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「1」 鹿 島 鉄 道 訪 問 記
 

 関東鉄道の鹿島鉄道への支援打ち切りを聞いた翌日3月19日の日曜日に、丁度休みが取れたのでこの機会に初めて鹿島鉄道を訪問してみることにしました。
 距離的には日帰りでも十分現地で時間を確保できる場所なのですが、前日も夜遅かったので日曜日起きたのは9時過ぎで家をでたのが10時チョット前、しかも折角近くに行くので関東鉄道竜ヶ崎線も訪問しようと欲張ったので、かなり駆け足の訪問になってしまいました。
 
 「今回の鹿島鉄道訪問ルート」 ( 鹿島鉄道路線図
 上野10:30(フレッシュひたち17号)11:25石岡11:54→12:08常陸小川12:47→13:24鉾田13:26→14:18石岡(写真撮影後15:02発で龍ヶ崎へ)


 ☆ 石岡駅周辺と鹿島鉄道石岡駅

 当初はフレッシュひたち17号で石岡入りして、11:31発鉾田行きでそのまま鉾田まで全線乗ってしまおうと思ったのですが、フレッシュひたち17号が遅れてしまい、石岡に着いたのが11:32でした。
 車内の放送では接続列車について案内放送が入らなかったので、「もしかしたら待っていてくれるかな?」と思い一縷の望みを掛けていましたが残念!石岡到着前のフレッシュひたちの車窓から石岡を出発して鉾田へ向う列車が見えてしまいました・・・。今日はビジネスで無いから良い物のこれが仕事だったら鉾田到着が1時間遅れます。単線でダイヤを組んでいるので厳しいのは分かりますが、頻発している路線でないのですから、JRと連絡を取り合い1〜2分なのだから対東京の接続列車を待っていて欲しい物です。

    
 左:JR石岡駅駅舎(鹿島鉄道も共用)  右:石岡駅西口の状況(空き大型スーパー(多分西友?)がある)


 仕方なく次の常陸小川行きまで時間調整に駅の周囲をブラブラしてみます。西口は旧市街地になり放射状に道が伸びていますが、店が多くなく栄えている感じはしません。立派なバスターミナルが駅前広場脇にある物の人もバスもチラホラ居るだけです。駅前の大型空きスーパー(多分西友?)と閑散とした駅前の状況が、人口約8万人の地方都市でも中心市街地衰退が確実に進んでいる事を示しています。

 
 鹿島鉄道石岡機関区全景


 西口をざっと見た後誇線橋を渡り反対側の状況を見てみます。石岡駅は西側にしか出口はなく東口はロータリーと住宅がある程度です。東口は区画整理をが完成していて整備はされていますが商店等が殆どなく寂しい感じです。人口8万人の都市では中心駅の両方が商店で栄えるほどの活力はないのかもしれません。
 駅の東側には鹿島鉄道石岡機関区が広がり、車両等が停車しています。土地的には一番東側にアパートが1棟建ちそうな細長いスペースと、誇線橋の南東側に駐車場にしているスペースが余っている感じで、経営的には不動産を活用できないかな?とは感じますが、石岡自体の都市の活力を考えると不動産賃貸業では厳しいのかもしれません。
 又誇線橋から切断されたJRとの連絡線が見えます。JRとの連絡線が切れたと言う事は「今はJRとの直通運転が出来ない」と言う事を如実に示しています。今まで鹿島鉄道の収益の底支えをしていた百里基地へのジェット燃料輸送がなくなった事は非常に大きな意味を持っています。この連絡線を切らなければならなくなった事が鹿島鉄道への「痛恨の一撃」になった事は否定できないと思います。
 一通り見たら常陸小川行きの列車の発車時間が近づいたので、西口に戻りJR駅舎で切符を買い、誇線橋で鹿島鉄道ホームに向います。


  ☆ 石岡〜常陸小川間(11:54→12:08)

 JR駅舎で切符を買い、誇線橋を渡り鹿島鉄道ホームに向うと既に常陸小川行きのKR−500系単行が入線しています。JR駅の券売所では何もなかったのですが、鹿島鉄道の改札で見ると「1日乗車券」を売っています。しかし既に常陸小川行きの切符を買っているので、仕方なくそのまま改札してホームに入ります。ローカル私鉄に良くある一部業務だけの委託駅では難しいのでしょうが、JR改札でも鹿島鉄道の1日乗車券のアピール・販売位はして欲しい物です。
 
