「貴志川線の未来を“つくる”会」が垂れ幕で「祝 殿堂入り 貴志川線存続」と言うほど楽観的な物では無いと思います。実際の所今の「定期外収入増」と言う好調は、「いちご電車・たまスーパー駅長・おもちゃ電車」の面白さ・目新しさが支えて居るものですが、これは「飽きられると最後」であり「ドンドン面白い物を出し続けないとダメ」と言う自転車操業的な危うさも併せ持つものです。
 しかしながら「飛び道具」的な「いちご電車・たまスーパー駅長・おもちゃ電車」の人気による定期外客・収入の好調さに加えて、貴志川線祭りが示したように「地元の支持・関心が高い」という事は安定的な存続への道に大きなプラスになる事は間違い有りません。この様な事は確実に「存続へ向けての可能性」を示した事は間違い無いと私は現地で感じました。




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