 
 鹿島鉄道 常陸小川行き KR−500系


 発車間際になり、ホームを見回してみると10人位の乗客が居る感じです。只親子連れの鉄道乗車客(多分子供にせがまれたおばあちゃんが付き添い出来たのだろう)と夫婦のカメラを持った観光客(もしくは鉄道ファン)小川高校へ向うと思われる3人の女性(改札で「小川高校は常陸小川から歩けますか?」と聞いていた)それに一般の利用客数人と一人鉄道ファンの私と言うのがこの列車の乗客層でした。日曜日の昼なので、いつもこんな客層・客数なのかも知れません。

    
 左:常陸小川行き車内(石岡出発時)  右:常陸小川行き車内(小川到着前)


 乗車してまもなくで定刻に出発です。車内は一部ドア等でペンキの剥げている所も有りましたが掃除も行き届き綺麗に整備されています。只後で乗ったKR−500系も一緒なのですが、ポイント・曲線通過時に台車から軋み音がかなり聞こえます。「最新型なのに」と最初は思いましたが、よく考えたら最新型と言えども車両新造から既に18年経っているのです。有る程度その様な経年劣化が始まっていても仕方ないのかもしれません。
 又車内には広告等が殆どなく、沿線の学生の描いた絵が掲示されています。多分ローカル線だから広告などはほとんど出ないのでしょう。それならば「地域密着」促進のためにこの様な絵画の掲載も良い事であると思います。
 列車は住宅地の中を走り、ニュータウン新駅の石岡南台を過ぎると東田中の先から国道355号線と並行して走ります。この区間は石岡南台〜四箇村間では1km程度の間隔で駅も有り、列車も毎時2本走り、線路周辺には家や県道沿いの店や運動公園等も有り人口集積はある感じですが、石岡からも距離がなく平坦で道も整備されているので利用者は車等に逸走している可能性が高いと言えます。
 列車はコンスタントに駅に止まりつつ快適に走っていきますが、東田中以外で降車は有りません。乗車して僅か15分でこの列車の終点常陸小川の到着です。乗客はほぼ全員が常陸小川まで乗り通しました。

    
 左:常陸小川駅 駅舎  右:常陸小川駅 駅前状況


    
 左:常陸小川駅 構内状況(帰りの列車から撮影)  右:常陸小川駅 駅前の無料駐車場(鹿島鉄道設置)


  常陸小川駅 では、待ち時間が有るので「昼食に何か食べよう」と町に出ますが、駅前に菓子屋が一つあるだけで他は何も有りません。駅員の人に「何か食べる所有りますか?」聞くと「直ぐ近くにはないよ」と言う返事でした。実際に常陸小川駅はチョット市街からは離れているようです。
 実際に駅の反対側は直ぐに畑ですし、駅の周りには倉庫跡や住宅しか有りません。でも沿線の拠点駅といえども小川町自体では人口が2万人切る状況ですから、街の賑やかさの実態としてはこんな物なのかも知れません。
 仕方ないので静態保存しているDD902型の写真を取ったり、鹿島鉄道が設置している無料駐車場(2台止まっていた)の様子を見たりしたあと、駅の待合室で時間調整をします。
 駅の待合室にはさっきの列車に乗ってきた親子・夫婦の2組の人達が次の列車を待っていました。そうしたら駅員さんが出てきて「のど自慢でもかけるよ」と言ってテレビのスイッチを入れてくれました。(実際に掛かったのは4chで、「のど自慢こんなのだったっけ?」と首をかしげていて、後から慌て1chに変えたのは可笑しかったが・・・)この駅員さんのチョットした気遣いには感心します。待合室に居る人が観光orマニアなのは一目瞭然だったので「珍しい機関車があるからホームで写真とって良いよ」「対向列車が着たからホームで写真取りな」と声を掛けてくれるのには感心しました。こういう細やかな気遣いがひとりでも利用客を増やすのだと思います。


 ☆ 常陸小川〜鉾田間(12:47→13:24)

 写真を取った後待合室でテレビを見ていると、鉾田行きの来る時間になります。改札口で鉾田行きの切符を買い(この時「鉾田に行って石岡に戻るのなら未だ1日フリー切符がお得だよ」と駅員さんに勧められフリー切符を購入。この時合わせて「かしてつブルーバンドプロジェクト」のブルーバンドも合わせて購入)ホームで鉾田行きを待ちます。
 暫くすると鉾田行きが到着します。鉾田行きはKR−500系で、この車両は表紙の写真に有る「がんばれかしてつ号」で「かしてつ応援団」がラッピングトレインとして運行していて、車内の広告は沿線学校の生徒の塗り絵が掲載されています。
 常陸小川を出ると直ぐに小川高校下に到着します。小川高校下は全校生徒の3分の1が鹿島鉄道を利用するという小川高校生徒の通学用に作られた駅で、小川高校から徒歩約10分、常陸小川駅から0.7kmしか有りません。常陸小川より先は毎時1本と本数が減るのに学生に利用されているということを考えると、小川高校にとっては鹿島鉄道は通学に必要な鉄道で、生徒が危機感を持って「かしてつ応援団」を主催した訳が分かります。
 その先は駅間の距離も広がり、田んぼ・畑の中を走るようになり車窓が変化します。まず桃浦〜浜の間は進行右側に霞ヶ浦が見える岸辺を走り、非常に風光明媚な環境を走ります。浜から先はそんなに高くはないものの丘陵地帯を走り、小さな峠越えを何回か繰り返します。

    
 左:小川高校下駅 全景  右:霞ヶ浦の岸辺を走る鹿島鉄道


 霞ヶ浦を過ぎ暫くすると、常陸小川以来の中心駅で有人駅の玉造町になります。此処で常陸小川以来初めて大きく乗客が動きます。丁度この駅で対向列車と交換しましたが、鉾田行きからは数名の乗客が居り、対向の石岡行き列車にも数名の乗客が有ったようです。

 
 玉造町駅全景


    
 左:鉾田行き車内(常陸小川時点)  右:鉾田行き車内(鉾田到着前)


 この列車は日曜日昼直後の下り列車ですが、常陸小川時点で15名程度の乗客がありましたが、常陸小川〜鉾田間で乗降が有ったのは玉造町数名の降車が有っただけで、10名をきる利用客でしたが鉾田まで乗りとおしました。多分この乗客の殆どは如何なる形で有れど石岡〜鉾田間を乗り通していると思います。これを多いと見るか少ないと見るか・・・難しい所であるとは思います。
 玉造町〜鉾田間では、交換駅の榎本・巴川では多少の集落は有りますが、交換駅でない無人駅には殆ど民家も見えません。これでは利用客が少ないのも頷けます。地域的にはそんなに開けていない地域では無いので、もしかしたら集落と路線経路が噛み合っていないのかも知れません。

    
 左:鉾田駅手前の県道2号線誇線橋とスーパーカスミ  右:鹿島鉄道鉾田駅全景


 県道2号線の誇線橋を潜ると鉾田駅は直ぐ其処です。県道2号線沿いには茨城の大スーパーであるカスミのローサイドショップが有ります。地域の大スーパーが鉾田市街地でなく周りに人家の無い鹿島灘沿いの幹線道路県道2号線沿いにショッピングセンターを出店すると言う事は、この地位この車依存度が高い事の証拠とも言えます。
 鉾田駅は鉾田の市街地にぶつかった所に駅が有り、鉾田の市街地からのアクセスは良い場所に有ります。又関東鉄道バス車庫を併設している為、地域の交通の拠点たり得ていると推察します。只県都水戸へのアクセスである鹿島臨海鉄道新鉾田駅へは 地図 では約1km程度はなれています。この区間延伸できて新鉾田接着すれば便利になるのでしょうが、市街地を貫く路線になるために、建設はなかなか難しいと推察します。(まさか地下鉄を作るわけには行かないでしょう)
  鉾田駅 は木造駅舎で「関東の駅百選」に選ばれています。今回は時間が無く(加えてアンコのたい焼きは食べれないので)寄りませんでしたが、この駅ではタイヤキ店を併設していて結構美味しいみたいです。こういう賑わいを呼べる駅での飲食・物販系サイドビジネスは駅の活性化にも貢献するので積極的に展開すると良いと思います。


 ☆ 鉾田〜石岡間(13:26→14:18)

 鉾田で少し市街地を見て回ろうと思っていたのですが、折り返しの列車は僅か2分で発車してしまいます。本当なら1本早い列車で着いている筈なのですが、石岡での接続不成立が響いてかなり時間がタイトになり、仕方なく折り返しの列車で戻る事にします。でも乗っていた親子連れで鉄道に乗りに来た人も同じ様に直ぐ折り返していきます。
 この列車は鉾田出発時点では6名しか乗車していません。その内3名は明らかに日常利用では有りませんから、実質的な日常利用は僅か3名になります。かなり少ない利用客であるとは言えます。帰りの列車も利用状況は常陸小川までは似たような状況で、玉造町で乗降が有るだけで、此処で部活帰りと思わしき学生が1名降りて、代わりに4名(内3名は仲間で遊びに行く高校生と思わしき学生3名)が増えて合計9名になり、そのまま他の駅では乗降ゼロで常陸小川まで変動無しで進みます。
 
    
 左:石岡行き車内(鉾田出発時点)  右:石岡行き車内(常陸小川到着前)


 帰りの車中は鹿島鉄道ワンマンカーが「前乗り前降り」で後ろの扉が開かず、後方にはお客さんが来ないことを良い事に、一番後ろに陣取って景色を見ながら石岡に向かう事にします。
 沿線の景色を良く見ていると、鉾田〜浜間の丘陵地帯・浜〜桃浦間の霞ヶ浦沿岸地帯・常陸小川〜石岡間の比較的開けた市街地と、山あり水ありで結構風景に変化があり面白いです。特に霞ヶ浦の沿岸を走りながらチョットした山間に入り突然山中の小駅が出てくるという感じの、八木蒔駅前後は非常にアクセントがあり面白い路線風景であると感じました。

    
 左:八木蒔駅全景  右:桃浦駅全景(下り列車と交換)


 上りの列車で後部からずっと線形・風景を見てきましたが、驚くべき事に鹿島鉄道の軌道状況は比較的良いという点です。写真でも何箇所か写っていますが、特段に線路を新設した区間が無いにも関わらず、駅間ではかなりの箇所にPC枕木が入っています。又バラストの補充も定期的に行われていて、2〜3箇所でローカル鉄道で初めて「グレーのバラスト」を見ることが出来ました。レールは多分40kg/m〜50kg/mのレベルでしょうが軌道は極めてしっかりしている印象を受けました。
 ローカル線であるにも関わらず、此処まで軌道の整備状況が良いと、逆に一番出ても60km/h+αのスピードで走っている状況は勿体無いと感じました。鹿島鉄道は曲線もそれなりに有る物の急曲線が連続している訳ではなく、直線も多くローカル線ではかなり線形の良い部類に入ると思います。これで速度向上を目指さないのは勿体無いと言えます。これならば大きな投資をしなくても車両が速度向上に付いて行ければ速度向上は比較的困難でないと感じました。

    
 左:石岡行き車内(石岡到着前)  右:石岡南台駅 全景


 帰りの車内で変化があったのは常陸小川〜石岡間の比較的市街地化が進んでいる地域です。常陸小川でも1名乗車があり合計10名になった車内ですが、石岡に近い東田中で1名・石岡南台で4名の乗車があり石岡到着時点で乗車客が15名にまで増加しました。
 元々 石岡南台 は石岡南台ニュータウン開発に伴い作られた鹿島鉄道最新の駅で、狙いは短距離客の獲得に有った事は明らかですが、日曜日の午後でチョット買い物か何かに出かける人たちをこの短距離区間で吸収できると言う事には驚きました。
 実際沿線風景では、石岡南台・ 東田中玉里 の3駅は住宅地の中にあり、東田中駅周辺には運動公園・学校等も多く利用客が見込める区間であり、その為に昭和63年に玉里駅・平成元年に石岡南台駅を建設したのでしょう。少なくともこの駅設置による効果は、約20年経った今でも一部では現れていると言えます。
 急に賑やかになった車内でしたが、別に交換等で遅れた感じも無かった(回復運転をした気配も無い)のですが、何と石岡駅ホームに入線とほぼ同時に、JRホームからフレッシュひたちが発車していきます。帰りは佐貫途中下車の為フレッシュひたちは利用しませんでしたが、これが東京へ直接戻る予定をしていたらフレッシュひたちを1本逃す事は発狂物の世界です。近距離折り返し列車は別ですが、鉾田からの列車は石岡でのフレッシュひたち接続を重要視してダイヤ構成をして欲しい物です。


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 今回の鹿島鉄道訪問では、極めて短時間で表面的な側面しか見てくることが出来なかったと言えます。私に余裕が無かったのが原因ですがその点は後悔しています。本当の姿は平日1日掛けて見てみないと見えないのかもしれません。
 しかし今回駆け足でも訪問したことで、多少の事は見えたのかな?現地を見なければ分からない事が分かったのかな?とは感じました。これからはこの訪問記での経験を踏まえて、廃線の危機も迎えつつある鹿島鉄道の今後について、「かしてつ応援団」を軸に「鹿島鉄道をどうすれば存続させられるか?」と言う問題について考えて行きたいと思います。



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